バーター(barter)とは、「物々交換」「交換する」といった意味のこと。バーターの類語、バーター取引、具体例などについて解説しましょう。
目次
1.バーターとは?
バーター(barter)とは、「物々交換」「交換条件」を意味する言葉です。ビジネスでは「バーター取引」などと表現され、金銭ではなく商品やサービスを相互に取引することで、お互いに利益を得るための「交換取引」もしくは「ギブアンドテイク(give and take)」といった意味合いになります。
芸能界のバーター出演とは?
一般的なビジネスシーンといわゆる芸能界では言葉のニュアンスが異なり、芸能界では「AさんとBさんを抱き合わせ(セット)で売り出す」といった意味で使われる場合が多いです。
これは知名度のある有名人と、知名度は低いが今から推そうとしている芸能人やアイドルなどをセットで売り出すというような形式で、芸能界では頻繁に使われます。
2.バーターの言い換え(類語)と使い方
バーターは英語の「barter」に基づきます。日本語では「物々交換」を指しており、ビジネスシーンで「物と物との取引」を示す言葉として使用されているのです。ここではバーターが持つ類語表現について説明しましょう。
類語1:交換条件
交換条件とは物事を引き受ける代わりにこちらから差し出す条件のことで、バーターの商品を引き取る代わりに、自社の商品やサービスを渡すという状況と似ているため、類語に該当します。
また、「ある物事に付随する利益に惹かれ、代わりにある物を安く手放す」といった意味も持ち、利益を得るための交換条件といった考え方も含まれているのです。
類語2:抱き合わせ
抱き合わせとは、売れるものと売れないものをセットにして売り出すこと。バーターの「知名度の高い人気の芸能人と今はまだ無名だがこれから売り出したい芸能人をセットにする」という点が「抱き合わせ」と似ているため、類語に当てはまります。
この売れるものと売れないものをセットで売り出す形式は、芸能界では頻繁に使われています。
バーターの使い方
バーターは、一般的なビジネスシーンでは「物と物との取引」を示す言葉として使用されていますが、芸能界では使われ方が異なります。芸能界の場合、英語表現の「Barter」が語源ではなく「束(たば)」を逆さにして読んだことが始まりとされているのです。
3.バーター取引とは?
バーター取引は金銭を介さずに、物々交換もしくは商品とサービスを交換する仕組みのこと。また、輸出と輸入を1つの為替決済法で結んで物々交換することを「バーター貿易」と呼ぶことがあります。
バーター取引を行うメリット
バーター取引では手元に現金がなくても取引を成立できるため、うまくいけば大きなビジネスチャンスにつながるでしょう。
バーター取引はもともと、税金対策のために考案されたとされますが、売上に計上して適正に申告しても、メリットが期待できる取引とされているのです。金銭を払わずに売上を向上することも可能なため、貸し倒れのリスクも少ないと考えられています。
バーター取引を行うデメリット
バーター取引を行う両者の力関係に明らかな差がある場合、注意しなくてはなりません。
たとえば自販機販売を行う営業担当者が「当社の自販機を置いてもらえませんか?」と保険会社に営業をかけ、「保険に入ってくれるなら置いてもよい」と交換条件を提案されたとします。
ここで、保険に加入する意思はないのに自販機を販売したい一念から、必要のない契約を交わしてしまうと社員個人に不利益が出てしまうでしょう。このように立場の弱いほうが、一方的に不利な条件を飲まされてしまう可能性もあるのです。
条件付きのバーター取引
さらに「条件付きのバーター取引」というものも存在します。これは自社の商品を買ってもらう代わりとして、相手先の商品を買うといった条件のもとで行われる取引のこと。
貨幣制度が行き渡る前から日本で行われていた商取引で、現在では撤廃したほうが望ましいという声も上がっています。
企業規模の取引もあるものの、中には、不動産や保険、車など個人を対象としたバーター取引があるため、社員個人の負担が重くなってしまいやすいのです。
商談を持ちかける側が有利になる
バーター取引では商談を持ちかける側が有利になるといわれています。
バーター取引では、商取引をする条件として相手側の商品購入を提案しますが、ほとんどのケースにおいて、取引を持ちかける側の立場が有利とされています。つまり、条件を飲まされるほう(業者)は立場が低くなっているのです。
なぜならば業者のほうから条件を提案した場合、取引が打ち切られる可能性があるからです。このような背景から、公平でないバーター取引という図式が出来上がってしまったのかもしれません。
国際規模のバーター取引
バーター取引は個人間や企業間だけでなく、国家間でも行われています。たとえば数年前に、ロシアはイランへの禁輸解除を受けてミサイルを輸出したというニュースが話題となりましたが、その条件がイランの石油とロシアの穀物の物々交換でした。
このような条件付きの国家間の取引を「バーター貿易」と呼ぶこともあります。バーター貿易では国家間の外交問題が生じやすいというのもありますが、国際貿易には仕方がないという見解もあるのです。
4.業界ごとの使用例
ビジネスシーンで物々交換の意味で使用されるバーターという言葉は、業界によって使われ方やニュアンスが異なります。ここでは、広告業界と芸能、テレビ業界で用いられるバーターについて詳しく解説しましょう。
広告業界
一般的に企業が自社広告を出す際、ある程度の費用が必要となります。このとき広告費用を支払う代わりとして、広告費用相当額の商品を提供して広告枠を取得するなどの仕組みをバーターと呼ぶのです。
たとえば「〇〇社は、この広告枠獲得のため、バーターでの取引を希望されています」というような使い方があります。
芸能・テレビ業界
芸能・テレビ業界においてバーターと使われる場合、前述の通り、「人と人とを抱き合わせで演出する」といった意味合いになります。芸能界でバーターは特に売り出し中の芸能人やタレントについて使われる言葉です。
たとえば、事務所が知名度を上げたい芸能人をバーター出演として依頼し、テレビ局側の要望に応えるというケースがあります。バーター出演によって、次世代の芸能人育成につながるという考え方もできるでしょう。
5.バーター取引の具体的な事例
バーターという言葉の意味を深く理解するためにも、具体的な企業事例を見てみましょう。トヨタ自動車とUber、ガソリン業界などの事例を説明します。
事例1:トヨタ自動車とUber
2009年にアメリカでUberというタクシーアプリが誕生しました。このアプリを利用すれば、スマホからタクシーを呼び出すことができます。そして副業を求めていた一般人を「運転手」として採用しているのです。
「乗せたい人」と「タクシーを利用したい人」をマッチングするというアイデアが画期的でした。このUberが引き起こした「タクシー革命」にトヨタ自動車は着目。他の自動車メーカーよりいち早くUberとの提携を発表したのです。
背景にはトヨタ自動車の「プリウスに試乗してもらう」という目的があります。そして、Uberの運転手へ車を提供する代わりに、無料での試乗会を実現させたのです。この事例は、理想的なバーター取引として注目を集めました。
事例2:ガソリン業界
石油業界では、物流の合理的な対策としてバーター取引が認められています。
これにより各メーカーは全国各地に自社油槽所を保有しなくとも、安定してガソリンを供給できるようになるのです。また、危険物を貯蔵する施設を不必要に多く作るより、各社が共同で活用したほうが環境にも安全と考えられています。
日本にはさまざまなガソリンスタンドがありますが、ブランド名は異なっていても、中身のガソリンは同じという場合があります。たとえばA社とB社のガソリンは同じ貯蔵タンクから出荷されたもので、銘柄名だけが異なるというケースです。
事例3:さまざまなケース
またバーター取引には、以下のように身近なものでも存在します。
- 製薬会社が医療施設に薬を無料提供する代わりに、患者に薬を使ってもらう
- 税理士が無料で顧問サービスを提供する代わりに、顧問先より商品やサービスを受け取る
- 弁護士事務所のホームページを無料で作成する代わりに、弁護士に無料で顧問になってもらう
商品やサービスによっては、認知度が低い、目にする機会そのものが少ないといった場合も珍しくありません。そこで将来的に顧客になり得る消費者に対し、少しでも商品やサービスの認知を高めるためにバーター取引が幅広い分野で活用されているのです。