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日本は自然災害が多く発生する国です。また現代社会は、テロや火災など人的脅威や人的災害も看過できなくなっています。そうしたさまざまな緊急事態に対処できる会社の力が高く評価される今、注目されているのがBCP。
ここでは、
- BCPとは何か
- 背景や現況
- 目的や防災計画との違い
- メリットや問題点
- BCPの作成方法
などについて解説します。
目次
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1.BCP(事業継続計画)とは?
BCPとは、自然災害や事件、テロといった緊急事態が起きた際、事業資産への被害を最小限に食い止め、中核事業を継続させていち早く事業全体を復旧させるために、平常時や緊急時におけるさまざまな対策や方法をまとめた計画のことです。
「Business Continuity Plan」の頭文字を取ったもので、企業のリスク管理のひとつとして注目を集めています。
言葉の意味
「Business Continuity Plan」それぞれの単語の意味を簡単にまとめます。
Businessの意味
「Business Continuity Plan」の中の「Business」には、仕事や事業、職業などの意味があります。
Continuityの意味
「Business Continuity Plan」の中の「Continuity」には、一続きや連続、継続といった意味があります。
Planの意味
「Business Continuity Plan」の中の「Plan」には、計画や案、やり方といった意味があります。
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2.BCPを推進する背景、理由
日本は、地震や台風など、自然災害の発生頻度が非常に多いです。また、残念なことではありますが、頻発する自然災害の脅威以外にも、テロ事件など人的な脅威も看過できない状況にあります。
このような緊急事態に対応できない企業は、事業の縮小を余儀なくされるだけでなく、倒産といった最悪の事態を招きかねません。
特に中小企業の経営はもろく、ちょっとした緊急事態でも廃業のリスクが高まります。BCPは、リスクに備えて事業の継続のみならず顧客や市場から信頼される企業体制を構築していくことを目的として、中小企業庁が推進を始めました。
頻発する自然災害や人的な脅威に負けず、生き残れるような経営を行うためには、アクシデントの際にも業務が行えるような体制を整える必要があります。
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3.BCPの策定状況
BCPが企業にどれだけ浸透しているのか、その策定状況についてNTTデータ経営研究所が調べた結果によると、
- BCPを策定している企業の割合は43.5%
- BCPの策定途中である企業を含めると、その割合は64.9%
といった数字が報告されています。しかし数字の中身を見てみると、
BCPを策定している企業の多くは大企業
- 事業規模が小さければ小さいほど策定率は下がる
- 企業の中には、策定する予定がないと答えた企業もある
など、BCPに対する温度差が見えてくるのです。
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4.BCPの目的
BCPの目的は、自然災害や事件、テロといった緊急事態が生じた際、企業活動への被害を最小限に抑え、可能な限りスピーディーに事業の再開を目指すこと。
平常時からBCPの重要性を認識して対策を講じておけば、いつどんな緊急事態が起きたとしても、事前の準備に従ってスムーズに対応できます。BCPは、現代社会における企業のリスク管理分野で欠かせない視点だといえるでしょう。
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5.BCPと防災計画との違い
BCPと類似した言葉に、防災計画があります。防災計画とは、災害などが原因となる被害を可能な限り防ぎ、いち早く復旧を目指すための計画。一方、BCPは災害などで実際に被害が生じた後、企業活動の継続や早急な復旧を目的としています。
防災計画が、防災を未然に防ぐことを主眼にしているのに対し、BCPは災害などが起こってしまった後のスムーズな対応を目指すといった違いがあるのです。どちらの視点も、企業のリスク管理には重要でしょう。
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6.BCPのメリット
BCPに積極的に取り組む企業が急増しています。ここでは、BCPが持ついくつかのメリットについて見ていきましょう。
- 顧客の囲い込み
- 企業評価の向上
- 意識向上と迅速な行動
①顧客の囲い込み
平常時からBCPを策定しておけば、緊急時でもすぐに事業を再開できるでしょう。事業活動が停止している時間を短くし、速やかに事業を再開できれば、顧客流出の危機にも素早く対処でき、市場における自社のシェアを維持できます。
緊急事態下でも自社の大切な顧客を放さずしっかりと囲い込めるのは、BCPの策定で得られる大きなメリットです。
②企業評価の向上
自然災害をはじめとする緊急事態は、企業活動を停止に追い込むため、企業は一見ピンチに見えますし、企業評価も急激に低下してしまいます。しかし、BCPを事前に策定しておけば、企業はいち早く事業を再開できるのです。
その姿を顧客や取引先企業、社会から見ると、リスクマネジメントを実践できていると映り、逆に企業評価の向上につながっていきます。
③意識向上と迅速な行動
緊急事態が起きてから対処方法を考えるのでは遅すぎます。瞬時に最善の方法を決断し実行しなければ、被害がますます大きくなる可能性は高いでしょう。
日頃からBCPを策定しておけば、社員一人ひとりや各部署で、緊急事態に対する危機意識、緊急対応の迅速化、スピード感ある復興などに対して、高い意識を持って行動できます。
・顧客の囲い込み
・企業評価の向上
・企業内部の意識向上と迅速な行動
があります
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7.BCPの問題点、課題、デメリット
BCPには、メリットだけでなく、問題点・課題・デメリットもあります。
- BCPが機能しないことも
- 策定したBCPが自社に合っていない
①BCPが機能しないことも
NTTデータ経営研究所の調査では、2018年に西日本豪雨と北海道胆振東部地震が起こった際、実際にBCPが機能した企業は3割ほどだそうです。
BCPを策定していた企業があったにもかかわらず、BCPを活かせなかった理由として考えられるのは、
- BCP策定時には想定していない状況が生じていた
- 想定外の状況に対し、BCPでは対応しきれなかった
BCPを策定しても実際に緊急事態が起こった場合、策定したBCP通りに企業が動けるかどうかはやってみなければ分からない部分もあります。想定通りにBCPが機能しない場合があることを理解しておきましょう。
②策定したBCPが自社に合っていない
BCPを策定する際、緊急事態について仮説を立てますが、その仮説によっては、
- 実際に行動不可能な難題をBCPとして策定してしまう
- 実際の緊急事態に対して、簡素なBCPしか策定できていない
なども起こりがちです。自社体制とかけ離れ、噛み合わないBCPを策定してしまうと、自社に合わない実効性の低いBCPで終わってしまいます。
・BCPが機能しないことがある
・BCPが自社に合っていない
などがあります
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8.BCPを作成する方法、流れ、ステップ
BCPを作成する方法を理解しておけば、効果的なBCPを効率よく作成することができます。そこで、BCPの作成方法をいくつかのステップごとにまとめて簡単に解説します。
- 方針を決める
- 体制を考える
- 事業の選定
- 事前案を策定
- BCPの策定
- BCPの見直し
①方針を決める
「BCPを作ることで自社が何を目指すのか」という方針について社内で共通認識を持っていれば、実際にBCPを発動する際も、社員一人ひとりがその目的に基づいて適切に判断でます。
どのようなBCPを策定するのがいいか、BCPの理想像を含めて事前に共通認識をつくっておきましょう。そうすれば、仮にBCPの策定の過程で困難に直面して判断に迷っても、最初に決めた方針に立ち返り、本来の目的を全うするBCPを策定できます。
何事も最初が肝心です。自社にはどのようなBCPが合っているのか、BCP策定の方針をしっかりと立てましょう。
②体制を考える
BCPの作成に際しては、運用の指揮を執るメンバーの選定といった社内体制の整備が不可欠です。
経営者などを含めたBCP策定や運用に関する責任者の決定
各部門からBCP策定の参画者の確定
などにより、BCPへの取り組み体制を構築します。
またBCPは緊急時の取り組みであるため、自社以外に取引先企業や協力企業といったステークホルダーとの連携が欠かせません。の方針が決まったら、運用メンバーの選定以外にも、関係各所との調整や打ち合わせができるような体制を考えます。
また、これらの取り組みは、運用メンバーやステークホルダーだけでなく、当然、全社員が情報を共有すべき事柄です。社員に対しても、BCPの周知徹底が図れるような社内体制の整備を行いましょう。
③事業の選定
会社の存続を左右すると思われる、社内で最も重要性の高い事業を財政面やステークホルダーへの影響、社会的要求や会社の将来のビジョンなどの視点から選択し、中核事業が決まったら、その事業に付随する業務を分析し、重要業務に位置付けます。
そして、重要業務を復旧する際に必要と考えられるボトルネック資源を洗い出すのです。
中核事業や重要業務、ボトルネック資源を決定するほか、目標復旧時間についても目安を決めていきます。
中核事業が停止した場合、どのくらいの停止期間までなら会社の体力が持つのかといった点を考慮して決定しましょう。
④事前案を策定
中核事業や重要業務、ボトルネック資源や目標復旧時間を決定したら、次は実際に中核事業が、自然災害などの緊急事態に遭遇した場合を想定します。
緊急事態に遭遇した場合、自社の中核事業がどのような影響を受けるのか具体的な評価を行うわけですが、事例はできるだけ具体的に挙げるようにしてください。
BCPを実効性の高いものとするには、できるだけ詳しく多くのシミュレーションを行うとよいでしょう。またシミュレーションは時間軸に注意を払います。
- 目標復旧時間内に復旧可能なもの
- 目標復旧時間内では復旧不可能なもの
といった線引きによって、シミュレーション事例を分別していく思考方法が必要です。
⑤BCPの策定
BCPを策定するために、
- BCP策定の方針を決定
- BCP推進体制の構築
- 中核事業の選定
- 重要業務の決定
- ボトルネック資源そのものや緊急事態が中核事業や重要業務、ボトルネック資源に与える影響の分析
などを実施します。ここまでの準備が整ったらいよいよBCP策定の段階に進むのです。
いつ発動するか
まず、中核事業を脅かす緊急事態が発生した場合のBCPを発動させる時期的基準を明確にします。むやみやたらに危険をあおったり危険性を軽視し事業継続が不可能になったりするといった状態では、BCPを策定する意味がありません。
そこで、
- 中核事業がどのような状態になった場合にBCPを発動するのか
- 中核事業に多大な影響を与える緊急事態がどんな規模になったらBCPを発動するのか
といった基準を設けるのです。
体制の決定
BCP発動基準の次は、BCP発動時の体制を具体化します。
- 施設や設備に関する復旧を担当する部門
- 取引先や協力先などのステークホルダーとの調整役
- 資金調達や決済の担当部門
- 社員の参集管理など社員対応
といった役割をBCP推進部門の中で事前に分担しておくと、経営者などを含めたBCP策定や運用に関する責任者がリーダーシップを取りやすくなります。緊急事態下では、経営者などのBCP責任者の強いリーダーシップが欠かせません。
決定した情報をまとめる
BCPに関わる体制を構築したら、緊急事態後にも事業を継続するための情報の整理や情報の文書化に取り組みます。ここでいう情報とは、BCP発動時のフローや事業を継続するために必要とされる情報関係の帳票類。
BCPを成功させる鍵は、社員にフローやノウハウを周知徹底すること。BCP発動時のフローごとに必要帳票を整理して文書化すると、社内にBCPの知識や情報、ノウハウを伝達しやすくなります。
共有と教育
BCPをより実効性の高いものにするためには、社員教育も重要です。
- 緊急事態発生時に社員がBCPを即座に活用するためには、
- 社員向けBCP教育を実施する
- 実際にBCP訓練を実施する
などが不可欠。教育方法には、ディスカッションや勉強会、心肺蘇生といった応急救護法講習の受講、・防災関連のセミナー参加などがあり、実施については、机上訓練や連絡通報の実習、移動訓練、・データバックアップ訓練などがあります。
⑥BCPの見直し
BCPを一旦策定したからといって、そのまま放置してはいけません。BCPを必要に応じて見直し改定していかなければ、実効性の高いBCPの維持は不可能だからです。
改定のタイミングは、
- 社内の組織に大きな変革があった場合
- 顧客や取引先などステークホルダーに大きな変動があった場合
- 中核事業を変更した場合
- システムやネットワークに大きな変更事項があった場合
- 国や業界のガイドラインが改訂された場合
- BCP運用メンバーに変動があった場合
またBCPの中には社内安否確認があるケースも多く、その場合、社員の連絡先の変更があった際、随時安否確認リストの見直しが要求されます。更新頻度や更新条件は個々の企業の都合で決定することになるでしょう。
・方針の検討
・BCPの策定
・改定
まで、ステップごとに見直しながら構築していきます
BCPに対応できる人材を育てるために、適切なスキル管理や人材育成プランを立てられる。タレントマネジメントシステム「カオナビ」の無料PDFのダウンロードは⇒こちらから
9.BCP作成のテンプレート、フォーマット
中小企業庁では、BCPのフォーマットやテンプレートを公開しており、活用によってBCPの策定や内容の整理、見直しなどを簡単に行えます。BCP導入の際はチェックしてみましょう。
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