ボーナスは、労働者のモチベーション維持に有効な手段として広く知られています。そんなボーナスについて、解説しましょう。
目次
1.ボーナス(賞与)はいつ支払われるのか?
ボーナスがいつ払われるかについては、支給回数も含めて法的な定めはありませんが、公務員のボーナスに関しては、6月30日・12月10日の支給と定められています。ボーナスは、労働者のモチベーション維持に有効な手段のひとつです。
ボーナスの目的
ボーナスの目的は2つあります。ひとつは、労働者のモチベーションの維持と向上。人事評価にもとづいて仕事の頑張りとボーナス額の比例する仕組みが構築されていれば、労働者のやる気を引き出せるのです。
もうひとつは、業績に応じて人件費をコントロールするというもの。業績連動型であれば、業績不調の際にボーナスを減額できるのです。
ボーナスと賞与の違い
ボーナスと類似する言葉に賞与があり、ボーナスと賞与はほぼ同じ意味で用いられています。
「健康保険法」と「厚生年金保険法」における賞与の定義は、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他のいかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるもの」となっています。
賞与(ボーナス)とは? 仕組み、支給日、社会保険料の計算方法
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2.ボーナスの種類と支給時期(夏・冬)
ボーナスにはいくつかの種類があり、公務員と民間企業ではボーナスの支給時期に違いがあるのです。ここでは、「賞与」「決算賞与」「勤勉手当」3種類のボーナスと、公務員ならびに民間企業のボーナス支給時期について、解説します。
賞与
賞与やボーナスと呼ばれているものは、下記を指します。
- 労働者が労働の対償として受け取るもの
- 3カ月を超える期間ごとに受けるもの
賞与やボーナスに、必ず支払わなくてはならないといった法的な支払い義務はありません。また賞与やボーナスは会社の賃金規程をベースに支払われるため、所得税の課税対象となるのです。
決算賞与
決算賞与とは、会社の業績に応じて労働者に支払われる臨時的な金銭のこと。業績が黒字になった場合、労働者には決算賞与として還元されます。
通常、会社の儲けに対して法人税が発生しますが、決算賞与の場合、法人税という形で社会還元するのではなく、黒字に貢献している労働者に還元するのです。
決算賞与とは? 支給時期、もらえる人、メリット・デメリット
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勤勉手当
勤勉手当とは、人事評価制度に基づいた個人の勤務成績の評価に応じて支払われる手当のこと。勤務成績の評価によって、勤務手当の額は変動し、一般的な支給日は6月30日、12月10日です。
- 10月~3月の期間に係る業績評価の結果が6月
- 4月~9月の期間に係る業績評価の結果が12月
公務員の支給時期
賞与やボーナスの支給時期は、公務員と民間企業で異なります。
国家公務員には、民間企業におけるボーナスと呼ばれているものと同様の支払いが行われます。中身は「一律で実施される期末手当」「人事評価によって支給される勤勉手当」の2種類があり、支給日は6月30日と12月10日の年2回となっているのです。
民間企業の支給時期
民間企業のボーナスの支給時期に、法的な定めはありません。そもそも労働基準法など企業と労働者に関わる法律では、民間企業にボーナスの支給を義務としていないのです。そのため下記については、各企業で独自に定められます。
- ボーナスを支払うか否か
- ボーナスを支払うとすれば、いつ支払うか
- ボーナスを支払うとすれば、いくら支払うか
3.ボーナスの金額
民間企業と公務員では、ボーナスの金額が異なります。民間企業と公務員との間で、金額にどのくらいの差があるのか、計算方法に違いがあるのかといったポイントについて詳しく解説しましょう。
民間企業のボーナス金額
民間企業のボーナスは、「基本給×○カ月分」といったように基本給の何カ月分という形でボーナスを算定します。一般的な民間企業の場合、基本給の2~4カ月分がボーナスとして支払われるようです。
ただし企業の業績によっては、「0.5カ月分」「4カ月以上の月数」を乗じて算出するケースもあります。
公務員のボーナス金額
公務員のボーナスは、期末手当や勤勉手当と呼ばれており、支給日は、夏が6月30日、冬が12月10日と定められています。金額は、民間の給与事情によって法律で定められており、景気に応じて毎年変動するのです。
ボーナスは、給料や地域手当、扶養手当を月額給料とした場合、それに支給月数をかけて算出します。
4.ボーナス金額の決め方
ここでは、ボーナス金額を決める際に必要となる、下記4つの項目について、それぞれポイントをまとめて解説しましょう。
- 査定項目
- 査定期間
- 限度を超える減額
- 支給日在籍の要件
①査定項目
ボーナス金額を決定する際には、査定項目を用いるケースが多くあります。具体的な査定項目の例として挙げられるのは、下記のとおりです。また近年、実績を重視する項目を設けるケースも増えています。
- 特定の資格保有を評価する業務能力、業務遂行能力
- 長年勤務を続けた会社への貢献を評価するための勤続年数
②査定期間
査定期間とは、ボーナスの支給額を決定するための評価期間のこと。一般的には、ボーナス金額の査定期間として、「4月から9月までの上期」「10月から3月までの下期」といった一定期間が設けられます。
そしてその期間における労働者の働きぶりを査定項目にもとづいて評価し、ボーナス金額を決定するのです。
③限度を超える減額はできない
遅刻や無断欠勤といった勤怠、懲戒処分、勤務態度などの項目についてマイナスの評価がついた場合、ボーナス金額の減額が可能です。ただし正当な理由なしに必要以上減額したりボーナスを不支給にしたりすることは認められていません。
④支給日在籍の要件
ボーナス金額は、支給対象期間中の、企業業績や個々の労働者の人事評価などを考慮して決定するため、下記のような要件が設けられているのです。
- 支給対象期間中に勤務をしていない場合、支給対象期間のボーナスは不支給となる
- ボーナス支給日に在籍していない場合には、対象ボーナスは不支給となる
5.ボーナスと税金
ボーナスには、課税される税金と課税されない税金の2つがあります。またボーナスから控除される公的保険料などもあるのです。ここではボーナスから、控除されるものと控除しないものを解説します。
所得税
取得税は、ボーナスから控除される項目で、計算式は下記のとおりです。
{ボーナス-(健康保険料+厚生年金保険料+雇用保険料)}×賞与に対する源泉徴収税率
賞与に対する源泉徴収税率は、ボーナスをもらう前月の給与から社会保険労を差し引いた金額と扶養人数から決定します。ボーナスから控除されない税は、住民税です。
健康保険料
健康保険料もボーナスから控除される項目で、計算式は下記のとおりです。
ボーナス(※1,000円未満は切り捨て)×健康保険料率×1/2
健康保険料率は、加入している健康保険組合や勤務地、介護保険料の支払いがある40歳以上と支払い不要な39歳以下によって異なります。
厚生年金保険料
厚生年金保険料もボーナスから控除される項目で、計算式は下記のとおりです。
ボーナス(※1,000円未満は切り捨て)×厚生年金保険料率(0.183)×1/2」
厚生年金保険料は会社や居住地に関わらず同率の18.3%(2019年1月時点)と定められており、会社と労働者とで折半して負担します。
介護保険料
ボーナスにかかる介護保険料の取り扱いは、給与と同様です。介護保険料率は、都道府県ごとの地域によって定められている健康保険の料額表を参考にしています。
ここで注意したいのは、介護保険料40以上65歳未満の労働者の賞与からのみ控除する点。39歳以下の場合、介護保険料の控除対象者にはなりません。
雇用保険料
雇用保険料も、ボーナスから控除される項目で、計算式は下記のとおりです。
ボーナス×0.003(労働者負担率が0.3%、事業主負担率が0.6%で合計負担率が0.9%)
ただし雇用保険料率は、会社の事業内容により異なり、2019年度4~3月の労働者負担分の雇用保険料率は、下記のようになっています。
- 一般の事業が0.3%
- 農林水産、清酒製造の事業が0.4%
- 建設の事業が0.4%
6.ボーナスに関する注意点
ここでは、下記のようなボーナスに関する注意点を解説します。
- 年俸制とボーナス
- 支払い回数
- 按分
- 勤怠
- 退職時期
- 入社後初回のボーナス
- 業績連動型賞与
- ボーナスカット
- 一般的な減額理由
①年俸制におけるボーナスの扱い
年俸制とは、1年単位で給与総額を算定していく給与決定方法で、毎月の給与やボーナス部分の両方を合算し、算定します。
この場合、ボーナス部分は「臨時に支払われた賃金」「1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」には該当しないため、ボーナスとは見なされません。
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②支払い回数
支払い回数によっても、ボーナスかどうかを判断する基準が設けられています。定期給与と別に支払われる賃金は、年3回までならボーナスとして取り扱えると認められているのです。
年4回以上の支払い回数がある賃金は、ボーナスと見なされません。通常の定期給与として取り扱われるので注意しましょう。
③按分
按分とは、分割や配分方法のひとつで、基準に準じ同じ比率で分配すること。
「ボーナスの全算定期間に在籍していない」「欠勤や遅刻などで規定勤務時間が足りない」場合、下記のような按分を行います。
- 賞与算定期間で在籍した日数や月数に応じ、日割または月割で計算する
- 欠勤や遅刻による勤務時間と規定業務時間との差を求め計算する
④勤怠
ボーナス金額を決定する際、勤怠を考慮する状況が多くあります。一般的には、会社が労働者の遅刻、早退、欠勤などの勤怠を考慮し、一定の条件の下で賞与を減額支給するのです。
賞与の算定方法は、固定給が基準となる毎月の給与とは異なります。賞与支給にかかる対象期間中の勤怠を考慮して支給額を算定することは、法的に問題はありません。
⑤退職時期
退職時期を誤ると、ボーナスが支給されないことにもなりかねません。ボーナスの支給時期は事前に決まっており、計算対象期間に在籍していた場合、ボーナスの支給が終わった段階で退職をすると、損をしないで済みます。
つまりボーナスの計算対象期間に在籍していたにも関わらず、ボーナス支給日前に退職するのは損です。
⑥入社後初回のボーナス
入社後初回のボーナスも、ボーナスの計算対象期間に在籍していたかが問題になります。ボーナス計算対象期間に在籍していたり就業規則や労働契約書に賞与の支給について記載があったりする場合、企業にはボーナスの支払い義務が生じます。
ただし「業績に応じて支給する」などの記載がある場合、業績が悪化するとボーナスが支給されなくなります。また計算対象期間や査定によって、減額してボーナスが支給される場合もあるのです。
⑦業績連動型賞与
業績連動型賞与とは、企業や部門の収益状況と賞与額を連動させて算定した賞与のこと。収益状況が良い場合、賞与金額は高くなり、収益状況が悪い場合、賞与金額は低くなるなど、収益状況によって支給額が変わるのです。
業績連動型賞与は、企業や個人が創り出す成果に応じて賞与金額が決まるため、成果主義にシフトしている日本企業が注目を集めている賞与体系といえます。
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⑧ボーナスカット
ボーナスカットとは、会社側の理由でボーナスが減額されたり全く支給されなかったりすること。
ボーナスは労働基準法に支給の定めはなく、会社が自由に支給や減額、不支給を決められます。そのためボーナスカットそのものに、法的に問題はありません。一般的にボーナスカットは、会社の存続に関わる重要な措置である場合が多いようです。
⑨一般的な減額理由
ボーナスの減額理由としてもっとも多いのは、業績の悪化。経営状態が悪くなれば当然、ボーナス金額も減額されます。また労働者が会社にどの程度貢献したかという査定を理由に、ボーナスを減額するケースもあるのです。減額については、会社が判断できます。