ボーナス(賞与)の計算方法とは? 基本給、手取り、控除

ボーナスは、企業の好業績などを理由に支払われる一時金です。ここでは、ボーナスの計算方法について詳しく解説します。

1.ボーナス(賞与)の計算方法とは?

ボーナスとは、「定期的に支払われる賃金以外の賃金」「夏季や年末、年度末や決算期といった時期に支払われる一時金」のこと。

支給日には、所得税や社会保険料を控除した後の金額が銀行口座に振り込まれ、支給するボーナス金額は、「基本給の○カ月分」と計算します。

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ボーナスの支給時期

一般的なボーナスの支給時期は、夏と冬の年2回です。このほか、年末や年度末に臨時ボーナスを支給する場合もあります。

一般的なボーナスの支給回数

四半期ボーナスの支給制度が設けられている点を理由に、ボーナスは1年間に2~4回程度で支給されます。しかしすべての企業がボーナスを支給するわけではありません。支給の可否や計算方法、査定といったボーナスに関する取扱いは、個々の企業の規定によります。

決算賞与とは

決算賞与とは、その年の企業業績に連動して支給される賞与のこと。決算によって生じた企業の利益を、決算期の臨時ボーナスとして労働者に還元します。決算賞与はあくまで臨時ボーナスの位置付けで、毎年必ず支給されるとは限りません。

企業業績が好調な場合には支給されますが、低迷している場合は不支給になります。

決算賞与の時期

決算賞与の支給時期は、事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内と法律で定められています。企業の決算月は、3月や6月、8月に集中しており、この場合の決算賞与は、

  • 決算月が3月の場合は4月末まで
  • 6月の場合は7月末まで
  • 12月の場合は翌年1月

までに支払われます。

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ボーナスと決算ボーナスの違い

ボーナスと決算ボーナスの違いは、下記のとおりです。

  • ボーナス:経営状況が危機に瀕しない限り、毎年一定時期に支給される
  • 決算ボーナス:企業業績に連動し事業年度終了の日の翌日から1カ月以内までに支給される

ボーナスは比較的安定して支給されますが、決算ボーナスは業績連動により不支給というケースも想定されます。

公務員のボーナス事情

公務員も民間企業でいうボーナスの支給があり、法律でボーナスの支給日が下記のように決まっているのです。

  • 夏は6月30日
  • 冬は12月10日

なお国家公務員以外の地方公務員では、「国家公務員の支給日に準じる」「国家公務員の基準に近い支給日を設定している」というケースがほとんどです。

ボーナスは、「定期的に支払われる賃金以外の賃金」「決算賞与など一時金」のことです。公務員にもボーナスは支給されます

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2.ボーナスの計算方法の違い(公務員・民間企業)

ボーナスの計算方法を見ていくと、公務員と民間企業とで異なると分かります。ここでは、公務員と民間企業で計算方法にどのような違いがあるのかに焦点を当てて、ボーナスの計算方法についてポイントを解説します。

公務員の場合

公務員のボーナスは、「基礎給与」に、夏と冬のそれぞれの基準数値を乗じて計算します。ボーナス支給基準日は、おおよそ夏が6月30日・冬は12月10日で、名称はボーナスではなく、期末手当や勤勉手当です。

民間企業の場合(基本給・年俸制・業績連動)

民間企業でのボーナスの計算方法は、企業業績に応じて支給額を決定する場合がほとんどです。支給方法もさまざまで、下記の例のようになっています。

  • 基本給×2~2.5カ月を年2回に分けて支給する
  • 年俸制の場合は年俸を16で割り、4カ月分をボーナスとして支給する
  • 通常では不支給だが、好業績を理由に臨時支給される

ボーナスの支給は法律で義務付けられているわけではありません。そのため企業によってボーナスの支給方法はさまざまです。

ボーナスの計算方法は、公務員は年2回、一定数を乗じた金額を支給、民間企業は企業ごとに支給方法を設定という形になっています

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3.ボーナスを計算する理由

ボーナスを計算する理由は、ボーナスが労働者にとって重要な位置を占めているからです。貯蓄や住宅ローン、教育費など、将来設計にボーナスを活用する人も多いでしょう。そのためボーナスは、適切な計算による支給が必要なのです。

ボーナスから控除されるもの

ボーナスから控除される項目は、下記のとおりです。

  • 所得税
  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

また、控除前のボーナスの金額を「額面」、控除後、労働者の銀行口座に振り込まれる金額を「手取り」といいます。

社会保険料とは

社会保険は、社会を構成する者が疾病や死亡、老齢や失業などで生活困窮するのを救済するための公的保険です。各保険には、企業や労働者、国が負担する費用について定められており、下記5つの分野で構成されています。

  1. 公的医療保険
  2. 公的年金
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労災保険
公的医療保険

公的医療保険は、病気や怪我に関する治療費の一部を自己負担して必要な医療を受ける医療保険制度で、下記のような種類があります。

  • 健康保険
  • 共済組合
  • 船員保険
  • 国民健康保険

日本ではすべての国民が公的医療保険への加入義務があり、それを国民皆保険と呼んでいるのです。

公的年金

公的年金とは、国が管理・運営している年金制度のことで、下記の3種類があります。

  1. 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金
  2. 厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人を対象とした厚生年金
  3. 国家公務員や地方公務員、私立学校の教職員を対象とした共済年金

働き方によって加入する公的年金は異なりますが、日本国内に住所があるすべての人に加入義務があります。

介護保険

介護保険とは、介護保険料を徴収し、高齢者などに介護サービスを提供するための社会保険制度のこと。市区町村が運営の主体となり、財源の半分は、国と地方公共団体が負担しています。

被保険者は、下記のとおりです。

  • 市区町村の住民で65歳以上の者である第1号被保険者
  • 40歳以上65歳未満で医療保険に加入している第2号被保険者
労働者災害補償保険

労働者災害補償保険とは、労働者の業務上の事由や通勤による傷病等に対して必要な保険給付を行い、被災労働者の社会復帰の促進などを行う公的保険制度のこと。一人でも労働者を使用する事業者は適用事業所となり、保険料を全額負担しなければなりません。

労災保険における労働者とは、下記のとおりです。

  • 職業の種類を問わない
  • 事業に使用される者
  • 賃金を支払われる者
雇用保険

雇用保険とは、厚生労働省が保険者となり労働者の雇用の安定や雇用の促進を目的とした公的保険制度のことで、下記のような種類があります。

  • 失業者に給付を行う失業保険
  • 労働者が教育訓練を受ける費用を援助する教育訓練給付
  • 高齢者の継続就労を援助する高年齢雇用継続基本給付
  • 育児休業給付
  • 介護休業給付

所得税とは

所得税とは、個人の所得に対してかかる税金のことで、国税のひとつです。所得税額は、1年間の全所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に対して所得税率を適用し、算出します。所得税は原則、下記のようになっています。

  • 居住者を納税義務者とする
  • 納税義務者の所得を課税物件とする
  • 所得金額を課税標準とする

ボーナスから控除される項目には、「所得税」「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」があります

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4.ボーナスの額面と手取りについて

ボーナスには、額面と手取りがあり、それぞれ金額に違いが生じます。両者を正しく理解していないと、「口座に振り込まれたボーナスが少ない」と慌てることにもなるでしょう。ここでは、両者の違いについて解説します。

額面

額面とは、それぞれの企業が制定した給与規定に基づき計算された金額のこと。たとえば「ボーナスは基本給の○カ月分を支給する」と記載されている場合、基本給×○カ月分の計算式で算出された金額を額面というのです。

額面には通常、ボーナスから控除されるべき社会保険料・所得税などを含めた金額が提示されます。

手取り

手取りとは、額面から社会保険料や所得税、そのほか会社と取り決めた控除項目に関する金額が差し引かれた金額のこと。手取り金額は控除後の金額であるため、一般的に額面金額よりも少ない額になります。

つまりボーナス支給日に労働者の銀行口座に振り込まれるのは、額面ではなく手取りの金額なのです。

ボーナスから控除される社会保険料の種類

公的保険である社会保険は、下記のとおり5種類あります。しかしボーナスから5種類の保険料すべてが控除されるわけではありません。

  1. 健康保険
  2. 介護保険
  3. 厚生年金
  4. 雇用保険
  5. 労災保険

ボーナスから控除されるのは、労災保険を除く下記4種類の保険料です。

  1. 健康保険料
  2. 介護保険料
  3. 厚生年金保険料
  4. 雇用保険料

ボーナスに対する社会保険料の計算方法

ボーナスに対する社会保険料の計算方法は、下記のとおりです。

  • ボーナス額から1,000円未満を切り捨て標準賞与額を求める
  • 標準賞与額に保険料率を乗じて保険料を計算する

計算した保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料は企業と労働者で折半します。雇用保険の労働者負担は、平成31年度において3/1000となっています。

ボーナスには、企業が設けた給与規定に基づき計算された「額面」と額面から社会保険料と所得税を控除した「手取り」があります

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5.なぜボーナスから社会保険料が引かれるのか

どうしてボーナスから社会保険料が控除されるのでしょうか。ここでは、下記の切り口からそれぞれを解説します。

  1. 不公平だと感じさせないため
  2. 社会保険料の計算で気を付けること

①不公平だと感じさせないため

ボーナスから社会保険料が控除される理由は、不公平だと感じさせないためです。もともとボーナスには、一律1%の社会保険料が控除されていました。

しかし月額給与ベースを抑制しボーナス還元することで、企業の社会保険料負担の軽減という制度の悪用が横行したのです。そのため平成15年度以降に総報酬制が導入され、ボーナスにも標準賞与額を基準として保険料率を乗じて計算するようになりました。

総報酬制とは

総報酬制とは、毎月の給与から徴収していた社会保険料を、ボーナスからも徴収していく仕組みのこと。平成15年4月から導入されたもので、「毎月の給与から求める標準報酬月額」「賞与から求める標準賞与額」をもとに、保険料率を乗じて保険料を算定します。

総報酬制の導入により、賞与額による社会保険料の負担の不公平が是正されました。

②社会保険料の計算で気を付けること

社会保険料の計算で気を付けることは、誰がいくら保険料を負担するかという点。健康保険料と厚生年金保険料は、企業と労働者が保険料を折半するため、下記のように計算します。

  • 健康保険料=ボーナスの金額×健康保険料率÷2
  • 厚生年金保険料=ボーナスの金額×厚生年金保険料率÷2

なお介護保険料は、40歳から保険料の負担が始まります。

平成15年から導入された総報酬制によって、ボーナスからも社会保険料が公平に控除されるようになりました

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6.ボーナスの計算で気を付ける5つのこと

ボーナスの計算をする際に気を付けたい点は、5つです。

  1. 雇用保険料の計算は給与計算と同じ
  2. 賞与支払届・賞与支払届総括表の提出
  3. 保険料や税金は期日内に納付する
  4. 退職予定者のボーナス
  5. 社会保険料の上限

①雇用保険料の計算は給与計算と同じ

ボーナスの計算で注意するのは、雇用保険料の計算が給与計算と同じという点で、雇用保険は、下記のような式で計算されます。

  • 給与額×雇用保険料率
  • 賞与額×雇用保険料率

雇用保険料率は、事業の種類によって3つの料率が定められているのです。「標準賞与額を求める必要がない」「企業と労働者負担率が異なる」という点は、健康保険料の計算と異なります。

②賞与支払届・賞与支払届総括表の提出

ボーナスを支払う場合、

  • 従業員ごとの賞与支払額を記入する「賞与支払届」
  • 支払合計人数と合計金額を記入する「賞与支払届総括表」

の提出が必要です。なおボーナス不支給でも、「賞与支払届総括表」の提出は必要となり、「賞与支払届総括表」にあるボーナス有無の欄の「無」に○をつけます。

③保険料や税金は期日内に納付する

ボーナスを支払う場合、社会保険料や税金を期日内に納付します。社会保険料は、賞与を支払った月の翌月末日(土・日・祝祭日に当たる場合は、金融機関の翌営業日)までに年金事務所へ、所得税は賞与を支払った月の翌月10日までに所轄税務署へ支払うのです。

支払いを怠ると、所有財産の調査や差し押さえに進むので注意しましょう。

④退職予定者のボーナス

ボーナスを支払う場合、退職予定者の社会保険料控除には注意が必要です。健康保険料や厚生年金保険料は、資格喪失の前月までに支給されたボーナス分までが控除の対象となります。

そのため資格喪失の当月に支給されたボーナスは、保険料控除の対象となりません。なお資格を喪失するのは、退職日の翌日となります。

⑤社会保険料の上限

ボーナスを支払う場合、健康保険料や厚生年金保険料それぞれに異なる上限が設定されている点に注意しましょう。

また社会保険の対象となるボーナスは、支給が年3回以下という要件を満たす必要があります。支給が4回以上の賃金はボーナスではなく給与と見なされ、標準報酬月額を用いてそれぞれの保険料を算出するのです。

ボーナスを支給する際には、「雇用保険料の計算」「健康保険料と厚生年金料の計算」「提出書類」「納期限」などに注意しましょう。