部署異動とは? 実施の理由や進め方、希望・拒否はできる?

部署異動は、会社が従業員に対して行う配置転換のひとつです。従業員が新しい環境でチャレンジすることや、スキルアップを図るため、または人材育成、組織の活性化、新規事業の立ち上げなど様々な目的で実施されます。

この記事では、部署異動をなぜ行うのか、その理由やメリット・デメリット、具体的な進め方について詳しく解説します。

また、異動が決まった際にやるべきこと、希望や拒否ができるのかについても解説するので、部署異動に関して不安な方は参考にしてみてください。

1.部署異動とは?

部署異動とは、従業員を現在所属している部署から別の部署へ配置転換することです。例えば、営業部から人事部への異動などが挙げられます。部署異動は適正な人材配置、欠員の補充、組織の活性化など、さまざまな目的で行われます。

部署異動によって業務内容が大きく変わることもあり、従業員のキャリア形成や組織の活性化につながる可能性があります。

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2.部署異動が行われる理由

企業や組織が部署異動を行う理由は主に以下の5点です。

  1. 欠員を補充するため
  2. 人材育成を促進するため
  3. 業務効率化を追求するため
  4. 組織の健全性を向上させるため
  5. 新規事業の立ち上げのため

ここでは、それぞれの理由について具体的に説明します。

①欠員を補充するため

企業では、退職や休職、昇進などにより特定の部署で人員が不足することがあります。そのような場合、他の部署から従業員を異動させて欠員を補充します。

新規採用で補充する場合もあるものの、突然の退職や休職が発生した際には迅速な対応が求められるため、部署異動で対応する企業が多いです。他の部門から経験のある従業員を異動させることで、迅速に対応できます。

②人材育成を促進するため

部署異動は、従業員のスキルアップや視野の拡大を目的として行われることがあります。異なる部署で働くことで、新しい知識や経験を得られ、多角的な視点を持つ人材に成長できます。

たとえば、営業部門の従業員を経理部門に異動させることで、財務面の知識を身につけさせ、より総合的な判断ができる人材に育成できます。

特に管理職候補の場合、他部署の業務を理解することが重要です。また、部署異動を経験することで社内での人脈が広がり、仕事をスムーズに進められます。

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③業務効率化を追求するため

適材適所の人員配置により組織全体の業務効率を向上させるために部署異動が活用されます。各従業員の能力や適性を考慮し、最も力を発揮できる部署に配置することで、組織全体のパフォーマンスを向上させられます。

また、業務が固定されると新しいアイデアが出にくくなることもあります。ほかの部署から人を移動させて新しい視点をくわえたり、他部署の知識や方法を取り入れたりして新しい刺激を与えることで、組織と従業員の成長を促すことが期待できます。

④組織の健全性を向上させるため

長期間同じ部署にいることで起こる可能性がある不正行為を防ぎ、組織の健全性を保つため、定期的に部署異動が行われることがあります。また、部署異動によって新しい視点や考え方が取り入れられ、組織全体が活性化し、マンネリ化を防げます。

⑤新規事業の立ち上げのため

企業が新規事業を立ち上げる際、既存の部署から最適な人材を選出して新しいチームを編成することがあります。これにより、社内の知識やノウハウを活用しつつ、新しい挑戦に取り組むことができます。

たとえば、IT企業が新たにAI事業を始める際、既存の開発部門から経験豊富なエンジニアを異動させることで、スムーズな立ち上げが可能になります。

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3.部署異動のメリット

部署異動には、主に以下のようなメリットがあります。

  1. 組織を活性化できる
  2. 適材適所の人材配置ができる
  3. 社員に幅広い経験を積ませることができる
  4. 社員のモチベーションアップにつながる

ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

①組織を活性化できる

部署異動は、組織全体に新しい風を吹き込み、活性化させる効果があります。同じ部署に長く所属していると、業務のやり方が固定化し、新しいアイデアが生まれにくくなることがあります。

しかし、異動によって新しいメンバーがくわわることで、これまでとは異なる視点や考え方が導入されます。

②適材適所の人材配置ができる

従業員の適性やスキル、キャリアなどを考慮して、最も活躍できる部署に配置することで、従業員が自分の能力を最大限に発揮できる環境を作ることができます。

たとえば、外国語が得意な従業員や、海外に興味のある従業員を海外事業部に移動させるといったケースがあります。

また、資格を取得したことをきっかけに部署異動をする場合もあります。適材適所に配置することで、従業員の能力を引き出し、企業の生産性を向上させられます。

③社員に幅広い経験を積ませることができる

部署異動は、社員に多様な業務経験を提供する絶好の機会です。異なる部署で働くことで、会社の様々な機能や業務プロセスを理解し、幅広い知識とスキルを身につけることができます。

例えば、営業部門から経営企画への異動は、顧客との対話を通じて市場動向を把握したうえで、経営陣と共に企業の将来の方向性を決め、目標達成のための戦略を立てられる人材として経験を積んでいけます。

このような多角的な経験は、将来的に管理職や経営層として活躍する際、非常に有益です。また、複数の部署を経験することで、会社全体の業務の流れを理解し、部門間の連携をスムーズに行えるようになります。

④社員のモチベーションアップにつながる

部署異動は、社員に新しい挑戦の機会を提供し、モチベーションを高める効果があります。長年同じ業務を続けていると、マンネリ化や停滞感を感じることがあるものの、新しい環境に身を置くと、学ぶ意欲や成長意欲が刺激されます。

また、自分の適性に合った部署に異動できれば、仕事への満足度も高まります。そのためには、従業員のスキルや適性をしっかりと把握し、キャリアの希望や異動の要望を考慮して部署異動を行うことが重要です。

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4.部署異動のデメリット

部署異動にはメリットがある一方で、下記のようなデメリットもあります。

  1. 社員の離職につながる可能性がある
  2. 教育コストがかかる
  3. 新しい部署に慣れるまで生産性が低下する
  4. コアメンバーが抜けると仕事が回らなくなる

部署異動を検討する際は、上記のデメリットを考慮することが大切です。

①社員の離職につながる可能性がある

部署異動は、時として社員の離職リスクを高める可能性があります。特に、本人の希望や適性を考慮せずに一方的に異動を命じると、社員の不満や不安が高まることがあります。

また、異動先の業務内容や環境に馴染めず、モチベーションが低下してしまうケースもあります。そのため、異動を実施する際は、社員との十分なコミュニケーションを取り、本人の意向や適性を考慮することが重要です。

②教育コストがかかる

部署異動に伴う教育コストは、企業にとって大きな負担となる可能性があります。新しい部署で働く社員は、その部署特有の業務知識やスキルを習得する必要があります。

この教育期間中は、通常の業務効率が落ちるだけでなく、指導役の社員の時間も割かれることになります。これらの教育コストは、短期的には企業の生産性低下につながる可能性があります。

③新しい部署に慣れるまで生産性が低下する

部署異動直後は、社員の生産性が一時的に低下することが避けられません。新しい環境や業務に慣れるまでには時間がかかり、その間は仕事の効率が落ちてしまいます。

また、新しい部署の人間関係や組織文化に適応するのにも時間がかかります。この期間中は、本来の能力を発揮できずにストレスを感じる社員も多いです。企業としては、この生産性低下の期間を考慮し、適切なサポートと期待値の調整を行う必要があります。

④コアメンバーが抜けると仕事が回らなくなる

部署のコアメンバーが異動すると、残されたチームの業務に大きな支障が出る可能性があります。コアメンバーは通常、その部署の重要な業務や特殊なスキルを持っていることが多く、その人物が抜けることで業務の質や効率が低下することがあります。

例えば、プロジェクトのリーダーが突然異動になれば、プロジェクト全体の進行に遅れが生じる可能性があります。また、特定の顧客との関係を一手に担っていた営業担当者が異動すれば、その顧客との関係維持に影響が出るかもしれません。

このような事態を避けるためには、知識やスキルの共有、適切な引き継ぎ期間の設定など、慎重な計画が必要です。

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5.部署異動の進め方

実際に部署異動を進める際は、下記の手順で行います。

  1. 組織の状況を調査する
  2. 人材の整理・候補者を選定する
  3. 各部署・候補者から承諾を得る
  4. 内示・辞令を出す
  5. 異動後のフォロー

ここでは、それぞれのステップについて、詳しく紹介します。

①組織の状況を調査する

部署異動を効果的に行うためには、まず組織全体の状況を把握することが重要です。各部署の人員配置、業務量、必要なスキルセットなどを調査します。

また、今後の事業計画や組織の方向性も考慮に入れます。この調査により、どの部署に人材が必要で、どの部署から異動させられるかの大まかな見通しが立ちます。組織の現状と課題を正確に把握することで、より効果的な部署異動計画を立てられます。

②人材の整理・候補者を選定する

組織の状況調査が終わったら、次は異動の候補者をリストアップ、選定します。各従業員のスキル、経験、適性、キャリアプランなどを整理し、最適な人材を検討します。

候補者を選ぶ際は、個人の希望も可能な限り考慮に入れます。ただし、組織の需要と個人の希望が常に一致するわけではないので、バランスを取ることが重要です。

③各部署・候補者から承諾を得る

候補者が決まったら、異動元と異動先の部署の責任者、そして候補者本人から承諾を得る必要があります。

まず、各部署の責任者に異動の意図と期待される効果を説明し、理解を求めます。次に、候補者本人と面談を行い、異動の理由、新しい役割、期待されることなどを丁寧に説明します。

④内示・辞令を出す

承諾が得られたら、正式に内示を出し、その後辞令を発表します。内示は、引越しが必要な場合は1か月前、引越しが不要な場合は2週間から1か月前には知らせます。この期間中に引き継ぎや準備を行います。

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⑤異動後のフォロー

異動後のフォローは、部署異動の成功に大きく影響します。新しい環境に慣れるまでは、定期的に面談を行い、適応状況や課題を確認します。

たとえば、月に1回程度、上司や人事部門が面談を行い、「業務に慣れてきたか」「困っていることはないか」などを聞きます。新しい異動先の部署で歓迎会を開くことも効果的です。

また、必要に応じて研修やOJTを実施し、新しい業務に必要なスキルの習得を支援します。適切なフォローにより、異動した社員の早期の戦力化が期待できます。

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6.部署異動のポイント

部署異動を成功させるために、下記のポイントをおさえておきましょう。

  1. 部署異動の目的・理由を明確に伝える
  2. 部署異動のルールを設定する

①部署異動の目的・理由を明確に伝える

部署異動を成功させるためには、その目的や理由を対象となる従業員に明確に伝えることが重要です。これにより、社員は自分の異動が会社にとってどのような意味を持つのか理解でき、モチベーションの維持や向上につながります。

また、異動の目的を明確にすることで、新しい部署での役割や期待されることが明確になり、スムーズな適応を促せます。

②部署異動のルールを設定する

部署異動は従業員の生活やキャリアプランに影響を与えるものです。だからこそ、部署異動を円滑に進めるためには、明確なルールを設定することが重要です。

異動の手順や情報漏洩に関する注意事項などを就業規則に明記し、事前に周知しておくことで、社員の不安を軽減し、異動に対する心構えを持ってもらえます。ルールを設定することで、公平性が保たれ、社員の納得感も高まります。

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7.部署異動の注意点

部署異動を実施する際の注意点として、以下の3つを押えておきましょう。

  1. 適材適所の人員配置を考える
  2. 社員の希望も考慮する
  3. 2024年4月に改訂された労働条件明示ルールを守る

①適材適所の人員配置を考える

従業員を適性がない部署に配置すると、やる気が低下し、組織や会社にとっても悪影響を与える恐れもあります。そのため、部署異動を行う際は、各従業員のスキルや適性を十分に考慮し、適材適所の配置を心がけることが重要です。

また、将来的なキャリアパスも考慮に入れ、長期的な視点で人材育成を行うことも大切です。

②社員の希望も考慮する

部署異動を決定する際は、可能な限り従業員の希望も考慮することが大切です。例えば、定期的に自己申告制度を設け、キャリアプランや希望する業務内容を聞く機会を設けるなどの方法があります。

すべての希望を叶えることは難しいものの、従業員の意向を把握し、可能な範囲で反映させることで、従業員の満足度やモチベーションの向上につながります。また、従業員の希望を考慮することで、思わぬ才能や適性を発見できる可能性もあります。

2024年4月に改訂された労働条件明示ルールを守る

出典:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

2024年4月から改訂された労働条件明示のルールに従い、部署異動に伴う労働条件の変更を適切に行うことが重要です。具体的には、異動に伴い就業の場所や従事すべき業務の内容が変更される場合は、書面または電子メール等で明示する必要があります。

テレワークを想定する場合は、テレワークを認める場所も明確に示す必要があります。また、その他の労働条件(賃金、労働時間など)に変更がある場合も、同様に明示しなければなりません。

このルールを守ることで、従業員との信頼関係を維持し、トラブルを防ぐことができます。

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8.部署異動を拒否できる?

基本的に、会社からの部署異動の指示を拒否することは難しいです。特に、雇用契約書や就業規則によって「業務の都合で異動を命じることがある」と明記されている場合は正当な理由がなければ部署異動は避けられません。

ただし、以下のような場合は拒否できる可能性があります。

  • 異動が不当な動機(嫌がらせなど)によるもの
  • 雇用契約で職種や勤務地が指定されている
  • 生活に著しい不利益が生じる場合(親の介護や子どもの病気など)
  • 健康上の理由がある場合

部署異動を拒否したい場合は、上司や人事部門とよく話し合い、状況を説明することが大切です。ただし、正当な理由なく拒否し続けると、就業規則違反として懲戒処分の対象になる可能性もあるので注意が必要です。

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9.部署異動は希望できる?

多くの会社では、従業員が部署異動を希望できます。一般的に、以下のような方法で希望を伝えられます。

  • 自己申告制度:定期的に行われる面談や書類提出で希望を伝える
  • 上司との面談:直接上司に希望を伝える
  • 社内公募制度:空きポストに対して応募する

ただし、希望が必ず叶うわけではありません。会社の人員配置の方針や業務上の必要性、スキルや経験などが考慮されます。希望を出す際は、異動の理由や自分のスキルがどう活かせるかなど、具体的に説明できるようにしておくとよいでしょう。

また、希望が叶わなくても、前向きに受け止める姿勢が大切です。

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10.部署異動が決まったらやるべきこと

さいごに、部署異動が決まったときに行うべきことを紹介します。

業務の引継ぎ

部署異動が決まったら、まず取り組むべきは業務の引継ぎです。現在担当している仕事の内容、進行中のプロジェクト、重要な連絡先などを整理し、後任者にわかりやすく伝えることが重要です。

具体的には、業務マニュアルの作成、重要書類の整理、データの引き渡しなどを行います。

引継ぎは計画的に進め、後任者が困らないよう丁寧に行いましょう。また、引継ぎ期間中は後任者の質問に適切に答えられるよう、自分の業務を振り返り、整理しておくことも大切です。

部署異動前の挨拶

異動前には、現在の部署の同僚や上司、関係部署に挨拶をすることが大切です。これは単なる礼儀だけでなく、良好な人間関係を維持するためにも重要です。挨拶の際は、お世話になったことへの感謝を伝え、今後もよろしくお願いしますと伝えましょう。

また、取引先や顧客との関係がある場合は、異動の旨を伝え、後任者を紹介することも忘れずに行いましょう。これらの挨拶は、可能な限り直接会って行うことが望ましいですが、時間的制約がある場合はメールでも構いません。

部署異動後の挨拶

新しい部署に異動したら、まずは新しい上司や同僚に挨拶をしましょう。自己紹介を兼ねて、前部署での経験や得意分野、新しい部署での抱負などを簡潔に伝えるとよいでしょう。また、関係部署の方々にも挨拶回りをすることをお勧めします。

これにより、新しい環境での人間関係をスムーズに構築できます。挨拶の際は、笑顔で明るく、前向きな姿勢を示すことが大切です。新しい環境に早く馴染むためにも、積極的にコミュニケーションを取る姿勢を心がけましょう。

部署異動後の後任のフォロー

新しい部署に異動したあとも、しばらくの間は前任の部署の後任者をフォローすることが大切です。引継ぎで伝えきれなかった細かな情報や、突発的な問題が発生した際のアドバイスなど、必要に応じてサポートを行いましょう。

ただし、過度に介入しすぎないよう注意が必要です。後任者が自立して業務を遂行できるよう、適度な距離感を保ちながらフォローすることが重要です。