正社員に比べて、キャリア形成の面で後れをとっていた派遣労働者のキャリア形成をサポートする取り組みが始まり、全ての派遣社員が教育訓練を受けられるようになりました。この記事では、新たに派遣会社の義務となった「キャリア形成支援制度」についてご紹介しています。
「キャリア形成支援制度」とは?
2015年の改正労働者派遣法施工により、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別がなくなりました。そして、新しい許可基準の1つとして「派遣労働者キャリア形成支援制度を有すること」が追加されました。
「キャリア形成支援制度」とは、派遣会社が雇用する全ての派遣労働者に、教育訓練や能力開発などの研修を行うことを義務付けた制度。計画的な教育訓練やキャリアアップ支援を義務化することで、派遣労働者の待遇改善を目指しています。
それでは次の章では、改正法が定める「キャリア形成支援制度」について詳しく見ていきましょう。
派遣法が定めるキャリア形成支援制度とは?
まず第1に派遣元は、派遣労働者がキャリア形成できる教育制度の実施計画を定めていなければいけません。また、実施する教育訓練は以下の要素を備えている必要があります。
- すべての派遣労働者を対象としている
- 無償・有給で実施する
- 派遣労働者のキャリアアップにつながる内容であること
- 雇用する際に実施する教育訓練が含まれていること
- 長期的なキャリア形成を計れる内容であること
そして、第2にキャリア・コンサルティングの相談窓口を設置して、派遣労働者の職業生活を設計・相談・支援することが定められています。
- 相談窓口に担当者を配置する
- 相談窓口は全ての派遣労働者が利用できること
- 全ての派遣労働者がキャリア・コンサルティングを受けることができる
また、派遣労働者がキャリアを形成できる派遣先を提供するため、事務手引きやマニュアルなどが整備されており、一定の期間ごとに一定の教育訓練が用意されていることも要件として設定。他にも、入職時の教育訓練が必須であることや、毎年約8時間以上の教育訓練の機会を設けることなども盛り込まれています。
キャリア形成支援制度に関する計画書を提出
冒頭でも触れましたが、これまで派遣会社は許可制の「一般労働者派遣事業」と、届出制の「特定労働者派遣事業」に分類されていました。しかし今回の改正でその区別は廃止され、全ての労働者派遣会社は、許可を得なければ派遣事業を行うことができなくなりました。
労働者派遣事業の許可を受けるには、法人の場合は「労働者派遣事業許可申請書(様式第1号)」「労働者派遣事業計画書(様式第3号)」「キャリア形成支援制度に関する計画書」などの書類を用意する必要があります。
キャリア形成支援の事例とは?
それでは次に、2016年9月に日本人材派遣協会が発表した「派遣労働におけるキャリア形成支援 事例集」から、実際にどのようなキャリア形成支援が行われているのかを見ていきましょう。
G社では、貿易実務検定 C級と日商簿記3級の資格取得のための講座を自社で開催。経理や貿易の実務経験がないスタッフが受講できるように整備し、資格試験も受験できるように支援しています。
H社では、派遣のスタート時から 1 カ月間は集中フォローを実施。業務マニュアルにも記載して、全ての営業担当者が実践しています。
A社は、入職時の教育研修として「派遣の仕組み」、「派遣社員としての心構え」、「ビジネスマナーの基本」、「個人情報・機密情報の取扱い」、「キャリア開発」などが学べる30 分のe-ラーニングを実施しています。
D社は、改正労働者派遣法に沿った教育訓練計画として、コミュニケーション力などの「ビジネススキル」、OAなどの「テクニカルスキル」「キャリアを考える」の3つのカテゴリで構成した教育研修を用意。付与されたID、パスワードを使って、派遣社員ごとにe-ラーニングで受講しています。