キャリア採用とは、すでにスキルのある経験者を即戦力として採用することです。ここではキャリア採用が注目されている理由やメリット、成功のポイントなどについて解説します。
目次
1.キャリア採用とは?
キャリア採用とは、経験や知識を持つ即戦力になり得る人材を採用する活動のこと。通年採用が可能なキャリア採用は特定分野における人材確保はもちろん近年、需要の高いグローバル人材の獲得にも活用されています。
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キャリア採用の多い職種
キャリア採用はさまざまな職種で活用されており、とくに専門職に多く見られます。その理由として考えられるのは、下記のようなものです。
- 専門分野は1から人材を教育すると戦力になるまで時間がかかる
- 教育コストを考えるとキャリア採用で人材を確保したほうが効率的
キャリア採用の代表的な職種は以下のとおりです。
- 人事や法務、財務:これらに必要なスキルは場数を踏むことで得られるため、キャリア採用が注目されやすい
- 営業:営業活動に必要なノウハウを蓄積した人材は即戦力として期待できる
- 研究開発:研究に必要な期間や作業を理解している人材が期待できる
2.キャリア採用と中途採用の違い
キャリア採用と混同しやすいのが「中途採用」です。ここでは2つの違いを「専門性」と「採用の幅」から説明します。
中途採用とは? 新卒採用との意味の違い
中途採用とは新卒採用以外の不定期に行う人材採用および以前に就業経験のある人材を企業が採用すること。ここでは、以下の内容についてご紹介します。
新卒採用との違い
中途採用のトレンド
採用計画から選考方...
専門性の高さ
キャリア採用と中途採用の違いとして大きいのが、専門性の高さに関する違いです。
キャリア採用では職種経歴や実務経験、知識などをふまえて、即戦力になり得る人材を採用します。経験やスキルのある人材を募集していると伝えるため、あえて中途採用ではなく「キャリア採用」という言葉を使うのです。
一般的に就業経験のある未経験者を採用する場合は中途採用、経験者を募集する場合はキャリア採用として区別します。
採用の幅
中途採用には未経験採用や第二新卒採用なども含まれます。そのため中途採用では募集職種が未経験でも採用の対象になるのです。
その点キャリア採用は業務経験があり、即戦力となる人材が対象となります。中途採用に比べるとその数は少なくなるでしょう。一般的に中途採用は欠員補充や人員増強のためなどに行われ、キャリア採用は即戦力となる経験者を採用するために行うのです。
3.キャリア採用が注目されている理由
終身雇用が崩壊しつつある現代、転職活動もめずらしくなくなりました。スキルアップできる会社に転職し、みずから自ら市場価値を高めるという価値観が浸透しつつあるなかで、キャリア採用はますます注目を集めているのです。
企業全体のスキル向上
キャリア採用は企業全体のスキル向上にも影響を与えています。テクノロジーの発展が著しい現代、自社内の育成だけでは時代の変化に対応しきれない部分も出てきているのです。
ニーズに合わせた人材を自社で1から育成するより、即戦力となるキャリアを持った人材を新たに外部から採用したほうが、組織全体のスキル向上につながると考える企業が増えています。
即戦力となる人材の確保
終身雇用に対する意識が薄れ、転職が当たり前となった現代。求職者はスキルアップが望める企業に転職して自らの市場価値を高めることを重視するようになりました。
つまり転職市場には一定の知識や経験を有した人材が増えているのです。企業はこれまでに比べ、即戦力となる人材を確保しやすくなっています。
人員構成のバランス保持
人員構成のバランス調整にもキャリア採用が注目されています。企業が持続的な成長拡大を続けるためには、すべての年齢層をバランスよく雇用してフラットな企業風土を作ることが重要です。
しかし企業によっては若い世代が少なかったり、バブル期に採用した社員が多くを占めていたりとアンバランスな構成になっているところも少なくありません。そこで不足している世代を充足させるため、キャリア採用が注目されているのです。
4.キャリア採用のメリット
キャリア採用にはさまざまなメリットがあります。それぞれについて解説しましょう。
- 早期の目標達成
- 人材育成コストの削減
- 業務の見直しや改善
①早期の目標達成
キャリア採用で応募してくる人材の多くは、採用後すぐに業務を遂行できるスキルを持っています。よって入社後、早い段階での戦力化が期待できるのです。それにより新たな人材を1から育成するのに比べ、企業目標を早期に達成できます。
②人材育成コストの削減
人材育成にはどうしても時間と教育コストがかかるもの。未経験者の場合、業務に関する基本知識を1から教えなければなりません。
その点キャリア採用には業界のルールや基本的なスキルを身につけた人材が応募してきます。教育が必要なのは社内ルールやシステムの使い方のみです。
③業務の見直しや改善
キャリア採用で入社した人材は、社内にはないノウハウや効率のよい作業の進め方などを身につけています。社外のノウハウを新たに自社に蓄積できるのです。またキャリア採用人材に既存社員が刺激を受け、さらなる成長や業務改善が進むのも期待できます。
5.キャリア採用のデメリット
キャリア採用にはいくつかのメリットがあると同時にデメリットも存在します。それぞれについて解説しましょう。
- 採用までのコストと時間
- 転職する可能性
- 既存社員からの不満
①採用までのコストと時間
まずひとつが、即戦力の高い人材を採用するまでにはどうしても時間とコストがかかることです。キャリア採用は通年実施するため、求職者の転職活動時期と会社の人材採用時期が重なるとは限りません。
よって、自社の採用条件にマッチする人材が希望するタイミングで見つからず時間がかかる可能性も高いです。またそもそも即戦力になるようなスキルを持った人材は在籍企業で優遇されているため、人材市場に出てこない可能性もあるでしょう。
②転職する可能性
キャリア採用に応募する求職者は基本、自身のキャリアアップを転職の目的としているもの。よって採用してもさらなるキャリアアップを目指して別の会社に転職する可能性が考えられます。
キャリア採用の際は面接時に将来のビジョンを確認したり、前職で働いた期間や入社後の意向をしっかり確認したりして、早期転職を防ぎましょう。
③既存社員からの不満
キャリア採用で応募してくる人材は、それまでの経験から自分なりの仕事の進め方や考え方などを少なからず持つもの。そのやり方が既存社員や企業ルールに合わず、双方から不満の声があがる可能性もあるのです。
「前の会社ではこうやっていた」「新しい会社のやり方になじめない」などの不満によって、既存社員とのトラブルに発展しないよう丁寧にケアしましょう。
6.キャリア採用成功のポイント
キャリア採用を成功させるためのポイントは3つです。
- 採用基準と人材の明確化
- アピールポイントや採用手段の検討
- 職場環境の整備
①採用基準と人材の明確化
即戦力としての活躍を期待するキャリア採用では、必須スキルや経験有無など採用の基準を明確にすることが重要です。求める人材を以下2つの要素に分けると具体的にイメージしやすくなります。
スペック:職務経験、一般常識やマナー、資格や知識の有無、コミュニケーション能力など
人間性:積極性や向上心は高いか、主体性や順応性はあるか、誠実さを感じられるかなど
②アピールポイントや採用手段の検討
即戦力になり得る人材はどの企業も求めています。知識やスキル、経験を持ったキャリア人材はおのずと採用の競争性が高くなるため、企業は競合他社と比較した際、自社を選んでもらえるようアピールしなければなりません。
魅力的な待遇や評価基準を整備する、キャリアアップや福利厚生などに差をつけるなどの対策が必要です。近年、求職者からの応募を待つ「受け身」の採用でなく、SNSを活用した積極的なアプローチも求められています。
③職場環境の整備
キャリア人材はその豊富な経験とスキルから、多くの企業が欲しがります。「採用したものの職場の慣習に馴染めない」「前職より待遇もやりがいもダウンした」という状況が続けば、よりよい環境を求めてほかの企業に転職してしまうでしょう。
入社後もケアやサポートを怠らず、彼らの話を聞く場を定期的に設けて目線を合わせていくと、長期在籍につながります。
7.キャリア採用の面接で聞くべき質問
キャリア採用の面接では、自社の求める人材像と応募者の志向性がマッチしているか、確認しなくてはなりません。ここではキャリア採用の面接で応募者に聞くべき質問について説明します。
- キャリアビジョンに関する質問
- マネジメントスキルに関する質問
- 自社とのマッチング性を見極める質問
①キャリアビジョンに関する質問
キャリアビジョンに関する質問は面接の定番です。これには次のような意味があります。
- 応募者の志望度を知る:自社に入社しないと実現できないようなキャリアビジョンだった場合、志望度の高さがわかる
- ミスマッチの防止:早期離職を防ぐ
- 長期的な視点を持った人材なのかを見極める:目標設定能力や実行力などを判断する
質問の例
キャリアビジョンに関しては具体的に次のような質問をします。
- 今後身につけたいスキルや挑戦してみたい仕事はありますか?
- 仕事をとおしてどのように社会に貢献したいと考えていますか?
- 10年後にはどのような自分になっていると思いますか?
これらの質問で企業と応募者のビジョンが合致するか確認しておきましょう。
②マネジメントスキルに関する質問
社会人経験を積み重ねてきたキャリア人材の場合、マネジメント経験の有無を質問することもあります。
「課長や部長、チームリーダーなどの役割を通じてメンバーを目標達成に導いた経験があるか」「部下やメンバーの扱いに長けているか」などを確認するための質問です。このマネジメント経験を、能力の高さや経験の豊富さとしてとらえる場合もあります。
質問の例
マネジメントスキルに関する質問から、応募者の人間性や能力の高さについて推測します。具体的には次のような質問です。
- 部下の育成にはどのような考えで取り組みましたか?
- チームワークをよくするために実践したことは何ですか?
- 今まででもっとも難しかった仕事について、それをどのように乗り越えましたか?
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③自社とのマッチング性を見極める質問
応募者がどれだけすばらしい実績や経験を持っていても、企業ビジョンやバリューにあわなければ実力が発揮できず、早期離職につながる恐れもあります。キャリア採用の面接では自社とのマッチング性を見極めることも必要です。
ポイントは応募者の本音や事実をじっくりと引き出すこと。「なぜその回答をしたのか」に着目して、応募者の本音を探りましょう。
質問の例
自社とのマッチング性を見極めるためには次のような質問が効果的です。
- 転職先はどのような視点で選んでいますか?
- 転職先を見つけるためにどのような取り組みをしていますか?
- 具体的に弊社のどのような点に興味がありますか?
8.キャリア採用で注目されている大手企業事例
キャリア採用はトヨタ自動車や三菱地所などさまざまな企業が導入しています。ここではキャリア採用で注目されている企業3社の事例について説明します。
双日
大手総合商社「双日」では、つねに新たな価値を創造し続けるためにキャリア採用を導入しています。価値創造の源泉を「人材」と考えている同社にとって、失敗を恐れず挑戦し、困難を乗り越える人材の力が欠かせません。
経営人材の育成、確保に向け、海外語学研修制度やMBAプログラムへの留学制度、M&A研修などさまざまな取り組みを実施しています。
クボタ
クボタにキャリア採用された社員は、自社の魅力として「成長チャンスの多さ」を挙げています。
急成長している製品分野が多いため、「未成熟の部分に自分の理想や考えを盛り込むチャンスが大きい」「自分の考えを形にしたいという思いが強い技術者にとっては魅力的」などの声が多く見られるのです。
正社員に占める中途採用者の割合が49.2%と高い特徴もあります(2021年度)。
オムロン
オムロンでは社員のスキルアップ支援、また働きやすい環境づくりのためさまざまな制度を設けています。社員全体の約3割がキャリア入社者です。
同社ではキャリア入社者をイノベーション創出につながる人財と考えています。キャリア採用で入社した社員には、OJTを中心とした支援にくわえてキャリア入社者を対象とした独自研修を実施。6か月間の活躍支援期間を設けているのも安心のひとつです。