CDOは「最高デジタル責任者」という役職のことです。CDOの特徴や役割、CDOに求められるスキル・経験を解説します。
目次
1.CDOとは?
CDO(Chief Digital Officer)とは、デジタル部門における最高責任者のことです。日本語では「最高デジタル責任者」と訳されます。
近年、各企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されています。CDOは企業におけるデジタルデータ戦略やビジネス改革を実施する司令塔を担うのです。
国内での設置状況
総務省の「情報通信白書平成30年版」によると、日本国内のCDO設置率はわずか5%。「設置を検討していない」「(CDOに関する自社の取り組みが)わからない」と答えた企業は80%を超えています。
なおアメリカの設置率は16.8%、イギリスは27.4%、ドイツは16.4%でした。
CDOという役職は4年前から5年前に欧米で始まりました。このことから、欧米のほうが設置率の高い傾向が見られます。しかし日本でもDX推進の必要性を背景に、企業ではCDOを設置する動きが活発化しているのです。
参考 平成30年版情報通信白書総務省2.CDOの3つの役職
CDOは、「Chief Digital Officer」以外にも「Chief Data Officer」「Chief Design Officer」という意味でも使われる語です。それぞれの役職の特徴を説明します。
Chief Digital Officer
「最高デジタル責任者」という役職です。主な役割は、企業におけるデジタル戦略やデータ整備の実施。「企業のDX推進」「データ主導の企業風土を作る」といった点で重要な意味を持ちます。
Chief Data Officer
「最高データ責任者」という役職です。企業内のデータを活用し、さまざまなイノベーションを行う役割を担います。主な仕事は、企業内のデータ全般の管理、データ分析とデータ戦略による競争力強化、データを活用したビジネスモデルの変革などです。
Chief Design Officer Chief
「最高デザイン責任者」という役職です。デザイン部門の最高責任者という立場でデザイン戦略の推進や企業内のデザイン文化を構築する役割を担います。仕事は製品デザインだけでなくブランディングや広告コミュニケーションなど多岐に渡るのです。
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3.CIO(Chief Information Officer)との違い
CDOと似た役職に「CIO」があります。CIOの役割や、CDOとの立ち位置の違いについて説明しましょう。
役割の違い
CIOは「最高情報責任者」という役職です。主な仕事として挙げられるのは、企業内の情報システムの最適化や情報戦略の構築、社内システムのセキュリティ対策など。CDOはデジタル部門における最高責任者ですが、CIOは特定の部門に限定しません。
立ち位置の違い
CDOとCIOの両方の役職が設置されている場合、切り分け方は企業によってそれぞれ異なります。
たとえば業務内容によって切り分ける場合、「攻めの役職」と「守りの役職」として分けて考えます。この場合、コスト管理やセキュリティ対策などの守りの仕事はCIOが担当し、ビジネス戦略の実施や新規開発など攻めの仕事はCDOが担うのです。
4.CDOが必要とされる理由
ITの普及を背景に、昨今ではCDOの注目度が上昇しています。企業でCDOが必要とされる理由について説明しましょう。
新ビジネスの創成
DX推進は単に既存の業務をデジタル化して効率化を目指すだけのものではありません。むしろ近年、デジタル技術を駆使した新しいビジネスの創出が重要になってきています。
そこでCDOは、ITツールなどを活用した新規ビジネスを確立するリーダー的な役割を担う必要があるのです。
デジタル市場競争からの脱却
デジタル市場競争で勝ち残るには、デジタル技術を活用した新しいビジネス戦略やイノベーションが必要です。競合他社と同じ戦略や考え方に固執していては、激しい市場競争で淘汰されてしまうでしょう。
そのためCDOが中心となって、今までにない新しいサービスやビジネスモデルを創出することが求められるのです。
企業全体のデータ活用統一
CDOの大切な役割は、企業全体・企業文化そのものをデジタル技術の活用で変革すること。CDOは企業全体を俯瞰したうえで各部門を超えてデータを活用し、社内のデータ整備や新たなビジネスモデルを打ち立てていきます。
企業が効率的にDX化を進めるためには、CDOの部門を超えた企業横断的な働きが必要なのです。
5.CDOに期待される役割
企業環境の整備やビジネス戦略の面でさまざまな役割を担うCDO。CDOに期待される役割について説明します。
企業全体の連携
企業内連携を実現して、DX推進を含むデジタル戦略を推し進めていくのがCDOの大きな役割です。
企業が打ち出すデジタル戦略を効率的に進めるには、実行部隊である情報システム部だけでなく人事部門や経理部門、開発部門や製造部門など、あらゆる部門や部署との連携が不可欠。
CDOは戦略の実現に向けて、各部署との連携・メンバー間の調整など、企業全体における橋渡し的な働きを担います。
DX推進の旗振り役
CDOはいわば企業におけるDX推進のリーダーです。企業でDXを推進していくためには、その旗振り役としてリーダーシップを発揮する人が必要で、CDOはまさにその役割を担います。
CDOはDX推進のための予算や人材、スケジュール管理や新規ビジネス戦略の立案など、さまざまな仕事を通してDXを進めていくのです。
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データの活用化
データを活用して「データ主導の企業」へ変革させていくのもCDOの役割です。データの活用といっても単にデータを集めるだけでなく、集めたデータを分析したうえで新たなデジタルデータ戦略を立案する必要があります。
データ活用による新戦略の立案には、ビッグデータ解析やAI分析などの技術に造詣の深いCDOの存在が不可欠です。
セキュリティの強化
DXを推進していく場合、セキュリティを強化するのもCDOにとって重要な任務のひとつ。企業のITシステムには機密情報や社員の個人情報など、数多くの重要データが保存されているからです。
外部からサイバー攻撃を受けると重要データが外部に流失してしまう危険性があります。そこでCDOはDX推進と合わせて情報漏洩を防ぐため、セキュリティ強化を進めるのです。
6.CDOに求められるスキルと経験
CDOにはどのような能力が求められるのでしょうか。CDOに必要なスキル・経験・人間性について説明します。
- 積極性に優れた人材
- 幅広いIT知識
- 組織を束ねる力
- 経営マネジメントスキル
①積極性に優れた人材
CDOは企業内の各部門を連携させる役割を担い、それぞれの部門の責任者やメンバーとひんぱんにやり取りをするため、高いコミュニケーション能力が求められます。
ときにはデジタル戦略に対して否定的な人や経営陣(上層部)、あるいは社外の人と話し合いをすることも。どのような相手ともコミュニケーションを取れる人ほどCDOに向いています。
②幅広いIT知識
CDOは企業のDX推進を統括する立場にあります。当然、ITやデジタル技術に関する知識を持っていなければCDOは務まりません。
IT分野ではデジタル技術に関する知識が日々更新されています。そのためCDOは、機敏にITに関する知識を収集し、理解する能力が求められます。またグローバル化に対応できる専門知識も必要です。
③組織を束ねる力
CDOには組織を束ねる能力が必要です。DX推進は一人ではなくチームで進めていくものであり、CDOはそのなかでリーダー的な役割を担います。そのため、CDOにはチームをまとめる統率力が求められるのです。
またCDOは企業全体の現状を見通したうえでDX推進を行っていきます。企業全体をマネジメントする能力も必要でしょう。
④経営マネジメントスキル
CDOは、IT知識と経営マネジメントスキルの両方を持った人が適任といえます。DX推進にはIT知識だけでなく経営的なスキルも必要でしょう。IT知識だけがあっても、それをビジネスに生かせなければDX推進の意味は薄れてしまうからです。
企業活動に不可欠な「人材」や「お金の流れ」を把握し、これらを生かした戦略を成功させ、利益を生み出すことがCDOに求められます。
7.CDOのキャリアと年収
国内のDX推進の波にともない、CDOの需要は年々高まっています。CDOの年収やキャリアについて説明しましょう。
年収は会社の規模次第
CDOの年収はIT業界でも高い水準にあります。企業の規模によってある程度変わるものの、平均的に800万円から1000万円が多い傾向です。大手企業になると、年収2000万円から3000万円のケースも見られます。
外資系の大企業でCDOを担当し、利益拡大に大きな貢献をした場合、年俸が数億円にのぼることも珍しくありません。
CDOに求めるキャリア
キャリアが豊富な人材ほどCDOとして活躍できる可能性が高いです。しかし具体的にどのようなキャリアが求められるのでしょうか。
マーケティング経験
CDOはデジタルマーケティング普及の役割を担うため、豊富なマーケティング経験が求められます。企業が既存のマーケティングからデジタルマーケティングへ移行する場合、デジタルマーケティングに精通した人材が必要だからです。
CDOは最新のデジタルツールやAIなどを駆使し、デジタルマーケティングを推進していきます。
事業部制に所属
事業部制とは、企業の事業ごとに部署を分割して運営を行う組織形態のこと。CDOは各部署を横断する形でDX推進を担うので、事業部制を採用している企業での勤務経験がものをいいます。
事業部制組織でマネジメントスキルやコミュニケーション能力、さらには組織を統率するスキルを磨いてきた人材ほど、CDOとして力を発揮できるでしょう。
外資系企業に勤務
外資系企業での勤務経験を持つ人材はCDOに向いている傾向にあります。外資系企業では個人に多くの決定権が与えられるからです。さらに外資系企業では決裁までのスピードが迅速なので、変化の早い市場に対して有効な戦略を打ち立てられるでしょう。
またグローバル化が進む現代において、英語が話せるCDO人材は重要といえます。
8.CDOの調達や採用のポイント
戦力となるCDOを採用する場合の人材の見極めポイントと、CDO設置で失敗しないための注意点を説明します。
向上心の高い人物
CDOには失敗を恐れないチャレンジ精神の豊富な人材が求められます。イノベーションやビジネス改革を実施する際、一度や二度の失敗は必ず起こるもの。
失敗を恐れず、また失敗しても諦めずに何度でもチャレンジできる人、試行錯誤を繰り返して成功を目指せる人ほどCDOに相応しいといえます。
CDO設置の明確化
CDOを設置する際、目的を明確にすることが大切です。「何のためにCDOを設置するのか」「CDOの役割は何か」を企業全体で理解しなければ、各部署・組織が連携した効率的なDX推進は実現しません。
CDO設置の目的の周知は、DX推進のビジョンとゴールを企業全体で把握することを意味します。
組織変革を実現
CDOの設置においては、部署同士の連携も必要不可欠です。デジタルイノベーションは、特定の部署だけでなく企業全体で起こらなければ意味がありません。
つまり企業風土、組織そのものが根っこから変革されなければ、本当の意味でのイノベーションにはならないのです。そのためすべての部署が一丸となって取り組むように、CDOが各部署へ働きかける必要があります。
豊富な経験とスキルを保有
CDOを採用する場合、その人材が本当にCDOとして戦力になるかどうか、見極めが必要になります。
CDO採用で重視したい要素として挙げられるのは「DX推進の責任者・リーダー経験」「AIやITツール、ビッグデータなどを活用した経験」「デジタル人材の育成経験」「経営陣や取引先と上手く折衝できるコミュニケーション能力」などです。