チャネルとは、マーケティングにおける「集客媒体や販売経路」のこと。ここではチャネルの種類、チャネル戦略のメリットや事例について、解説します。
目次
1.チャネルとは?
チャネルとは、マーケティングにおいて「集客のための媒体や経路」および「それに携わる組織や業者」のこと。
どのような商品やサービスでも、集客には媒体や販売経路が必要になります。たとえばWebサイト・SNS広告やメルマガ、テレビや新聞、雑誌などです。
チャネルが多ければそれだけ顧客の流入も多くなり、売り上げアップにつながるでしょう。マーケティングでは、どのチャネルがより効果的であるか、見極めながら戦略を練ることが重要になるのです。
チャンネルとの違い
英語におけるチャネルとチャンネルは、発音が違うだけで意味は同じです。なおスペルはどちらも「Channel」で、「周波数帯域」や「ルート」などの意味を持ちます。
Channelは、言葉は同じでも業界や業種によって呼び方が変わるのです。マーケティングの分野やビジネスシーンでは「チャネル」が使われるのに対し、テレビなどの放送業界では「チャンネル」が使われます。
また船舶では水路や航路、あるいは帆船マストを支える支持材の固定に使われる用具をチャンネルと呼ぶのです。
2.チャネルの種類
マーケティングにおける主なチャネルは下記の3種類です。それぞれについて説明しましょう。
- 販売チャネル
- 流通チャネル
- コミュニケーションチャネル
①販売チャネル
商品やサービスを販売するための経路や方法のこと。
一昔前、販売経路・手法はある程度限られていました。しかしインターネットが普及してからはさまざまな販売チャネルが増えたのです。
一般消費者向けの主な販売チャネルとしては、ECサイト・SNS・アフィリエイト・実店舗販売・テレビショッピング・新聞などが挙げられます。なお同じ販売チャネルでも、個人向けのBtoCと企業向けのBtoBとでは、種類や傾向が大きく異なります。
②流通チャネル
商品やサービスが届ける流通手段のこと。商品を運搬する配送業者だけを指すのではなく、小売業者や卸売業者など中間業者を含めたすべての流通経路を指すのです。
流通チャネルの最適化は、顧客の利便性や満足度の向上、流通におけるコスト削減などさまざまな効果があります。
そのためマーケティングでは「どのような流通手段で顧客に商品やサービスを届けるのがベストか」を重視したうえで、流通チャネルを選定しなければなりません。
③コミュニケーションチャネル
企業と顧客のコミュニケーション手段のこと。
マーケティングやビジネスにおいて、顧客とのコミュニケーションは欠かせません。自社の商品やサービスを顧客に知ってもらうためだけでなく、顧客からの相談や問い合わせに応えるためです。コミュニケーションチャネルには、以下のものが挙げられます。
- SNSやDM
- チャットやメール
- 電話
- Web広告やテレビ
- 雑誌や新聞
- キャンペーン
3.チャネル戦略とは?
チャネル戦略は、マーケティングの実行戦略における「4P」のひとつです。
- Product(製品戦略)
- Price(価格戦略)
- Promotion(プロモーション)
- Place(流通戦略)
チャネル戦略は流通戦略に該当しています。チャネル戦略では、商品やサービスの販売ルートや流通の仕組みを考えて実行戦略を練っていくのです。
チャネル戦略の役割
チャネル戦略の役割は、下の7つです。
- 顧客や見込み客の意見や感想を集める「調査」
- 広告やプロモーション活動で販売促進を行う「プロモーション」
- SNS広告やテレビCMなどさまざまな手段で顧客にアプローチする「接触」
- 流通で関わる業者との間で行われる価格や条件などの「交渉」
- 販売チャネルと顧客のニーズがマッチするように調整する「適合」
- 商品の輸送ルートや輸送手段を考える「物流」
- 流通にかかるコストの確保と管理を行う「コスト」
これら役割は完全に独立しておらず、相互にかかわり影響しています。たとえば「プロモーション」と「接触」、「物流」と「コスト」は密接な関係性があります。
チャネル戦略のメリット
チャネル戦略の最大のメリットは、売上拡大につながること。とくに売上につながりやすいのが販売チャネル戦略です。新たな販売経路や商品の購入手段を取り入れると、さらなる潜在顧客の獲得につながります。
この潜在顧客を見込み顧客へ育て、購買へ誘導すれば売上アップを実現できるでしょう。
4.チャネル戦略を行うポイント
やみくもにチャネル戦略を進めても効果は期待できません。ここではチャネル戦略で押さえておきたいポイントを説明します。
- ターゲットを明確にする
- 段階を決める
- 幅を決める
- 顧客第一主義に則り立案する
- オムニチャネルを導入する
- 動画メディアを導入する
①ターゲットを明確にする
チャネル戦略を進める前、ターゲットを明確にしましょう。ターゲットに合わせて戦略を練るのはマーケティングの基本であり、それはチャネル戦略でも同様だからです。
提供する商品によって「性別」「年齢」「職業」「趣味」などの要素でターゲット像を明確にすれば、チャネル戦略も組み立てやすくなります。
たとえばターゲットが「20代のファッション好きのOL」なら、「SNSのなかでもビジュアル重視のインスタが販売チャネルとして最適」という戦略が有効です。
②段階を決める
チャネルは販売する商品・サービスによって段階がわかれます。ここでいう「段階」とは、商品が顧客に届くまでのルートやそれにかかわる流通業者のこと。具体的には「小売業者」「仲介業者」「卸売業者」「二次卸売業者」などです。
チャネルにおける段階はゼロ段階から3段階まであり、各段階によってかかわる流通業者もさまざまです。チャネル戦略では消費者のニーズや買いやすい価格などを踏まえて、適切な段階を決める必要があります。
ゼロ段階
ゼロ段階チャネルは、メーカー(生産者)が直接顧客に商品を販売する形態のこと。直販のビジネスになるので、あいだに小売業者や卸売業者は入りません。中間業者によるマージンが発生しないので、利益率が大きくなりやすいです。
ゼロ段階チャネルの例は「訪問販売」「通信販売」「Web販売」など。
1段階
1段階チャネルは、メーカーと顧客のあいだに小売業者を挟んで商品を販売する形態のこと。商品の管理や運搬はメーカーが行い、販売そのものは小売業者が担当するのです。
メーカーにとっては「商品を広範囲に流通できる」「販売スペースを確保できる」、小売業者にとっては「低価格で商品を販売できる」などのメリットがあります。
2段階
2段階チャネルは、メーカーと顧客のあいだに卸売業者と小売業者を挟んで商品を販売する形態のこと。一般的にスーパーマーケットや百貨店などでは2段階チャネルでの販売が多くなります。
メーカーとしては「販売機会を拡大できる」「少量取引が可能」などのメリットがある一方、2つの中間業者からマージンが発生する点はデメリットといえるでしょう。
3段階
3段階チャネルは、メーカーと顧客のあいだに2つの卸売業者と1つの小売業者を挟んで商品を販売する形態のこと。食品や日用品などの低単価で購入頻度が高い商品、小売店の数が多い商品などでよく見られる形です。
近年、インターネットの普及によって卸売業者を省略するケースが多く、3段階チャネルを採用しているメーカーは非常に少なくなっています。
③幅を決める
チャネル戦略では、流通業者の数(幅)を決める必要があります。流通業者を決める際の方法は、「開放的流通政策」「選択的流通政策」「排他的流通政策」の3つ。それぞれの概要は以下のとおりです。
- 開放的流通政策:特定の業者に限定することなく広範囲の流通を目指す方法
- 選択的流通政策:特定の流通業者を選択して流通を行う方法
- 排他的流通政策:特定の流通業者(メーカーと契約を結んだ代理店)に独占販売権を与える形で流通を行う方法
④顧客第一主義に則り立案する
チャネル戦略を成功させるうえで重要なポイントは「顧客第一主義」を取り入れること。かんたんに言えば「顧客のニーズを知らないと商品は売れない」です。
生産におけるコスト削減や流通政策をどれだけ最適化しても、「顧客が欲しいと思う商品」「顧客が本当に望むサービス」を提供できなければ売り上げは増えません。
顧客が本当に求めるものを提供できればリピーターが増加し、チャネル戦略も軌道に乗るという好循環が生まれます。
④オムニチャネルを導入する
チャネル戦略に「オムニチャネル(すべてのチャネルを連携させて顧客にアプローチする戦略)」を導入する企業が増加しているのです。WebサイトやECサイト、SNSやスマホアプリといったオンラインの接点と、実店舗などのオフラインの接点などが含まれます。
オムニチャネルではオンラインとオフラインの境目がなくなるので、顧客はどのチャネルからでもスムーズに商品の購入や受け取りが可能となるのです。
⑤動画メディアを導入する
動画メディアは、売り上げアップに高い効果を発揮します。近年、スマホが普及したため「動画で商品の情報を見て、気になって購入する」というケースが多く見られるからです。
商品の内容や価格を伝える動画のほか、ECサイトの紹介やキャンペーンや特典の紹介、ブランドの紹介やモデルや有名人を起用したCMなど、内容は多岐にわたります。
5.オムニチャネルのメリット
オンラインとオフラインを融合したオムニチャネルには、顧客満足度のほかにもいくつかのメリットが生じます。
- 業務を効率化できる
- 購入までのデータ分析の精度が上がる
- 顧客満足度が上がる
①業務を効率化できる
オムニチャネルをつうじて在庫や受注、顧客情報などを一元的に管理できるため、業務効率化が進みます。とくに複数のECサイトやネットショップを運営している場合、工数やコストの削減に効果的です。
一元管理や工数削減によって従業員の業務負担が減れば、それだけ働きやすい環境になるので生産性向上も期待できるでしょう。
②購入までのデータ分析の精度が上がる
オムニチャネルで情報を一元化すると、顧客が商品を購入するまでの詳細なデータを得られます。情報を一元管理していない場合、チャネルごとに個別に情報を分析するため、顧客が購入に至るまでの動線を把握しにくくなるのです。
オムニチャネルではオンラインとオフラインを問わず、顧客がどのチャネルを通して商品を購入したか、全体として詳しく分析可能です。分析結果を今後のマーケティング戦略に生かせば、より有効な戦略を生み出せるでしょう。
③顧客満足度が上がる
オムニチャネルのもっとも大きな効果は「顧客満足度の向上」といえます。オムニチャネルを導入する最大の目的は、顧客が「いつでもどこでも商品を購入できる」という状態を作り上げること。
利便性の向上はそのまま顧客満足度につながり、顧客満足度の向上はリピーターを生み出すという好循環が生まれ、売り上げアップにつながるのです。
6.オムニチャネルのデメリット
オムニチャネルに関するデメリットは下記の3つです。それぞれについて説明します。
- 初期コストがかかる
- 顧客認知が難しい
- 実店舗と競合する可能性がある
①初期コストがかかる
オムニチャネルの導入にシステム構築は欠かせません。よってシステムの導入に多額の初期費用がかかるのです。チャネルを少ししか持っていない企業の場合、システムの構築だけでなくチャネルそのものを増やす資金も必要になるでしょう。
複数のチャネルをすでに持っている企業でも、それらを連携するためのシステム構築が必要です。また人的リソースの確保や、社内教育などのコストも必要でしょう。
②顧客認知が難しい
オムニチャネルの課題のひとつとして「顧客認知度の向上」が挙げられます。
現在のECサイト市場は競合が多いため、新たにオムニチャネルを構築してもさほど認知度が上がらず、期待したほど売り上げが上がらない可能性もあるのです。「どうすれば顧客に複数のチャネルがあると認知してもらえるか」をよく検討しなければなりません。
③実店舗と競合する可能性がある
オムニチャネルを導入した結果、実店舗の売り上げが下がってしまう可能性もあります。実店舗がショールームのような役割となってしまう点が原因です。実店舗で商品を見て、購入はオンラインから行えるため、実店舗の売上は下がりやすくなります。
状況を阻止するには、実店舗の役割やチャネルとの連携などをよく検討しましょう。たとえば「実店舗ならではのサービスや特典を用意する」「在庫確認はオンライン、受け取りは実店舗という仕組みを作る」などの方法です。
7.チャネル戦略の事例
チャネル戦略の内容は企業によってさまざまです。ここでは大手企業の事例を紹介します。
- イオン
- 資生堂
- ツタヤ(蔦屋家電)
①イオン
大手流通グループのイオンは、実店舗とオンラインの融合を目的としたアプリ「iAEON(アイイオン)」を配信。目的は利便性を高めて、よりよい購買体験を提供することです。
「iAEON」はイオン利用者の共通タッチポイントという位置づけで、「ポイントの利用・照会・付与・交換」「電子マネー決済・QRコード決済」「店舗のお気に入り登録」「お得情報の確認」などを、ひとつのアプリ内で行えます。
②資生堂
大手化粧品メーカーの資生堂は、情報サイトと通販サイトの両方の役割を持つ「ワタシプラス(watashi+)」というサイトを開設。
ワタシプラスでは「商品カタログ」「オンラインショップ」「実店舗検索」「お得な美容情報」などが利用可能です。ほかにも電話やチャットで可能なオンライン美容相談、メイクのハウツー記事発信など、さまざまなコンテンツを提供しています。
③ツタヤ(蔦屋家電)
エンタメコンテンツを販売するツタヤは、東京都世田谷区の二子玉川に「蔦屋家電」を開店。コンセプトは「ライフスタイルを買う家電店」です。カフェが併設されているお店で、家電や書籍、インテリアなどを販売しています。
店内にはコンシェルジュが在籍しており、顧客は「コーヒーを飲みながらのんびり本を読み、コンシェルジュの提案を参考に店内の商品を買う」のように過ごせます。