チャーンレートとは?【計算方法・下げる方法】SaaS、目安

チャーンレートとは、解約率のこと。とくに、継続利用・契約によって利益を立てているSaaSビジネスにおいては重要な指標となるのです。チャーンレートについて、概要や目安、計算方法、チャーンレートが上がる要因や下げる方法などを詳しく解説します。

1.チャーンレートとは?

チャーンレートとは、「解約率」「顧客離脱率」「退会率」を示す指標のこと。「Churn(離れる)」と「Rate(割合)」を合わせて解約率の意味を持ち、一定期間のうちに自社のサービスの利用をやめた人の割合を示します。

定期購入や継続契約があるサービスをはじめ、解約のないビジネスにおいても顧客が継続的な利用・購入をやめた場合に活用される指標です。

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2.チャーンレートの平均・目安

チャーンレートの目安は1か月あたり3%が一般的な数値で、3%以下が理想とされています。ただし、目安は企業規模や業界によっても異なるため、一概に良し悪しを測れません。ここでは、それぞれの平均値をみていきましょう。

規模別の平均値

アメリカのベンチャーキャピタル「Redpoint Ventures」のパートナーTomasz Tunguz氏によると、企業別にみた月間・年間のチャーンレートの平均値は以下のとおりです。企業規模が小さくなるほど、チャーンレートの平均値が高くなることが伺えます。

チャーンレート(月間)

  • 中小企業 3~7%
  • 中堅企業 1~2%
  • 大企業 0.5~1%

チャーンレート(年間)

  • 中小企業 31~58%
  • 中堅企業 11~22%
  • 大企業 6~10%
参考 The Innovator's Dilemma for SaaS StartupsTomasz Tunguz

業界別の平均値

Recurly Researchの調査によると、業界別にみたチャーンレートの平均値は以下のとおりです。

  • ソフトウェア 4.75%
  • メディア・エンタメ 6.42%
  • 教育 7.22%
  • 消費財・小売 7.55%
  • ビジネス・プロフェッショナルサービス 6.59%
  • ヘルスケア 6.03%

業種やビジネス形態によってチャーンレートの目安は異なるため、数値だけをみて一概に高い・低いとは判断できません。

参考 What is a good churn rate?Recurly Research

SaaS企業の目安

SaaS企業のチャーンレートの目安は月3%、年10%です。なお、アメリカRecurly社の調査によると、ソフトウェア産業全体の平均は4.75%となります。

継続契約・利用によって売り上げを立てているSaaS企業では、チャーンレートがダイレクトに利益に直結します。収益を落とさずコストを回収するには、チャーンレートをなるべく抑え、いかに長く継続してもらえるかが重要です。

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3.チャーンレート改善が重要な理由

チャーンレートは、ビジネスの将来性を予測するだけでなく、改善にも役立てられる重要な指標です。ここでは、チャーンレートが重要な理由を詳しく解説します。

新規顧客獲得のコスト削減

「1:5の法則」という考え方があるように、新規顧客の獲得コストは既存顧客へのサービス提供の5倍かかるとされています。効率的に利益を上げるには、新規顧客獲得のコストを極力抑えることがポイント。

チャーンレートの改善を図ることで既存顧客の維持につながり、結果的に新規顧客獲得のコスト削減につながります。

ビジネス収益の獲得に直結

SaaSビジネスではチャーンレートが売上に直結するため、ビジネスにおいて重要な指標です。解約されればその分収益が減少し、数年単位の長い目で見ると利益の損失に大きな影響を与えてしまいます。

継続した業績向上を実現するうえでは、チャーンレートを下げることが欠かせません。

顧客流出の回避

現代は市場も飽和状態にあり、多くの競合が存在する中でシェアを確立しなければなりません。チャーンレートが高い場合は、競合に顧客を奪われている可能性も考えられるでしょう。

競合が多いとはつまり、顧客が何らかの理由でサービスに満足しなかった場合に乗り換え先が多いこと。競合に顧客を奪われないためにも、チャーンレートを分析して改善を図る必要があります。

顧客生涯価値(LTV)の向上

「LTV(顧客生涯価値)」とは「Life Time Value(ライフ・タイム・バリュー)」の略で、一人または一社が生涯にわたってその企業にどれだけの利益をもたらしたかを示す指標のこと。

チャーンレートを改善すればそれだけ継続的に顧客が企業に利益をもたらしてくれ、結果的にLTVの向上にも期待できます。

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4.チャーンレートの種類

チャーンレートには、以下3種類があります。

  1. カスタマーチャーンレート
  2. アカウントチャーンレート
  3. レベニューチャーンレート

①カスタマーチャーンレート

顧客数をベースにした、一般的に使用されるチャーンレートのこと。1か月、1年間などの特定期間に契約した顧客のなかで解約や退会した顧客数の割合を示します。BtoCサービスの場合は顧客一人あたり、BtoBサービスの場合は一社単位です。

②アカウントチャーンレート

サービスに登録しているアカウント数をベースとしたチャーンレートのこと。会社や家族単位でアカウントを共有したり、1人で複数のアカウントを作成したりと必ずしも利用者数とアカウント数が比例するとは限りません。

そのため、カスタマーチャーンレートとは別の指標として使用されます。

③レベニューチャーンレート

収益をベースとしたチャーンレートのことで、複数サービスを展開している場合に算出すべき指標です。収益ベースで算出するため、売上や価格別にみたチャーンレートを把握できます。

なお、レベニューチャーンレートは、さらに2種類に分類されます。

グロスレベニューチャーンレート

新規契約で得られた収益を合算せず、解約または安価なプランへの変更による収益減少が把握できるチャーンレートです。単純な利益の減少を分析する際に役立ちます。

ネットレベニューチャーンレート

解約などによる減収分とあわせて、既存顧客からの増収分も反映されるチャーンレートです。実際の減収や増収にもとづいた値となります。

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5.チャーンレートの計算方法

チャーンレートの算出方法は、種類によって多少の違いがあります。ここでは、各チャーンレートの計算式と具体的な数値を用いた計算例をご紹介します。

カスタマーチャーンレート

(一定期間内に解約した顧客数 ÷ 期間前の顧客数)× 100(%)

一定期間における当初の顧客数と解約数を割ることで、カスタマーチャーンレートが算出できます。当初の顧客数が5,000人で50人の解約者が出た場合は、下記のような計算となります。

(50÷5,000)×100=1%

アカウントチャーンレート

一定期間内に解約したアカウント数÷期間前のアカウント数×100(%)

基本の考え方は、カスタマーチャーンレートと同様です。たとえば、期間前のアカウント数が2,000に対し、期間内に200のアカウントが解約した場合は、下記のように計算します。

(200÷2,000)×100=10%

レベニューチャーンレート

レベニューチャーンレートには、グロスレベニューチャーンレートとネットレベニューチャーンレートで2つの計算式があります。

グロスレベニューチャーンレート

期間内の解約やダウングレードによる損失額÷期首の定期収益額×100(%)

損失額は解約分とダウングレード分の合計です。複数の料金プランを提供している場合や損失による収益への影響を調べたいときに活用してみましょう。

解約による減収が5万円、ダウングレードによる減収が3万円、そして前月末の総収益が100万円だった場合の計算式は、以下のとおりです。

(5+3)÷100×100=8%

ネットレベニューチャーンレート

(期間内の解約やダウングレードによる損失額-当月のアップセル等による収益)÷前月の月次収益×100(%)

グロスレベニューチャーンレートとは少し異なり、当月の収益が含まれます。そのため、当月の収益が損失額を上回れば、チャーンレートはマイナスです。

たとえば、解約などによる損失が5万円、アップセルによる当月の収益が8万円、そして前月の月次収益が100万円だった場合の計算式は、以下のとおりです。

(5−8)÷100×100=−3%

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6.チャーンレートが上がる(下がらない)原因

チャーンレートが上がってしまう原因は、サービスによってさまざま。ここでは、代表的な理由をみていきます。

商品やサービスの品質低下

商品やサービスの品質が低く、継続して利用する価値がないと判断されてしまうと契約してもすぐに解約される可能性が高いでしょう。また商品とサービスの品質が価格と見合っていない場合にも、同様の理由で解約されてしまう恐れもあります。

顧客データの分析不足

顧客満足度が低いと継続して利用するモチベーションが下がってしまい、結果的に解約を引き起こします。一度契約してくれたからと満足せず、アンケートやアフターフォローを実施して顧客と良好な関係を構築し、継続的な利用を促しましょう。

顧客ニーズの変化

トレンドの変化にともない、現在の商品・サービスのニーズがなくなった可能性も考えられます。つねにトレンドを把握し、顧客ニーズを満たせるよう商品やサービスの改善を図ることが重要です。

不適切な価格設定

どんなに良い商品・サービスであっても、妥当な価格設定がなされていない場合、解約やダウングレードを引き起こす恐れもあります。商品・サービスに対して割高な印象を与えないよう、適切な価格設定がなされているかも重要なポイントです。

競合他社への流出

競合が多い市場であるほど、他社への乗り換えも活発です。乗り換えによる特典や競合よりも魅力的な価格設定など、乗り換えを促すために各社はさまざまな施策を行っています。

競合他社への流出が起こらないようにするためには顧客満足度をしっかりと把握・管理し、顧客と良好な関係を構築することが求められます。

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7.チャーンレートを下げる方法

チャーンレートを下げることは、結果的に企業に継続的な利益位をもたらしてくれます。ここでは、チャーンレートを下げるための施策を解説します。

解約される原因の明確化

解約される原因をいち早く把握することも、チャーンレートを下げるための対策のひとつです。早期に原因を把握できれば解約が起こる前に改善策が図れ、解約を検討していた顧客を引き止められる可能性もあります。

また実際に発生してしまった解約の原因を究明し、同じ理由で解約が起こらないよう改善に努めることが重要です。

価格設定や料金プランの再検討

適正価格を設定するのは当然のことである一方、競合と差別化を図るために値下げしすぎないよう注意しましょう。サービス品質やサポート体制など、機能面を見直したうえで市場価格とつり合いが取れているかを見極めることが大切です。

不当に高すぎるとそもそも顧客が獲得できず、低すぎてもサービス品質を維持できないといった事態に陥ってしまいます。

商品の品質向上と訴求方法の改善

商品やサービスの品質を向上し、顧客の抱く不満を解消できればチャーンレートも改善されるでしょう。契約してくれたからと満足せず、その後もさまざまな手法で顧客との接点を持ち、PDCAを回して品質向上に努めることがポイントです。

また、良い商品・サービスであるにもかかわらず、顧客に魅力やメリットが適切に伝わっていない可能性もあります。訴求方法を改善し、顧客に価値を感じてもらうことも有効な施策です。

カスタマーサクセスの設立

カスタマーサクセスとは、顧客がサービスの利用を通じて目的が達成できるようサポートする取り組みです。顧客理解が深められるだけでなく、顧客の疑問や悩みに対して先回りして支援できるため、解約の要因にもなり得る不安を取り除けます。

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解約リスクの高い顧客の特定

解約リスクの高い顧客を特定すると、直近で起こり得る解約を阻止できる可能性があります。解約リスクの高い顧客は、商品やサービスに対して何らかの不満を持っていたり、ロイヤリティが低下している状態にあるからです。

特別なオファーの提供やサポートの強化などに取り組み、ロイヤリティの回復に努めるとよいでしょう。

管理ツールの導入

チャーンレートを改善するにあたって、データの収集と多角的な分析が欠かせません。しかし独自にデータを収集しようとすると手間がかかるだけでなく、適切なデータが収集できない恐れもあるため、専用の管理ツールの導入がオススメです。

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