クラウドとは、インターネットを通じてさまざまなサービスを利用する形態のことです。ここではクラウドが生まれた背景やその種類、メリットや活用例などについて、解説します。
目次
1.クラウド(コンピューティング)とは?
クラウド(コンピューティング)とは、ユーザーがネットワークを通じてサーバーの提供サービスを、必要なときに必要な分だけ利用する形態のこと。
クラウド(コンピューティング)が登場するまでは、サービスを利用するためにソフトウェアをパソコンにインストールしたり、ソフトウエアのライセンスを購入したりする必要がありました。
これらの用意をしなくても、インターネットを通じて同様の機能を利用できるのがクラウド(コンピューティング)です。
パブリッククラウドとプライベートクラウド
クラウドサービスには「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」という2つの提供形態があります。おもな違いは以下のとおりです。
- パブリッククラウド:利用者を限定しないオープンなクラウド。オンラインで即時導入したり、導入コストを抑えられたりする
- プライベートクラウド:利用者や閲覧者を制限可能。セキュリティレベルが高く、外部不正アクセスの心配が少ない
2.なぜクラウド(雲)と言われるのか?
クラウド(Cloud)とは「雲」のこと。名前の由来は、下記のとおり諸説あります。
以前からネットワーク図を雲で表すことが多かった
物理的な保存場所を意識せず、雲のなかに隠れたコンピュータから提供されているイメージが強い
クラウドの対義語
「オンプレミス(On-Premise)」で、プレミス(Premises)には「建物」や「店舗」という意味があります。サーバー機器といったハードウェアやアプリケーションといったソフトウェアを、使用者の管理する施設内に設置して運用するサービスを指しているのです。
かつては自社内に必要環境を整えてシステムを運用するオンプレミス型が主流でしたが、2000年代後半からクラウド型の運用に移行しつつあります。
3.クラウドが生まれた背景
はじめてクラウド(コンピューティング)の概念が生まれたのは1997年。当時は社会全体に普及するまでには至らず、本格的に広まるようになったのはその後2006年のこと。
当時GoogleのCEOを務めていたエリック・シュミット氏が「サーチエンジン戦略会議」でクラウドの概念について言及したことがきっかけです。これを機に、より統一性のある情報システムを構築してIT投資コストを削減しようという動きが社会全体に広まりました。
4.クラウドの種類
同じクラウドでも複数の種類が存在します。ここでは代表的な4種類について説明します。
- SaaS(サース:Software as a Service)
- PaaS(パース:Platform as a Service)
- IaaS(イアースあるいはアイアース:Infrastructure as a Service)
- VaaS(バース:Video as a Service)
①SaaS(サース:Software as a Service)
従来、パッケージ提供されていたソフトウェアをインターネット経由で提供するサービスのこと。
ユーザーはこれまでのようにソフトウェアをパッケージ購入したり、インストールしたりする必要がありません。具体的なサービスとしてGmailやDropbox、Yahoo!メールなどが挙げられます。
SaaSとは? 意味や代表例、導入メリットや選び方をわかりやすく
SaaSとは、クラウド上にあるソフトウェアまたはサービス形態のこと。インターネット環境下であればどこでも利用でき、とくにビジネス系のシステムやツールにはSaaSが多くあります。
今回はSaaSとは何か...
②PaaS(パース:Platform as a Service)
機能を使うというより、開発環境を提供するクラウドサービスのこと。Google App EngineやAWS(Amazon Web Services)などがこれに該当します。
PaaSではOSやサーバー開発に必要な機能一式が利用できるため、コストを抑えてアプリケーションを開発できるのです。
③IaaS(イアースあるいはアイアース:Infrastructure as a Service)
インターネット経由でサーバーやネットワークなどを利用できるサービスのこと。おもなサービスとしてMicrosoft AzureやGMOクラウドALTUSなどがあります。
自由に環境が構築できるためコスト削減やBCP対策などができる一方、自由度の高い分専門知識が要求されるサービスです。
④VaaS(バース:Video as a Service)
インターネットを経由して、映像アプリケーションの実行に必要なプラットフォームを提供するサービスのこと。身近なものでは駅ホームの転落検知や物体の逆走検知、事件事故につながる行動検知などに活用されています。
映像の解析結果を工程アクションと紐づけてユーザーに提供するサービスです。
5.クラウドのメリット
クラウドにはどのようなメリットがあるのでしょう。それぞれについて解説します。
- 導入コストや運用負荷の軽減
- 場所を問わず利用可能
- データ共有が容易
- 強固なセキュリティ
①導入コストや運用負荷の軽減
クラウドのメリットとして大きいのが、導入コストや運用にかかる負荷を軽減できる点。オンプレミスと違って通信機器やサーバー準備などの利用環境を整える必要がほとんどないため、契約後すぐに利用を開始できます。
また設置後もサーバー維持に選任のスタッフを置く必要はありません。システム維持はサービス提供元が行うため、人件費の削減にもなります。
②場所を問わずに利用可能
インターネットにつながる環境があれば、どこからでもサービスが利用できるのもクラウドのメリット。クラウドを利用すれば、たとえば書類作成やメール確認のためだけに会社に戻る必要もありません。
パソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末とインターネット環境があれば、自宅や外出先などからでも仕事できます。在宅勤務の普及や経費削減の効果も期待できるのです。
③データ共有が容易
クラウドを利用すれば情報共有もかんたんです。大量のデータを共有するのに社内規定のUSBメモリを使用したり、何回かに分けてメール添付したりする必要はありません。また各種情報を一元管理できるため、管理者の負担も削減できます。
「顧客情報を見るときは専用ソフトを使用する」「日報作成は紙面で行う」など、それぞれ違った処理をしなくてもよいため情報管理を簡略化できるのです。
④強固なセキュリティ
「誰か見ているかわからないネット上だから、セキュリティには疑問」という声もありますが、これも今では過去の話になっているのです。
各種サービスが発展の過程でさまざまなセキュリティ要件を満たしてきているため、オンプレミスと比較しても遜色ない堅牢なセキュリティレベルを確保できるまでになっています。
自宅で貴金属を保管するより、厳重なセキュリティを確保している銀行に保管したほうが安全であるのと同じです。
6.クラウドのデメリット
クラウドにはコスト軽減や容易なデータ共有などさまざまなメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。
- 柔軟性やカスタマイズ性の低さ
- 外部要因によるトラブル
- 情報漏えいリスク
①柔軟性やカスタマイズ性の低さ
クラウドサービスは、各社とも事業者が定めるルールや備わっている範囲内での運用が前提です。そのため自社に合わせてカスタマイズしたいときには向いていません。またサービスによっては社内の既存システムと連携が難しいものもあります。
②外部要因によるトラブル
クラウドサービスは自社以外にも多数のユーザーとITインフラを共有する特性から、システムのパフォーマンスが意図せず低下する可能性も高いです。
提供事業者側のトラブルによるシステム障害で業務がストップしてしまったり、復旧までに時間がかかり大きな損害につながったりすることもリスクとして考えられます。提供事業者の経営状況によって、サービスが終了してしまうのもデメリットです。
③情報漏えいリスク
クラウドサービスのセキュリティ対策は強化されているとはいえ、万全ではありません。事業者側は定期的にサーバー内のデータを更新したり、バックアップを取ったりしています。その際に操作を誤ってデータが流出してしまう可能性も0とは言い切れません。
社内で厳重な管理を行えるのであれば、オンプレミス型のほうがリスクを抑えられる場合もあります。
7.クラウド活用の具体例(クラウドサービス)
クラウドサービスはさまざまなところで活用されているのです。身近にある4つのクラウドサービスについて説明します。
- スケジュール管理
- データ共有
- コミュニケーションツール
- 人事評価システム
①スケジュール管理
すべてのビジネスパーソンに欠かせない「スケジュール管理」にもクラウドサービスが活用されています。クラウド化によっていつどこにいてもスケジュールの変更や確認ができるため、外回りが多い部署でもかんたんにスケジュールの管理や共有が可能です。
パソコンやスマートフォンなどのデバイスとインターネット環境があれば、どこにいても最新のスケジュールを確認できます。スケジュール管理のクラウドはテレワークの推進、業務の効率化にもつながるでしょう。
②データ共有
総務省の調査によれば、クラウド導入の目的としてもっとも多いのは「ファイルの保管およびデータの共有」。
場所やデバイスを問わずデータを閲覧できるのはもちろん、保存容量も自由に変更できるため、新たに自社内にサーバーを設置したり追加機器を購入したりする必要がありません。
多くのクラウドサービスでは自動的にバックアップも行っているため、データ消失のリスクも軽減できます。
③コミュニケーションツール
クラウドサービスはコミュニケーションツールとしても活用されています。GmailやHotmailなどのWebメール、TwitterやInstagramなどのSNSもクラウドサービスのひとつです。
ビジネスシーンではWeb会議ソフトや名刺管理ツール、グループウェアなども含まれます。このことからも、現代の生活においてクラウドは欠かせないサービスとなっているとわかるでしょう。
④人事評価システム
これまで紙ベースやExcelファイルなどで管理していた人事評価も、クラウドによって効率化できます。紙ベースでは情報が煩雑になってしまい欲しいデータがすぐに見つからない、評価の集計に時間がかかるなどの課題はクラウドサービスによって解決可能です。
評価結果や基準が「見える化」されるため、引継ぎの手間や抜け漏れの防止なども防げます。評価結果を一覧化して、バランス確認や人員調整などにもスピーディに対応できるようになるのです。
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8.クラウド(サービスの)代表的な例
クラウドを使用したサービスにはクラウドストレージやクラウドアプリ、クラウドファンディングなどさまざまな種類があるのです。ここではクラウドのなかでもとくに有名な5つのサービスについて説明します。
- クラウドストレージ
- クラウドアプリ
- クラウドプラットフォーム
- クラウドファンディング
- クラウドソーシング
①クラウドストレージ
インターネット上に仮想のストレージ(保存場所)を用意し、そこにファイルを保管するサービスのこと。
「オンラインストレージ」や「ファイルホスティング」と呼ばれることもあります。パソコン内のストレージや社内のファイルサーバーを使用しなくても、インターネット回線さえあれば自由にファイルの保存、閲覧ができるサービスです。
②クラウドアプリ
クラウド環境で展開されるアプリケーションのこと。代表的なものとして挙げられるのは「Zoom」や「Evernote」、「Dropbox」などです。
従来のようにブラウザ上で操作したり、パソコンやスマートフォンなどにダウンロードした専用アプリをインストールして使ったりできます。
③クラウドプラットフォーム
ソフトウェアやサービスの基盤となる装置をクラウド上で利用するシステムのこと。「Microsoft Azure」や「Google Cloud Platform」、「Amazon Web Service」などが代表的なクラウドプラットフォームです。
ネット上ですでに展開されているプラットフォームを使用するため初期費用が削減できる、セキュリティ強化、場所や時間を問わずアクセスできるといった強みがあります。
④クラウドファンディング
発信された夢や活動に共感した人から資金を募る「クラウドファンディング」もクラウドサービスのひとつ。2000年代から市場が拡大しているクラウドファンディングは、いまや一般的な資金集めの方法として広く普及しています。
プロジェクト実行者には資金調達だけでなくPRやテストマーケティング活用などのメリットもあります。
⑤クラウドソーシング
インターネットを介して不特定多数の人に仕事を発注するアウトソーシングのこと。ユーザーとクライアントが直接顔を合わせず、時間や場所を問わずに仕事を受注、発注できるのが特徴です。
仕事を発注するクライアントと、仕事を受注するユーザーをマッチングさせるプラットフォームを「クラウドソーシングサービス」といいます。