クラウドファーストとは?【意味をわかりやすく】政府、理由

クラウドファーストとは、システムの開発や更新時にクラウドサービスを優先的に検討する考え方のこと。ここではこのクラウドファーストの意味や考え方について詳しく解説します。

1.クラウドファーストとは?

クラウドファーストとは、システムの新規導入や更新などの際、クラウドサービスの利用を優先的に検討する考え方のこと。英語では「Cloud First Policy」と表記され、世界中の企業や官庁などでその概念が導入されています。

日本国内でも、クラウドファーストの考え方は普及しつつあるのです。2022年に行われたあるアンケートでは、約7割の企業がクラウドファースト戦略を採用していると回答しました。

クラウドネイティブとの違い

「クラウドネイティブ」とは、クラウドの採用だけでなく、クラウドのメリットを徹底的に活用すること。クラウド上での活用を前提にシステムやサービスを設計、開発しています。

クラウドファーストは、クラウドの使用を優先的に検討するだけです。よってあらかじめ利活用を視野に入れているクラウドネイティブとは、異なります。

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2.クラウドとオンプレミスの違い

オンプレミスとは、自社でサーバーを運用する形態のこと。一方クラウドは、クラウドサービスを提供する事業者がサーバーを運用します。両者はサーバーの運用元が異なるのです。また導入費用や導入までの期間なども双方で大きく変わるのです。

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導入費用

オンプレミスを導入する際、サーバーを構築するために多くの費用がかかります。たとえばサーバー本体やネットワーク機器などの機器の購入、それらの設置や構築など。サーバーを構築する必要がないクラウドなら、これらの費用が発生しません。

また企業内にこれらの業務を担える人材がいない場合、人材の採用や教育、あるいは外注などが必要です。これらの人件費なども導入費用に含まれます。

運用費用

クラウドを使用した場合、運用費用は発生しないものの月額や年額のシステム利用料が発生します。一方オンプレミスの場合は、これらの費用が発生しません。

ただしオンプレミスでは、システムを運用するための電気代や、運用に携わる社員の人件費がかかります。これらの年間費用を算出すると、クラウドの使用料のほうが安く済む場合も多いのです。

カスタマイズ性

クラウドは、事業者から提供されるサービスをそのまま使用するため、思いどおりのカスタマイズができるとは限りません。

オンプレミスはサーバーやシステムを自社で設計できるため、システムの機能や画面構成、サーバー数などを柔軟にカスタマイズできます。ただしオンプレミスのカスタマイズには、相応の費用が必要です。

セキュリティ

クラウドの場合、サービスを提供する事業者がセキュリティを管理します。強固なセキュリティ対策を講じている事業者なら、不正アクセスによる情報漏えいのリスクを減らすのも可能です。

一方、データを自社のサーバーで管理するオンプレミスは、セキュリティ対策を自社で行わなければなりません。ただしその分セキュリティレベルをどこまでも引き上げられます。たとえば完全に外部からのアクセスを拒否するといった対策も可能です。

導入までの期間

既存のサービスを活用するクラウドは、最短で即日に導入できます。手続きもメールや申込フォームなどから手軽に行えるのです。

オンプレミスの場合、必要な機器の調達やサーバーの構築、システムの導入などさまざまな準備が必要です。選定する際は見積りを取って比較するため時間もかかります。よってオンプレミスは、導入までに数か月もの時間を要することも珍しくありません。

運用の負担度

クラウドでは、サービスを提供する事業者側がサーバーやシステムを管理します。サービスを利用する企業側はアップデートやメンテナンス、障害対応などを行う必要がなく、運用における負担は限定的です。

オンプレミスの場合は、自社で運用保守をしなければなりません。自社のITエンジニアが担当するなら、その担当者へ負担が集中するでしょう。システム障害が発生したときは、勤務時間外でも対応せざるを得ないでしょう。

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3.クラウドファーストが注目される理由

クラウドファーストが注目される背景にあるのは、政府によるDX推進といった「デジタル化」の推進です。

デジタル化が推進されている理由は、少子化による人材不足やイノベーションの創出など。クラウドサービスを活用すれば業務効率化で人材不足をカバーでき、さらに利益や企業活の向上を実現できるからです。

運用負荷が少ないクラウドファーストは、人材不足問題の解消に役立ちます。またテレワークにも対応しやすく、業務効率化や社員のモチベーションアップなどの効果も期待できるのです。

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4.政府のクラウドファースト「クラウド・バイ・デフォルト( Cloud by Default)」とは?

システムを利活用する際、クラウドサービスを第一に検討する概念のこと。日本政府が2018年6月に公表した「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」のなかで示されています。

クラウドの認知度が高まり、多くの企業がクラウドを自社システムのプラットフォームとして活用し始めたため、政府はメリットの多いクラウドシステムを積極的に利活用することを推進したのです。

日本政府はクラウド・バイ・デフォルトの概念について5つのメリットを挙げています。それぞれについて解説しましょう。

  1. 効率性の向上
  2. セキュリティ水準の向上
  3. 柔軟性の向上
  4. 可用性の向上
  5. 技術革新対応力の向上
参考 政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針政府CIOポータル

①効率性の向上

場所や時間を問わず自社システムへアクセスできるため、業務効率の向上が図れます。自宅や出先であってもデータの編集がその場で完了でき、それらの情報はリアルタイムで更新されるからです。

また即日で業務に利用できるため、導入でも効率性が得られます。システムの運用にも手間がかからないため、IT担当者の業務を圧迫する心配もありません。

②セキュリティ水準の向上

一定以上のレベルを確保したセキュリティを活用できるため、セキュリティ水準が向上します。

近年、セキュリティ性能の高さを売りにするクラウドサービスが多数登場しており、「ISO/IEC 27017(クラウドサービスセキュリティ)」という国際規格を取得する業者も増えてきました。

このような規格を取得したクラウドサービスならば、国内外から多数のアクセスがある企業でも安心して利用できます。

③柔軟性の向上

多くのクラウドサービスは複数の契約プランを用意しており、柔軟なカスタマイズが可能です。

たとえば企業の規模や利用目的が変われば、必要な容量や機能、ユーザー数なども変化します。クラウドサービスならば、プランの変更やオプションの追加だけでカスタマイズが完了するのです。

オンプレミスの場合、新機能の開発やサーバー機の追加、ユーザー管理などを自社で行わなければなりません。

④可用性の向上

クラウドサービスを利用すると、システムの可用性(障害が生じた際にシステムを稼働し続ける能力)が向上します。

とくに24時間365日稼働しなければならないシステムを運用する際、高い可用性が不可欠です。たとえば自動的にバックアップを取る仕組みや予備システムの準備などが挙げられます。

クラウドサービスは基本的に常時稼働しており、定期的にバックアップも実施しているのです。そのため利用企業は、コストをかけずにシステムの可用性を確保できます。

⑤技術革新対応力の向上

クラウドサービスは新しいIT技術が登場すると、それらを利用できる機能が追加される場合もあります。

たとえばAIによるビッグデータ解析、SNSやチャットボットなどのコミュニケーションツール、BIのような分析ツールなどが、すでにクラウドサービスで利用可能です。

オンプレミスでこのような先端技術を利用したい場合、新たな機能を開発してシステムへ組み込まなければなりません。もちろん手間もコストもかかります。

企業に与える影響

政府が推奨するクラウド・バイ・デフォルトは、自社のシステム運用について見直すきっかけとなり、企業のデジタル化やDX化を推進します。

とくにシステムを運用している企業で大きな問題となっているのが、レガシーシステム(旧技術で構成されているシステム)。レガシーシステムを運用し続けると、業務効率の低下、運用コストの増大、障害リスクの上昇などを招くといわれています。

クラウド・バイ・デフォルトは、このような企業がクラウド化へ踏み切る際の「最後の一押し」になると期待されているのです。

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5.クラウドファーストのメリット

クラウドファーストには、クラウド・バイ・デフォルトとは異なるメリットもあります。クラウドファーストにおける2つのメリットを説明しましょう。

  1. BCP対策として有効
  2. システムのメンテナンスや管理が不要

①BCP対策として有効

社外に拠点を置くクラウドは、災害の発生時にその影響を受けにくいため、BCP(事業継続計画)対策として有効です。

たとえばオンプレミスで運用していると、サーバーを設置している拠点が災害に見舞われると業務が停止する恐れもあります。ほかの拠点でバックアップを取るようにするには、その分の費用が必要です。

クラウドを利用すれば、災害時のデータ消失リスクが低減し、自宅やほかの拠点でも業務を継続できます。導入費用もオンプレミスと比べてはるかに安価で済み、BCP対策コストを削減できるでしょう。

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②システムのメンテナンスや管理が不要

オンプレミスの運用においては、システムそのもののメンテナンスや管理にも多くの手間やコストが必要です。

クラウドでは事業者が行うため、利用企業にはこれらの負担がかかりません。アップデートも業者が随時行うため、利用企業はつねに最新版を利用できます。

自社のリソースを投入せずシステムの安全性や安定性を確保できるため、自社の課題解決へリソースを集中させられるのです。

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6.クラウドファーストの注意点

クラウドファーストの概念にはさまざまなメリットがある一方、注意点もあります。それぞれについて見ていきましょう。

  1. クラウド環境の不整合リスク
  2. クラウド人材の確保が必要

①クラウド環境の不整合リスク

クラウドサービスによっては、企業側のニーズや目的、利用環境などと合わず、本来のメリットを得られない場合があります。たとえば「特殊な機能を必要とする」「一定以上のセキュリティレベルを求める」などです。

このような企業では独自のカスタマイズが必要となるうえ、クラウドサービス側がニーズに対応できるとは限りません。クラウド環境との整合性が低いシステムは、オンプレミスのほうが適しているでしょう。

②クラウド人材の確保が必要

企業内でシステムのクラウド化を進める場合、クラウドサービスの利活用に精通した人材を確保しなければなりません。

オンプレミスからクラウドへ移行する際はまず、「何をどこまでクラウドで対応するか」を決めましょう。そのため移行計画を決定した段階で人材を確保する必要があるのです。

しかしIT人材は不足傾向にあるため、人材を確保できずにクラウド化を進められないケースも見られます。このような場合は、コンサルティングサービスの利用も検討しましょう。

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7.クラウドファーストに向けた準備

クラウドファーストの取り組みを開始するには、経営層の理解が不可欠です。しかし現場を離れている経営者は、クラウドファーストの必要性を理解するのに時間がかかるでしょう。経営層を説得するための材料を準備しておく必要があります。

クラウドサービスの必要性を検討

クラウドサービスの必要性について検討する際は、クラウドサービスの利用が最適かを判断するために、以下の5つの項目について分析します。

  1. 対象となる業務の基本属性
  2. サービスの提供時間や障害や災害への対応などにかかわるサービスレベル
  3. 想定される業務量とその変動幅
  4. 取り扱う情報の内容とその格付け
  5. 対象となるサービスや業務の定常性

なお上記の項目を分析すると、クラウドサービスの種類を絞り込みやすくなります。

経営層の理解を獲得

クラウドサービスを導入するためには、経営層の理解を獲得しなければなりません。しかしセキュリティリスクの懸念から、社外へデータを保存するクラウドサービスに対して否定的な経営層も見られます。

クラウドサービスのセキュリティ機能や障害発生時の対応などを明確にし、オンプレミスのセキュリティリスクと比較すると、クラウドサービスの安全性を提示しやすいでしょう。