コンピテンシーアセスメントとは、コンピテンシー評価のことで、「コンピテンシー」と「アセスメント」を合わせた言葉です。
目次
1.コンピテンシーアセスメントとは?
コンピテンシーアセスメントとは、成果につながる行動特性を意味する「コンピテンシー」と評価や査定を意味する「アセスメント」を合わせた言葉のことです。
コンピテンシーとは?
コンピテンシーとは、成果につながる行動特性のこと。組織や役割にて優秀な成績を生み出す「専門知識」「技術」「ノウハウ」「スキル」といった行動特性を観察・分析すると、明らかになります。
コンピテンシーでは、対象者の潜在的な基本的資質や思考ではなく、表に現れる行動や技能が会社の業績に影響すると考えます。
コンピテンシーとは? 意味や評価・面接での使い方を簡単に解説
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「人材育成」に役立つ
コンピテンシーの分析は、人材育成に役立ちます。優れた成果を発揮している人には特有の行動的な特性があるので、その特性を把握するとほか社員の人材育成に活用できるのです。
行動特性に注目する形は、従来型の成果主義や能力主義と異なります。結果だけではなくその過程にも注目するからです。
アセスメントとは?
アセスメントとは、対象物を客観的に見て評価することで、日本語では「評価する」「査定する」といった意味で使われます。
課税・税額・査定といった意味の英語の「assessment」から来ており、「目の前の事柄から情報収集する」「評価して分析する」といったプロセスになっているのです。
「客観的」に評価する
人事評価におけるアセスメントでは、言動や態度といった客観的な基準にもとづいて人材を評価します。人物の適性を判断したうえで、それぞれが活躍できる場に人材を配置するのに有効だからです。
この場合、「対象者本人がどう思っているか」という主観的事実も考慮します。
対象物と合わせて用語が生まれる
アセスメントではある対象物を客観的に評価・査定するため、対象物と組み合わせた用語が多く存在します。
工事現場では、崩落事故やガス爆発、一酸化炭素中毒など多くの危険性が考えられるもの。そんな工事現場での「リスクアセスメント」とは、事故や災害などの可能性を事前に洗い出して評価し、必要な措置や防止策を講じることです。
ほかにもある?○○アセスメントとは?
ほかには、環境アセスメントや看護アセスメントといった使われ方をします。
看護アセスメントでは、「患者の血圧や体温、脈拍やレントゲンなどの客観的情報」と「患者が訴える主観的な情報」があります。このような材料から分析・評価し、治療方針を作成することが看護の現場で行われているのです。
2.コンピテンシーアセスメントの機能とは?
コンピテンシーアセスメントの機能は3つあり、コンピテンシーを適切に評価すると、どの社員も存分に能力を発揮して働けます。
- 潜在的な能力を測定する
- 昇格・昇進の精度を高める
- 社員の成長を効果的にサポート
①潜在的な能力を測定する
コンピテンシーアセスメントの目的は、潜在的に持っている特性や能力の測定です。現在従事している業務では発揮できていない隠れた能力を、対象社員が持っているかもしれません。しかし測定によって特性の有無が分かるため、伸ばしていけるのです。
本来持っていながら発揮できていない能力を早期に発見し、人材育成や人事異動に活用すれば、社員も喜び、モチベーションも上がるでしょう。
②昇格・昇進の精度を高める
社員の成績がよいからといって昇進させても、管理職として活躍できるとは限りません。現場の担当者に必要な能力と、管理職に必要な能力は異なるからです。
通常の人事考課では担当する業務の行動や成果しか評価しないため、管理者に必要な能力は分かりません。コンピテンシーアセスメントで潜在的な能力を知ると、昇格や昇進させる際の精度が高まります。
③社員の成長を効果的にサポート
社員がどんな能力を持っているか、会社と社員の双方が把握すると、社員の成長に役立ちます。会社が社員が持っている能力や特性を提示できれば、社員は自分が目指すべき方向性を認識できるようになるのです。
また会社が社員に学習機会を与えると、社員は自分の潜在能力をさらに高められます。
3.コンピテンシーアセスメントは従来型の評価と異なるのか?
コンピテンシーアセスメントはプロセスに着目する評価方法で、これまでのような、「被評価者の年齢や勤続年数」「保有する資格」「仕事の結果」などで評価する「職能資格型評価」や「成果主義型評価」とは異なります。
重視しているのは「被評価者の年齢や勤続年数」
従来の日本社会では人事評価の際、年功序列が重要視されていました。これは年齢の高さや勤続年数の長さを評価の際に考慮するものです。
しかし成績は、年齢や勤続年数に関係なく、若い人や勤続年数が浅い人でも優れたパフォーマンスを発揮する場合が多々あります。なぜなら潜在能力や業務遂行の方法に、ポイントがあるからです。
評価対象には「保有している資格」が含まれる
これまで学歴や資格の保有状況も、評価対象になっていました。しかしその資格を持っていない人も同じように業務を行っていて、成果に差がない場合もあります。
資格を取得しているかにかかわらず、優れた成果を収める人を的確に評価することも大切です。どのように行っているか行動特性や過程を把握すれば、人材育成にも役立つでしょう。
評価するときは「プロセスに着目」する
コンピテンシーアセスメントは、優れた業績を生み出すプロセスに注目したもので、高いパフォーマンスを行う社員はどのように成果を出しているかを分析するものです。適正な人事評価ができれば、真の公平性につながるでしょう。
また見つかった特性がほかの社員にも見られる場合、今後の人材配置にも役立ちます。
4.コンピテンシーアセスメントを使った面接での評価基準
面接におけるコンピテンシーアセスメントでは、下記5段階の行動レベルから評価します。
- 受動行動
- 通常行動
- 能力・主体的行動
- 創造・課題解決行動
- パラダイム転換行動
①レベル1「受動行動」
「受動行動」で示されるのは、主体性がなく指示された内容をそのままに行動する能力です。
「最低限の内容のみを実行している」「他人からの指示を待っている」「その状況に追い込まれたので仕方なく実行している」といった受動の姿勢となります。一般社員として転職してくる、社会人経験3年未満の候補者に有効な評価基準です。
②レベル2「通常行動」
「通常行動」で示されるのは、そのときどきで状況を判断して、適切な行動を起こせる能力です。
「自分で気付いて行動を起こせる」「求められる通常の業務は問題なくこなせる」「ミスなくやろう、などと前向きな考えを持っている」入社4年目くらいが経験しており、ある程度1人立ちしている基準として設定されます。
③レベル3「能動・主体的行動」
「能動・主体的行動」で示されるのは、自身で主体的な行動を起こして一定の成果を生み出す能力です。
「現状に対して正しい認知ができる」「それに応じた行動を正しく判断し、行動に移せる」レベル3では自身なりに考えて判断・行動ができるため、偶然ではなく計画して成果を生み出せます。部署のリーダー職以上の人材に望ましい能力です。
④レベル4「創造・課題解決行動」
「創造・課題解決行動」で示されるのは、自ら働きかけ高い評価を生み出せる能力です。状況を把握し的確な判断をするレベル3に対し、レベル4は独創的な判断ができるかどうか、までを見る形になっています。
たとえば会社が変革したいとき、創造的な仕事ができるかどうかがポイントになるのです。「開発職など独創性を求められる職種」「事務系でも問題解決を求められる職種」の採用基準として適しています。
⑤レベル5「パラダイム転換行動」
「パラダイム転換行動」で示されるのは、既成概念にとらわれず柔軟な発想をする能力です。
「誰もが課題と認識していなかったような点に目を付ける」「これまでにない発想を打ち出す」「周囲を巻き込みながらそのアイデアを実現する」などで、会社全体にインパクトを与えられます。
部課長職以上や役員待遇で外部から人材登用する際、求められるレベルです。
5.コンピテンシーアセスメントの正しい導入方法
コンピテンシーアセスメントを導入する際の、手順や注意点について見ていきましょう。
- 部門ごとに行動特性などをヒアリング
- 行動内容を具体的に表現し、モデル化する
- 社員が自ら目標設定する
- 評価を決め改善点を取り入れる
①部門ごとに行動特性などをヒアリング
まず高いパフォーマンスを行う社員に普段の行動特性をインタビューして、「どういう行動や思考をしているのか」ヒアリングします。それにより「一般的な人材とどのような違いがあるのか」「何が成果に結び付いているか」が分かるのです。
その際は、たった一人の固有の特性に偏らないよう、複数人にインタビューしましょう。
②行動内容を具体的に表現し、モデル化する
優れた社員の行動特性の特徴が集まったら、その要素をモデル化し、行動の回数や頻度をできるだけ分かりやすい形で表現します。モデルのタイプとして考えられるのは、下記3つです。
- 実在の優秀な社員による実在型モデル
- 実在しないが企業が理想とするモデル型の人物像
- 実在する人物と理想形のハイブリッド型
③社員自ら目標を設定する
部署ごとにコンピテンシーのモデル像ができたら、社員自ら目標を設定します。
その際、会社や上司側から期待される行動を目標として設定するのではなく、社員が自分自身で目標を設定します。それにより「意識が高まる」「評価基準がはっきりする」「評価者との認識の差がなくなる」「管理職が指導をしやすくなる」のです。
④評価を決め改善点を取り入れる
コンピテンシーモデルと社員の目標が決まったら、評価のタイミングや方法を決めます。その際、「期間は長すぎず短すぎないように」「社員自らをはじめ上司や同僚といった全方面から評価する」などに留意しましょう。
そして目標がクリアできた場合は新たに少し高めの目標を設定し、クリアできなかった場合は原因を考え改善するのです。その後、次の評価時期まで目標に向かって業務を進めます。
6.コンピテンシーアセスメントは評価基準や行動基準として活用できる
コンピテンシーアセスメントは、評価基準や行動基準として活用できます。
- 評価基準:優れた社員の習慣と同じことがどの程度できているか当てはめられる
- 行動基準:同じ習慣を行うよう模範にできる
①評価基準として活用する
学生の評価基準として、講義への取り組み姿勢やモチベーションにかんするコンピテンシーアセスメントを活用すると、学生は採用された企業で評価が高まります。コンピテンシーは産学共通の評価基準でもあるのです。
特に必要なコンピテンシーとは何か
必要なコンピテンシーは、下記のとおりです。
- 「聞く」「読む」「書く」「話す」コミュニケーション能力
- 問題を発見し、解決する能力
- 学習して応用する知識獲得能力
- チームワークと主体性をあわせ持った組織的行動力
- 目標を設定し達成する自己実現の能力
- 多様性を理解するグローバルなコミュニケーション力
能力評価を分類して全体の評価を見る
コンピテンシーアセスメントには、共通基準と個別基準があります。
- 共通基準:全体の社員に共通する基準
- 個別基準:社員それぞれに期待される内容や求められる能力
そこでコアスキル、専門スキルなどコンピテンシーの分類が必要になってきます。
②行動基準として活用する
コンピテンシーは人材育成の行動基準としても活用できます。社員一人ひとりが共通の行動基準を実践できれば、会社全体が底上げされてより優れた集団になるでしょう。
共通の行動基準には、「積極性」「自立心」「挑戦心」「柔軟性」「素直さ」「向上心」などがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
行動志向
どのような社員でも共通して身に付けたいコンピテンシーとは、プラスになることに対して積極的に行動する習慣です。
「これをしたら成功しやすくなるだろう」「未来のためにこれをしておこう」と、迷わず実行する行動志向が求められます。遠慮や手間を考えて実行できない場合もありますが、あえて前向きに行うという気持ちが必要です。
自立志向
社会人に共通で必要なコンピテンシーには自立心があります。「できるところは自分で行う」「自分なりのやり方、理論・持論を持つ」といった姿勢です。
取り組みの際、最初から他人を頼りにせず自分で努力や研究をします。とはいえ、チームワークを欠いているわけではありません。協調性も持ち合わせているからこそ、自立心を持てるのです。
リスクテイク
リスクがあると分かっていても、挑戦する姿勢も必要でしょう。なぜなら努力や工夫によって、問題が解決できる場合も多いからです。そういった解決した経験や知恵は、その人にさらなるコンピテンシーとして追加されるでしょう。
柔軟志向
柔軟性も、多くの社会人に求められます。柔軟性とは、時代や環境の変化に効果的に対応でき、対人関係も円滑に進められる能力のこと。
柔軟性があれば、「困難な問題を解決できる」「視野を広くほか意見も参考にできる」「トラブルに臨機応変に対応する」「計画に不備があっても行動できる」などが可能になります。そういった人材に、周囲の人が助けられる場面も増えるでしょう。
素直さ
下記のような素直さや誠実さなども社会人に求められる要素です。
「謙虚な態度で周囲にストレスを与えない」「あやまちは素直に反省して謝罪する」「常に感謝の思いを持ち、きちんとお礼を伝える」理不尽だったり話を聴かなかったりする人は好感を持たれにくいもの。誰にも好感を持たれる人材であることは、基本中の基本です。
自己啓発
高成績を収めていても現状に甘んじず、つねに向上心を持ってブラッシュアップしていくという姿勢も大切です。
現代社会では環境の変化が目まぐるしく、求められる能力が次々と新しくなります。専門知識や新しい技術、スキルなどを得ていかなくてはなりません。優れた人は、より能力を高め身に付けるよう努力する習慣を持っています。