コンピテンシー評価型面接とは、応募者が自社にあった能力やスキルをもっているか、客観的に評価する採用面接のことです。ここではコンピテンシー評価型面接について、解説します。
目次
1.コンピテンシー評価型面接が注目される理由
なぜコンピテンシー評価型面接が注目されるのでしょう。コンピテンシー評価型面接によって、応募者が企業の求める能力を持つかどうか、見定められるからです。
これまでの採用面接では限られた時間のなか、提出された履歴書の学歴や職歴を参考にし、面接官が質問をして応募者の能力を見極めていました。しかし面接官により質問や評価に偏りが生じるため、ミスマッチがひんぱんに起きていたのです。
また近年、企業は成果主義となり、従業員には高業績を出すための行動特性が求められています。そこでコンピテンシー評価型面接を行って、企業が求める能力を持つかどうか、見定めているのです。
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2.コンピテンシー評価型面接のメリット
コンピテンシー評価型面接にはメリットがあります。それぞれについて解説しましょう。
- 正しい評価を下せる
- 外見に影響されない
- 再現性が高い
- 信ぴょう性の高い情報を獲得できる
- ミスマッチの防止
①正しい評価を下せる
コンピテンシー評価型面接は、応募者の能力を正しく評価できます。過去の行動や行動動機について掘り下げて質問するため、本来の能力や行動特性がわかるからです。
「履歴書や職務経歴書、エントリーシートの記載」「面接時のやり取り」など、表面的なものに惑わされずに済みます。
②外見に影響されない
これまでの採用面接では、学歴や年齢、性別や職務経歴書やエントリーシートの内容、面接時のテクニックなどを中心に評価していました。
しかしこれでは本当に仕事ができる能力を持つかを見抜けません。よってときにあやまった判断をしてしまったのです。ところがコンピテンシー評価型面接では、応募者の本質を把握できます。
③再現性が高い
コンピテンシー評価型面接には大まかな流れがあるため、経験が少ない採用担当者でも応募者の本音を引き出せます。手順のポイントは以下のとおりです。
- エピソードについて、具体的な数値や5W1Hを把握する
- 質問を投げかけ、深掘りしていく
- 何を意識し、どのように取り組んだか、行動の本質について質問する
④信ぴょう性の高い情報を獲得できる
面接の際、ひとつのエピソードについて質問を重ね、深掘りします。もし応募者のエピソードに、作り話や誇張表現、場当たり的な回答があれば矛盾点を見つけられるのです。
⑤ミスマッチの防止
コンピテンシー評価型面接を行うと、応募者が本当に自社に合った人材かどうか見極められます。その結果、採用のミスマッチを防いで、離職率も抑えられるのです。
面接でやりとりしながら、「能力が足りない」「自社の社風に合わない」などがわかります。また応募者も「この企業が本当に自分に合っているか」がよくわかるのです。
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3.コンピテンシー評価型面接のデメリット
コンピテンシー評価型面接にはデメリットがあります。それぞれについて解説しましょう。
- モデルとなる従業員の設定が必要
- 職種ごとのモデル作成が必要
- モデル従業員のアウトプットに依存してしまう
- モデル従業員の行動特性を網羅できない
- 環境変化に応じたモデルの更新
①モデルとなる従業員の設定が必要
コンピテンシー評価型面接をするには、求める人物像の設定が必要です。まず能力や経験、背景など、どのような人物が理想であるか考えます。
自社にモデルになるような人物がいない場合、はじめから人物像を考えるための時間と手間が必要です。また他社では評価が低いとされる人物でも、自社では優れた人材になる可能性もあり得ます。
②職種ごとのモデル作成が必要
どの企業でも、職種ごとにモデルの人物像を作ることが必要です。それぞれの職種ごとの行動特性を把握してから、モデル像を作成します。
人手や時間、資金が十分な企業であればよいものの、少ない人手かつ短時間で人物像を作るのは厳しいもの。コンサルタント企業に依頼するとしても、費用が心配です。
③モデル従業員のアウトプットに依存してしまう
モデルとなる従業員の選抜にも注意します。モデル従業員のパフォーマンス次第で、自社の評価軸が左右される可能性も高いからです。
モデルになった従業員の能力や行動は正しいものか、偏りはないか、見極めましょう。あやまった評価軸を設定し、そのまま採用活動が進んでしまうと、企業の将来に悪い影響がでる可能性も高いです。
④モデル従業員の行動特性を網羅できない
モデルとなった従業員の行動特性の把握が難しい点もデメリットです。たとえば人柄やコミュニケーション能力、営業成績などは勤務中に把握できます。
しかし休日の過ごし方や友人関係、自主的な勉強などプライベートな部分はわかりにくいです。モデルとなる人物のプライベートに問題があるのは好ましくありません。
⑤環境変化に応じたモデルの更新
一度設定したモデル像は長年利用できません。都度見直して、更新する必要があります。
基準やモデル像ができたと安心していると、優れた人材を見逃してしまうでしょう。
社会環境はどんどん変わり、合わせて自社の業務内容も変化します。対応した人材を採用できるよう、モデル像の見直しが必要です。
4.コンピテンシー評価型面接に必要なコンピテンシーレベル
コンピテンシー評価型面接では、応募者の行動特性を5段階のコンピデンシーレベルで評価するのです。それぞれの段階について説明しましょう。
- レベル1 受動行動
- レベル2 通常行動
- レベル3 能動・主体的行動
- レベル4 創造・課題解決行動
- レベル5 パラダイム転換行動
①レベル1 受動行動
人から言われてから行う、受け身の行動のみのレベル。ほか従業員は自分で取り組み始めたり情報収集したりと積極的に行動している一方、上司が指示をするまで業務を行わないといった状況が見られるのです。
この評価に該当する人物は、「課題や指示を出されるまで行動しない」「やらなければならないため、仕方なく業務を行う」という傾向にあります。
②レベル2 通常行動
適切なタイミングでやるべきことができるレベル。常識ある、一般的な行動ができる人物です。
ミスや遅延なく業務を行おう、といった当たり前の心がけを持っている点が前記の受動行動との違いになります。しかし創意工夫したり、改善提案をしたりするなど、自分からの働きかけには欠けやすいです。
③レベル3 能動・主体的行動
明確な理由をもとに最善の選択をし、主体的な行動ができるレベル。決められたルールのなかでも、自分なりの意図や判断基準にしたがって、よりよい実績や成果を出せる人物です。
新しい設備や技術について、参考書を読んだり、セミナーを受講したりと普段から情報収集や知識の習得をする傾向にあります。
④レベル4 創造・課題解決行動
「通常業務を行いながら、現状を認識する」「課題を発見し、解決に向けて働きかける」「状況を変え、より高い成果をもたらす」などができるレベル。
販売の業務なら、通常業務をしながら、「システムの導入で管理を効率化し、人件費や労力を減らす」「宣伝方法を工夫して販売量を増加させる」などが考えられます。
⑤レベル5 パラダイム転換行動
既成概念にとらわれず、これまでにない斬新な発想を生み出し、周囲にとっても意味のある状況を作り出せるレベル。
この人物はおどろくようなアイディアを考え出しても、結果的に周囲から賛同が得られるプランに組み立てられます。これまでの常識では考えられなかったような独創的な方法で、成果を出すという行動がこれにあたるのです。
5.コンピテンシー評価型面接の質問例
コンピテンシー評価型面接では、具体的な場面について話してもらう質問をします。その際に使われる「STARフレームワーク」について、解説しましょう。
- Situation(状況)
- Target&Task(課題)
- Action(行動)
- Result(結果)
①Situation(状況)
面接の際、取り組みについての話題では、Situation(状況)について質問します。たとえば「あなたがそれに取り組んでいたときの、状況や具体的なシーンについて教えてください」と尋ねるのです。
この質問によって、「応募者が取り組んだテーマ」「背景」「難易度」「期間」が聞き出せます。
②Target&Task(課題)
次に応募者がTarget&Task(課題)と認識したことは何か、聞き出します。たとえば「あなたがそれを行う際に、課題であると認識したことは何でしたか?」と尋ねるのです。
この質問によって、応募者が「役割や任務に対する能力」「自発的な思考や行動ができるか」「目的を持って行えるか」わかります。
③Action(行動)
課題解決のためどのような行動をしたのか、Action(行動)について尋ねます。たとえば「いつ・どこで・誰と・どんなことに取り組んだのか、具体的に教えてください」「とくに苦労したことや工夫したことを教えてください」などと尋ねるのです。
この質問によって、行動の目的や課題の解決能力などがわかります。
④Result(結果)
課題を解決し得られたもの、Result(結果)について尋ねます。「それについて、周囲の人はどんな感想を言いましたか」「「こうすればよかったと考えたことや反省点があれば教えてください」などを尋ねるのです。
この質問によって、「取り組みの成果や結果」「周囲への影響」「応募者の学習経験や向上心」がわかります。
6.コンピテンシー評価型面接を活用するポイント
コンピテンシー評価型面接をうまく活用するには、どうしたらよいのでしょう。活用するポイントについて、解説します。
- 面接官の能力を高める
- 圧迫面接にならないよう注意する
- 「事実」にフォーカスする
- 客観性を保つ
- ほかの選考手法も組み合わせる
①面接官の能力を高める
コンピテンシー評価型面接の意義を面接官全員が知っておくのは、重要です。研修を実施して、面接官全員がコンピテンシー評価型面接の意義や質問内容、評価基準について理解できるようにしましょう。
面接官が経験を積めが、よりよいコンピテンシー評価型面接が行えるため、自社に適した人材を採用できます。
②圧迫面接にならないよう注意する
コンピテンシー評価型面接は、質問を重ねて話題を深掘りしていく手法です。質問の仕方によっては、圧迫感をおぼえる応募者もいるかもしれません。そうなると応募者は萎縮して、言いたいことが言えなくなってしまうでしょう。
面接で応募者が本来の実力を発揮できるよう、回答しやすい雰囲気作りを心がけます。
③「事実」にフォーカスする
応募者に対しては、過去の行動を中心にした質問を行い、実際にあった事実を中心に判断します。そこで具体的な数値、物や場所、出来事などの状況を聞き取り、評価対象にしましょう。
理想論や入社後の抱負といった事実にもとづかない発言は、たとえ立派なことを言っていても、評価の重点にしないよう気をつけます。
④客観性を保つ
採用担当者が主観を基準に採用活動をしてしまう可能性もあります。しかしコンピテンシー評価型面接では、規範がすでに定まっているので、それを評価基準として優先して進められるのです。
求職者を主観的に判断せずコンピテンシーを優先し、客観的に応募者を判断しましょう。
⑤ほかの選考手法も組み合わせる
コンピテンシー評価型面接と同時にほかの方法も組みあわせて利用すると、評価の精度が高まり、求める人材と合致した採用活動につながるのです。
たとえば第三者から情報を聞き出すリファレンスチェックを行うと、応募書類や面接ではわからなかった情報について詳しく、正確に把握できます。それにより採用のミスマッチを防げるのです。