企業によっては化学物質を扱います。しかし、化学物質は扱い方によっては危険を招くこともあります。それにより、ときに労働者に被害が出ることも少なくありません。化学物質と労働者に縁が深い、コントロール・バンディングやリスクアセスメントについて見ていきましょう。
「コントロール・バンディング」とは?
コントロール・バンディングとは、化学物質の健康被害リスクについて客観的に評価する手法のことです。化学物質から労働者を守ることを目的として、国際労働機関ILOが作成しました。
化学物質は、材質によって有害性や危険性が変わります。こうしたリスクを評価し、リスクを軽減するための対策を考えなくてはいけないのです。
厚生労働省の公式サイト内には、コントロール・バンディングの支援ツールが設置されています。作業内容(処理や保管、塗装など)や作業者数、形状、化学物質名、温度や扱う量の単位など、必要な項目を入力することで、リスクレベルや軽減対策などを確認できます。
リスクアセスメントとコントロール・バンディング
リスクアセスメントとは、化学物質の有害性や危険性を正しく認識し、起こりうるリスクを想定して、被害軽減のための施策を取るという一連の手順のことです。化学物質は、取扱いに注意しなければならないものがほとんどですから、労働者の健康を守るためには、リスクについて考えなくてはなりません。
しかし、企業の規模によっては、専門家に確認をしてもらうことがむずかしい場合もあります。そのため、コントロール・バンディングと呼ばれる、リスクアセスメントの実施支援システムが存在するのです。
リスクアセスメントを実施すると、リスクが明確になりますから、対策やリスクの認識が共有できます。また、安全への意識が高まりますので、労働者の心身保護に役立つでしょう。
化学物質のリスクアセスメントが義務化
平成28年6月1日に、規定された640の化学物質について、リスクアセスメントが義務化されました。
・対象物を原材料などとして新規に採用したり、変更したりするとき
・対象物を製造し、または取り扱う業務の作業の方法や作業手順を新規に採用したり変更したりするとき
・前の2つに掲げるもののほか、対象物による危険性または有害性などについて変化が生じたり、生じるおそれがあったりするとき
※新たな危険有害性の情報が、SDSなどにより提供された場合など(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署発行「労働災害を防止するためリスクアセスメントを実施しましょう」より引用 )
上記は法律上の実施義務ですが、指針による努力義務も定められています。労災が発生したとき、リスクアセスメントの実施以降に状況が変わったとき、リスクアセスメントを実行したことがないときなどです。
また、化学物質を譲渡提供する場合、ラベルを貼ることも義務化されています。ラベルには、物質名称以外に、イラストでの表示や取扱いにおける注意点、作用や反応性など、規定された6項目を記載することが必須となっています。