コアバリューとは?【わかりやすく解説】事例、個人、作り方

コアバリューとは、企業の中核となる価値観のこと。ここではコアバリュー導入のメリットや作り方、企業事例のほかに、「個人におけるコアバリュー」についても言及します。

1.コアバリューとは?

コアバリューとは、企業あるいは個人が重要視する価値観のこと。個人や組織がものごとを判断するときの「ものさし」ともいえます。Core(核)となるValue(価値)という意味のとおり、企業や個人にとって「中核となる価値観」のこと。

企業では、全従業員が同じ価値観を共有し、それにもとづいて行動することを目的として、戦略的にコアバリューを策定します。そのため「企業の信条」や「その企業で働く従業員の思考の基盤」とも言い換えられるでしょう。

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2.コアバリューが重視される理由

2016年、アメリカのビジネス誌フォーブスが掲載した「優良中小企業ランキング」にて、上位企業の多くがコアバリューを公開していることが判明しました。実はこの頃からコアバリューが世界で重視されるようになったのです。

なぜそこまでコアバリューが重視されるようになったのでしょう。ここでは3つの理由を解説します。

  1. 企業文化として根付くから
  2. 自己管理できる組織をつくれるから
  3. 意思決定の基準になるから

①企業文化として根付くから

コアバリューを定めると、社内に共通の価値観が浸透し、従業員の思考や行動が統一されます。この統一性が企業文化として根付き、企業の大切な個性となるのです。

よい企業文化が定着すると、自社に対する信頼も高まりやすくなります。企業文化は社内だけでなく社外へも影響し、取引先や顧客などへの対応などにも現れるからです。

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②自己管理できる組織をつくれるから

コアバリューが企業全体の行動規範となるので、行動規範と照らし合わせて適切な判断や行動を取れる組織になります。

コアバリューがない場合、従業員は物事を各自の価値観で判断しなければならず、業務に必要のない行動を選択してしまうでしょう。コアバリューが設定されていればすべての従業員が共通の価値観に則って、企業にとって好ましい行動を選択できるのです。

③意思決定の基準になるから

コアバリューを設定すると、すべての従業員の意思決定や行動の基準を統一できます。

価値観や考え方は人によってさまざま。同じ職場で働いているからといって全員が同じ思考を持つとは限りません。それぞれの従業員が異なる価値観で仕事を進めると、目標から大きくズレていく恐れもあります。

コアバリューがあれば企業の価値観や方向性を共有でき、従業員同士の認識の違いを防ぎやすくなるのです。

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3.ザッポス社の10のコアバリューとは?

1999年に創業したザッポス社は靴の通販会社で、創業から10年ほどで年商1000億円を突破。2006年にAmazonが約1000億円で買収したため、当時は大きな話題になりました。

また売上だけでなく、コールセンターに対する顧客満足度の高さでも知られています。ザッポス社が大きく成長した理由にはいくつかあり、そのうちのひとつがコアバリューによる企業文化の構築なのです。

掲げる10のコアバリュー

ザッポス社が掲げる10個のコアバリューをご紹介します。

  1. サービスを通じて驚きを届けよう(Deliver WOW Through Service)
  2. 変化を受け入れて推進しよう(Embrace and Drive Change)
  3. 楽しくて少しヘンなことを創造しよう(Create Fun and A Little Weirdness)
  4. 失敗を恐れず、創造的に、オープンマインドでいこう(Be Adventurous, Creative, and Open-Minded)
  5. 成長と学習を追求しよう(Pursue Growth and Learning)
  6. コミュニケーションで開放的で誠実な関係をつくろう(Build Open and Honest Relationships With Communication)
  7. ポジティブなチームとファミリー精神を築こう(Build a Positive Team and Family Spirit)
  8. 少しのことから多くの成果をあげよう(Do More With Less)
  9. 情熱と強い意志を(Be Passionate and Determined)
  10. 謙虚であれ(Be Humble)
参考 ザッポスのコアバリューZappos.com

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4.コアバリュー導入のメリット

企業がコアバリューを導入するとどのようなメリットを得られるのでしょう。それぞれについて見ていきます。

  1. サービスの質が高まる
  2. 企業のブランディングになる
  3. 生産性が高まる
  4. 採用のミスマッチを防げる
  5. 離職率の低下につながる

①サービスの質が高まる

コアバリューを設定すると均一な顧客対応ができるため、サービスの質が向上します。コアバリューで企業が重要視する価値観が示されるため、全従業員が同じ価値観と行動規範をもって業務にあたれるからです。

すべてのクライアントに対して一貫性のある質の高いサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上も期待できます。

②企業のブランディングになる

コアバリューを公表すると、企業のブランディング効果を高めます。価値観がメッセージとして世間に伝わり、企業そのもののイメージを定着させるからです。

ただ公表するだけでなく日々目にする宣伝広告にコアバリューを盛り込むのもよいでしょう。「○○と言えば○○社」というイメージが浸透しやすくなり、ブランドイメージを固められます。

③生産性が高まる

コアバリューを定めて従業員が共通の価値観を持つと、生産性が向上します。コアバリューが従業員の思考や行動の基盤となり、さまざまな選択肢があっても、組織全体が適切な意思決定を行えるからです。

また全従業員が目的や目標を共有し、同じ方向へ向かって協力しながら業務にあたります。その結果業務効率がアップし、生産性も向上しやすくなるのです。

④採用のミスマッチを防げる

コアバリューを採用の判断基準にすれば、人材採用のミスマッチを防げます。企業文化に共感した人材が集まりやすくなりますし、企業の価値観を共有できる人材かどうかを見極められるからです。

これまで培ってきた考え方や価値観を、短期間の社内教育で変えるのは難しいでしょう。自社の価値観と合わない人を採用してしまうと、企業にも採用された従業員にも余計な負担がかかってしまいます。

⑤離職率の低下につながる

コアバリューを人材採用の判断基準にすると、従業員の満足度が高まり、離職率の低下につながります。企業内に同じ価値観を持つ人が集まるので、意見の食い違いや認識のズレが生じにくく、快適に働けるようになるからです。

優秀な人材であっても、自社の企業文化に合わないと「こんなはずじゃなかった」と離職する恐れがあります。

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5.コアバリューの作り方

コアバリューを作成するには、以下の手順が必要です。それぞれの手順を詳しく説明します。

  1. 経営者を中心に基盤を作成する
  2. 従業員の意見を募る
  3. 10個程度に絞り込む
  4. 企業全体に共有する

①経営者を中心に基盤を作成する

コアバリューを作成する理由や目的を明確にし、経営者が中心となって「企業が大切にするべき価値観」を書き出します。これらをもとにコアバリューの基盤を作成するのです。

ポイントは、創業者や経営者が抱く理念や信条、方向性をしっかりと反映させること。創業者や経営者が持つ企業のあり方に強い思い入れを、従業員へ浸透させるためです。

②従業員の意見を募る

コアバリューの基盤が完成したら、従業員からの意見を加えて内容をふくらませていきます。

コアバリューは、企業で働く全員が共有する価値観であり、従業員の共感を得て全員で実践しなければ意味がありません。そのため経営陣だけで決めるのではなく従業員の価値観をできるだけ多く集めることが大切です。

各部門の代表者が現場の声を集約し、経営陣と話し合いながら策定しましょう。

③10個程度に絞り込む

経営陣が作成した基盤に現場の意見を加え、多くの価値観が集まっているはずです。これらの価値観を絞り込み、ブラッシュアップします。絞り込む際の基準は以下のふたつです。

  • 企業として決して譲れない価値観
  • 経営戦略的に重要な価値観

最終的なコアバリューの数は、5個から10個程度に収めます。それ以上増やしてしまうと従業員がすべてを覚えにくくなり、企業全体での実践も困難になるからです。

④企業全体に共有する

コアバリューが完成したら企業全体に発信し、すべての従業員と共有します。

新しい価値観を企業全体に浸透させるには時間がかかるためつねに従業員の目に触れる目立つ場所に掲示しましょう。社内報で事前に「コアバリューを導入する意義や目的」「作成の経緯や途中経過」などを発信すると、従業員の関心を引きつけられます。

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6.コアバリュー検討のポイント

コアバリューを導入すると、経営層も含めた全従業員が同じ価値観を持って判断や行動できるようになります。しかしこの点が裏目に出てしまう恐れもあるのです。ここではコアバリューの導入前に検討すべきポイントをふたつ解説します。

  1. 経営陣が模範を示せるか
  2. 変化適応ができるか

①経営陣が模範を示せるか

コアバリュー導入を成功させるカギは「経営陣が規範を示せるかどうか」にかかっています。どれほど素晴らしいコアバリューを作成してもトップが実践しなければ、従業員は「言っていることとやっていることが違う」と感じて受け入れないからです。

コアバリューを掲げて満足するのではなく、経営陣自らが手本となって規範を示し、従業員を巻き込んでいきましょう。

②変化適応ができるか

コアバリューの実践に固執するあまり、目の前のビジネスチャンスを逃しては意味がありません。設定したコアバリューに囚われすぎず、変化に対して柔軟に適応できるかどうかも重要なポイントです。

たとえばコアバリューに「サービスですべての女性を笑顔にする」と設定したからといって、男性向けの商品やサービスをすべて切り捨ててしまったらビジネスの可能性は半減します。

つねに広い視野を持ち変化に適応できるかどうかが、コアバリューを成功させるカギなのです。

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7.個人のコアバリューとは?

コアバリューは、会社組織だけでなく個人にも存在し、物事を決定するときの基準となっています。たとえば駅までの移動手段に「車」を使うか「自転車」を使うかを決めるときにも、コアバリューが影響しているのです。

  • 「車」を選択する人のコアバリュー例:効率的に行動したい、時間を有効に使いたい
  • 「自転車」を選択する人のコアバリュー例:環境に配慮したい、楽しく体を動かしたい

このように誰でも何かを選択するときには、自分が大切にする価値観(コアバリュー)で決めているのです。

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8.コアバリューの企業事例

近年では、コアバリューを導入する企業が増えています。ここではコアバリュー経営で有名な5社をご紹介しましょう。

  1. プルデンシャル
  2. オリンパス
  3. YKK
  4. アフラック
  5. アクセンチュア

①プルデンシャル

プルデンシャル生命保険は、1992年にコアバリューを導入して以下の4つを設定しました。

  • 信頼に値すること
  • 顧客に焦点をあわせること
  • お互いに尊敬しあうこと
  • 勝つこと

またコアバリューを「企業として成長するために重要な役割を果たすもの」と位置づけ「従業員が常に持つべき行動規範」として浸透させるために、専任チームも設置。

これらのコアバリューから「お互いに褒め合い、感謝する企業風土」が醸造され、口コミサイトが行った「社員が選ぶ働きがいのある企業ランキング2021」という調査で3位にランクインしています。

②オリンパス

1919年創業のオリンパスは、2018年に経営理念を一新して以下のように再設定しました。

  • Our Purpose 私たちの存在意義
  • Our Core Values 私たちのコアバリュー

同社のコアバリューは、「Our Purpose 私たちの存在意義」を実現させるために構成されており、以下の5つが設定されています。

  • 誠実
  • 共感
  • 長期的視点
  • 俊敏
  • 結束

同社はこれらのコアバリューを人事評価にも活用。コアバリュー体現度が高い従業員を表彰する「グローバルCEOアワード」を実施しています。

③YKK

YKKは、コアバリューに以下の3つを設定しています。

  • 失敗しても成功せよ/信じて任せる
  • 品質にこだわり続ける
  • 一点の曇りなき信用

どのように時代が変化しても創業の精神を確実に受け継ぎ、すべての従業員が体得し継承するため、コアバリューの浸透活動を組織的に展開しているのです。

そのため自社とマッチする人材の確保にもコアバリューを活用しており、実際にYKKグループのキャリア採用サイトには「YKKグループのコアバリューが意味するものとは?」と題したページを設置しています。

④アフラック

アフラック生命保険は、4つのコアバリューを設定。

  • 創業の想い(がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい)
  • The Aflac Way
  • 企業理念(「新たな価値の創造」「人間尊重」「お客様第一」「法令などの遵守」)
  • ブランドプロミス(「生きる」を創る。)

創業以来、どの時代においてもコアバリューを行動基準に置いたCSV経営を実践し続け、社会的課題の解決に取り組んで成長してきました。

ブランドプロミスの「『生きる』を創る。」は、同社のCMにも盛り込まれており、ブランディング効果を高めています。

⑤アクセンチュア

アクセンチュアは、以下の6つのコアバリューを掲げています。

  • クライアント価値の創造
  • ワン・グローバル・ネットワーク
  • 個人の尊重
  • ベスト・ピープル
  • インテグリティ
  • スチュワードシップ

これらのコアバリューの源泉となっているのは、「従業員の能力を生かす環境づくり」。たとえば「個人の尊重」や「ベスト・ピープル」の項目では人材の多様性を尊重し、異なる個性を受け入れて協力し合うことを推奨しています。

このコアバリューに沿って、定期的に働き方の改革が行われているのです。