企業の存在を脅かす事件や事故、あるいは突然の自然災害。危機的な状況に陥った時、企業に望まれるのは迅速かつ適切な情報開示を主とするクライシスコミュニケーションです。企業のリスクマネジメントとしてのクライシスコミュニケーションを考えます。
クライシスコミュニケーションとは? 危機管理対応と情報開示
「クライシスコミュニケーション(Crisis Communication)」は、緊急事態が発生した際に企業が取る危機管理対応の1つで、対外的なコミュニケーションのことを指します。対象は一般消費者、取引先、株主などのステークホルダー(利害関係者)ですが、彼らとの仲介役であるメディア対応が大きな鍵となります。
多数のメディアが集まる記者会見での失言、情報を隠蔽しているような誤解を与えてしまえば、問題が収束するどころかネガティブな印象で事態を悪化させ、企業の存続に影響を与えかねません。
現場に混乱が生じる中で、情報開示を適切に行い、クライシスコミュニケーションを成功させるためには、日頃から危機管理対応をリスクマネジメントと捉え準備する必要があります。
クライシスコミュニケーションで大切なことは情報開示
事件や事故、不祥事が起きた時、企業としてはできるだけ問題を大きくしたくないと情報開示に尻込みしがちです。しかし、今やSNSなどで情報は瞬時に広く拡散していきますから、隠し通せるものではありません。
情報を隠そうとすればするほど、メディアや一般消費者からの追及は厳しくなり、1つでも隠蔽が発覚するとその後の発表さえも信頼されなくなります。情報開示は誠実に、過不足なく行います。
また、求められてから出すのでは出し渋っている印象を与えてしまいますから、どのような情報をステークホルダーが必要としているかを把握して適切に行うことが必要です。
経営トップには正確な情報を報告しておきます。ささいなことだと判断し伝えていないと、記者会見などで「経営トップが情報を把握できておらず統率が取れていない企業」というイメージを与えますし、広報担当者と経営トップの言うことが違っているだけでも不信感を与えてしまいます。記者発表や記者会見の前にはすり合わせをしておくことが大切です。
リスクマネジメントとしてのクライシスコミュニケーション
緊急事態の初期に行うクライシスコミュニケーションは、動揺している中での対応となりますが、だからこそ適切に行わなければなりません。日頃から、危機的状況が起きた場合を想定したリスクマネジメントの1つとして準備しておくことが必要です。
それでは、リスクマネジメントとしてのクライシスコミュニケーションの準備では、どのようなことができるでしょうか。
- ほかの危機対応の良い例悪い例を集めて参考にし、自社であればどのように行うかを想定する。
- 緊急事態が起きた場合、どのようなメンバーで危機対応本部を設置するか、本部長は誰がやるか、副本部長は誰と誰がやるかなど決めておく。
- 緊急事態が起き、クライシスコミュニケーションが必要になった場合のマニュアルを用意する。どのように第一報を発信するか、記者会見は経営トップが不在の場合はどの役員が代行するか、広報担当者は誰が窓口となり、記者会見の場所はどこで誰が進行をするかなど細部まで考えておきましょう。
- 実際にマニュアルに沿って経営陣、広報担当者などで模擬訓練を行う。この時は質疑応答なども実践し、想定問答集などを用意すると役に立ちます。
実際は実施することになって欲しくないのがクライシスコミュニケーションですが、備えあれば憂いなしです。また、起きてしまった場合は、問題が収束した後に反省点を洗い出し、次の危機のためにマニュアルを強化していきましょう。