デリゲーションとは? 意味、ログ、エンパワーメントとの違い

デリゲーションとは、権限委譲という意味です。デリゲーションの目的やメリット、デリゲーションを成功させるポイントを解説します。

1.デリゲーションとは?

デリゲーション(Delegation)とは、上司が部下に仕事を任せる「権限委譲」のこと。企業や組織のなかでは、数ある仕事をいかに上手く権限委譲して生産性を高めるか、が重要になります。

上司から仕事を任せられた部下は、さらに自身の部下に仕事を委譲し、組織は円滑に動くでしょう。デリゲーションはビジネス以外の分野にて、「代表任命」「代表派遣」「委任」などの意味で使われます。

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2.デリゲーションの目的

目的は仕事を任せて社員を育て、それにより生産性を向上させることです。

メンバーを育てる

デリゲーションでは、上司の仕事を部下に任せるため、部下は1段階上のレベルの仕事を担います。責任が求められる難しい仕事だからこそ、あえて部下に任せて成長を促すのです。

ワンランク上の仕事をこなすため、部下もまた自身の能力(主体性や自律性)を高められます。部下の成長はそのまま組織の成長や生産性の向上につながるのです。

リーダーの仕事量を減らす

デリゲーションは、リーダーの仕事を減らす側面もあります。どれほど有能なリーダーでも、一人でこなせる仕事量には限界が生じるもの。大事な仕事でもリーダーがすべて背負っていては、組織は円滑に動きません。

デリゲーションを活用すれば、リーダーの仕事が減ると同時に組織内で仕事が上手く回ります。仕事を分散するため生産性が上がり、一人で仕事をこなすよりはるかに良い成果が生まれやすくなるのです。

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3.デリゲーションの類義語

デリゲーションと似た言葉のひとつが「エンパワーメント」です。エンパワーメントの言葉の意味やデリゲーションとの違いを説明しましょう。

エンパワーメント

「権限を与える」「力を与える」などの意味を持つ言葉です。ビジネスでは、社員一人ひとりに力をつけさせるため権限を与えるという意味で使われます。

目的は社員の自主性や自律性の促進で、一般的な企業だけでなく教育や医療、福祉など、さまざまな業界で注目されているのです。

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エンパワーメントという言葉が普及した理由

エンパワーメントは「個人」「家族」「組織」「コミュニティ」など、多義的(多層的)な状況で使用されます。

もともとエンパワーメントは女性活動で使用されていました。弱い立場や抑圧された立場にある「Powerless」な人々を「Powerのある状態にする」という意味合いも含んでいるのです。

このような背景から社会福祉や医療、ビジネスや支援活動、個人や家庭など、多くのシーンで使用されるようになりました。

デリゲーションとエンパワーメントの違い

デリゲーションとエンパワーメントの大きな違いは、社員の「成果」を見るか「成長」を見るかという点。

  • デリゲーション:上司は社員に仕事を任せて成果によって評価
  • エンパワーメント:社員の育成に重点を置いており、成果で評価するより「社員一人ひとりに力をつけさせること」を目的とする

デリゲーションログ

医療機関における仕事の責任担当者を明確にするための記録のこと。デリゲーションログには、治験補助業務の具体的な内容とその業務を担当するスタッフの名前が記録されるのです。

分担した業務を実施する際、責任担当者は適切なトレーニングを受講し、業務を問題なく遂行することが求められます。

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4.デリゲーションのメリット

デリゲーションのメリットは下記の3つです。

  1. 意思決定のスピードアップ
  2. 本来の業務に専念できる
  3. 持続的な成長を見越した人材の育成

①意思決定のスピードアップ

デリゲーションによって、意思決定のスピードアップを図れます。仕事で何かを決定する際、つねに上司に確認を取って進める形だと最終決定までに時間がかかり、業務もスムーズに進みません。

デリゲーションによって部下が自律的に意思を決定できれば、組織での動きが円滑になり、生産性の向上が期待できるのです。

②本来の業務に専念できる

部下に仕事を任せるため、上司は本来の業務に専念できます。上司は自分の立場でしかできない仕事があるので、デリゲーションを活用して仕事を分担するのです。

デリゲーションで大切なことは、「一度部下に仕事を任せたら、上司は口出しをしない」点。上司がつねに部下を干渉していると、生産性が悪化する可能性もあるからです。

③持続的な成長を見越した人材の育成

本来、上司が行うべき「決定権のある仕事」を部下に任せるため、部下はいつもより責任のある立場になります。

難しい業務や高い目標をクリアする経験を積んでいく過程で、部下の能力や自信、自尊心などが向上し、長いスパンでみて組織の持続的成長につながるのです。

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5.デリゲーションを成功させるポイントは?

デリゲーションに成功に必要なコツやポイントを説明します。

  1. コンセンサスの形成
  2. 権限委譲の範囲を決める
  3. どう応援するかを考える
  4. 成果ではなく成長
  5. 効率ではなく効果
  6. デジタルツールを活用する
  7. デリゲーションポーカー

①コンセンサスの形成

「何をいつまでに達成するか」「厳守すべきルールはあるか」「仕事を実施する際の人員や資金、技術をどうするのか」「どのような評価基準で成果を図るか」「結果によってどのような報酬が期待できるか」など、コンセンサスの形成が重要です。

このようなことを事前にしっかりと話し合っておけば、仕事を任せられる部下は「何を期待されているのか」「どうすればよいのか」がはっきりするため、仕事も進みます。

②権限委譲の範囲を決める

デリゲーションは全権委任ではありません。任せきりにして一切フォローをしないと、問題が生じる可能性もあります。

どこまでを任せて、どの部分ではサポートをするかというバランスを取るのも上司の仕事です。あらかじめ権限委譲の範囲を明確にしておくとよいでしょう。

③どう応援するかを考える

部下によっては何かしらの問題が生じて、上司に相談に来るかもしれません。そのようなときに「全部自分で解決しろ」と突き放していては、デリゲーションの意味がなくなります。いったん仕事を任せたあと、どのような形で応援をするか、決めることもポイントです。

④成果ではなく成長

デリゲーションの本質は、仕事を任せた部下の成長にあります。ワンランク上の責任のある仕事を任せられ、それを成し遂げた部下は「難しい仕事にチャレンジして成功した」「企業側から高い評価を受けた」と喜びや達成感を得るもの。

この経験の繰り返しが、部下を大きく成長させるのです。部下の成長が企業の成長にもつながるという意識を持ちましょう。

⑤効率ではなく効果

デリゲーションは、目先の効率だけを考えて実施するものではありません。デリゲーションとはいえ、まだ経験の浅い部下に仕事を任せるケースもあります。成果が出るまで時間がかかる場合も多いでしょう。

目先のリターンばかりを期待せず、長い目で見た、社員の成長と企業全体(組織)のリターンという視点を持つことが重要です。

⑥デジタルツールを活用する

デリゲーションでは、仕事を任せたあと適切なアドバイスや部分的なサポートを実施することが大切です。事前に上司と部下が行動や進捗、結果などを共有できるデジタルツールを導入すると部下の動きを可視化でき、リスク回避や業務の効率化が図れます。

⑦デリゲーションポーカー

業務における権限(意思決定)をメンバー内で明確にするゲームです。このゲームでは、以下の7つの権限が設定されています。

  • 指示する(私が彼らに決定を伝える)
  • 説得する(私が彼らを説得させる)
  • 相談する(彼らに相談して私が決定する)
  • 合意する(私と彼らで合意して決める)
  • 助言する(私が助言するが、彼らが決める)
  • 尋ねる(彼らが決めたあとに私が尋ねる)
  • 委ねる(すべての決定を彼らに委ねる)」

デリゲーションポーカーの実施は、曖昧になりがちな権限のクリア化やメンバー間の納得感を得るうえで役立ちます。

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6.デリゲーションの注意点

デリゲーションを実施するうえで注意すべき点、またデリゲーションの効果を妨げる理由について説明します。

デリゲーションを妨げる理由

デリゲーションは自身がマネージャーである立場を忘れると、失敗する可能性が高くなります。

「この仕事は自分でやりたい」「部下に任せるより、自分でやったほうがよい」「自分のほうがうまくやれる」といった自分中心の考えがデリゲーションを妨げるのです。デリゲーションを行う際はマネージャーに徹すること、部下に任せきりましょう。

デリゲーションの目的は業務量削減ではない

デリゲーションの目的は、目先の業務量の削減ではなく企業全体の生産性の向上。よってデリゲーションを行っても、上司のマネージメントの仕事はつねに残ります。

デリゲーションで部下は自主的、また自律的な仕事を行うようになるものの、企業全体の生産性および業績向上につながるには時間がかかると認識しておきましょう。

業務を丸投げしない

デリゲーションが、単に仕事の丸投げにならないよう注意しなければなりません。ただの丸投げでは、デリゲーション本来の効果が得られないだけでなく、さまざまなリスクを招く可能性もあるからです。

デリゲーションの本当の目的や適切な進め方を理解するために、上司の教育体制を整えておくことも必要になります。