組織においてダイアローグ、つまり対話の重要性が叫ばれています。ダイアローグは議論でも雑談でもなく、互いの立場を理解しながら互いの意見をきちんと伝え合い、相互理解を深めて組織力を高めていくものです。対話する組織の必要性について考えてみましょう。
ダイアローグとは?ダイアローグの意味と対話する組織
仕事の指示も報告も、会話をしなくてもメールなどで済まそうと思えばそれで済んでしまう今、ダイアローグ(dialogue)が見直されています。
ダイアローグとは対話や対談という意味ですが、組織におけるコミュニケーションのあり方を考えた時のダイアローグは、情報のやりとりにとどまらず、話す側、聞く側がお互いに理解を深め、行動や意識を変化させるような創造的なコミュニケーションを指します。
多様化していく企業において、ダイアローグを重視した対話する組織作りは企業の成長にとってとても大切です。
「ダイアローグ 対話する組織」から知るダイアローグのポイント
「ダイアローグ 対話する組織」(中原淳・長岡健 共著、ダイヤモンド社)によれば、ダイアローグ(対話)は、自由な雰囲気で行われる真剣な話し合いで、相手の意見を尊重しつつ自分の意見との違いを認識して相互理解を深めること。
論理や数字では動かない組織を動かすのがこのダイアローグであり、ロジカルシンキングが大切と信じられてきた組織の中で、共通認識を深めるためにはダイアローグが大切であるとしています。
ダイアローグでは、「私たち」「わが社」ではなく、「私」という一人称で自分の思いや経験談を語り、強引に結果を出すのではなく、時には結論を保留することも大切だとしています。
ここで雑談、議論、ダイアローグ(対話)の3つのコミュニケーションについて比べてみましょう。
A、Bの二人がコミュニケーションを取る時、雑談は自由な雰囲気でA、Bそれぞれの意見をざっくばらんに話し合いますが、特に結論は生まれません。議論では、真剣な雰囲気でA、B、両者の意見がぶつかり合い、どちらが正しいかがはっきりするまで続きます。
ダイアローグの場合、自由な雰囲気の中で、Aの意見、Bの意見、それぞれをお互いに話し、聞き、そしてそこで必ずしも結論を出す必要はなく、また両者の良い点を集めた新しい意見が生まれることも歓迎します。
ダイアローグを取り入れたコミュニケーションとしては、ワールド・カフェやタウンミーティングの形が挙げられます。
ダイアローグで必要なのは結論ではなく共通理解
たとえば、新入社員教育で、「わが社の企業理念は“他利己忘”(自分を忘れるくらい他の人に尽くす)です」と一方的に説明して理解を得たと思っても、“他の人とは誰のことか”“尽くすって何をもって尽くすのか”は実はそれぞれにイメージが違っています。
もし、そこでグループでダイアローグの機会があれば、他の人とは誰のことかについて、ある人は“顧客”だと考え、ある人は“社会全体”だと考えていることがわかります。
また何によって尽くすかも“自社の商品を供給し続けること”という人もいれば、“世界に類を見ない新製品を開発すること”という人もいて、また、“企業が得た利益によってあらゆる社会貢献活動を支援することで”という人もいるでしょう。
こうした答えのどれが正しいかを決めるのではなく、考えには多様性があり、そのどの答えも間違っていないということを共通理解することで、組織の方向性が定まり、組織の質が高まっていくこととなります。