ディスクロージャーとは情報開示のこと。意味や関連語、企業や金融機関がディスクロージャーする目的などを解説します。
目次
1.ディスクロージャーとは?
ディスクロージャー(Disclosure)とは、情報開示または情報公開という意味を持ち、企業が投資家や株主、取引先などに企業の事業内容などを広く一般に公開すること。法律や取引所ルールによるものと、企業が任意で行っているものがあります。
金融機関などでは気軽に誰でも閲覧できるよう、インターネット上で公開しているところもあるのです。
ディスクロージャーの言葉の由来は?
ディスクロージャー(Disclosure)には、情報開示、情報公開のほか、公表、暴露、露見、発覚などの意味があります。
もともとはIT関係の企業から生まれたセキュリティ用語で、パソコンのソフトウエアやシステムなどに不具合があった際、すぐユーザーに情報開示することを指しているのです。顧客第一主義の観念から生まれた言葉は、業界を超えて広く使われています。
ディスクロージャーがでてくる場面
ディスクロージャーは企業の経営内容を明らかにする際に使用されます。
株式の世界では、投資家や株主、債権者などを保護するためディスクロージャーの充実が図られており、ディスクロージャー誌の発行やインターネットで確認できるよう公開しているのです。また証券取引法で企業のディスクロージャーが義務付けられています。
ビジネスで使われるディスクロージャー
ディスクロージャー自体をビジネスにしている企業もあります。ディスクロージャーは企業の経営状況を公開するため、投資家や株主などから信頼を得られる企業にとっては大変重要なものです。
各企業はこのディスクロージャーを行うために、ディスクロージャーを扱う企業に依頼して、最適なサポートを確保するとされています。
ディスクロージャーは信頼の現れ
ディスクロージャーを行い企業の経営状況を明らかにすると、企業の透明性が高まるため、株主や投資家からの信頼が向上します。また投資対象としての魅力や価値も、表せるでしょう。
それによりすべての投資家や株主たちは安心して会社を支援できるようになるため、ディスクロージャーの重要性が高まっているのです。
2.ディスクロージャーの目的と生まれた理由
ディスクロージャーは企業の経営状況を明らかにし、企業の透明性を高めて投資家や出資者などの信頼を得るものです。そんなディスクロージャーの目的と生まれた理由を紹介しましょう。
ディスクロージャーの目的
ディスクロージャーの目的は、投資者の保護と国民経済の適切な運営です。日本は1996年から2001年度にかけて始まった金融ビッグバンにより、「資産運用手段の充実」、「活力ある仲介活動を通じた魅力あるサービスの提供」などを進めています。
そうした中、「利用者が安心して取引を行うための枠組みの構築」の一貫としてディスクロージャーは必要不可欠となっているのです。
ディスクロージャーが生まれた理由
ディスクロージャーが生まれた背景にあるのは、戦後、長期間にわたって機能したメインバンク制の金融・経済システムが根本的に変革し始めたこと。
現在は投資家を保護しながら資本市場(主に株式市場)を健全に発展させ、資本市場の力を活用して企業の価値増大の力を強めています。その結果、国民経済を適切に運営することが日本にとって重要とされているのです。
3.ディスクロージャーのメリット
ディスクロージャーは、制度上のディスクロージャーと、自主的に進める任意のディスクロージャーの2つに大別されますが、なぜ企業はディスクロージャーをするのでしょうか。そのメリットを見ていきましょう。
情報開示による安心感
企業の経営実績や活動状況、財務状況が、投資家や出資者、取引先といった利害関係者に開示されると、企業の透明性が高めまります。
それにより企業は投資家や出資者などから信頼を得られ、投資対象としての安心感を与えられるのです。社会的知名度が向上し優良企業として広まれば、取引先の信用も高まるでしょう。
投資家にアピールできる
自主的に進める任意のディスクロージャーは、一般にIR(Investors Relations) といわれ、そこには企業が投資家に対してPRをするような情報開示も含まれています。
たとえば決算発表説明会、月次データ、ホームページでの説明など。こうしたディスクロージャーによって、企業は投資家や出資者などへアピールできるのです。
4.ディスクロージャーのデメリット
投資家や出資者を対象に信用度を向上させる目的で行われるディスクロージャーですが、デメリットもあるのです。一体何でしょうか。
コスト
ディスクロージャーを行う際、情報管理や情報開示に関わる多くの人材が必要です。そのために新規採用で社員を大幅に増やすと、単純に人員コストがかかってしまいます。
またディスクロージャーで開示した情報による不利益のリスク、開示内容についての訴訟や報道などのリスクが伴うなども考えられるでしょう。
情報開示による不利益
投資家や出資者を保護する目的とした制度上のディスクロージャーは、内容や時期が強制されています。そのため事業の撤退などで企業の業績が低迷していた場合、それが企業側にとっては公開したくないマイナスの情報でも開示することになるのです。
結果、投資家や出資者が離れてしまう可能性は高いでしょう。
5.企業におけるディスクロージャー
企業におけるディスクロージャーとは、投資家や出資者、取引先などといった利害関係者に企業の経営実態や財務、活動状況などを開示すること。目的は、投資家が判断するための情報提供です。
企業におけるディスクロージャーは2種類存在する
ディスクロージャーは、法律に定められた制度上のディスクロージャーと、自主的に行われる任意のディスクロージャーの2つに分類されるのです。制度上のディスクロージャーを強制開示、任意のディスクロージャーは自発的開示とも呼びます。
法律で定められている
企業がディスクロージャーを行う時期や開示する内容は、証券取引所規則や商法、証券取引法によって決まっています。具体的な内容は下記のようなもので、法律上のディスクロージャーは投資家保護を目的とした制度です。
- 決算短信の公表
- 毎年の有価証券報告書の公開
- 企業の業績に大きく影響を与えた適時プレスリリース
自主的なディスクロージャー
自主的なディスクロージャーは、企業が投資家に対して行う広報活動のIR(Investors Relations)とも呼ばれます。
情報が公開されるのは、年次報告書や月次データ、決算説明会や事業に関する説明会、自社ホームページなどです。公正な情報であれば基本的に規制はなく、内容は企業が決められます。
6.金融機関におけるディスクロージャー
金融機関におけるディスクロージャーは、銀行法などにもとづき、金融機関が業務、財産の状況に関する説明資料の公開を義務付けられているのです。財務諸表などの公表によって経営状況を開示する仕組みとして機能しています。
金融機関が用意するディスクロージャーのための資料
ディスクロージャーは企業が投資家に対して行う広報活動のIRの一貫として行うもので、業務や財産の状況をまとめたディスクロージャー誌(紙)を発行して顧客に送付します。
また店頭に置いて、経営内容を誰でも確認できるようにしているのです。自社ホームページに情報を掲載している銀行も多くなっています。
金融機関におけるディスクロージャーの機能
金融機関のディスクロージャーは、投資の判断材料として経営状況を開示するものとして発展してきました。具体的に次の3つの機能があります。
- 取引相手に対しての情報開示
- 価格形成の促進
- 市場の健全性を維持できる
取引相手に対しての情報開示
金融機関の取引先相手に対して、当該の金融機関が負っているリスクの量だけでなく、どの程度リスク管理をしているかについての評価が可能な情報を提供します。
この情報により、株式市場やFX市場などを行う市場参加者は、自己の判断と責任により取引相手を選定しやすくなるのです。リスク関連情報は、金融機関の株価や資金調達コストに反映されると考えられています。
価格形成の促進
ディスクロージャーが果たす取引先選定のための情報開示は、デリバティブ取引(株式、債権、金利、為替など原資産となる金融商品から派生した取引)を含めた各種金融商品の適切な価格設定を促進します。
金融機関は市場から高評価を受けるために、ディスクロージャーを積極的に利用しようとインセンティブが働くでしょう。
市場の健全性を維持できる
ディスクロージャーを実施する金融機関の経営陣は、株式市場やFX市場などを行っている市場参加者たちから高評価な反応を得るために、経営方針の見直しやリスク管理の技術の向上、リスク管理方針の厳格化などを行うでしょう。
こうした経営規律の向上は、市場の健全性を維持することにも機能すると考えられます。
7.ディスクロージャーの関連語
金融機関が顧客向けに制作しているディスクロージャー誌は、経営状況などを開示した冊子です。ディスクロージャー誌に限らず、ディスクロージャーに関連する用語は金融機関のほかさまざまな業界で使用されています。
- ディスクロージャー誌
- ディスクロージャー制度
- ディスクロージャーポリシー
- ディスクロージャープロジェクト
- フルディスクロージャー
- IR(Investors Relations)
- フェア・ディスクロージャー(FD)
- ステークホルダー
- ディスクロージャーホットライン
①ディスクロージャー誌
ディスクロージャー誌は、金融機関の経営内容を開示した冊子で、財産や収支の状況を示した下記のような事柄など、企業活動を広く判断するために必要となるさまざまな情報が掲載されています。
- 財務内容
- 経営方針
- 経営戦略
- リスク管理体制
- 商品やサービスの内容
銀行のディスクロージャー誌は、店舗に備えられています。またホームページに情報を掲載している銀行もあります。
②ディスクロージャー制度
金融商品取引法におけるディスクロージャー制度とは、情報の公開を義務づける制度のこと。一般投資者が自ら投資判断できるような資料を提供するため、企業内容開示書類の提出を有価証券の発行者などに義務付けているのです。
事業内容や財務内容を開示して、投資者保護を図る制度といえます。
③ディスクロージャーポリシー
ディスクロージャーポリシーとは、情報開示に関わる企業方針のことで、各企業のホームページなどにも掲載されており、自由に誰でも閲覧できます。主な内容は、下記のとおりです。
- 情報開示の基準情報開示の方法
- インサイダー取引の未然防止
- 公平な情報開示
- 将来の見通し
- 沈黙期間
- 社内体制の整備
④ディスクロージャープロジェクト
ディスクロージャープロジェクトとは、2001年にアメリカ・ワシントンにあるナショナル・プレス・クラブで開催された記者会見の名称です。
会見は、軍、企業、政府関係者らによる全米規模の会見で100名を超える報道陣が集まり、内容は、これまで機密にされていたUFO(未確認飛行物体)に関する情報の暴露だったのです。これはUFOディスクロージャー・プロジェクトとも呼ばれています。
⑤フルディスクロージャー
フルディスクロージャーとは、セキュリティ哲学の1つで、脆弱性情報はすべての情報が詳細にわたって一般に公表されていなければならない、という考え方です。
たとえばある製品で脆弱性が発見された場合、製品の開発元の都合や意向、対策方法などにかかわらず、その脆弱性に関する詳細な情報を、発見後は早急かつ安全に一般に公表すべきだとされています。
⑥IR(Investors Relations)
IR(Investors Relations)とは、企業が株主などの投資家に対して情報提供などを行う広報活動のこと。決算発表後の説明会などもその1つで、投資判断の材料として必要な全ての情報が盛り込まれています。
企業側は投資家に対して、経営判断の妥当性やその根拠を広く明確に伝える必要性が求められているのです。
⑦フェア・ディスクロージャー(FD)
フェア・ディスクロージャー(FD)とは、有権証券の発行者が、投資判断となるような未公表の重要な情報を、まだ公表されていない段階で第三者に提供することを禁じるものです。
2017年にフェア・ディスクロージャー・ルールが導入されました。ルールの対象者は上場企業などで、目的は投資者に対して公平な情報開示を義務付けることです。
⑧ステークホルダー
ステークホルダーとは、経営活動から直接、間接的に影響を受ける利害関係者のことで、日本語では利害関係者といいます。たとえば株主、経営者、顧客、従業員、取引先、企業が取引のある金融関係や競合相手、地域社会や行政機関などです。
⑨ディスクロージャーホットライン
ディスクロージャーホットラインとは、2006年に金融庁に設置された「ヘルプライン」や「目安箱」と呼ばれる内部通報窓口のこと。会社のディスクロージャーに問題を感じた人は、このホットラインを通じて金融庁に通報できるのです。
2004年に公益通報者保護法で規定されたこの制度は、「内部通報した人が不利益を被る」「情報をもみ消される」といった危惧から設置されました。