国を上げて推進されるDX(デジタルトランスフォーメーション)。その促進を目的に2020年から取り組まれたのがDX銘柄の選定です。本記事ではDX推進をアピールしたい企業や投資を成功させたい投資家から注目される、このDX銘柄について簡潔に解説します。
目次
1.デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)とは?
デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)とは、デジタル技術を活用し、ビジネスや組織を変革、成長や競争力強化につなげていくDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業が選定される銘柄のことです。
対象となるのは、東京証券取引所に上場(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)する企業全社(旧市場区分:東証一部、東証二部、ジャスダック、マザーズ)。経済産業省と東京証券取引所が毎年選定を実施しています。
DX銘柄に選定されることで、競争力の高さや企業価値の高さを社会やステークホルダーに対してアピールできます。選定されるためには、DX認定の取得などの条件があります。
攻めのIT銘柄とDX銘柄は何が違うのか?
DX銘柄と似た銘柄に、「攻めのIT銘柄」というものがあります。攻めのIT銘柄とは、中長期的な企業価値の向上や競争力強化のために、積極的にITの利活用に取り組んできた企業が選定される銘柄のことです。
DX銘柄は、この「攻めのIT銘柄」から名称が変わったものです。名称変更の理由は、国によるDX推進施策の動きと銘柄選定を連動させ、DX推進の促進するためです。
2.DX銘柄に選定されるメリット
DX銘柄に選定させることで、DX推進に対する国のお墨付きを獲得できます。選定結果は、選定企業一覧として公表され、競争力や企業価値の高さ、DX推進に取り組む姿勢を、社会やステークホルダーに広くアピールできます。
3.DX銘柄選定の仕組み
DX銘柄に選定されるためには後述のDX認定の取得や調査への回答のほか、次の評価や選考を通過する必要があります。
4.DX銘柄選定に向けたステップ
実際に企業がDX銘柄として選定されるためのステップは次の通りです。
①DX認定を取得する
DX銘柄に選定されるにはDX認定の取得が必須です。DX認定とは、DXに向けたビジョンや戦略の策定、体制の準備が整っている(DX-Ready)状態の企業を国が認定する制度です。
DX認定制度とは? メリット、認定項目、取得方法を解説
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を、企業価値向上、税制優遇、融資における特別金利といった形で支援するDX認定制度。役に立つと感じるものの、具体的にどんなメリットがあるのか、どうすれば...
DX認定取得に必要なDX推進指標とは?
DX認定を受けるためには、DX推進指標などの指標を使った自己分析の結果の提出が必須です。DX推進指標とは、自社のDX推進状態を自己診断するためのツールで、経済産業省が公開している公的な指標です。
取り組むことで、自社のDX推進における課題や方向性が見えてくるといったメリットがあります。詳細については、下記の記事からご確認ください。
DX推進指標とは? 【わかりやすく解説】活用のメリットとステップ
経済産業省は2018年からDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を提唱しています。しかし「DXを推進したい」と考えてはいても、着手すべき取り組み方やアクションがわからないという企業は少なくあり...
②事前準備を行う
DX銘柄に選ばれるためのDX調査に参加するためには、「g BizIDの取得」と、「DX推進ポータル」へのログインが必要となります。スムーズなスケジュール進行のためにも、事前にこのふたつは実施しておきましょう。
③DX調査の調査項目への回答準備を行う
DX銘柄選定の材料となるDX調査の調査項目が事前に発表されます。こちらで発表された項目を確認し、調査項目に必要な回答や、その根拠となる資料の準備を行います。
デジタルトランスフォーメーション調査2022の設問項目は次の通りです。基本的にデジタルガバナンスコードに沿った内容となっています。
- ビジョン・ビジネスモデル
- 戦略
- 戦略実現のための組織・制度等
- 戦略実現のためのデジタル技術の活用・情報システム
- 成果と重要な成果指標の共有
- ガバナンス
④回答フォーマットをダウンロードし、回答内容を記載する
DX調査が始まる前に、IPA(情報処理推進機構)から回答フォーマット(Excelファイル形式)がダウンロードできるようになります。調査が始まる前にダウンロードし、用意しておいた回答内容をフォーマットに転記します。
⑤DX調査に回答する
DX調査の回答受付が開始したら、回答フォーマットを「DXポータル」にアップロードし、提出します。提出には締め切りが設定されており、期限を過ぎると提出不可となります。
5.DX銘柄選定企業一覧
こちらでは実際に2021年のDX銘柄や注目企業として選ばれた企業名、業種、証券コードについてご紹介します。
DXグランプリ2021
DX銘柄に選定された企業の中から、業種の枠を超えデジタル時代を先導する企業として選定された企業が「DXグランプリ」として選定されています。
企業名 | 業種 | 証券コード |
株式会社日立製作所 | 電気機器 | 6501 |
SREホールディングス株式会社 | 不動産業 | 2980 |
DX銘柄2021
優れたDX推進に取り組み、DX銘柄2021として選定された企業です。
企業名 | 業種 | 証券コード |
清水建設株式会社 | 建設業 | 1803 |
アサヒグループホールディングス株式会社 | 食料品 | 2502 |
旭化成株式会社 | 化学 | 3407 |
中外製薬株式会社 | 医薬品 | 4519 |
出光興産株式会社 | 石油・石炭製品 | 5019 |
株式会社ブリヂストン | ゴム製品 | 5108 |
JFEホールディングス株式会社 | 鉄鋼 | 5411 |
株式会社小松製作所 | 機械 | 6301 |
日本電気株式会社 | 電気機器 | 6701 |
ヤマハ発動機株式会社 | 輸送用機器 | 7272 |
株式会社トプコン | 精密機器 | 7732 |
凸版印刷株式会社 | その他製品 | 7911 |
東日本旅客鉄道株式会社 | 陸運業 | 9020 |
SGホールディングス株式会社 | 陸運業 | 9143 |
日本郵船株式会社 | 海運業 | 9101 |
日本航空株式会社 | 空運業 | 9201 |
ソフトバンク株式会社 | 情報・通信業 | 9434 |
トラスコ中山株式会社 | 卸売業 | 9830 |
株式会社セブン&アイ・ホールディングス | 小売業 | 3382 |
日本瓦斯株式会社 | 小売業 | 8174 |
株式会社りそなホールディングス | 銀行業 | 8308 |
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社 | 証券、商品先物取引業 | 8616 |
MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 | 保険業 | 8725 |
東京センチュリー株式会社 | その他金融業 | 8439 |
株式会社GA technologies | 不動産業 | 3491 |
株式会社ベネッセホールディングス | サービス業 | 9783 |
デジタルトランスフォーメーション注目企業2021(DX注目企業)
DX銘柄に選定されなかった企業の中から、企業価値貢献部分において、注目に値する取り組みを実施している企業が、「DX注目企業」として選定されています。
企業名 | 業種 | 証券コード |
日清食品ホールディングス株式会社 | 食料品 | 2897 |
株式会社ワコールホールディングス | 繊維製品 | 3591 |
ユニ・チャーム株式会社 | 化学 | 8113 |
大日本住友製薬株式会社 | 医薬品 | 4506 |
AGC株式会社 | ガラス・土石製品 | 5201 |
三菱重工業株式会社 | 機械 | 7011 |
富士通株式会社 | 電気機器 | 6702 |
大阪瓦斯株式会社 | 電気・ガス業 | 9532 |
ANAホールディングス株式会社 | 空運業 | 9202 |
日本電信電話株式会社 | 情報・通信業 | 9432 |
三井物産株式会社 | 卸売業 | 8031 |
住友商事株式会社 | 卸売業 | 8053 |
Hamee株式会社 | 小売業 | 3134 |
株式会社三井住友フィナンシャルグループ | 銀行業 | 8316 |
株式会社大和証券グループ本社 | 証券、商品先物取引業 | 8601 |
SBIインシュアランスグループ株式会社 | 保険業 | 7326 |
SOMPOホールディングス株式会社 | 保険業 | 8630 |
リコーリース株式会社 | その他金融業 | 8566 |
三菱地所株式会社 | 不動産業 | 8802 |
ユナイテッド株式会社 | サービス業 | 2497 |
デジタル×コロナ対策企業
DX銘柄選定とは別に、DX銘柄に応募のあった企業の中から、新型コロナウイルス感染症への対応として、優れた取り組みを実施した企業が、「デジタル×コロナ対策企業」として選定されています。
製造・物流戦略部門
企業名 | 業種 | 証券コード |
ヤマトホールディングス株式会社 | 陸運業 | 9064 |
アスクル株式会社 | 小売業 | 2678 |
カスタマ―ケア部門
企業名 | 業種 | 証券コード |
株式会社資生堂 | 化学 | 4911 |
コニカミノルタ株式会社 | 電気機器 | 4902 |
東急不動産ホールディングス株式会社 | 不動産業 | 3289 |
業務効率化部門
企業名 | 業種 | 証券コード |
株式会社大和証券グループ本社 | 証券、商品先物取引業 | 8601 |
東京海上ホールディングス株式会社 | 保険業 | 8766 |
レジリエンス部門
企業名 | 業種 | 証券コード |
サントリー食品インターナショナル株式会社 | 食料品 | 2587 |
日本電気株式会社 | 電気機器 | 6701 |
アステリア株式会社 | 情報・通信業 | 3853 |
三井不動産株式会社 | 不動産業 | 8801 |
6.DX銘柄選定企業の特徴
DX銘柄に選定された企業はどのような特徴をもっていたのでしょうか。業種・業界問わず活用できそうな特徴は次の通りです。
- 基幹システムの刷新
- アジャイル開発への取り組み
- 情報の見える化と一元化による意思決定速度の向上
- DX採用・人材育成への注力
- DX推進において必要な人材像とスキルを定義
- 「挑戦を推奨し必敗を許容する」などDX実現に向けた組織風土改革
- DX推進専門組織の立ち上げ
- ビジネスサイドとエンジニアがコラボしやすい仕組みの構築
7.DX銘柄2022のスケジュール
最後にDX銘柄2022の応募スケジュールについてご紹介します。詳細は下記の経済産業省のサイトからご確認ください。
- 2021年11月5日……調査項目等公表
- 2021年11月上旬頃……調査アンケートのフォーマット公開
- 2021年12月1日~22日……調査受付期間
- 2021年12月~2022年4月……DX銘柄企業選定
- 2022年5月下旬~6月初旬頃……DX銘柄2022選定企業発表
- 2022年6月中旬以降……フィードバックレポート発送