近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっています。DXを実現するためのさまざまなツールが各社から販売されていますが、「どんな種類があるのかわからない」「自社に必要なツールを知りたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、DX推進に役立つ11種類のツールをご紹介しています。概要とあわせて「どんな場合におすすめなのか」も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.DXに役立つツールとは?
DXに役立つツールとは、業務プロセスをシステム化し、業務の効率化や新たな価値創出を助けるツールのことです。DXに役立つツールにはたくさんの種類がありますが、ツールによってできることは大きく分けて次の3つです。
- 情報の一元管理
- 業務効率化
- データ活用
この中で特に重要なのが情報の一元管理です。業務に必要な情報をデータとして一元管理することによって、業務効率化とデータ活用が可能となります。
2.DXでツールを活用する注意点
ツールは使いこなせれば非常に便利ですが、注意しなければならないのはツールを導入したからといってDXが達成できるわけではないということです。
一部の業務をシステム化しても、それは「変革」とはいえません。システム化にとどまらずにDXを達成するには、全社最適をかなえ、横断的なデータ活用で新たな価値創出を目指す必要があります。
3.DXに役立つツール一覧
名称 | 領域 | 主な機能 | サービス例 |
コラボレーションツール | 全般 | 業務効率化、遠隔化、コミュニケーション活性化 | Zoom、Webex、Google ドライブ、Slack、Chatwork |
業務改善プラットフォーム | 全般 | 業務効率化、一元管理 | kintone、TeamSpirit |
ワークフローシステム | 全般 | 業務効率化、一元管理 | TeamSpirit、X-point Cloud |
RPA(ロボットにより業務自動化) | 全般 | 業務効率化 | BizRobo!、WinActor |
BIツール | 経営、マーケティングなど | データ活用 | Tableau、Google データポータル |
MA(マーケティング支援システム) | マーケティング | 業務効率化、一元管理、データ活用 | Marketo、SATORI |
SFA(営業支援システム) | 営業 | 業務効率化、一元管理、データ活用 | Sales Cloud、Salesforce |
CRM(顧客管理システム) | 営業、カスタマーサポート | 業務効率化、一元管理、データ活用 | Salesforce、kintone、Sansan |
チャットボット | 営業、カスタマーサポート | 業務効率化、データ活用 | MOBI BOT |
経費生産システム | 経理 | 業務効率化、一元管理 | 楽楽精算、マネーフォワード |
HRTech | 人事 | 業務効率化、一元管理、データ活用 | カオナビ、HERP Hire |
コラボレーションツール
コラボレーションツールとは、オンライン会議システムやオンラインストレージ、ビジネスチャットなどのことです。業務効率化やコミュニケーション活性化が期待できます。
リモートワークが可能になるため、遠方の人材活用や社外の人材とのコラボレーションにも役立ちます。
コロナ禍において必要性が急速に高まりました。経済産業省『DXレポート2』でも、企業が直ちに取り組むべきアクションとして、業務環境のオンライン化ができるITインフラの整備が挙げられています。
- リモートワークを推進したい
- 遠方の人材活用を行いたい
- 内線での業務連絡にいちいち手を止められている
業務改善プラットフォーム
業務改善プラットフォームとは、さまざまな機能を搭載した業務改善のためのプラットフォームです。
勤怠管理、経費申請、工数管理、電子稟議、ワークフローといったさまざまな業務を一つのシステムで行えます。各システムを各部署で導入・管理するよりも、全体最適化を考えやすいというメリットがあります。
業務効率化と管理業務のコスト削減だけでなく、違法取引や申請ミスがないかをチェックしやすいので内部統制やガバナンスにも役立つでしょう。
- リモートワークを推進したい
- 各部署や拠点でさまざまな業務が個別最適化されており、データ管理が二重、三重になっている
- 勤怠管理、経費申請など幅広い業務を一元管理したい
- 内部統制を強化したい
ワークフローシステム
稟議や契約書、各種申請などの手続きを電子化するシステムです。従来、紙で行っていた申請書や伝票を電子化し、承認や回覧ができます。
ペーパーレス化により経費や管理の手間が削減できるのがメリットです。また、申請の記入方法を統一できるので、RPAの導入も考えやすくなります。
- 稟議や各種申請を紙やエクセルで行っていて、管理業務が煩雑化している
- 各部署や拠点でワークフローが個別最適化されている
- 定型的に発生する事務作業を効率化したい
RPA(ロボットによる作業自動化)
RPAとは、「ロボティックプロセスオートメーション」の略で、人がパソコン上で行っている作業をロボットにより自動化できるシステムです。マクロやGASとは違い、複数のアプリケーションをまたいだ作業でも、登録すれば自動化できます。
日次のレポート業務など、「誰がやってもよいが、頻繁に発生する」ような仕事の効率化に適しています。例外には弱いですが、定型業務なら人為的ミスなく、休みなく動かすことが可能です。
- 誰がやってもよい単純な定型業務に時間を取られている
- 夜間や休日に済ませておければ楽な定型業務がある
BIツール(ビジネスインテリジェンス)
BIは「ビジネスインテリジェンス」の略です。BIツールとは、企業が保有している大量のデータを、図やグラフ、表などのわかりやすい形でアウトプットするツールです。データを経営判断やマーケティングなどに活用できます。
いろいろなデータを掛け合わせて見ることも可能なので、レポーティングや仮説検証、新しい発見を得るのに役立ちます。専門家がいなくてもデータ分析ができるようになるのが利点です。
- さまざまなデータを見てすばやく経営判断していきたい
- レポート作成やそのためのデータ収集に膨大な時間を取られている
MA(マーケティング支援システム)
MAは「マーケティングオートメーション」の略です。新規顧客獲得や見込み顧客の育成といったマーケティング施策を支援するシステムです。
オンラインやオフラインなど、異なるチャネルから呼び込んだ見込み顧客を一元管理し、アプローチを自動化できます。
条件を満たした顧客のピックアップやメルマガ配信の自動化などができ、見込み顧客を増やす施策が打ちやすくなります。
- 見込み顧客を増やしたい
- 見込み顧客の管理や追跡に手間を取られている
- 確度を高めるアクションをベストタイミングでできていない
SFA(営業支援システム)
SFAとは、「セールスフォースオートメーション」の略です。営業支援システムと訳されます。
営業プロセスや進捗状況を管理し、営業活動の生産性向上を図るシステムです。顧客情報や案件の進捗、ToDoなどを一元管理できます。
属人化していた営業プロセスを見える化したり、一定期間コンタクトを取っていないとアラートが飛ぶなど、マネジメントを自動化できるメリットがあります。
- 進捗状況の管理が人によってバラバラで、最新の状況を把握するのに手間がかかっている
- 後追いメールや進捗確認などのフォローが属人化しており、たまにうっかりミスがある
- データを活用して営業フローの改善をしたい
CRM(顧客管理システム)
CRMとは「カスタマーリレーションシップマネジメント」の略です。顧客情報や、やり取りの履歴などを一元管理するシステムです。
顧客とのコミュニケーション履歴を蓄積できるので、チーム内での情報共有がリアルタイムに可能となり、担当者の引き継ぎもスムーズにできます。
顧客との信頼関係構築につながり、生涯顧客価値(LTV)や収益の向上が期待できるでしょう。
- 顧客管理が人によってバラバラで、最新の状況を把握するのに手間がかかっている
- フォローが属人化しており、たまにうっかりミスがある
- データを活用して顧客満足度や生涯顧客価値(LTV)を高めたい
チャットボット
チャットボットとは、自動的に会話を行うプログラムのことです。見込み顧客向けにWebコンテンツを案内するシステムや、サポートデスクの問い合わせを効率化するものもあります。
登録した選択肢どおりに案内をするシナリオ型、会話ログから自動で学習するAI型などがあります。
メールや電話対応のコスト削減や、顧客接点のデジタル化に効果的です。
- 顧客からの同じような質問に毎回人力で回答している
- 問い合わせ対応に追われ、本来の業務をする時間が取られている
- 顧客接点をデジタル化したい
経費精算システム
経費精算システムは、経費申請や承認などの経費精算業務を一元管理し、効率化するシステムです。
入力された申請内容を自動で仕分けたり、会計ソフト用のデータ作成を効率化できるものもあります。また、交通費ルートの確認といった面倒な作業も削減できます。
データ連携ができるシステムなら何度も同じデータを入力するという手間が省け、ミス防止にもつながるでしょう。
- 経費精算を紙やエクセルで行っている
- 月に何度も同じデータを入力したり、間違いがないかチェックする業務に追われている
- 経費の申請から承認までに時間がかかっている
HRTech
HRTechとは、ヒューマンリソースとテクノロジーを掛け合わせた略語で、IT技術を使った人事システムのことです。勤怠管理や労務管理、採用管理からタレントマネジメントまで、多様なジャンルから多くのシステムが販売されています。
人事に関する情報を一元管理し、業務の効率化が可能です。さらに蓄積したデータをAIで分析したり、マネジメントに活用するなど、新たな価値を生み出す機能も多く出てきています。
- 人事情報が各部署や拠点に散在しており、管理業務が煩雑になっている
- 評価履歴などの人材情報をマネジメントや配置に活用できていない
- 蓄積した人材データを活用して、新たな人事施策を行っていきたい
4.DXに役立つツールの導入目的
ツールを導入すればDXが達成されるわけではありません。そのためには、「なぜツールを導入するのか」「導入の先にどのような目的があるのか」を理解し、明確にしておくことが重要です。
DX推進の中でツールを導入する主な目的を3つご紹介します。
IT予算を是正する
日本では、最新アップデートされずにブラックボックス化したレガシーシステムを抱える企業が多くあります。そして多くのIT予算がその現状維持に割かれ、守りのIT費用となってIT予算をひっ迫しているのです。
デジタル競争で生き抜くためには、守りのIT予算を最低限に抑え、新たなデジタル技術に投資しなければなりません。しかしこの状況が変わらなければ、煩雑化したレガシーシステムが技術的負債となって今後の企業経営に重くのしかかることが懸念されています。
その危険を回避するために、クラウドサービスや標準パッケージを積極的に活用し保守運用費を削減することで、IT予算を是正していかなければならないのです。
新たな価値を創出する
ツール内にデータを蓄積することで、分析や改善など新たな価値創出につなげられます。
たとえば、HRTechによるタレントマネジメントが挙げられます。
HRTech内に基本的な人事情報や評価履歴、面談履歴、各種サーベイの回答などをシステム内に集約し、それらのデータを人材育成やマネジメント、抜擢人事に活用していく使い方です。
このように、ツールに蓄積させたデータを活用することで、これまではできなかった新たな価値を生み出す取り組みができるようになります。
業務を効率化する
今後労働人口が減少すると予測されている中で、頻繁に発生する、かつ誰がやっても同じ作業は自動化していく必要があります。
業務効率化によって価値創出のために使える業務時間が増やせ、生産性向上につながります。
5.DXに役立つツールを選ぶ4つのポイント
更新性が高いか
DX推進を目的としてツールを選ぶ場合、最も重要なのが更新性といえるでしょう。
アップデートにベンダーへの依頼が必要で、数百万の費用がかかるようなケースがよくありますが、更新性が高いとはいえません。ツールの更新性が低いと結局保守・運用費がかさみ、時間がたつと再度レガシー化してしまいます。
クラウドツールの多くはベンダー側が自動でアップデートをするので、更新性にすぐれています。業務上仕様変更が多い場合は、柔軟性の高いシステムを採用するとよいでしょう。
データ連携ができるか
一部の業務に特化したシステムでも、関連するシステムとデータ連携ができる場合があります。
データを連携すれば、さらに業務を効率化したり横断的なデータ活用が可能となります。
操作がわかりやすいか
操作が難しい専門的なツールだと使える人が限られ、なかなかDX推進の取り組みが広がりません。また、社内からの質問対応に追われたりなど、活用促進に時間や手間がかかってしまいます。
直感的に操作しやすく、誰もが使いやすいツールがよいでしょう。
サポートが充実しているか
新しいシステムの活用を軌道に乗せるには、移行作業を乗り越えなければなりません。ツール導入で終わらせないためにも、サポートが充実しているかは確認しておくべきです。
導入企業が多くユーザーコミュニティがあれば、他社の活用ノウハウなどを知れ、更なる活用につながります。