エビングハウスの忘却曲線とは?【わかりやすく解説】復習タイミング
エビングハウスの忘却曲線とは、時間経過にともなう記憶の変化やメカニズムについて研究したものです。ここではエビングハウスの忘却曲線における節約率の意味や復習に最適なタイミング、ビジネスで活用する方法などについて解説します。
目次
1.エビングハウスの忘却曲線とは?
※エビングハウスの忘却曲線画像を挿入してください
エビングハウスの忘却曲線とは、記憶の忘却を表す曲線のこと。ドイツの心理学者H・エビングハウスが考案したことからその名がつけられました。教育の現場ではもちろん、人材教育にも活用できる考え方として広く用いられています。
忘却曲線の意味
エビングハウスの忘却曲線は復習にかかる時間を表したグラフです。縦軸に忘却率、横軸に時間をおいて、忘却までの割合をグラフに表しています。忘却曲線によって、はじめのうちは記憶の忘却が急激に進み、一定の忘却が進むとその忘却率は次第に緩くなることがわかっています。
つまり人は時間が経過するほど覚え直すのに時間がかかるものの、早い段階で復習の時間を作れば効率よく暗記できるのです。復習を繰り返せばより短い時間で記憶を呼び起こせるようになり、定着率を高められます。
2.エビングハウスの忘却曲線における節約率とは?
エビングハウスの忘却曲線は、全体がわかりやすい反比例の形をしています。誤解されることも多いものの、これは記憶が時間の経過によって忘れやすくなるという意味ではありません。「節約率」という言葉で復習にかかる時間を表したのがエビングハウスの忘却曲線です。
節約率が表す意味
「節約率」とは一度記憶した内容を再び記憶しようとした場合、はじめと比較してどのくらい時間を節約できたかを表す数値のことです。具体的には以下の計算式で求められます。
節約率=節約された時間(回数)÷1回目の記憶に必要だった時間(回数)
たとえば10個の英単語を初めて覚えた際、5分の時間がかかったとします。2回目に3分で覚え直せた場合、節約率は2(2分の節約)÷5=40%となります。節約率は高ければ高いほど覚え直すのに必要な時間(回数)が減ることを意味しています。
実験結果から見る節約率
エビングハウスが行った「無意味な単語の綴りを暗記したあとの保持率」という実験では次のような結果が出ています。
- 20分後の節約率:58%
- 1時間後の節約率:44%
- 1日後の節約率:26%
- 1週間後の節約率:23%
- 1か月後の節約率:21%
この実験で記録しているのはあくまでも無意味な情報です。覚えた知識が相互に関連する体系的な知識であれば、曲線はさらに緩やかになると考えられています。
3.エビングハウス忘却曲線から分かる最適な復習のタイミング
エビングハウスの忘却曲線から、復習に最適なタイミングがわかります。たとえば学習後24時間以内に10分間の復習をすると、記憶はほぼ100%にまで戻ります。さらに1週間以内の復習であれば5分でよみがえり、1か月以内には2~4分の復習で記憶は復活するのです。
人間の記憶は脳の「海馬」と呼ばれる部分が司っています。過去の記憶をすべて脳に蓄積することはできません。そこで不要な情報を切り捨てるのが海馬の役割です。海馬は繰り返し学習した記憶を「これは必要な情報なんだ」と認識し、長期記憶に移行します。
1度目はなるべく早いタイミング
エビングハウスの忘却曲線は、記憶してから1時間後の忘れ方が顕著であると伝えています。つまり最初の復習はなるべく早いタイミングに行うのがベストです。具体的には勉強後1時間以内に復習することが望ましいといえます。
復習回数が少ないものを優先
記憶の定着は、復習回数が少ないものを優先しましょう。4回目、5回目の復習は記憶の定着率も上がっているため、後回しで構いません。1度目の復習タイミングを逃すと定着率は大きく下がります。
完全に忘れ切った状態で学習し直すのは効率が悪いため、復習回数の少ないものから復習して定着率を高めていきます。
4.エビングハウスの忘却曲線をビジネスで活用する方法
エビングハウスの忘却曲線はビジネスでも活用可能です。管理職や人事担当者などがエビングハウスの忘却曲線を活用する際は、以下の4点を意識して学習内容を定着させます。
- 研修内容の選定
- 記憶定着にふさわしい環境整備
- 学習内容をアウトプットする機会の提供
- フォロー研修の設定
①研修内容の選定
先に触れたとおり、エビングハウスの忘却曲線を作成した実験は「意味を持たない音節の記憶」に対する数値を表したものです。つまり教育を受ける人材が興味を持った分野であれば、節約率はまったく違った数値になると考えられます。
エビングハウスの忘却曲線を人材教育に活用する際は、その範囲を見極めることが重要です。すべての人材教育にエビングハウスの忘却曲線を取り入れようとすると、かえって学習効率が低下する恐れもあります。
②記憶定着にふさわしい環境整備
エビングハウスの忘却曲線から、1回目の学習より2回目からの学習の方が記憶に残りやすいことが分かっています。関心がない知識でも、復習を繰り返すことで記憶しやすくなるのです。このポイントをおさえて記憶定着にふさわしい環境を整えます。具体的には以下の方法があります。
- 新たな知識の詰め込みだけでなく、過去の学習と同じ範囲を復習する
- 1回の研修時間を短くする
- 短時間の研修を毎週実施する
③学習内容をアウトプットする機会の提供
知識はインプットするだけでなくアウトプットすることで定着率が上がります。脳の海馬は何度も引き出す記憶を大事な知識と認識します。以下の機会を設けて、学習内容を定着させましょう。
- 座学のあとに小休憩を挟み、そのあとに復習として現場で実践する
- 複数人で声に出して確認し合う
- eラーニングを使って反復学習を行う
④フォロー研修の設定
学習内容の定着率を高めるには、研修後一定期間が経過してから同じメンバーを集めてフォロー研修を組み込むことも有効です。具体的な経過期間とフォロー内容としては以下の例があります。
- 研修2週間後:実践内容を共有し、実践中の疑問やつまずきを解消する。また実践していない人には実践を促進し、継続を促す
- 研修1か月後~3か月後:実践の成果や失敗を振り返る。実践状況を見直して定着を促進
- 研修半年後:実践の成果と課題を振り返る仕上げの段階
- 研修1年後以降:内容を思い出させるため、定期的にフォロー研修を行う
5.エビングハウスの忘却曲線の活用に便利なツール
エビングハウスの忘却曲線を活用する際は、アプリや文房具などさまざまなツールを活用するとより効果的に記憶の定着を高められます。
Excel
Microsoft社が提供している表計算ソフト、Excelは忘却曲線の活用にぴったりなツールです。「繰り返し復習する」「小分けにして覚える」というふたつのポイントをおさえながら、知識を確実に定着させていきます。
ビジネス資格を取得するシーンを想定してみましょう。横軸に復習の間隔、縦軸に勉強の内容を書きます。次に縦軸のうえから順に勉強を進め、復習した日付を書き込みます。こうすれば学習の進行度、また復習回数がひと目で分かるというわけです。
リマインドアプリ
スマートフォンなどのリマインドアプリを活用する方法も効果的です。エビングハウスの忘却曲線にもとづいて復習日があらかじめ設定されているアプリもあるものの、アプリがなくても繰り返し学習は可能です。
使い方はかんたん。忘却曲線に合わせて、リマインダーアプリに学習内容と復習日を設定するだけです。繰り返し機能を使えばルーティンワークの防止にも活用できます。さらに指定した場所に到着したらアラートを上げてくれる機能もあるため、学習内容を自然に覚えるられます。
付箋
エビングハウスの忘却曲線を活用する際、付箋を使う方法もあります。使用するのはどこにでも売られている一般的な付箋で構いません。エビングハウスの忘却曲線に合わせて、復習する日付を付箋の上から下に向かって書き込みます。
その付箋をノートやテキストに貼り、復習した日にその日付が書かれた付箋を切るだけです。次回の復習タイミングや復習回数が少ない単元は、付箋を見ればすぐにわかります。
あらかじめ忘却曲線の日付が記載された付箋も販売されているため、それを活用するのもよいでしょう。
6.エビングハウスの忘却曲線を活用する際の注意点
エビングハウスの忘却曲線は「無意味な音節を覚えたときの記憶データ」です。これが意味のある内容だった場合、記憶の定着率はさらに高くなるでしょう。エビングハウスの忘却曲線を活用する際は、忘却曲線に対する理解が欠かせません。
忘却曲線への理解
たとえば何の意味もない4桁の数字を覚えるのと、友人の誕生日を覚えるのとでは後者のほうがかんたんです。また漢字を10個記憶する際、無作為に抽出された10個の漢字を覚えるよりは「魚へんの漢字」という共通事項のある漢字を10個覚える方が紐づけやすくなります。
これはビジネスにおいても同じです。まったく興味関心ない研修と、実務に直結する研修とでは記憶の定着率は変わってきます。なんのためにその研修を実施するのか、何を学びたいのかなどをあらかじめ明確にしておくことが重要です。
7.エビングハウスの忘却曲線と並ぶ概念「学習ピラミッド」
エビングハウスの忘却曲線によく似たものに「学習ピラミッド」という概念があります。これはアメリカの国立訓練研究所が、受動的な学習から能動的な学習までを段階的に行って定着率を高める方法を、ピラミッド型にまとめたものです。
学習ピラミッド(ラーニングピラミッド)とは
学習ピラミッド(ラーニングピラミッド)では学習の効果性を次のように定めて、ピラミッド型にまとめています。
- 講義(5%):座学的な内容を一方的に説明する方法。講義や集合教育など
- 読書(10%):自分の意思で知識を学ぶ
- 視聴覚(20%):動画や音声などを活用した学習
- 実演(30%):実際に活用しているシーンを見て学ぶ
- ディスカッション(50%):議論を行いながら学ぶ方法。ワークショップ研修など
- 練習:(75%):課題に取り組みながら実践学習する
- 他者への指導(90%):考え方や知識を誰かに教えて定着度を上げる
ビジネスにおける効果
学習ピラミッドは学習の効率を高める際にはもちろん、能動的な人材を育成する際にも効果的です。学習ピラミッドを見れば、学習者が現在どの段階にいるのか、学習定着率はどのくらいなのかがすぐにわかります。
たとえば講義を受けたばたりの段階なら学習定着率は5%程度、他人に指導できるようになれば90%程度定着しているというわけです。また学習ピラミッドを基準として教育方法を統一すれば、教え方にばらつきが出ることもなくなります。
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