教育訓練給付金とは、再就職やスキルアップのために学んだ人へ、負担した費用の一部を支給するものです。教育訓練給付金について、制度の仕組みや申請方法などについて説明します。
目次
1.教育訓練給付金とは?
教育訓練給付金とは、労働者や求職中の人が、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了したとき、支払った費用の一部が支給される給付金のこと。
教育訓練給付金を受給するためには、備えておくべき条件があります。また支給額にも、条件や上限があるのです。教育訓練の内容によっても支給内容が異なります。
2.教育訓練給付金の目的
教育訓練給付金制度の目的は、下記のとおりです。
- 働く人の主体的な能力開発の取組みと中長期的なキャリア形成を支援する
- 雇用の安定
- 再就職の促進を図る
厚生労働省により、雇用保険制度の一環として行われています。労働者や離職者が資格取得のため、講座や専門課程を受講してキャリアアップや就職につなげるものです。
3.教育訓練給付金の対象となる講座
教育訓練給付金を受け取るには、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座の受講が必須です。
自分が目指す資格や職種、受講したい講座や専門課程が、厚生労働大臣の指定を受けているかの確認は、インターネットの「教育訓練給付制度 厚生労働大臣 指定教育訓練講座 検索システム」から検索して調べられます。指定された講座を探すのも可能です。
4.教育訓練給付金の種類
教育訓練給付金には、3種類あります。
- 一般教育訓練給付金
- 特定一般教育訓練給付金
- 専門実践教育訓練給付金
①一般教育訓練給付金
学びたい人のキャリアアップやスキル向上を目指し、労働者の長期的な雇用や再就職の促進などを図るもの。
講座を受講し修了すれば、かかった費用の一部がハローワークから支給されます。一般的に「教育訓練給付金」というときは、この一般教育訓練給付金を指すのが多いです。続いて一般教育訓練給付金の支給対象者・支給要件期間・支給額について説明しましょう。
支給対象者と支給要件期間
一般教育訓練給付金が支給される条件は、下記のとおりです。
- 受講開始日時点で、雇用保険の支給要件期間が3年以上である
- 離職者は離職日の翌日以降受講開始日までの、雇用保険の支給要件期間が1年以内である
- 前回の教育訓練給付金の支給から、今回の受講開始日までが3年以上経っている
ただしほかの事業所での被保険者の期間が1年を超えると、支給要件期間は通算されないといった注意点があります。
初回利用時と2回目以降利用時の注意点
一般教育訓練給付金は、初回利用時と2回目以降の利用で要件が異なります。
- 初回利用時:雇用保険加入の支給要件期間が1年以上ある
- 2回目以降:過去の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上あり、前回の教育訓練給付金受給日から3年以上経っている
支給額
一般教育訓練給付金の支給額は、以下のとおりです。
- 教育訓練の受講費用の20%相当額
- かつ上限が10万円
ただし支給額が4,000円を超えないときには、支給されません。
②特定一般教育訓練給付金
平成31年3月の雇用保険法施行規則改正により、従来あった一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金にプラスされて、特定一般教育訓練給付金ができました。
介護職やIT関連のスキルなどキャリア形成効果が高い講座を対象に、速やかな再就職やキャリアアップを目指しています。条件は、厚生労働大臣の指定を受けた講座を指定有効期間内に受講開始することです。
支給対象者と支給要件期間
支給対象者は以下のとおりです。
- 受講開始日時点で、雇用保険の支給要件期間が3年以上
- 離職者は離職日の翌日以降受講開始日までの、雇用保険の支給要件期間が1年以内である
- 前回の教育訓練給付金の支給から、今回の受講開始日までが3年以上経っている
ただしほか事業所での被保険者の期間が1年を超えると、支給要件期間は通算されないなどの注意点があります。また受講開始前に訓練前キャリアコンサルティングと受給資格確認が必要になります。
初回利用時と2回目以降利用時の注意点
一般教育訓練給付金は、初回利用時と2回目以降の利用では、雇用保険に加入していた期間の要件が異なります。
- 初回利用時は、雇用保険加入の支給要件期間が1年以上ある
- 2回目以降は過去の受講開始日以降の支給要件期間が3年以上あり、前回の教育訓練給付金受給日から3年以上経っている
支給額
特定一般教育訓練給付金については以下のとおりです。
- 教育訓練の受講費用の40%相当額
- かつ上限が20万円
あらかじめ講座の受講開始1カ月前までに、訓練前キャリアコンサルティングを受けます。そしてジョブ・カードを作成後、ハローワークにて受給資格確認をするのです。
③専門実践教育訓練給付金
専業務独占資格や名称独占資格(美容師や看護師など)を取得し、長期的に働くことを目標に実施されているもの。1年から3年の訓練が主流で、資格を取得するとすぐに就職できます。
以下で専門実践教育訓練給付金の支給対象者と支給要件期間・支給額について説明します。
支給対象者と支給要件期間
専門実践教育訓練給付金の支給対象者と支給要件期間は、下記のとおりです。
- 受講開始日時点で、雇用保険の支給要件期間が3年以上
- 離職者は離職日の翌日以降受講開始日までの、雇用保険の支給要件期間が1年以内
- 前回の教育訓練給付金の支給から、今回の受講開始日までが3年以上経っている
ただしほか事業所における被保険者の期間が1年を超えると、支給要件期間は通算されないといった注意点もあります。
支給額
専門実践教育訓練給付金は、6カ月に1度申請します。支給額は以下のとおりです。
- 受講中は、教育訓練経費の50%が支給される
- 1年間の訓練に支給される限度額は40万円(3年間では120万円)
- 資格を取得してから1年以内に雇用保険に加入すると、費用の20%が追加支給される
公務員・自営業は対象外
教育訓練給付金制度が利用できないのは、公務員と自営業や個人事業主。教育訓練給付金制度の利用は、雇用保険の加入が必須です。上記の人々は雇用保険の適用対象外となっているため、教育訓練給付金制度を利用できません。
適用対象期間は最大20年間まで延長可能
教育訓練給付金制度の適用対象期間を、最大20年延長できる場合があります。それは離職日の翌日以降1年間のうちに、妊娠や出産、病気やケガなどの理由で、30日以上教育訓練の受講を開始できないとき。ハローワークに申請すると延長できます。
教育訓練給付金の対象となるかわからない場合
受講後に申請した際、「対象外のため給付金が受けられなかった」となってしまっては残念です。受講開始前に、ハローワークで自分が教育訓練給付金対象になっているか、確認しましょう。
教育訓練給付金支給要件照会票を使えば、郵送で問い合わせできます。
5.教育訓練給付金(一般教育訓練給付金)の申請から支給までの流れ
一般教育訓練給付金を例に、申請の流れを見ていきましょう。特定一般教育訓練給付金や専門実践教育訓練給付金とは流れが異なりますので、注意しましょう。
- 講座に申し込み
- 講座を受講・修了
- 給付金申請手続
- 教育訓練給付金の不正受給に注意
①講座に申し込み
下記の点をまず確認します。
- 取りたい資格や目指す職種、受講したい講座や専門課程が、厚生労働大臣が指定するものであるか
- 自分が教育訓練給付の支給要件を満たしているか
次に教育機関に講座の受講を申し込みます。
②講座を受講・修了
カリキュラムを受講し、知識やスキルを身につけるため努力して修了します。また教育訓練給付金の受給では、下記に注意しましょう。
- 講座を受講していて途中でやめてしまった場合、教育訓練給付金は支給されない
- 必須課題をすべて提出し、修了課題の得点や評価が基準点以上である
ただし資格試験に合格できなくても支給されます。
③給付金申請手続
受講が修了したら、教育訓練給付金の申請手続きをします。
申請先
教育訓練給付金の申請先は、本人の住所を管轄するハローワーク。申請の際にさまざまな書類が必要になります。
- 教育訓練給付金支給申請書
- 教育訓練修了証明書
- 雇用保険被保険者証
- 本人確認書類
申請期間
教育訓練給付金の申請手続きは、教育訓練の受講修了日の翌日から起算して1カ月以内に行います。適用対象期間の延長中に受講を開始し、修了した人も同様です。申請手続きや書類の提出は本人が行うことになっています。
④教育訓練給付金の不正受給に注意
給付金の不正受給には注意しましょう。不正受給にかかわると、下記のような可能性があります。
- 給付金を受給できない
- 不正受給した金額の返還と、くわえて返還額2倍の金額の納付
- 詐欺罪で告訴される
- 一定期間、ほか教育訓練の受講で給付金を受けられない
6.教育訓練給付金申請書の書き方
それでは教育訓練給付金申請書の書き方について、説明します。
- 個人番号(マイナンバー)
- 被保険者番号
- 指定番号や教育訓練施設の名称、教育訓練講座名
- 記入の注意点
①個人番号(マイナンバー)
個人番号(マイナンバー)の記入が必要です。「個人番号(マイナンバー)がわからない」「マイナンバーカードや通知カードがない」人は、市区町村役所で「マイナンバー入り住民票」を発行すると、確認できます。
②被保険者番号
「被保険者番号」は、雇用保険被保険者証に記載されています。離職者は離職票にも記載されています。もし紛失などで確認できなければ、ハローワークにて即日無料で雇用保険被保険者証を再発行してもらえるので、そちらで確認しましょう。
③指定番号や教育訓練施設の名称、教育訓練講座名
指定番号や教育訓練施設の名称、教育訓練講座名が不明な場合は、受講していた教育訓練施設から発行される教育訓練終了証明書を確認します。もしくは受講していた教育訓練施設に問い合わせると、よいでしょう。
④記入の注意点
教育訓練給付金支給申請書を記入する際、下記に気をつけましょう。
- 枠からはみ出さないように記入する
- 機械で読み取るため、大きな字で記入して汚さない
- 間違って記入した場合は訂正印が必要
7.教育訓練給付金の疑問点
教育訓練給付金について、不明点もしくは相談したい内容がある場合は、最寄りのハローワークに問い合わせます。
- 会社への通知
- 失業保険との併用
- 年齢制限
- 期限が切れてしまった後の申請
- 通信制や夜間制の講座
①会社への通知
教育訓練給付金の手続きに関して勤務先はかかわらないため基本、知られません。しかし雇用保険被保険者証を紛失している場合、勤務先経由で再発行すると何か疑問を持たれる可能性はあります。不安であれば、自分でハローワークにて再発行しましょう。
②失業保険との併用
失業手当と教育訓練給付金は受講開始日時点で、雇用保険の支給要件期間が3年以上であるといった支給条件を満たしていれば、併用できます。
ただし教育訓練給付金は、訓練経費を先に自分が払い、受講終了後に支給されるという順番なので、費用の計画に注意が必要です。
③年齢制限
教育訓練給付金を受給する条件は教育訓練施設で受講開始する際の年齢が45歳未満であるかどうか。教育訓練給付金制度は働く人や仕事を探す人のキャリアやスキルアップ、再就職や雇用の安定といった目的があるので、年齢制限があります。
④期限が切れてしまった後の申請
教育訓練の受講修了日の翌日から数えて、1カ月以内に支給申請の手続きをしなければなりません。
しかし申請期限を過ぎても、教育訓練修了証明書記載の受講修了日の翌日から考えて2年を経過するまでの期間なら申請可能です。この場合、詳細はハローワークに問い合わせましょう。
⑤通信制や夜間制の講座
教育訓練支援給付金は一定の条件を満たした人に、専門実践教育訓練給付金とあわせて支給されます。つまり離職し、昼間に受講し学習に専念する人を支援するものです。そのため通信制や夜間制の講座は、支給の対象になりません。