学歴フィルターとは、企業が採用の際、応募者を学歴によって選別することです。学歴フィルターの現状や職業との関係、活用のメリットとデメリット、採用基準の検討などについて詳しく解説します。
目次
1.学歴フィルターとは?
学歴フィルターとは、就職活動において、企業が採用する学生を学歴によって選別すること。特定大学以外の学生を採用選考から外す、大学名だけで選考に落ちるといった状況を指します。たとえば下記のような状況です。
低ランク大学の学生がサイトから会社説明会に応募すると「締め切り」と表示される
しかし名門大学の学生が応募すると「募集中」になっていた
2.学歴フィルターの現状
学歴フィルターを設けているかどうか、という質問に対して何らかのフィルターが「ある」と回答した企業は46.5%でした。
学歴フィルターを感じたことがある人の割合
就職活動をしていて、学歴フィルターを感じたことがあると回答した人は全体で40.2%でした。
- 男女別では、男性44.4%、女性36.0%
- 最終学歴別にみると、高等学校25.2%、専門学校と短期大学18.9%
- 4年制大学と大学院 46.4%
大卒以上を求める企業の割合
学歴を採用条件のひとつに設けている求人は、全体の60%を占めています。学歴の条件は、下記のとおりです。
- 大卒以上を求める求人が44%
- さらに6大学クラス以上が7%
- 旧帝大や早慶クラスが6%
- 大学院卒以上が0.5%
3.学歴と職業の関係
大卒者では専門職率が安定し、ブルーカラー化への明確な動きはありません。しかし1961〜70年生まれ以降は、職業キャリアの中盤で管理職割合が低下する傾向にあります。1971〜80年生まれではさらに縮小するのです。
一方、高卒者の事務職従事者率は急速に低下。大半が、キャリアの初期からブルーカラー職に就きます。
4.学歴フィルターがなくならない理由
学歴フィルターはなぜなくならないのでしょう。「高学歴は優秀」という根拠で社内に説明しやすいからです。そこには役員や社員の学歴信仰があります。
「高学歴は仕事ができる」という確証はありません。しかし一流大学合格を目指した努力や学習プロセスにより得た能力が、一定以上のレベルにあるといった証明にはなります。つまり「高学歴は優秀な人材である可能性が高い」のです。
5.企業が学歴フィルターを活用するメリット
学歴フィルターを活用するメリットは次の4点です。
- 採用活動の効率化
- 採用コストの削減
- 基礎学力の予測
- 努力を図るひとつの指標になる
①採用活動の効率化
低学歴を不採用にして採用する母数を減らすと、採用の手間が軽減します。さらに高学歴の応募者をピンポイントで採用しやすくなるのです。エントリーが多い企業ほど学歴フィルターは便利になるでしょう。
②採用コストの削減
学歴フィルターを活用せずに応募者を選考した場合、膨大な人数のエントリーシートの確認と面接が必要になります。これはそのまま採用コストと人件費にかかってくるでしょう。
③基礎学力の予測
学歴が高い人は、基礎的な学力がすでに備わっているといえます。つまりそれは、「目標を設定する能力」「目標を実現するための思考力や継続力、努力」などさまざまな能力があると考えられるのです。
④努力を図るひとつの指標になる
難関大学への入学には、一定の努力が必要です。高学歴の人は受験勉強を通して努力する習慣があります。優秀だから仕事ができる人材とは限りません。しかし努力が身についているため、難関を乗り越えやすいという見方ができるのです。
6.企業が学歴フィルターを活用するデメリット
学歴フィルターを活用するデメリットは、次の3点です。
- 企業のイメージダウン
- 「高学歴=仕事ができる」ではない
- 優秀な人材を排除する恐れも
①企業のイメージダウン
学歴フィルターは、社会一般からネガティブなイメージを持たれやすいもの。学歴フィルターを活用していると世の中に広く知れわたってしまえば、企業のイメージダウンにつながります。就活生に対しても企業イメージを大きく損なうでしょう。
②「高学歴=仕事ができる」ではない
高学歴の人は難関大学に入学するために必要な学力と努力、継続力などが備わっています。しかしそれらは仕事で結果を出すために必要な能力と同じではありません。社会人にはコミュニケーション能力やマーケティング力なども必要です。
③優秀な人材を排除する恐れも
高学歴ではなくても自社が求める優秀な人材はいるはず。学歴フィルターを活用した結果、自社が求める逸材を見逃してしまう可能性もあるでしょう。出会う機会を失ったり、取りこぼしてしまったりする可能性が高いのです。
7.学歴フィルターを利用している業界
学歴フィルターを利用している業界や企業は、就職偏差値や倍率が高いです。特にどこで多く学歴フィルターが見られるのか、業界や企業について見ていきましょう。
- 総合商社
- 外資系コンサルティングファーム
- 金融関連専門職
- 大手メーカーの研究職
①総合商社
大卒以上を求める求人が最も多い業種は総合商社や金融・保険、教育やコンサルティング・リサーチ。総合商社、銀行や教育などでは、新卒採用と中途採用のいずれでも、学歴を重視する傾向にあります。
②外資系コンサルティングファーム
外資系コンサルティングファームは、学歴フィルターを確実に採用しているといわれています。外資系コンサル業界はほか業界よりも選考時期が早く、高学歴の学生が多く志望するため、倍率も非常に高くなっているのです。
③金融関連専門職
金融関連専門職も求人の際、大卒以上を求める状況が多くなります。投資銀行業務やアナリスト、ディーラーなどでは正確で速やかな分析や判断が必要とされるので。とくに明晰さが求められる傾向を持つため、学歴が重視されると考えられます。
④大手メーカーの研究職
高度な専門的知識や学力が求められる大手メーカーの研究職は、能力だけでなく一流大学の研究室とのつながりも重視されます。一流大学のOBとなれば、中途採用でも優位性が生じるでしょう。
8.学歴フィルターを利用しない業界
学歴フィルターを採用しない業界も多くあります。一体どのような業界なのでしょう。
- BtoB向け製造業
- 小売業
- IT業界
①BtoB向け製造業
BtoB企業は、法人を対象にした企業。消費者との接点は少ないものの、社会にて重要な役割をもたらしているのです。そのため「自社製品が社会に果たす役割に共感できる」「働くことへの熱意や向上心が高い」人材が求められます。
②小売業
小売業は、初対面でもコミュニケーションがスムーズに取れる人に向いている業界です。「顧客のためと思える人柄」「世話好き」「サービス精神」「接客が好きで得意な人」などが求められる業界です。
③IT業界
ITエンジニア職は、高学歴よりもスキルレベルが重要とされる業界です。高レベルなスキルを身につけた努力や、ITエンジニアとしての実力、実践力が評価されます。自分がどの程度のスキルを保持しているか、確認が必要でしょう。
9.学歴フィルター以外の採用基準
人材の採用にて、学歴が本当に有効なのかは自社の現状や抱えている課題などから検証する必要があります。
- インターンシップでのつながり
- OB・OG訪問での判断
①インターンシップでのつながり
インターンシップは、学生にとってたくさんのメリットがあります。
長期インターン
長期インターンシップは、即戦力として学生を集めます。就活に対して前向きな学生が多いため、優秀な人材は早い段階で採用するのです。すでに内定を持っている学生が、入社前の研修としてインターンを行う場合も多くなります。
短期インターン
短期インターンシップは、1日~1週間前後で行われる就業体験のこと。セミナーやグループワークのほか、プレゼンテーションや企業文化を紹介する見学などが行われます。実際の業務を体験するケースもあるのです。
②OB・OG訪問での判断
OB・OG訪問を受ける企業側にも、大きな価値や重要性があります。
学生に伝えること
企業側が学生に伝えることは、次のような内容です。
- 自分が入社した時の志望動機:面接での模範解答になる
- 職場で楽しいと感じることややりがいを感じる業務内容:入社した後の自分をイメージできる
- 具体的な業務内容と1日の流れ:仕事をより明確に想定できる
- 会社のビジョンと自分の目標:入社後のキャリアパスをイメージできる
- 就職活動のプロセス:就活生の道標になる
OB・OG訪問の依頼が来たら
OB・OG訪問の依頼が来た際の対応は、下記のとおりです。
まず受けるかどうかは自由となります。なぜならOB・OG訪問は義務ではないからです。学生のために時間を作る必要があるため、企業の判断に任せられており、受け付けていない企業もあります。
基本は人事の通達に従うとよいでしょう。人事部がない企業では、総務部がその役割を果たしている場合も多いです。