営業戦略とは? 立案・進め方・分析のフレームワークを解説

営業戦略は企業の将来を左右する重要な施策です。ここでは、営業戦略について各種戦略との違いや分析方法なども含め解説します。

1.営業戦略とは?

営業戦略とは、売上や顧客数の増加といった利益目標を達成するために立てられる計画のこと。自社のマーケットシェアを拡大するためのブランディングも、営業戦略のひとつと考えられています。

経営戦略との違い

経営戦略とは、会社などの組織が持続的に生き残りを図るために、中長期的な組織目標を定めたり目標を達成するための戦略を考えたりすること。つまり経営戦略で定めた目標を達成するために取る手段のひとつが、営業戦略なのです。

経営戦略を実現するために必要なことは、下記のようになっています。

  • 営業戦略を立案・検討
  • 検討して決定された営業戦略を実行
  • 利益目標を達成

営業戦術との違い

営業戦術とは、営業戦略を達成するための具体的な手法のこと。戦術とは、英語で「Tactics」といい、「作戦や戦闘における任務達成のために部隊や物資を効果的に配置して戦闘力を運用する」といった意味を持ちます。

マーケティング戦略との違い

マーケティング戦略とは、市場や顧客、他社の動向などを把握、分析して、自社の商品やサービスのアプローチ方法を策定し、実行に移すといった一連の流れを含む戦略のこと。

目標は、新しい価値、商品やサービス、市場を創造することです。マーケティング戦略は、営業戦略よりも上位の位置付けに当たるため、マーケティング戦略の目標を実現するためには営業戦略が必要になります。

営業戦略とは、売上向上といった利益目標を達成するための計画です。類似する言葉に、「経営戦略」「営業戦術」「マーケティング戦略」などがあります

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2.営業戦略において大切なこと5つ

営業戦略には、大切にしなければならないことがあります。ここでは、それらについて下記5つの視点から解説しましょう。

  1. 市場調査
  2. 営業現状の数値化
  3. 営業現状の分析
  4. 営業課題の把握、明確化
  5. コアコンピタンスの把握

①市場調査

市場調査とは、商品の販路や需要の動向を把握するために行う情報調査のことで、調査項目には、市場の状況や他社の動向、ターゲットを取り巻く環境などがあります。

②営業現状の数値化

営業現状の数値化とは、自社の営業が抱えている問題や課題を含め、製品やチャネル、価格などについて、さまざまなフレームワークを生かし、販売量や売上金額などを数値化することです。

③営業現状の分析

営業現状の分析とは、営業現状を数値化し、その結果をもとに現状を分析すること。SWOT分析や3C分析といったフレームワークを活用すると、スムーズに客観的な分析を進められます。

④営業課題の把握・明確化

営業課題の把握・明確化とは、営業現状の分析結果から営業課題を洗い出すこと。たとえばSWOT分析の場合、「弱みを強みに変える」「脅威を退け、機会を最大限生かす」などを主眼とし、課題を明確化します。

⑤コアコンピタンスの把握

コアコンピタンスとは、「自社にしかなく他社が真似できない」能力のことで、活用によって、他社との差別化を実現します。自社ならではの価値を正確に把握し、生かす戦略を立案できることが営業戦略の鍵になるのです。

営業戦略において大切なことは、「市場調査」「営業現状の数値化」「営業現状の分析」「営業課題の把握、明確化」「コアコンピタンスの把握」の5つです

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3.営業戦略における3ステップ

営業戦略における3つのステップについて、説明します。

  1. 作戦
  2. 戦術
  3. 計画

①ステップ1:作戦

作戦とは、営業戦略で設定した目的達成のために取り組んで実現すべきもののこと。営業戦略の達成には、単純な方法論の検討ではなく、「何をすべきであるか」といった作戦の本質に迫った検討が不可欠です。

見込み客の獲得・育成

まず見込み客の獲得や育成についての検討が必要となります。そのためには、自社及び自社製品やサービスに対して、下記のような作戦を設定するのです。

  • 認知
  • 興味付け
  • 信頼性の構築
  • 見込み客の課題のリサーチ
  • 契約に結び付けるための動機付け

また名刺の情報などをもとにした、見込み客リストの作成も並行して行います。

クロージング

クロージングとは、見込み客に対して実際に自社商品やサービスの売り込みをすること。この場合、「見込み客の悩みを解消するもの」「見込み客が求めているもの」を的確に見極め、提案することがポイントとなるのです。

可能な限り、ソリューションの提案について意識したクロージングを検討しましょう。

顧客維持

顧客の維持についてもなんらかの策を検討します。リピーターは、「再度、商品やサービスの見込み客になる」「購入後の使用感や改善点などの意見をヒアリングできる」ため、営業活動で重要な存在になるからです。

そのため顧客満足度やNPSの調査、新たな課題の発見に対する作戦を検討する必要もあります。

②ステップ2:戦術

戦術とは、実際にどのような方法で作戦を実行していくのかという手段や効果、実行者などを考えること。ここでは、戦術の検討における課題を解説します。

手段

手段の検討は、アナログとデジタル、両面から行います。

  • 飛び込み営業やテレアポなど以前から実施されている戦術
  • マーケティングオートメーション、いわゆるMAなどのITツールを活用した従来にない戦術

両方を融合させて、効率的な営業戦術を組み立てるのです。

効果指標

戦術を検討する際、効果指標を設けます。

  • 検討の結果、導き出した戦術の効果を選定した手段の効果を確認する
  • 指標をもとにPDCAサイクルを回す

ためには、数値化した効果指標の設定が鍵になるからです。そこでKPIやKGIといった指標を設定し、戦術結果の見える化を図ります。

実行者

戦術の検討においては、戦術の実行者を明確にしておくことも重要です。戦術の実行者は、社内の人間に限りません。場合によっては社外の人間と連携して、より専門的に戦術を具現化していきます。

  • 実行者を誰にするか
  • 実行者をどのように選定するか

2点を予め明確にすると、責任の所在も明らかになります。

③ステップ3:計画

手段や効果、実行者などの戦術が決まったら、「いつまでに・誰が・どのような結果を出すよう動くのか」を計画に落とし込みます。最初から計画どおりには進みません。PDCAサイクルを回して修正しながら、より完成度の高い計画へと変容させていくのです。

営業戦略の立案では、「作戦(見込み客の獲得や顧客維持・クロージング)」「戦略(手段・効果・実行者)」「計画」といった3つのステップがあります

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4.営業戦略の進め方

営業戦略は、具体的な戦術をもとにした計画をベースにして進めます。ここでは、営業戦略を進める際の注意点を、4つ解説しましょう。

  1. KPIを設定する
  2. マーケット状況を常に把握する
  3. 顧客ニーズの把握
  4. クロージング後の顧客維持

①KPIを設定

KPIとは、最終的な目標に対して、どの程度達成できているかを示す指標のこと。英語の「Key Performance Indicator」の頭文字を取ったもので、重要業績評価指標と訳されます。KPIを設定すると、自ずと営業戦略の達成につながるのです。

②マーケット状況を常に把握する

営業戦略立案時と比較してマーケット状況が変化した場合、新たなマーケット状況に応じて営業戦略を軌道修正します。一度決めた戦略を頑なに守るのではなく、臨機応変に戦略を再構築することが、営業戦略達成の近道になるからです。

③顧客ニーズを把握

見込み客を顧客に昇格させるためには、見込み客のニーズに合った提案を行います。探った見込み客のニーズに合致した自社商品やサービスを提案するには、刻々と変化する時代や顧客ニーズに敏感でなくてはなりません。

④クロージング後の顧客維持

売買契約が成立し、営業活動がクロージングした後は、

  • 顧客の課題が解決したのか
  • さらに提案できる隙間があるか
  • 自社の改善点や問題点はなかったか

などを振り返ります。これは顧客との信頼関係の構築や次の取引への橋渡しに、不可欠な作業です。

営業戦略を進める際の注意点は、「KPIを設定する」「マーケット状況を常に把握する」「顧客ニーズの把握」「クロージング後の顧客維持」の4つです

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5.営業戦略に役立つ分析方法

営業戦略に役立つ分析法があります。ここでは下記7つの分析について、解説しましょう。

  1. SWOT分析
  2. MECE
  3. 3C分析
  4. 4P分析
  5. 市場・顧客はマクロとミクロの視点から分析
  6. 市場・顧客・競合の分析結果をもとに自社分析
  7. 競合の分析は他社の結果と要因という2軸を確認

①SWOT分析

SWOT分析とは、下記を用いた分析方法です。

  • 企業目標の実現を促進させる内部的な特徴であるStrength(強み)
  • 企業目標の実現を抑制する内部的な特徴であるWeakness(弱み)
  • 競合他社による脅威としてのOpportunity(機会)
  • 企業目標の実現に対して障壁となる外部の特徴であるThreat(脅威)

それぞれを「コントロールできない外部要因」と「コントロール可能な内的要因」
に分けて企業活動を分析します。

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②MECE

MECEとは、

  • Mutually
  • Exclusive
  • Collectively
  • Exhaustive

の頭文字を取ったもので、「モレなく」「ダブりなく」という意味を表す言葉です。

MECEは、企業活動を網羅して効率よく分析していく方法で、「モレがあれば全体像が見えない」「ダブりがあれば無駄になる」という観点を用います。営業戦略を効率的に分解し、分析していく方法に適しているのです。

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③3C分析

3C分析の3Cは、

  • 市場や顧客を意味するCustomer
  • 競合を意味するCompetitor
  • 自社を意味するCompany

の頭文字を取ったものです。

3C分析は、3つのCに沿って分析をし、その中から成功要因を見つけ出して自社の強みと弱みを特定するフレームワークとなります。BtoCを中心にマーケティングで活用されているのです。

④4P分析

4P分析の4Pは、

  • 製品を意味するProduct
  • 価格を意味するPrice
  • 流通を意味するPlace
  • 販促を意味するPromotion

の頭文字を取ったものです。それぞれの項目について競合他社と比較し、「自社が優位に立っている点」「自社が劣っていると考えられる点」を分析します。

⑤市場・顧客はマクロとミクロの視点から分析

「市場・顧客はマクロとミクロの視点から分析」とは、文字どおり、市場と顧客の両方に目を向けて分析していくこと。

具体的には、

  • マクロ分析では、PEST分析を用いる
  • ミクロ分析では、競合他社の自社へ与える影響を考える

といった手法です。

⑥市場・顧客・競合の分析結果をもとに自社分析

「市場」「顧客」「競合」3者の分析結果をもとに自社を分析する方法もあります。市場の変化は、顧客や競合他社にも大きな影響を及ぼすもの。それらの変化や影響と自社の変化や影響とを比較検討して、分析を進めるのです。

⑦競合の分析は他社の結果と要因という2軸を確認

これは競合の分析を、「他社の結果」「要因」の2軸から行う方法で、「他社の売り上げや従業員数、市場シェアなどから強みと弱みを分析する」「他社のビジネスの結果と要因を軸に分析する」という手法です。

他社を知って見えた結果から、自社の営業戦略の戦略を考えていきます。

営業戦略に役立つ分析方法の多くは、「自社の強みと弱み」「競合他社や市場」これらの分析が中心となっています

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6.営業戦略は企業の今後を左右する

企業にはブレのない、営業戦略・営業戦術が必要です。ここでは、営業戦略を分析し立案する際の注意点を、下記2点から解説します。

  1. 多角的な視点で分析
  2. 重要なのはPDCAサイクルの回し方

①多角的な視点で分析

営業戦略の分析手法の多くでは、内部要因と外部要因を挙げてから、分析を進めます。しかしこのとき、偏った視点で要因分析を進めると、問題の本質を見失いかねません。

問題の本質をつかむためにも、「自社・顧客・競合他社・市況」など多角的な視点をもとにした幅広い問題提起が不可欠です。

②重要なのはPDCAサイクルの回し方

営業戦略では、

  • 数値化できる指標、KPIを用いる
  • ボトルネックの部分に改善施策を設ける
  • データを可視化してマネジメントを行う

などを行います。

これにより、PDCAのサイクルを回す、つまり戦略の実行と修正のサイクルを確立できるようになるのです。

営業戦略の分析や立案する際は、「多角的な視点で分析」「PDCAサイクルの回し方」に注意しましょう