サービス業、営業、教師、医療、介護といった「感情」を使って人に接する仕事はストレスをためやすいものです。今回は「感情労働者」が、長く仕事を続けていくために、どのようなことに気をつけるべきなのかを紹介します。
「感情労働」とは?
「感情労働」は、近年注目されている新しい概念で、社会学者A・R・ホックシールドによる言葉です。
相手(=顧客)の精神を特別な状態に導くために、自分の感情を誘発、または抑圧することを職務にする、精神と感情の協調が必要な労働のことをいいます。
感情が労働内容にもたらす影響が大きく、かつ適切・不適切な感情が明文化されており、会社からの管理・指導のうえで、本来の感情を押し殺して業務を遂行することが求められます。
体を使った作業を賃金に変える「肉体労働」、頭を使って創出したアイデアなどを賃金に変える「頭脳労働」に対して、「感情労働」とはその名の通り、感情を抑えることで賃金を得ます。このように、対人の仕事につく人の多くが、決められた感情の管理を求められ、規範的な感情を商品価値として提供しているのです。
感情労働が必要な職種
「感情労働」が必要な職種として代表的なものは、「看護師」などの医療職や「介護士」などの介護職、「客室乗務員(CA)」だといわれています。
同じように、顧客の言うことに耐えなければならないタイプの労働には、「ウェイトレス」や「ホステス」といった接客業、カスタマーセンターやコールセンターで働く「オペレーター」、官公庁や企業の「広報」、「苦情処理」、「顧客対応セクション」、マスメディアの「読者や視聴者応答部門」などが挙げられます。
「秘書」、「受付係」、「エレベーターガール」、「ホテルのドアマン」、「銀行店舗の案内係」、「不動産営業等のサービス業」も感情労働に該当します。
「教師」や「保育士」など、常に模範的で適切な言葉や表情、態度で接することを求められる仕事や、「カウンセラー」「ケアワーカー」といった、専門家として患者や利用者に感情を使って安心を与える仕事も同様です。
しかし、近年はどの仕事も感情労働的になってきたといわれており、いまやあらゆる職種に「コミュニケーション能力」が求められ、「ITエンジニア」のようなコンピュータと向き合う仕事でも“顧客満足”が徹底されています。医療者をはじめ、さまざまな生活の局面で感情労働に従事する人たちをみることができるのです。
感情労働とストレス、バーンアウト(燃え尽き症候群)を避ける働き方
どの職場においても「感情の悩み」が増えており、すべての職業が感情労働的になってきています。正規・非正規の社員格差、ブラック企業、成果主義の導入などで、日本の社会全体でメンタルヘルスの問題が深刻化していることが原因の一つでしょう。
自己の感情を無理にコントロールして働くうちに本来の自分らしさが失われ、「買い物依存症」や「ギャンブル依存症」に陥ったり、暴力的になったりする人も存在します。
感情労働は、コミュニケーションが大好きで、感情が豊かな人が選びやすい職業でもあります。それだけに、知らず知らずのうちに疲れを溜めて、「バーンアウト」(燃え尽き症候群)を招きかねません。
自己の感情を守るためにも、仕事とプライベートをしっかりと切り替えたり、「あるべき理想像」にこだわりすぎたりしないことも、プロとしての重要なテクニックです。
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