従業員エンゲージメント調査におけるパルスサーベイとは、少ない設問数で高い頻度で行われる調査です。短時間で済み回答する側の負担が軽く、高い回答率が期待できます。また都度行われるため、新鮮な回答が得られ、素早くフィードバックし改善できるのです。
そんな従業員エンゲージメント調査におけるパルスサーベイについて、さまざまな点から見ていきましょう。
目次
1.従業員エンゲージメント調査の効果とは?
従業員エンゲージメント調査(サーベイ)とは、従業員エンゲージメントを調査するもので、結果を分析し、状況を改善していくと、従業員エンゲージメントを高められるのです。
従業員エンゲージメントが高いと、従業員が意欲的に仕事に取り組むため、素晴らしいパフォーマンスが生まれます。それは顧客満足につながり、会社もさらに成長するでしょう。
2.エンゲージメントサーベイの実施方法
従業員エンゲージメント調査(サーベイ)には、実施する頻度や規模が異なる「パルスサーベイ」と「センサス」があります。
- パルスサーベイ:小規模で頻度が高く短期間で行われる、少ない設問数で負担なく回答できる
- センサス:大規模な調査で「全数調査」や「実態調査」を意味し、毎年あるいは数年に一度行われる
パルスサーベイ(パルス調査)とは?
パルスサーベイ(パルス調査)とは、簡単な質問の調査を短期間に繰り返し行うもの。通常10個以内と質問のポイントが絞られており、週や月ごとの短い期間で繰り返し実施され、下記のようなメリットを持ちます。
- 短時間で回答でき、負担が少ないため回答率が高くなる
- 時系列での変化や短期的な傾向が分かる
- 集計の負担が少ない
「パルス(pulse)」とは、日本語の脈拍を意味する言葉で、短くてリズムがある様子を表します。脈拍をチェックするように組織と個人の関係性が健全かどうかを測るものです。
パルスサーベイとは? 意味や目的、導入メリット、質問項目例
パルスサーベイとは、従業員の離職防止や満足度向上を目的に短いスパンで行う意識調査のこと。従業員の離職や満足度に課題を抱えている場合、解決の糸口としてパルスサーベイの実施を検討している企業も多いでしょう...
3.パルスサーベイとセンサスの違い
パルスサーベイとセンサスは、方法や目的に違いがあります。
パルスサーベイ |
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センサス |
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従業員エンゲージメントサーベイと従業員パルスサーベイの特徴
従業員エンゲージメントサーベイ | 従業員パルスサーベイ | |
---|---|---|
頻度 | 年次 | 日時/週次/月次 |
質問数 | 50個以上 | 10個以内(3-4分で回答可能な範囲) |
情報量 | ・包括的でリッチな情報 ・回答の負担から低めの参加率や正確性 |
・限定されたトピックのシンプルな情報 ・多くの回答を取得しやすい |
適した内容 | 年間を通して変化の少ない状態や、振り返りを伴う内容 | 変遷を追う都度の状態や、アドホックな事象 |
実施後 | 分析整備に時間がかかり、施策実施までリードタイムが長くなりがち | 即時集計・インサイト抽出により、迅速なアクションに繋げやすい |
4.パルスサーベイが注目されている理由・背景
従来、従業員エンゲージメント調査の多くはセンサスでした。しかし、さまざまな点で集めた従業員の声が現場に反映しづらいという問題があったのです。それらを解消するためにパルスサーベイが登場しました。
従業員エンゲージメントサーベイの実施におけるデメリット
センサスでは1年間の状況を1回にまとめて調査するため、その間に起きた変化は把握しにくくなります。
また、設問の多さから回答者に負担がかかるため、調査への参加率や正確性が低くなる、データの集計に時間が必要で改善策を現場で反映するのに遅れが生じる、といった問題が起きてしまいやすいのです。
従業員パルスサーベイの実施メリット
パルスサーベイは、ポイントを絞った10個以内の質問になっているため、回答者はそれほど負担を感じません。そのため、回答率が高まるのです。
またITの進化に伴い、運用担当者の負担も少なく実施できます。素早く集計できるツールも提供されるので結果も早く分かるのです。改善点を現場に迅速に反映させられるので、従業員は自分の声が届いたと実感できるでしょう。
5.パルスサーベイの導入・運用方法の例
パルスサーベイは、多くの従業員の正直な声を拾い上げてくれます。中には、運用担当者が負担なくパルスサーベイを実施できるよう、さまざまな支援ツールも提供されているのです。
そんなパルスサーベイは、どのように運用するのでしょうか。例を見ていきます。
自社でアンケートを作成する
Slackのようなビジネスチャットツールのアンケート機能をパソコンやスマートフォンと連携させ、自社で作成したアンケートを展開してパルスサーベイを実施する方法があります。
チャット形式でコミュニケーションが取れるため、素早く内容が伝わり、回答率も高くなるでしょう。
パルスサーベイに使う項目の具体例
パルスサーベイの際に用いる項目の例は、下記の通りです。
- 会社を理解し共感できているか
- 事業内容を理解できているか
- 組織のことを理解し、共感できているか
- 上司や同僚との関係は良好か
- 業務環境や待遇について不満はないか
- 承認欲求は満たされているか
- 十分な成長機会があると感じているか
パルスサーベイに関するツールを活用する
パルスサーベイでは、企業の担当者がスムーズに運用するためのツールが多数販売されています。活用すれば、高頻度の実施でも負担なく進められるでしょう。
- IBM Kenexa(ケネクサ):IBMが提供するエンゲージメントを可視化するサービス
- モチベーションクラウド:リンクアンドモチベーションが提供する組織改善クラウドサービス
6.パルスサーベイの企業導入事例
欧米には、ITを活用したパルスサーベイを活用する企業が多くあります。そういった企業では、パルスサーベイで従業員の率直な声をより多く取り入れ、分析し、速やかにフィードバックし、従業員エンゲージメントの向上に結び付けているのです。
アディダスの事例
アディダス社では、Qualtrics(米国のサーベイソリューションを提供する企業)のツールを利用してPeople Pulseというプログラムを実施しています。内容は、モバイルから5分で回答できる質問を月次で配信するというものです。
回答があるとすぐに集計結果を確認できるため、「自分の意見が尊重されている」と従業員の中に信頼感が生まれます。マネージャーも分析された結果をモバイルから確認できるため、すぐに対応策を講じることができるのです。
アディダス社では、従業員が発する重要な意見をいつでも汲み取れる環境づくりを目指しています。
ユニリーバの事例
ドイツにあるユニリーバ社の工場では、従業員へのフィードバックを毎日行っています。そこには、従業員がモチベーション高く幸せに働くことで業績を向上させるという狙いがあるのです。
簡易なデバイスを出口に取り付け、従業員は、退社時に「今日はどうだったか?」という問いに対する回答を青(ポジティブ)か赤(ネガティブ)のボタンで選択します。マネージャーは毎日結果を確認するため、必要な対応を取ることが可能です。