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働き方やライフスタイル、価値観が多様化する中で従業員は職場に「働きがい」を求めるようになりました。企業側も生産性をあげるために、従業員とのエンゲージメントを重視しはじめています。
エンゲージメントサーベイは、エンゲージメント向上のための取り組みを促進する手段として期待されています。この記事ではエンゲージメントサーベイの意味や効果、質問項目などを具体的かつ丁寧に解説します。業務のお役立ちになれば幸いです。
目次
- 1.エンゲージメントサーベイとは?
- 2.エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い
- 3.エンゲージメントサーベイを実施すべき組織の傾向
- 4.エンゲージメントサーベイの実施目的
- 5.エンゲージメントサーベイ実施のメリットや期待できる効果
- 6.エンゲージメントサーベイ実施のデメリットや注意点
- 7.エンゲージメントサーベイの質問項目・設問
- 8.エンゲージメントサーベイを実施する際のポイント
- 9.エンゲージメントサーベイサービスの比較方法
- 10.エンゲージメントサーベイにかかる費用の目安
- 11.エンゲージメントサーベイおすすめ3選
- 12.エンゲージメントサーベイツール導入後の流れ
- 13.エンゲージメントサーベイの成功事例
- 14.サーベイを簡単運用! タレントマネジメントシステム「カオナビ」とは?
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1.エンゲージメントサーベイとは?
エンゲージメントサーベイとは、従業員のモチベーションや帰属意識、忠誠心を数値化し、把握するための調査です。目には見えないエンゲージメントを数値として見える化することで、改善すべき点の発見や実施すべき施策の検討が容易になります。また調査を定期的に行うことで、施策効果のモニタリングが可能です。
エンゲージメントとは?
「エンゲージメント」とは、企業と従業員との関係そのものをあらわします。エンゲージメントを構成する要素のひとつに「従業員満足度」があり、それ以外にも、モチベーションや愛着心、信頼などさまざまな感情が含まれます。
つまりエンゲージメントは、企業と従業員の間の心的関係であり、従業員満足度やモチベーションが高ければ、エンゲージメントは良好になるといえます。
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2.エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い
従業員のエンゲージメントを調査する「エンゲージメントサーベイ」と、満足度を調べる「従業員満足度調査」は、似て非なるものです。
厳密な定義は各組織により異なりますが、一般的にエンゲージメントサーベイは、信頼関係や愛着の度合いを調べるもの、従業員満足度調査は、会社制度や職場環境に対する満足度を調べるものとされています。
エンゲージメントサーベイ | 従業員満足度調査 | |
①指標 | 組織に対する愛着や信頼 | 組織に対する満足度 |
②調査項目 | ・組織への貢献意欲 ・上司/部下の関係 ・社内コミュニケーション など |
・働きやすさ ・福利厚生の充実 ・ワークライフバランス など |
③目的 | 離職防止、生産性向上 など | 労働環境改善 |
エンゲージメントサーベイは「働きがい」、従業員満足度調査は「働きやすさ」を調査するものともいえます。「働きがい」「働きやすさ」の両者とも働き方改革などで注目されていますが、より後者のほうが行政では重視され、長時間労働の是正などが推進されています。
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3.エンゲージメントサーベイを実施すべき組織の傾向
- 人材育成・人材開発がうまくいかない
- 優先すべき組織課題がわからない
- 人事施策の効果が見えない
上記項目が当てはまる組織には、エンゲージメントサーベイが有効に作用すると考えられます。
サーベイを実施すると、組織が抱える人事上の課題やその度合いをスコア化できます。スコアを分析すれば注力すべき人事施策の分野を特定できますし、継続してサーベイを実施することで、改善後の効果測定にも利用可能となります。
エンゲージメントの高い社員は5%しかいない
全世界のビジネスパーソンを対象に米国ギャラップ社が実施したエンゲージメントサーベイ(2022)によると、日本企業にはエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」が、わずか5%しかいないことがわかりました。
世界平均に比べて大幅に低いことから、従業員のエンゲージメントが低いことに悩んでいる日本企業が少なくない事態が明らかになりました。エンゲージメントサーベイはいま、多くの組織に求められているものといえます。
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4.エンゲージメントサーベイの実施目的
エンゲージメントサーベイを何のためにやるのか、その目的を明確することは重要です。大別すると下記に分けられます。
①従業員と組織の関係性を指標化する
エンゲージメントサーベイは従業員との関係性を客観的な指標にするために行います。それによって、従業員が組織に抱いている期待と現状のギャップを的確に把握できます。
具体的には組織のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の浸透度合いや、上司や同僚と良好な関係性を築けているかなどを測定します。また、自分の知り合いに自社で働くことを勧めたいか(他者推奨度)、成長している実感を得られているかなどを聞いたりもします。
②組織の見えない課題や予兆を発見する
エンゲージメントを指標化することで、組織の隠れた課題を見つけ出せます。売り上げや利益率など既に可視化されている指標だけでは組織で進行する課題はつかみきれません。会社は順調に成長しているけれど、気がついたら次世代のリーダーが十分育っていなかった、ということもあり得ます。
エンゲージメントサーベイは定期的に行うことで、モチベーションや組織に対する印象などを推移として見られます。数値の変化を見れば、モチベーションの低下や関係性の悪化などの兆しも発見できます。
対人関係などは相談もしにくく可視化されにくいもの。匿名のサーベイを実施することで言語化されない従業員のホンネをあぶりだせます。
③データを人事施策に活かす
エンゲージメントサーベイを行い調査結果を分析し、注力課題やその要因を明らかにできます。現状把握をしたうえで、1on1や制度改革、環境整備などの具体的な施策へ結びつけることが重要です。
④データをチーム運営に活かす
エンゲージメントサーベイの結果はチーム運営に活かせます。管理職に結果をフィードバックし、チーム内でも議論を行うなど、サーベイとフィードバックを繰り返し行えば、組織課題の自分事化にもつながります。ポジティブなコミュニケーションが増えればエンゲージメントにも好影響を与えるでしょう。
エンゲージメントに限らず、従業員の状況や個性を把握した上でのフィードバックは納得度が上がります。離職防止、生産性向上に必要な人材情報の一元化と見える化も、カオナビなら簡単です。
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5.エンゲージメントサーベイ実施のメリットや期待できる効果
ここまで、エンゲージメントサーベイの重要性や目的について解説しました。次は具体的にそのメリットや効果、活用法について紹介します。
①モチベーションの向上
エンゲージメントサーベイで従業員のコンディションをしっかりとキャッチアップできます。定期的に行うことでコンディションの変化を察知でき、異動などの環境変化で急にスコアが悪くなった場合にも、1on1や人事面談など適切なフォロー対策によってモチベーションの維持向上が期待できます。
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②生産性の向上
エンゲージメントサーベイによって得られたデータを人事施策に活かすことで、働きがいが向上し、生産性の向上が期待できます。
厚生労働省が発表した「令和元年版 労働経済の分析」では、「働きがい」と「労働生産性」の相関関係が明らかになっています。働きがいを感じることで、従業員の主体性が高まり仕事のパフォーマンスも向上するのです。
抽出された課題にあわせてコミュニケーション方法を見直したり、適切な人材配置などを行うことで働きがいもあがり、チームの生産性も向上します。
参考 令和元年版 労働経済の分析厚生労働省③離職率の低下、定着率アップ
サーベイの結果をもとに人事面談などのフォローを行えば、離職率低下や定着率向上が期待できます。高パフォーマンスな社員や幹部候補が突然退職することもあります。定期的なサーベイでコンディションを把握することでその予兆を見逃さずにすみます。
上述の厚生労働省の調査ではエンゲージメントスコアが高いほど、離職率が低く、定着率が高いこともわかっています。
④リファラル採用の成果向上
エンゲージメントサーベイを活用すれば、リファラル採用の成果を向上させることも可能です。リファラル採用とは求人媒体や人材紹介会社などではなく、社員の紹介によって有望な人材を採用する手法です。ここ数年でこうした取り組みをする企業や支援ツールも増えました。
エンゲージメントが高い社員は、他者推奨度も高いため紹介制度との相性がよく、こうした社員を増えやすことで紹介制度も活発になります。エンゲージメントサーベイを利用しエンゲージメントを高めれば、紹介する側が増えリファラル経由の採用の増加が期待できます。
⑤人事トラブルの予防
サーベイの設計にもよりますが、組織で発生する人事トラブルの火種を見つけることもできます。職場では小さなものから大きなものまでさまざまなトラブルが起きます。パワハラやセクハラも相談がしにくく、顕在化したときには訴訟など大きな問題に発展するケースも少なくありません。
たとえば、匿名性をきちんとアナウンスし、アンケートの項目にフリーコメント欄を設ければ、抱えている悩みなどを記入しやすくなります。対人関係の悩みは直属の上司や同じチームの同僚に相談しにくいこともあるので、サーベイの匿名性を活かせます。
エンゲージメントサーベイの実施には様々なメリットがありますが、調査シートの配布や回収は大きな負担です。
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6.エンゲージメントサーベイ実施のデメリットや注意点
こちらではサーベイ実施のデメリットについて見ていきます。
①コストや時間がかかる
サーベイの専門サービスを利用する場合は利用料金がかかります。自社で設計する際にも専門家やコンサルタントへのフィーが発生する場合があります。回答時は従業員の業務時間を削ることになります。また、回答後の分析やフィードバックにも時間が必要です。
エンゲージメントサーベイは定期的に行うので、年に複数回行うとその分の費用と現場の工数が発生します。あらかじめ費用を試算し、自社の現状にあった仕組みを採用するとよいでしょう。
②拒否反応が起こる
従業員側の中には「業務時間が削られるし面倒くさい」といったネガティブな感情を抱く人もいます。また調査の実施時点で極端にエンゲージメントが低い状況だと、十分な回答数が得られないことも。回答の有効性が担保されなければ、かけた費用も無駄になってしまいます。
そうならないためには、調査を行う前にしっかりとその意義と目的を従業員に熱意をもって伝える必要があります。
質問項目が3問からと少ないパルスサーベイ(後述)という方法なら、回答者の負担も少なくすみます。
③結果が何にも活かされないと不満を招く
サーベイの結果が何にも活かされないままだと、社員の不満につながります。エンゲージメントサーベイには注目も集まります。するだけして何もアクションがなかったとしたら、従業員は疑問や不満を感じますし、場合によっては次のサーベイでは手を抜いてしまうかもしれません。
エンゲージメントサーベイは、基本的にフィードバックとセットと考えるようにしましょう。すぐに施策に活かせなくても、回答に対してのねぎらいは必須です。
エンゲージメントサーベイの結果をもとに施策の質を上げるなら、業務効率の向上が欠かせません。改善で生まれた余裕を、施策の質向上につながる打ち手に割くのです。
エンゲージメントサーベイはもちろん、人材マネジメントをトータルで効率化するなら、タレントマネジメントシステムがおすすめです。
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7.エンゲージメントサーベイの質問項目・設問
エンゲージメントサーベイのメリットやデメリットを紹介しましたが、ここからは具体的なエンゲージメントサーベイの実施方法について詳しく解説します。まずは、質問項目について見ていきましょう。
①質問項目・設問の具体例
エンゲージメントサーベイの調査項目には代表的なものがいくつかあります。
(1)eNPS
eNPS(Employee Net Promoter Score)は最もシンプルなエンゲージメントサーベイの質問項目です。アメリカのベイン・アンド・カンパニー社が提唱したNPS®を応用した、従業員ロイヤルティを計測する質問です。具体的には、「現在の職場で働くことをどの程度親しい人に勧めたいか」を0~10点で評価します。
このとき、0~6点を批判者といい、7~8点を中立者、9~10点を推奨者といいます。そして、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がeNPSとなります。
※Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
(2)Q12(キュートゥエルブ)
Q12はアメリカのギャラップ社が提供する、エンゲージメントを診断するための12個の質問項目です。具体的には下記のようなものです。
以下、ギャラップ社より引用
- あなたは、仕事で何を期待されているかを知っていますか
- あなたには、仕事をきちんと行うに十分な環境がありますか
- あなたには、仕事で成果を出すための十分な機会がありますか
- 過去1週間で、成果に対する評価や賞さんを得られましたか
- 上司や同僚はあなたのことを気にかけてくれますか
- 職場にあなたを励ましてくれる同僚はいますか
- あなたの意見は尊重されていますか
- あなたの会社の使命や目的は、仕事に誇りを与えてくれますか
- あなたの同僚は成果を出すことにコミットしていますか
- あなたは職場に親友がいますか
- 過去6カ月間で、あなたの仕事の進捗について誰かと話しました
- 昨年、あなたは学び成長することができましたか
大別すると下記のように整理できます。
- ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の浸透
- 機会の提供
- 自己への承認
- 上司や同僚との関係
- 成果や成長
Q12ではこれらをシンプルな5段階の尺度で聞き、スコアリングします。スコアが低かった回答箇所は、裏返すと従業員の心の声といえます。
参考 What Engaged Employees Do DifferentlyGALLUP(3)その他の参考事例
その他の参考事例として、経済産業省とマーサージャパン株式会社が発表している資料から抜粋し紹介します。資料内であげられている質問項目は下記のとおりです。
以下、引用
- 私は、自分の会社全体としての目的、目標、戦略をよく理解できている
- 経営陣は、事業の方向性について健全な意思決定をしている
- 自分の会社はよい職場だと他の人にも勧めたい
- 自分の会社で働くことに誇りをもっている
- 自分の仕事について、給与や福利厚生など公正に報酬を得ていると思う
eNPSやQ12とも共通する部分がありますので、エンゲージメントサーベイで聞くべき項目の参考にしていただければ幸いです。
参考 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会経済産業省②独自質問と市販質問
最近では、サービスとしてエンゲージメントサーベイを提供する企業も増えてきました。こうした専門サービスには自社のスコアを業界平均と比較したり、ランキングに参加できるものもあります。ただし、コストもそれなりにかかりますので、頻繁に行うサーベイは自社でやるなど、うまく使い分けるとよいでしょう。
カオナビの調査機能なら自社の状況に応じて、簡単に社内で質問内容を変更できます。従業員満足度調査ならテンプレート付きでスムーズに調査可能。カオナビがわかる無料PDFのダウンロードは ⇒ こちらから
8.エンゲージメントサーベイを実施する際のポイント
エンゲージメントサーベイを実施するうえで、留意するべきポイントをいくつかあげます。
①目的を明確にする
エンゲージメントサーベイを実施するにはまずその目的を明確にし、経営や現場とも共有する必要があります。目的は企業によって異なるので、自社の状況にあったものを策定しましょう。たとえば下記のようなものが考えられます。
- エンゲージメントを可視化し向上させる
- 離職率を改善する
- 人事施策の立案に役立てる
- 施策の効果測定や改善に役立てる
- 人材育成や人材開発につなげる
- チームの生産性を向上させる
目的を明確にすると、その後のアクションがしやすくなります。
②継続する
エンゲージメントサーベイは継続的に取り組むことが重要です。調査結果を元に具体的なアクションをし、またその結果を計測します。エンゲージメントはすぐには向上しません。エンゲージメントスコアを指標としたPDCAサイクルをまわすことで、施策の効果や効率もあがっていきます。
また、継続的にサーベイを行うことで推移のチェックや期間比較も可能です。サーベイ結果の変化と組織の変化を照らし合わせることで、分析もより正しく行えます。
③実施するタイミングを意識する
エンゲージメントサーベイを実施するタイミングも重要です。たとえば、組織やチームができあがって間もないタイミングでは回答のしようがなく、正しいデータは取れません。年末や年度末などの繁忙期もお勧めできません。回答が雑になり、データの有効性が担保できないからです。
また、季節要因で回答内容が左右されることも考慮すると、基本的に同じタイミングで実施するのが望ましいでしょう。
④自社にあった頻度で行う
エンゲージメントサーベイの頻度はコストにも影響します。自社の状況や目的に合わせて最適な頻度を決めましょう。サーベイの規模や頻度によって2つのタイプがあります。
(1)センサス
大企業などで年に1回といった中長期スパンで行われる大規模調査です。質問項目は50問や70問と多く、幅広い項目について深く聞けます。
ただし、外部に依頼する場合コストがかかりますし、準備からフィードバックまでには従業員にもそれなりの負荷がかかります。スパンが長いため、課題をタイムリーにキャッチアップするには不向きです。
(2)パルスサーベイ
反対に、1カ月に1度などの短期スパンで行う調査をパルスサーベイといいます。パルス(pulse)とは脈拍のことを指し、脈打つように短い間に定期的に行うことからその名がつけられました。質問項目も3問から10問とセンサスに比べかなり少なめです。
コストや業務負荷もセンサスほど必要とせず、定期的に実施することでタイムリーな現状把握が可能です。これからエンゲージメントサーベイをはじめようという企業や、より頻度を高めたい場合にはパルスサーベイがお勧めです。
パルスサーベイとは? 意味や目的、導入メリット、質問項目例
パルスサーベイとは、従業員の離職防止や満足度向上を目的に短いスパンで行う意識調査のこと。従業員の離職や満足度に課題を抱えている場合、解決の糸口としてパルスサーベイの実施を検討している企業も多いでしょう...
⑤タイムリーなフィードバックをする
デメリットの章でも少し触れましたが時間を割いて回答をする以上、従業員もサーベイには注目しています。サーベイを実施した後に何のフィードバックもアクションもなければ、いずれ形骸化するでしょう。特にパルスサーベイの場合、把握した課題に対して、タイムリーに手を打つことでそのメリットを最大限活かせます。
⑥「サーベイ慣れ」を防ぐ
エンゲージメントサーベイの意義や目的を正しく伝えないと「サーベイ慣れ」が起こる危険性があります。せっかくの取り組みが、「毎度おなじみの定型業務」になっては元も子もありません。従業員がサーベイ慣れしてしまうと、適当に答えたり結果を不正にコントロールしたりと正しいデータが取れなくなります。
それを防ぐには、サーベイの都度その意義と目的を伝えることが重要です。前回の振り返りなどを交えて行うとより効果的です。サーベイ後にはフィードバックを行い、チームで議論を行えば、回を増すごとに参加意識も強まるでしょう。
⑦回答拒否やハレーションを防ぐ
これもデメリットの章で触れましたが、サーベイ時にネガティブな反応やハレーションが起きることもあります。そうなると回答率やサーベイの有効性にも影響を及ぼしかねません。サーベイを実施する際にはその意義や目的、従業員にとってのメリットをきちんと伝えましょう。
実際に周知するのは現場のマネージャーということもあります。現場と人事がしっかりと連携できる環境をつくりましょう。
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9.エンゲージメントサーベイサービスの比較方法
社員のエンゲージメントを独自調査するには限界があります。エンゲージメントサーベイを実施するなら、サーベイを専門とする調査会社の協力を仰いだり、実施システムの導入を検討したりすることをおすすめします。
この章では、エンゲージメントサーベイのサービス提供を行う企業やソフトウェアの比較方法について解説します。
比較検討すべき7項目
エンゲージメントサービスを選ぶ際には下記のような項目をチェックするとよいでしょう。
- 自分たちの知りたいことが把握できるか
- 調査設計に信頼性、再現性があるか
- 何問ぐらいで、回答にどれだけ時間がかかるか
- どのような項目をレポーティングしてくれるか
- 実施後のサポートやコンサルティングはあるか
- 自社だけでなく他社との比較もできるか
- コストが見合っているか
①自分たちの知りたいことが把握できるか
あたり前ですが、そのサーベイで自分たちの知りたいことが把握できるかは重要です。そのためにはサーベイのポイントで紹介したように、目的をあらかじめ明確にしておきましょう。必要以上の質問項目はコストと負荷を増すだけなので、自社の目的にあったものに絞るとよいでしょう。
②調査設計に信頼性、再現性があるか
サービスの実績やエビデンスを聞いてみるとよいでしょう。ネガティブな従業員の中には、サーベイの信頼性について統計的な観点から指摘をする者もいます。実績に基づいたサーベイを採択しているということは安心感にもつながります。
また、自社の課題に近い改善事例があるかも大事です。その事例をサーベイの参考にすれば再現性を高められるからです。
③何問ぐらいで、回答にどれだけ時間がかかるか
そのサーベイの質問項目数と回答にかかる所要時間も確認しておきましょう。あまりにも回答負担が大きいものは、ネガティブな反応がでる可能性もあります。また、どれくらいの頻度で実施できるかの目安にもなります。
④どのような項目をレポーティングしてくれるか
可能であればレポートのひな型も見せてもらいましょう。どのような項目や軸で分析レポートが出力されるのかは後で施策を考える際に重要です。そのレポートを元にアクションを行うという前提でチェックするとよいでしょう。
⑤実施後のサポートやコンサルティングはあるか
中にはサーベイ後のフォローや戦略立案などのコンサルティングを行う企業もあります。もちろん、コストは高くなりますので自社がどこまで望むのかを決めておきましょう。
抜本的に組織を変えたい場合や、知見のある第三者から意見をもらいたい時はコンサルティングサービスを選ぶのも手です。
⑥自社だけでなく他社との比較もできるか
エンゲージメントサーベイサービスの中には業界平均や他社のエンゲージメントスコアを事例として公開しているものもあります。自社以外のベンチマークは、サーベイへの参加意識を高める効果も期待できます。
⑦コストが見合っているか
コストはサーベイの実施に大きく影響します。費用負担が大きいと継続的な実施が難しくなります。いかに優れたサービスであっても単発で終わってしまっては、効果測定もできません。継続することを念頭に、自社の予算に見合ったサービスを選びましょう。
調査会社やシステムの比較ポイント
エンゲージメントサーベイは基本的には繰り返し実施するため、PDCAをまわすことが大切です。しかし、PDCAのCにあたる「結果の分析」に難しさを感じる方は少なくありません。
サーベイサービスを依頼すると、調査会社やシステムからサーベイのレポートが掲出されます。その調査レポートのクオリティによって、効果的にPDCAをまわせるかどうかが変わります。事前にかならず、レポートの形式と内容のレベルを確認しましょう。迷った際には、自社にとって分析しやすいレポートを掲出するシステムを選ぶとよいでしょう。
また、コンサルティングとセットになっているサービスもあります。分析と施策立案を同時に実施してくれるケースもあるため、必要に応じて依頼を検討するのもよいでしょう。
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10.エンゲージメントサーベイにかかる費用の目安
エンゲージメントサーベイの実施費用は、いずれの工程を外部委託するかにより、コストの目安が変わります。
たとえばエンゲージメントやモチベーションを専門としたコンサルティング付きサービスに、運用のすべてをまるごと依頼する場合には、見積もりは高くなりがちです。
一方、エンゲージメントサーベイに関するソフトウェアを提供する企業から、利用の権利を譲り受け、サーベイの運用を自社内で執り行う場合、前者よりコストをおさえることができます。
①コンサルティング付きサービスの料金プラン
エンゲージメントサーベイを提供するコンサルティングの利用料金は、組織ごとに見積もりを取るケースがほとんどのため、一概にいうことはできません。詳細が知りたい企業は、直接サービスに問い合わせる必要があります。
HP上で明示されてはいませんが、基本的にはサービス内容の充実度により料金が変わります。専属スタッフはつくのか、プラン内でどのような機能を利用できるのか、などで価格感はおおよそ推測できるため、調査会社を比較検討している際には参考にしましょう。
②サーベイシステムのみの料金プラン
エンゲージメントサーベイのシステム導入を検討する場合、各社とも料金プランをわかりやすく明示しているケースが多く、比較しやすいはずです。
たとえばエンゲージメント解析ツールの「Wevox」は、従業員1名につき月額300円(税別)となっています。その他、オプション機能を追加すると料金が加算される仕組みです。
11.エンゲージメントサーベイおすすめ3選
エンゲージメントサーベイの導入を検討している組織向けに、各社のサービスの特徴をご紹介します。
①カオナビ(株式会社カオナビ)
カオナビのエンゲージメントサーベイでは、定量・定性両方のデータを収集し、可視化できます。
アンケート調査機能やコンディションチェック機能が充実していることはもちろん、1on1などの面談で収集された定性データもあわせて蓄積することで、より従業員の本音に近づいてエンゲージメントを分析できる仕様となっています。
初めてサーベイを実施する方でも迷うことなく開始できるよう、初期設定も充実。仕事満足度・健康状態・人間関係などの設問があらかじめ設定されているので、導入後すぐにサーベイを開始することも可能です。
また、総合的なタレントマネジメントシステムだからこそ、エンゲージメントサーベイの結果を人事評価とあわせて検討したり、所属ごとにマトリクスで比較したりなど、多様な角度から人材分析することが可能です。
サーベイの結果をもとに、人員配置を工夫して働きがいを醸成している企業もあります。タレントマネジメントにも活用しやすいでしょう。
②モチベーションクラウド(株式会社リンクアンドモチベーション)
「モチベーションクラウド」は、期待度と満足度のアンケート調査を通じ、エンゲージメントサーベイを実施できるサービスです。
最大の特徴は、コンサルタントが並走し、組織改善施策のアドバイスをくれること。経営や組織人事を専門とするコンサルタントがサポートしながらサーベイを実施でき、また調査後には、従業員のエンゲージメント向上について施策の提案を受けられます。
参考:「モチベーションクラウド」(https://www.motivation-cloud.com/)
③Wevox(株式会社アトラエ)
「Wevox」は、エンゲージメント解析ツールです。現場のエンゲージメントを可視化し、定量データでふりかえることができます。チームのスコアを定量的に可視化することで、施策の効果検証などができるようになります。
サーベイは、メールやSlackなど、普段使っているコミュニケーションツールで届けられます。PCやスマートフォンでストレスなく回答できることも魅力のひとつです。
参考:「Wevox」(https://get.wevox.io/)
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12.エンゲージメントサーベイツール導入後の流れ
エンゲージメントサーベイを実施する際の具体的なステップを解説します。各工程でのポイントも解説するので、実施の参考にしてください。
①調査対象を決める
エンゲージメントサーベイの対象を決めます。全従業員を対象にするのが望ましいですが、杓子定規にとらえる必要はありません。どの範囲までを対象にするかどうかなど、企業の目的や現状に合わせて選ぶとよいでしょう。
たとえば、新入社員の離職率改善につなげるのが目的ならば、入社1年目から3年未満という区切りで実施するという方法もあります。
②調査項目を決める
調査の項目も自社の目的に合致させましょう。調査項目は、「5.エンゲージメントサーベイの質問項目」を参考にしてみてくださいね。
注意する点は、
- 質問項目の量が多すぎないか(回答者の負担になり、分析の手間もかかる)
- 質問項目は定期的に改善する
- 必要ない質問項目を入れない
などです。
たとえば、下記のような質問項目はあまりふさわしくありません。
- エンゲージメント向上に直接関係ない質問項目
趣味や特技などはエンゲージメント向上に直接的な影響はありません。
- 次回以降、再利用できない質問項目
特定時期だけに開催するイベントの満足度に関する質問は、再利用可能とは限りません。
- 回数を重ねても変化しにくい質問項目
入社した理由などは時系列で変化するものではありません。
質問項目は追加することも可能なので、まずは余計な質問をつくりすぎないように心がけましょう。
③アンケートの調査票を作成する
②で決めた調査項目を、調査票として作成していきます。エンゲージメントサーベイは紙ではなくインターネット調査を使用するのがおすすめです。特にクラウドサービスを活用すればWebブラウザ上で簡単に調査票を作成できるだけでなく、スマートフォンやタブレットからの回答もでき、自動集計することも可能です。
④周知する
調査の設計が完了した後は、対象者に対して周知します。周知の手法は社内ポータルサイトなどに掲示したり、メールで行うなど、自社に合った方法を選びましょう。ただし、エンゲージメントサーベイを実施する意義、目的、メリットは必ず伝えましょう。特に、現場の管理職に対しては別途ミーティングを設けるなど、しっかりと共有しましょう。
⑤アンケートを実施する
アンケートを作成したら、回答画面のURLを対象者に送付します。サーベイツールなら自動的に通知が可能なので、担当者がいちいちメールソフトで送信する必要はありません。
⑥必要に応じてリマインドをする
アンケートを開始したら、締め切りまで回答状況を確認しながら必要に応じてリマインドをします。進捗管理は手間ですが、サーベイツールを活用すれば簡単な操作で対象者にリマインドメールを送付できます。
⑦アンケートを回収し集計する
アンケートが終了した後はその結果を集計しスコア化します。集計はなるべくスピーディーに行いましょう。特にパルスサーベイをする場合は、タイムリーなフィードバックのためにも重要です。多くのサーベイツールでは集計も自動的に行えます。
⑧結果を分析する
集計結果がでたらその内容を分析します。分析のポイントは下記のとおりです。
スコアの高低を見る
まずはシンプルにエンゲージメントスコアが高いか低いかを見ましょう。つまり、従業員のコンディションがよいか悪いかです。はじめてサーベイをする場合は比較対象がありませんので、次回以降のベンチマークにするとよいでしょう。同業他社の事例などが公開されているなら比較するのもありです。
スコアの軸を質問項目や部署などに変える
次に、スコアの軸を質問項目ごとや部署ごと、年次などに切り替えて違う角度から眺めてみましょう。特定の質問項目で数値が目立って悪い場合は、早急に対応すべき課題かもしれません。また、特定の部署に悪い結果が集中している場合は、マネジメントに課題がある可能性もあります。
他のデータとクロス集計する
人事評価や研修の受講状況など他のデータとクロス集計できれば、さらに詳しい分析も可能です。また悪い要因だけでなく、よい人の傾向を分析することで成功パターンを見出すこともできます。
エンゲージメントサーベイはスコアリングによって、課題の度合いを可視化できます。それによって優先課題の特定もしやすくなります。
ただし、サーベイはあくまで一つの結果にすぎません。スコアに依存しすぎず、それを元にしたヒアリングやディスカッションとうまく組み合わせるとよいでしょう。
⑨必要に応じてアクションをする
エンゲージメントサーベイの目的は実際のアクションにつなげることです。必要な施策を実施した後は、それ以降のサーベイで効果を測定し、PDCAをまわしていきましょう。
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13.エンゲージメントサーベイの成功事例
ここからは、エンゲージメントサーベイを取り入れ成果をあげている企業の事例を3つご紹介します。
①社員の声を社内公募制度などの施策へ│オムロン株式会社
ファクトリーオートメーションやヘルスケア事業を手がけるオムロングループでは、2016年からエンゲージメントサーベイを実施しています。頻度は年に1回で、76の質問項目とフリーコメントからなる調査です。調査項目は幅広く、下記のような項目を聞いているそうです。
- エンゲージメント
- 顧客起点/品質意識
- 多様性
- 企業倫理
- 企業理念・VG2.0
- 育成/能力開発
- 変革とリスクテイク
- 所属意識・職務満足
- 業績の管理
- チームワーク
- 経営陣
- 業務効率
- ワークライフバランス
PDCAをしっかりとまわし、2018年度にはマネジメント層への360度フィードバック調査や、社内公募制度の導入など具体的な人事施策につなげています。
②エンゲージメントサーベイを働き方改革にフル活用│味の素株式会社
食品事業を行う味の素グループでは、働き方改革の取り組みとして2017年度からエンゲージメントサーベイを実施。主な質問項目は下記のとおりです。
- 持続可能なエンゲージメント
- ASV(Ajinomoto Group Shared Value)企業ミッションの浸透度
- 多様性
- 健康・ウェルビーイング
- ゴール・目標
- リーダーシップ
- イノベーション
- 権限委譲
- 顧客志向
- 直属上司
- 意思決定
- コミュニケーション
- 人材・キャリア育成
- 業績評価
- 報酬・福利厚生
- 誠実性・論理性
結果によると働きがいを感じている従業員は約8割。調査結果は全社員にフィードバックされ、現場ごとに課題をみつけて具体的な施策を実施していったそうです。テレワークやペーパーレス化を推進し所定労働時間の短縮にもつなげています。
③パルスサーベイで1on1の効果を最大化│日清食品ホールディングス株式会社
即席めんなどの食品事業を展開する日清食品ホールディングス株式会社。同社では2017年からコミュニケーション強化のために1on1を実施しています。また、それが形骸化しないように定期的にパルスサーベイを実施し効果測定をしています。
他にもパルスサーベイで離職防止の「フラグ立て」をし、調査結果を元に人事がフォロー面談をするなどのアクションにつなげているそうです。
下記は質問項目のサンプルです。
定期的なサーベイを行うことで、施策の効果や意義を所属長へフィードバックし、エンゲージメントの向上に役立てているとのことです。
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