演繹とは、2つの情報を関連付け、そこから結論を必然的に導き出す思考法のこと。ここでは演繹の意味や演繹法の使われ方などについて説明しましょう。
目次
1.演繹とは?
演繹とは、2つの情報を関連付けることで、そこから結論を必然的に導き出す思考法で、「えんえき」と読みます。つまり1つまたはそれ以上の命題から論理法則に基づく考え方で、演繹的推理とも呼ばれているのです。
演繹法の例
演繹法の例を見てみましょう。
- 「食品の原産地表示に対する世間の目が厳しくなっている」……一般論
- 「A社は業務の特徴として、さまざまな食品を取り扱う」……観察事項
- 「A社は食品の原産地表示を明確に行わなくてはならない」……導き出される結論
このように演繹法とは、すでに知っている情報に新たな情報をプラスして結論を出すという方法なのです。
演繹法の注意点
演繹法の注意点は、以下の2つです。
- 一般論が間違ったものであれば、導き出される結論も間違ったものになってしまう
- 一般論と同様に、事象や観察事項が間違っていれば、結論も正しくならない
一般論に対する誤解
一般論はルールもしくは常識と言い換えても可能である一方、その一般論がそもそも間違ったものであれば、導き出される結論も間違ったものになってしまいます。一般論や事象が正しくなければ、結論は正しくならないのです。
一般論をとりまく背景や事情をしっかり考えて、誤解を避けることが大切なポイントといえるでしょう。
事象の間違い
収集した事象が間違っていると、結論は正しくなりません。たとえば「フライドポテトを食べすぎたら太りやすくなる」という一般論に対し、「私はフライドポテトを少しだけしか食べない」という事象を取り出したとします。
この場合の結論は、「私は多分太らないだろう」です。しかし少ししかフライトポテトを食べなかったとしても、食生活によっては太る可能性を十分に秘めています。このように一般論と事象の双方が正しくなければ、結論は正しくならないのです。
2.演繹法に当てはめる法則
ここでは演繹法に当てはめる法則やルールを4つのポイントに焦点を当てて紹介しましょう。一般論が間違ったものであれば、導き出される結論も同じように間違ってしまうので当てはめる際は、くれぐれも注意してください。
- ルールを当てはめる
- 方針を当てはめる
- 因果関係を当てはめる
- 価値観を当てはめる
①ルールを当てはめる
演繹法を活用するには「物事を分かりやすく説明して相手が理解しやすくなるように、自分の主張を通す」という論理展開が大切です。つまりルールや一般論と観察事項の2つの情報を関連付け、そこから結論を自然な流れで導き出すという流れになります。
「ルールに合致しているかどうかで結論を出す」という思考プロセスが不可欠です。
②方針を当てはめる
「方針に合致しているかどうかで結論を出す」という思考も、演繹法に当てはめる際には必要です。
たとえば「女性らしさが表れているような香水を開発する」という方針が存在していたとしたら、「女性の9割が女性らしさを感じる」という物事を当てはめます。このように「方針に合致しているかどうか」というポイントに焦点を当てることが大切なのです。
③因果関係を当てはめる
因果関係を当てはめるプロセスも演繹法では重要です。たとえば統計から「CMを20%増やせば、売上が25%上がる」という因果関係があったとしましょう。
当てはめる法則としては「CMを20%増やせば、売上は25%上がる」となり、法則に当てはめて考える物事は「今回のプロモーションの売上目標は+25%だ」になります。
つまり結論としては「よって、今回のプロモーションでは広告を20%増やすべきだ」になるのです。
④価値観を当てはめる
「価値観に合致しているかどうかで結論を出す」という思考プロセスも、演繹法的な論理展開といえるでしょう。たとえばとあるお店で「いかなる時でも常にスタイリッシュであるべき」という価値観があったとします。
当てはめる法則としては「お店は常にスタイリッシュである」となり、法則に当てはめて考える物事は「お店の改装案として伝統的な雰囲気かモダンという2つの案がある」になります。
つまり結論としては「お店の内装はスタイリッシュに改装すべきだ」になるのです。
3.演繹法の考え方
ここでは演繹法の基本的な考え方と、適切な順序やポイントについて紹介しましょう。一度習得すれば、文章を書いたりメールを作ったりする際はもちろん、普段の会話やビジネストークの話の展開方法などにも役立ちます。
最初に結論を考える
最初に結論を考えます。なぜならどのような結論に持っていきたいのかによって、付随させる理由や普遍的なことがらなどが変わるからです。
「なぜ、その結論が言えるのか」について事実や前提をもとに組み立てたもので、しっかりとした説得力のあるものにします。
結論が出る理由を考える
また結論が導かれるべき理由を考えることも非常に重要です。この考え方はロジカルシンキングとも呼ばれており、この思考は日常生活やビジネスシーンで活用できると考えられています。
「なぜその結論を導きたいのか」「どこから結論を探し出して来たのか」など結論に至るまでの思考過程や要素を念頭に置きながら作成していきましょう。
普遍的な事象を考える
「普遍的な事象を考える」とは、一般的に多くの人が当たり前のように思っていることを探す作業です。
たとえば「クジラは哺乳類である」「哺乳類には血液がある」という2つの普遍的な事実を前提とした場合、演繹法では「鯨には血液がある」という結論を導き出すことになります。誰もが当然知っている普遍的事実を探すことがポイントとなるのです。
4.演繹的な思考能力の鍛え方
ここでは演繹的な思考能力の鍛え方について見ていきましょう。演繹法は、誰でも習得できる思考技術であり、再現性が肝心なポイントとなります。つまり「方法と手順」を身に付ければ演繹的な思考能力を身に付けられるのです。
企画業務で演繹法を使う
ビジネスシーンでは、企画業務などで演繹的な思考能力を鍛えられるでしょう。演繹法は「物事を法則やルールに当てはめて結論を出す」という頭の使い方が基本となっています。
相手に自分のアイディアを理解してもらうためにも、一般的かつ普遍的な事実(ルール・セオリー)を前提として、そこから結論を導きだす方法はより有効なのです。
上司への報告業務で演繹法を使う
上司への報告業務で演繹法を使うと、思考能力がぐっと鍛えられます。上司に報告するシーンでは、物事を簡潔に、ポイントを絞って体系立てて伝えるスキルが求められます。
「報告がうまくいく基準」を念頭に置き、「ルール」と「事実」「結論」をしっかり押さえながら報告する習慣を身に付けたいところです。
5.演繹法と帰納法
ここでは演繹法と関係が近い帰納法についても紹介します。帰納法もさまざまな可能性や事実をもとに体系立てて進める論理展開です。一方、演繹法とは明確に異なる意味合いを持つので、使い方には注意しましょう。
帰納法とは
帰納法とは、さまざまな事象や事実をもとに1つの結論を導き出す手法で、「帰納的推論」とも呼ばれています。特徴は、多くの事例に共通する点をまとめるため、相手に納得感を与えやすいということ。
また複数の具体的事実から同一の傾向を抽出して、結論や推論に持っていくという傾向が強くなります。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理して筋道を導き、矛盾なく考えられる思考法のことで、「論理的思考」と称されることもあります。
課題に対して、要素ごとに仕分けして結論を導いたり、さまざまな視点から分析して解決策を検討したりするという考え方が特徴です。昨今の企業活動では、このロジカルシンキングが求められています。
ロジカルシンキングのメリット
ロジカルシンキングをしっかり身に付けると、ビジネスのあらゆる場面で役立ちます。ここではどのようなメリットをもたらすのか、「話す能力」「書く能力」「考える能力」に焦点を当てて紹介しましょう。
話す能力が向上する
論理的思考を意識せずにただやみくもに話をするだけでは、相手に内容が伝わりくいもの。肝心なのは事実と意見を分類することで、ロジックツリーを意識すると重要性が際立ちつつも簡潔になります。
論理的思考を体得すると、上司への報告や連絡、相談もより円滑になり、やがて自身の評価にもつながるでしょう。
書く能力が向上する
論理的思考の有無は、文章にもはっきりと現れてきます。論理的思考がある文章には、明らかな意見と合理的なエビデンスが組み込まれており、読み手をすんなり納得させられるのです。
ビジネスシーンでは企画書や提案書など、相手に意志決定や何かしらの行動を促す文書を作成する場合も増えますが、論理的思考を鍛えると文章力も一層アップします。
考える能力が向上する
論理的思考を意識すると、考え方もよりスムーズになるでしょう。たとえば一つの事象を幅広く展開させたり、切り口が鋭くなったりと可能性が大いに広がります。
今までに上司や目上の人から「人に質問してばかりいないで、たまには自分で考えなさい」と注意された経験を持つ人も少なくないと思いますが、この「自分で考える」というのは、まさに論理的思考を身に付け、考えるスキルを鍛えることなのです。
ロジカルシンキングの落とし穴
さまざまなメリットを持つロジカルシンキングですが、注意すべき落とし穴もあります。演繹法という手法は細かく展開しすぎるため、無駄が多いような印象を与えやすくなってしまうのです。
しかしそれを避けようと省略しすぎると、今度は論理の飛躍が発生しやすくなってしまいます。論理が飛躍しないためには、「なぜそうなるのか」と尋ねるように解明するとよいでしょう。
演繹法と帰納法の組み合わせ
帰納法は、共通点を根拠に結論づけるという論理的思考で、「方針そのもの」を導き出す際に有効です。一方、演繹法は決められた方針に合致しているかどうかで結論を出すという論理的思考ですので「方針に沿ったアクションプラン」を示す際に有効となります。
よって、演繹法と帰納法を組み合わせる際は、帰納法で「方針」を考え、演繹法で「方針」を考えるとよいでしょう。
6.帰納法と演繹法のビジネスシーンでの使い分け
帰納法と演繹法はどちらも論理を展開していくという点で意味は似ていますが、明確な違いがあり、使用に適した場面も異なります。ここでは実際のビジネスシーンではどのように使い分ければよいのか、について見ていきましょう。
ビジネスシーンでの帰納法
帰納法とは、複数の事実から導き出される傾向を集結させて結論に結びつける論理的推論方法です。多くの事例に共通するものをまとめて、相手に「納得感」を与えるという要素が強いといえます。
いくつもの情報を使うため、偏った情報ではないという印象を与え、聞く者に納得感を与えやすいのです。
ビジネスシーンでの演繹法
演繹法は帰納法とは論理展開が異なり、普遍的な事実ルール・セオリーを前提として、結論を見出す手法です。思考の特性から、鋭い説得力を兼ね備えた推論方法であるとも考えられており、演繹法はより真実に近いものと認知されています。
演繹法は、誰もが当然知っている普遍的事実を使い、結論にいたるという過程になっているため、数学的な要素があるといえるでしょう。
状況に合わせて使い分ける
ビジネスシーンの場合、帰納法は統計などを用いる場合に向き、演繹法はアイディアが正確だと示す際に有効と考えられています。
帰納法はマーケティングやアンケートの結果を重視し、論理展開を行います。調査した結果から生み出される理解を高めるためにも、一定以上の事例があれば一層効果も上がるでしょう。
一方で演繹法は、原理原則に関係する正確な情報が必要となるため、新製品の開発時に有効だといえるでしょう。また戦略的な計画を立てたり、組織を構築したりといったシーンにも適しています。
7.仮説演繹法
仮説演繹法とは帰納法と演繹法を組み合わせた推論の方法のことで、ある現象を示すための理論や法則を得るための研究方法としても知られています。ここでは仮説演繹法の流れや問題、その効果について説明しましょう。
仮説演繹法の流れ
一般的な仮説演繹法の流れは、下記のとおりです。
- 観察を行って問題を発見する
- 発見した問題に対して仮説を作る(帰納)
- 立てた仮説から実験可能な命題である予測を演繹する
- 予測を実験によって検証もしくは反証する
つまり問題に対する仮説を帰納法によって見出し、さらに「予測」を演繹法で導き出すのが仮説演繹法です。演繹法と帰納法を組み合わせて、「正しさ」と「新しさ」の両立が可能になったと考えられています。
仮説演繹法の問題
仮説演繹法は、指摘すべき問題がゼロというわけではありません。あくまでも実験によって確実性を示すというもので、実験による検証はどちらかというと帰納的です。
よって結果が「予測が正しい」という場合でも、論理的に100%正しいと断定できず、一定の範囲の中で「確からしい」としか表現できないのです。
仮説演繹法の効果
しかし一方で、演繹法や帰納法をそれぞれ単独で利用するよりも、新しい情報や知識が得られ、そのうえ確かかどうかを高められため、仮説演繹法には大きな意味があると考えられているのです。
演繹法と帰納法の長所を組み合わせた推論の方法として、今後もビジネスシーンや企業活動において注目されるべき手法だといえるでしょう。
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