環境教育とは、環境問題の重大性を教育することです。環境教育の歴史や種類、そして今後の課題などについて詳しく説明します。
目次
1.環境教育とは?
環境教育とは、企業が環境に対して与える影響や、企業や家庭が行うべき取り組みを考えられるように教育すること。
近年、SDGsといった言葉を耳にする機会が増えました。なぜなら2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたからです。ここでは環境教育について理解を深めるため、ESDとSDGsの関係や環境教育、変遷や目標について説明します。
ESDとSDGsの関係
- ESD:持続可能な開発のための教育
- SDGs:持続可能な開発目標
ESDで教育された人がSDGsの持続可能な開発目標を達成してより良い世界になる、という関係性がこの2つにあります。
ESDとしての環境教育
ESDとは、持続可能な社会のために、世界中で起こっている問題は他人事ではなく自らの問題だと考え、身近なことから改善していく人を育む教育のこと。
企業における社会的責任を問う一方、環境問題だけでなく貧困、男女平等などの社会的課題が提示されESDの概念が広がってきています。
ESDの変遷
ESDの歴史は以下のとおりです。
- 1987年 「持続可能な開発(SD)」の概念が提唱
- 1992年 「アジェンダ21」が制定
- 2002年 「ESDの10年」の決議
- 2013年 「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクション・プログラム」が採択
- 2015年~現在 採択されたものを実施
ESDの目標
まず持続可能な社会の実現のために約6つの課題を見いだすのです。次に課題解決に必要な7つの能力・態度を身につけて持続可能な社会を実現させる人を育みます。7つの能力・態度とは、ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度のことです。
2.環境教育の重要性
地球温暖化やオゾン層の破壊などの環境問題は緊急性があり、人類の生存や繁栄には解決すべき課題です。まずは「なぜ環境問題を引き起こしているか」「環境問題の仕組み」などを自主的に学び、身近な内容から実践していくことが重要です。
文部科学省は、特に21世紀を担う子どもたちへの環境教育は極めて重要な意義があるとしています。
3.環境教育の種類
環境教育の種類を3つ、説明します。
- 従業員向け
- 学校・地域社会向け
- 社会貢献活動
①従業員向け
研修や資格所得といった環境教育システムの整備やエコ情報を発信し、全員参加の環境経営に取り組みます。
全員参加の環境経営とは、研究開発やサービスなどぞれぞれのポジションの人が、環境について考えながら業務を行うこと。企業が環境教育を行うと、さまざまなメリットが得られます。
②学校や地域社会向け
自社施設を活用した環境教育や学生インターンシップの受け入れなどのこと。
働いている人や学校に行っている人がボランティア活動をするのは、時間的にも厳しいもの。しかし事業者が進んで社会貢献活動・休暇制度・インターン制度を整備し、学生や従業員を活用すると持続可能な社会実現に近づきやすくなります。
③社会貢献活動
地域清掃活動やNPO・自治体と連携した環境活動などのこと。
SDGsの採択により企業は、社会貢献に力を入れ始めました。それまでは利益を追及していたもののSDGsが採択されてから、目的や使命をもって企業活動に取り組んでいます。
一部上場企業の7割が加盟している経団連は、SDGsに取り組むと宣言しており、その指針は、各企業の社会貢献を後押ししているのです。
4.環境教育を取り入れるメリット
企業は社会的責任の一環で環境教育に取り組んでいます。しかし環境教育を取り入れるメリットはたくさんあるのです。ここでは下記の3点について説明します。
- 環境コンプライアンスの徹底
- コストダウン
- 企業イメージの向上
①環境コンプライアンスの徹底
研修を行うと環境コンプライアンスが徹底され、従業員の意識が高まり、環境関連法令を遵守するようになります。法令はつねに変化するうえ最新動向がわかりにくく複雑です。しかしコンプライアンスや社会的責任に重要なため、理解する必要があります。
②コストダウン
環境教育を取り入れると資源やエネルギーを無駄にせず、コスト削減につながります。それだけではなくやりがいもあるため、従業員のモチベーションが向上・維持されるのです。それにより新たな採用コストも削減できるでしょう。
③企業イメージの向上
企業がCSR(企業の社会的責任)を意識し、進んで社会貢献活動をすると、社会や環境に大きな影響を与えます。たとえば積極的に地域の環境活動に参加すれば、地域からの企業イメージもアップするでしょう。
また環境保護によって、社会から企業ブランドや信頼が向上するといったメリットもあります。
環境 人づくり企業大賞
環境に配慮した活動のリーダーとなる人を育成・輩出して、活動を後押しする企業を表彰するもの。今回で7回目の開催となり61件の応募がありました。栄えある環境大臣賞に選ばれたのは、愛知県にあるリンナイです。
社会と協働できる人材の育成
社会と協働できる人材の育成とは、課題を解決する際、社会と同じ目標達成のために努力できる人を育成すること。こうした取り組みにて、社会と協働できる人が核となるので持続可能な社会の実現が可能になります。
5.環境教育に取り組む企業事例
ここでは、環境教育に取り組む企業の事例を4つ紹介します。
- トヨタ自動車
- 日本リユースシステム
- ブラザー販売
- ファンケル
①トヨタ自動車
トヨタ自動車では、トヨタ環境チャレンジ2050で6つのチャレンジを掲げています。2018年には6つのうち「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」の実現に向け、「びおとーぷ堤」が開設されました。
またトヨタ自動車は、各工場に合った環境保全活動についても約束しています。
②日本リユースシステム
日本リユースシステムでは、暖房の使用を減らすために体ぽかぽか体操を実施したり、全社員に向けて希望するSDGsのセミナーを無料受講できるようにしたりしています。
2017年からは、「お針子事業」が開始。目的はモンゴルでセミナーを開催し、着物や帯の再利用や着物の廃棄について知ってもらうことです。
③ブラザー販売
ブラザー販売では、全従業員で環境社会検定試験(eco検定)取得を目指しています。2020年の現段階では、従業員の9割超が合格していて、顧客やビジネスパートナーに、環境への取り組みや製品の環境配慮について説明できるようになりました。
オリジナルテキストの配布やテレビ会議による勉強会などを実施し、従業員が一丸となって環境保全について学んでいます。
④ファンケル
ファンケルでは、新人研修で「環境を守ることの大切さ」を伝えています。従業員にはセミナーや勉強会を行い、2010年からは山梨県道志村の森林保全研修がスタート。環境への貢献だけではなく、環境への意識をもつ従業員の教育にも力を入れているのです。
その結果、環境省「環境 人づくり企業大賞」の「優秀賞」を3年連続で受賞しています。
6.環境教育における課題
ここでは環境教育における課題について、説明します。
- 相互交流支援施設の設置
- 継続可能な取り組み
①相互交流支援施設の設置
SDGsの理念である「誰一人取り残さない」を貫くためには以下の2点が重要です。
- 行政機関や企業、NGOや市民などでパートナーシップを組む
- 相互交流支援施設を設ける
行政が企業とパートナーシップを結ぶと、市民の声が政府に届きます。次に相互交流支援施設を設けると、市民と交流する機会が増え、誰一人取り残さない持続可能な社会へ近づくのです。
②継続可能な取り組み
環境教育を継続可能な取り組みにするには、持続可能な社会の担い手を育成し続ける必要があります。しかし環境教育はいまだ法的整備が十分ではありません。そのため市民への環境教育の資金も少なく、今行っている環境教育活動のままでは継続が難しいでしょう。
持続可能な社会の担い手を育成し続けるためには、長く継続できるような環境教育活動が必要です。