エクイティとは「公平性」を意味する言葉です。エクイティの必要性や導入のポイント、エクイティとダイバーシティー&インクルージョンの関係性について解説します。
目次
1.エクイティ(Equity)とは?
エクイティ(Equity)とは、個々の社員に合わせた支援を行って公平な土台を作ることです。たとえば社内における昇進制度で、社員の国籍ごとに昇進の機会が違っていたら不公平でしょう。しかし国籍を問わずすべての社員に同じ昇進の機会を与えれば、不公平さはなくなり皆同じ土台で仕事ができます。
つまり性別や年齢、国籍や境遇などの違いに応じた適切な支援や調整を行い、個々の社員が公平に働けることをエクイティと表すのです。
もともと公平性を意味する英語で、関連語である「ジェンダーエクイティ」は「男女公平」を意味します。
2.エクイティとダイバーシティー&インクルージョン(D&I)の関係
近年、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)にE(エクイティ)の要素をくわえる企業が増加しています。
D&Iとは「多様性を認め、尊重され、個々の持つ能力が発揮できる環境」のこと。「DE&I」にシフトすると、多様性のみならず公平性もくわわるため、より優れた企業風土を生み出せるようになります。
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ダイバーシティーとは?
ダイバーシティとは、「多様性」を意味する語で、ビジネスの現場では、「組織や集団に存在する個々の社員の違い」という意味で捉えられているでしょう。
ダイバーシティーは性別や人種、国籍や宗教、障害の有無や性的指向といった違いを多様性として尊重し、差別のない職場環境を作り出すという意味を内包しているからです。
ダイバーシティとは?【意味を簡単に】&インクルージョン
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最近、さまざまな分野で「多様性」を意味する「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にするよ...
インクルージョンとは?
インクルージョンとは、「包括」「一体性」意味する英語で、ビジネスの現場では「社員一人ひとりがほかの社員の個性や違いを認め、尊重し、一体感をもって仕事をする」という意味合いで用いられます。
互いの違いを尊重するだけでなく、社員全員が「一体感を覚えて働いている状態」がインクルージョンの意味するところです。
インクルージョンとは? 意味やダイバーシティとの違いを簡単に
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D&IにEが加わった背景
D&IにEをくわえる目的は、多様性や一体性のなかに公平性も加えて企業風土を改善すること。
多様性が認められて一体性をもって仕事ができる環境でも、従来の制度や慣習には不公平さが潜んでいる場合もあります。たとえば無意識に男性社員と女性社員の役割や責任に差がつけられているといったものです。
エクイティをくわえて不公平さが解消されれば、社員すべてが同じ土台で仕事を進められる風土が生まれます。
3.エクイティが必要な理由
D&IからDE&Iにシフトしてきた背景にあるのは、社会的不平等是正の流れです。特定の人々にとって生きにくい社会ではなく、すべての人が公平に生きられる社会を生み出すという意識が、多くの企業に浸透し始めています。
- マイノリティ問題の改善
- 男女差別のないスタート整備
- 多様性のある人材の確保
- 不平等な結果への対策
- 優秀な人材の離職防止
①マイノリティ問題の改善
エクイティは、ビジネスの現場におけるマイノリティ問題を改善と直結しています。年齢や性別、国籍などの理由から、マイノリティとなる社員が少なからずいるもの。また女性管理職や育児介護社員、派遣社員といったマイノリティな働き方も含まれます。
企業は、すべての社員が心身ともに健全に働ける企業文化を構築しなければなりません。マイノリティを含めた全社員が安心できる働き方改革において、エクイティは不可欠なのです。
②男女差別のないスタート整備
男女差別のない職場環境を作るうえでも、エクイティの考え方は切り離せません。そもそも男性と女性は身体や生活環境が異なります。
たとえば女性社員には生理休暇があります。これは生理によって仕事に支障が出てしまう女性の不公平さを是正するための措置です。エクイティを意識すれば、男女どちらもつねに同じ土俵で働ける職場環境をつくっていけるでしょう。
③多様性のある人材の確保
多様な人材の確保と活用は、エクイティの真髄といえます。エクイティの考え方で重要なポイントは、不公平さのない企業文化を生み出すこと。
性別や年齢、国籍や宗教などを問わず優秀な人材を採用して活躍の場を与えましょう。優秀な人材が集まれば、企業の生産性や競争力も大きく上昇していくので、企業の成長にもつながります。
④不平等な結果への対策
エクイティは、気づかずに生じていた社内の「不平等」を解決できます。それぞれの社員が持つ心身特徴や能力などには、何かしらの差は生じるもの。この差を無視して平等な条件を与えても、不平等な結果を招いてしまうでしょう。
まずは各社員の差を理解し、その差を解消したうえで公平性を保つ方法を考えなくてはなりません。エクイティは同じスタートラインをつくるうえで重要な考え方なのです。
⑤優秀な人材の離職防止
誰もが公平に働けるエクイティな環境を整えれば、優秀な人材の離職防止につながります。たとえば女性の離職率が高い企業では、実務経験と給与が得られる復帰プログラムを導入しました。
こうしたプログラムを活用すれば、産休や育休で1年以上離職した女性社員でも、復帰後に公平にキャリアを積んでいけるのです。こうしたエクイティな環境を整えていくと、優秀なマイノリティ社員の離職も防げます。
4.エクイティ(公平性)とイコーリティ(平等)の違い
エクイティ(公平性)と似た言葉にイコーリティ(平等)があります。しかし「公平=平等」ではありません。
- 平等:一様な条件を適用すること
- 公平:違いを踏まえた条件を適用すること
ここでは両者の違いを解説します。
エクイティ(公平性)とイコーリティ(平等)の定義
エクイティ(公平性)は「調整して偏りをなくすこと」。何かを判断したり物事を進めたりするとき、個々の性質や特徴、能力などの差をふまえて、考え方や方向性に偏りが生じないように調整するのです。
一方イコーリティ(平等)は「すべてを同じように扱うこと」。人々の性質や特徴、能力などが異なったとしても、すべての人に均等な条件を与えるのです。
エクイティ(公平性)との違いは考え方
エクイティの考え方は、個々の人間に状況に合わせて適切なツールやリソースを与え、「人々の差がなくなる土台を作る」こと。一方イコーリティは、一様なツールやリソースを与えて「すべての人を同じ土台に乗せる」という考え方です。
そのため土台に乗った人たちの間に差が生じるイコーリティでは、同じ条件を適用したとしても同じ結果が得られなくなる場合もあります。
5.エクイティを企業が推進する問題点
エクイティを企業で推進していく場合、エクイティ導入におけるさまざまな課題や注意点を理解しておくべきです。とりわけコスト面のハードルと、エクイティの考え方をどのように社員へ浸透させるかを考えましょう。
ここでは「コスト」と「公平と平等の不一致」について解説します。
DE&Iの企業導入はコストがかる
DE&Iは長期的な工程で実施されるため、当然ながらコストがかかります。一時的にDE&Iを導入しても大きな効果は期待できないでしょう。長期間続けることでDE&Iの考え方が社員に浸透し、企業文化が根本的に変わっていくからです。
そのためDE&Iの導入では、年単位の実施を見据えて予算を確保しなければなりません。
公平と平等の不一致
公平性を不平等ととらえる人もいるため、社員の認識のずれが挙げられます。
たとえば「女性ばかり優遇するのはおかしい」「外国人に対する特別な配慮が多すぎる」といった不満が出る可能性も高いです。自社のエクイティ施策に対して社員全員の理解を得るには、研修といった施策が必要になるでしょう。
6.エクイティを取り入れる際のポイント
エクイティの導入には綿密な戦略が必要です。予算だけ確保しても、エクイティ実施における効果的な推進方法を知らないと、エクイティ導入に失敗する可能性もあります。エクイティ導入前に、ポイントをおさえておきましょう。
- 社員一丸で協力し合う
- DE&Iの優先と明示
- 社員からヒアリング
- チャレンジの場を提供
①社員一丸で協力し合う
エクイティの導入で最も重要なポイントは「社員一丸で取り組む」こと。
エクイティの目的は「企業文化そのものを変える」ですから、経営層やコンプライアンス部門といった特定の層にだけ浸透しても意味がありません。すべての社員がエクイティに理解を持ち、個々の違いや特徴を知って協力し合う風土を生み出すのが重要です。
②DE&Iの優先と明示
エクイティ推進のためには、企業がエクイティを優先しているとステークホルダーへ明示する必要があります。
エクイティ導入には、予算や人員などのリソースを使います。よって上層部はエクイティの目的を伝え、どのように実施するかを説明しなければなりません。
自社のコーポレートサイトにもトップメッセージを掲載し、経営層が率先して取り組んでいる姿勢を見せましょう。
③社員からヒアリング
エクイティの推進には社員とのヒアリングが欠かせません。すべての社員がエクイティを実感しているかどうかを把握するためです。エクイティの導入に対して、ある社員は公平と感じていても、別の社員は不公平、あるいは不平等と感じているかもしれません。
エクイティ導入前に全社員から率直な意見や要望を聞き、エクイティの理解度や納得度、浸透具合などを測りましょう。
④チャレンジの場を提供
エクイティ推進では、個々の差を埋める土台づくりとして、チャレンジの場を提供するのも重要です。たとえばキャリアアップに関するエクイティを推進するなら、どの社員も同じキャリアを達成できるような体制を整える必要があるでしょう。
「特定の社員にひとつ上の業務や役職を任せる」「若手社員の能力をベテランレベルへ引き上げるための研修を実施する」などの施策が考えられます。
7.エクイティを明確にした「DE&I」を推奨する企業例
近年、大企業を中心に、DE&Iを導入する企業が増加しています。大企業におけるDE&Iの導入事例をご紹介しましょう。
ジョンソン・エンド・ジョンソン
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、DE&Iを企業の重要戦略として位置づけました。「You Belong」という言葉をテーマに掲げ、エクイティを通して「すべての社員が最大限の力を発揮できる職場環境」を生み出すことに注力しています。
パナソニック
パナソニックは「DE&Iは自社のルーツそのものである」と宣言しました。そしてグループDEIフォーラムの開催やワークライフバランスの実現、LGBTQ・ジェンダーの公平性の実現などを進めています。
Amazon
Amazonの最高経営責任者は、「DE&Iは新しい発明のために必要不可欠である」と述べています。
そして社員の意識の変革に重きを置き、「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の是正」「社員全員に期待される行動をガイドラインで明確に示す」などの取り組みを開始しました。