ERGとは従業員リソースグループと呼ばれる集団のこと。ここではERGを導入する目的やダイバーシティとの関係、ERGが注目される理由などについて解説します。
目次
1.ERG(従業員リソースグループ)とは?
ERGとは「Employee Resource Group」の略語です。直訳すると「従業員リソースグループ」という意味になります。組織のなかで共通の特性や属性を持った従業員が草の根的につながり、サポートし合うグループをERGといいます。共通点として、次のような属性があげられます。
- 世代
- 人種
- 宗教
- ジェンダー
ERGにはそれぞれのグループが特有の問題について話し合ったり、部門を越えた交流を図ったりすると、従業員の主体性や組織の連帯を高めるといった効果が期待されています。
ERGを導入する目的
ダイバーシティの推進が活発化している現代において、ERGはおもに以下の目的で導入されます。
- 多様性のある職場を作る
- 社内コミュニケーション活性化させる
同じ立場のメンバーで連帯すれば、会社に居場所ができます。従業員一人ひとりが安心して自分らしく働ける環境になるのです。
2.ERGとダイバーシティの関係
ERGと深い関係にあるのが、近年注目を集めている「ダイバーシティ」に対する取り組みです。現代では国内においても個人の価値観や考え方の多様化が進んでいます。
しかしそれと同時に多様な人材が働くなかで、意見の食い違いや対立が生まれることも増えてきました。そこで注目されるようになったのが、共通点や似た個性を持った従業員同士のコミュニティというわけです。
ダイバーシティの意味
そもそもダイバーシティ(Diversity)と多様性のことです。ある集団において、さまざまな属性の人が集まった状態を指します。属性としては以下の例があります。
- 年齢や性別
- 国籍や人種
- 性的指向や性自認
- 学歴や職歴
- 宗教や価値観
ダイバーシティとは、もともと雇用機会の均等や人権問題などを説明するために使われていた用語です。現在ではおもに組織の競争力や生産性を高める経営戦略として認知されています。
ERGはダイバーシティ推進策のひとつ
ダイバーシティの推進には、会社の意思決定で上層部が主体となるトップダウンと、下部の声を上部が吸い上げるボトムアップの両方が必要です。
ERGの歴史は1960年代のアメリカで発生した人種問題にさかのぼります。黒人社員が入社後さまざまな差別に直面していたなかで、従業員グループを立ち上げ、社内や地域社会でポジティブな環境を築けるよう目指したのがはじまりです。
マイノリティの視点を反映させ、商品開発やプロセス改善などビジネスのさまざまなシーンに活用するERGは、ボトムアップ型の推進策として注目されるようになりました。
3.ERGが注目されている理由
ERGはさまざまな単位で構成されており、その要素は組織によって異なります。アメリカ大企業の90%が導入しているともいわれるERG。その理由のひとつに、マイノリティの職場体験を向上させる狙いがあります。
人材の多様化
現代の会社には育児介護中の従業員や外国人労働者、シニア社員や障がいを抱えた社員などさまざまな人材が所属しています。そのようななかで、意見の食い違いや価値観の違いによる対立が生じることも少なくありません。
人材の多様化によって必要になってきたのがERG、つまり共通の考えや同じ個性を持った従業員同士のコミュニティというわけです。個人では発信しにくかった課題や悩みを相談したり、互いにサポートしたりすることで、従業員一人ひとりが自分らしさを保ちながら働けるようになるのです。
社会的意義
ERGには肩書や属性だけでなく、従業員の関心事をベースにしたコミュニティもあります。
- 健康
- 子育て
- ボランティア
多様性の目的を達成するためのものや、ビジネス活動を活性化させるものなど、ERGにはさまざまなグループがあります。最近ではボランティア活動によって社内だけでなく社外にも影響を与えようとするグループも増えてきました。
4.ERGに取り組むメリット
企業がERGに取り組むおもなメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 従業員のモチベーションアップ
- 就業環境の見直し
- 離職率の低下
①従業員のモチベーションアップ
ERG導入のメリットとして大きいのが、従業員のモチベーションに対する影響です。ERGに属した従業員は、同じような悩みを抱える仲間から精神的なサポートを受けられます。
「こんな悩みを抱えているのは自分一人ではない」「この問題にはこうやって立ち向かえばいいんだ」と、励みやつながりを感じられるようになります。これが業務に対するモチベーションにつながるのです。
グループでの取り組みに決まりはありません。自発的なビジネス立ち上げや地域活動につなげることも可能です。
②就業環境の見直し
ERGに関する取り組みは、社内の就業環境改善にもつながります。ERGでは経歴や役職を越えたつながりが形成できます。上級管理職にメンターやコーチになってもらい、キャリアアップにつなげることも可能です。
ERGが機能すると、社内のダイバーシティ化が促進され、多様性をよしとする風土が強くなっていきます。従業員同士がお互いの価値観や考え方を受け入れられる企業風土、協調しながら働く就業環境が作れるというわけです。
③離職率の低下
ERGには離職率の低下も期待できます。たとえば性的マイノリティの立場にある従業員が同じような悩みを抱える従業員とつながって、定期的にコミュニケーションを交わします。
そこから「あの人も頑張っているのだから自分も頑張ろう」「上層部が理解してくれたから意見も発信しやすい」など、従業員のエンゲージメントに働きかける効果が期待できるというわけです。
結果、会社に対する愛着や帰属意識が増し「この会社で働き続けたい」という定着率の向上につなげます。
5.ERGに取り組むうえでのポイント
会社がERGに取り組み、その効果を最大限発揮するためにはいくつかのポイントをおさえる必要があります。
組織の現状を見極めた目標設定
まずは何のためにERGに取り組むのか、その目標を明らかにしておきましょう。
- 自社にはどのような課題があるのか
- この課題を解決するにはどのような具体策が必要か
- 何を目指してERGを作るのか
組織の現状を見極め、ERGの目標を会社の目標と一致させることが成功のポイントです。
積極的に情報を共有
ERGをうまく機能させるためには、積極的な情報発信が欠かせません。どれだけ社会的意義のある、従業員のモチベーションを高めるERGがあったとしても、それが周知されていなければ十分な効果を発揮できません。
組織の規模が大きくなればなるほど、社内の状況は把握しにくくなります。社内報や社内SNS、社内イントラネットなどを活用して積極的にERGの存在を知らせましょう。
小規模からスタート
ERGの導入は小さくはじめるのがおすすめです。立ち上げに必要なのは人数よりもニーズを満たせているかどうか。最初は少人数でスタートし、グループの体制や進め方を整えながら徐々に規模を拡大していきます。
はじめのうちは同じような背景を持った人たちを集めてランチ会を開催したり、社内ツールでグループを作って質問を投げかけたりするだけでも効果を得られます。
6.ERGに取り組む際の注意点
ERGに取り組む際は明確な目標設定、そしてERGに対する正しい認知と理解が必要です。ここではERGに取り組む際の注意点について詳しく説明します。
ERGに対する認知や理解が必要
ERGに取り組む際は、ERGに対する認知と理解が欠かせません。たとえば日本では女性のロールモデルが少ないこと、またネットワーキングの重要性が指摘されていることから、女性活躍推進としてERGに取り組む企業が増えています。
しかし当事者同士が集まる機会が少なかったり、効果について理解されていなかったりするとどうでしょうか。ERGは形骸化し、問題は解決されないままです。
またLGBTQなどの当事者がカミングアウトしにくい、理解されにくいという課題も依然として残っています。ERGの取り組みにはERGに対する正しい認知と十分な理解が必要なのです。
明確な目標設定
ERGメンバーが同じ方向を向いて活動するには、共通の目標が必要です。グループを作る際は、活動によって達成したいことを明確にしておきましょう。
またこの目標は会社の目標と共通していることが重要です。ERGでの活動は会社活動の一部。ERGが最終的にどのような形で会社に貢献するのかを意識して目標を設定しましょう。
7.ERGに取り組む企業事例
ダイバーシティ&インクルージョンの推進に向けて、ERGに取り組む企業も増えてきました。ここではERGに取り組む企業の事例とその効果について説明します。
株式会社明治
株式会社明治では2022年1月からERGの活動を開始。ダイバーシティ&インクルージョンのテーマに沿った活動を実施して、ボトムアップ型でこれを推進しています。
同社では障がいのあるメンバーも働きやすい環境実現を目指した「チャレンジドERG」を実施。情報交換やメンバーの悩みを聞いてもらえる場を設けて、職場環境の改善につなげました。
ほかにも女性活躍、シニア、外国人、LGBTQ+、そしてチャレンジドの5つの分野で「食と健康」の価値を高める取り組みを実施しました。
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループでは国内約3,000人、グローバルベースでは約4,000人の社員がERGに参加しています。2018年には女性社員によるERGが発足。世界5地域の女性社員が国や部門の垣根を越えてグローバルにつながり、勉強会や講演会などを実施しました。
さらに管理職の女性が中心となって後進の育成やサポートにつながる活動を実施しているグループもあります。
武田薬品工業
武田薬品工業ではダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを尊重する企業文化の育成を目標としてERGを実施。2014年に発足した女性のERGをはじめ、子育て中の従業員やがんサバイバーのピアサポートグループなどが誕生しています。
それぞれのグループが、座談会やワークショップなどを通して部門の垣根を越えたネットワークを形成。これらの活動から、すべての従業員が生き生きと働ける、従業員の個性や価値観を尊重した企業文化が醸成されています。
ジョンソン・エンド・ジョンソングループ
ジョンソン・エンド・ジョンソングループの日本法人では、4つのERGでダイバーシティ領域の啓発を進めています。ボトムアップだけに頼ることなく、会社側からさまざまな支援行ってERGを盛り上げている企業の事例です。
たとえば日本法人グループの各代表がERGのスポンサーとして活動を支援。ERG活動の成果を評価に反映して、会社としてERG活動を認めているメッセージを発信しました。ERG活動の活性化には、従業員エンゲージメントや定着率の向上も期待されています。
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