エシカルとは?意味やエシカル消費の取り組み事例を解説

エシカル消費は、環境、社会、人に優しい消費です。エシカル消費の輪を広げていくことができれば、使い捨てや安価で大量生産を良しとする消費一辺倒の経済活動のサイクルを変えることができるかもしれません。

持続可能な社会、環境を守れる経済活動、社会的弱者への公正適正な配慮が実現できる社会こそ、地球上に生きるみんなが暮らしやすい社会。エシカル消費は身近な買い物からできる社会貢献です。今日のからエシカル消費を心掛けてみませんか?

1.エシカルとは?

エシカルとは「道徳・倫理」という意味を表す言葉です。エシカルは、環境への配慮を表す「エコ」や健康で持続可能な、またこれを重視する生活様式という意味を持つ「ロハス」といった言葉の持つ範囲をさらに広げて、環境、労働など各種社会問題を表す意味で使用されています。

エシカルとCSRの違い

エシカルに類似する言葉に、CSR(corporate social responsibility)があります。CSRとは、企業の社会的責任を意味する言葉で企業による地域社会への貢献、地球環境への配慮といった社会活動の取り組みを指しているのです。

企業のイメージアップを目的とすることが多く、対外的で表面的な広告宣伝で終わってしまうケースも見られます。

一方、エシカルの意味する範囲は企業活動の範囲にとどまりません。企業活動だけでなく、消費者による人や環境などに配慮している行動も含む等、高い倫理性のある社会貢献を社会に広める活動を指しているのです。

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2.エシカル消費とは?

エシカル消費とは消費者がサービスや商品を選ぶ際に用いる尺度のこと。エシカル消費をするということは、各種の環境に対する配慮が行き届いた尺度を用いて消費行動をすることです。その尺度には、

  1. 品質
  2. 価格
  3. 安全性
  4. 倫理

の4つがあります。具体的に言えば、ファストファッションなどに象徴される安価な商品を大量に販売するビジネスモデルではなく、私たち人類と地球に優しいビジネスサイクルが定着できるよう取り組むこと。

欧米で提唱されている概念のように思われがちですが、わが国でも2020年東京オリンピックに向けて、エシカル消費を意識した物品調達への取り組みが始まっています。

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エシカル消費の理念

一般社団法人エシカル協会によるとエシカル消費の定義は「人と社会、地球環境のことを考慮して作られたモノを購入あるいは消費する」。つまり、エシカル消費には、「人、社会、環境、地域」の各種要素を倫理的により良い方向へ改善していく意味が含まれているのです。

人や社会に配慮されたエシカル消費というと、真っ先に思い浮かぶのはフェアトレードや障がい者の作った製品の販売、購入でしょう。

環境に配慮したエシカル消費では、

  • 自然の力を最大限活用する自然エネルギーの利用
  • エコマーク付き製品の販売や購入
  • カーシェアリング

などが挙げられます。地域に配慮したエシカル消費の例では、

  • 地元で取れたものを地元で消費する地産地消
  • 伝統文化や伝統技術などを用いた伝統工芸の支援活動

などがあります。

エシカル消費の尺度例は5つ

エシカル消費の尺度は、

  1. 環境
  2. 社会
  3. 地域
  4. 生物多様性

の5つがあります。

環境

環境への配慮には、紙をリサイクルして作るトイレットペーパーやペットボトルのリサイクル品を購入することなど、エコ商品を選ぶ行為が挙げられます。

  • エコマークの付いた商品を選ぶ
  • エネルギー効率がよく寿命の長いLED電球を選ぶ

このような消費行動によって、「使い捨て」に象徴されるような環境負荷を減らせるのです。「捨てるモノ、ゴミになるモノをいかに少なくするか」を考えたエシカル消費は、私たちの住むこの地球環境を守ることにつながるでしょう。

社会

社会への配慮で真っ先に挙げられるのはフェアトレード商品を選ぶということ。

貧しい農村や小規模農家が不当に安い値段で農作物を買い叩かれるという話は、いまだに存在します。買い手が適正な値段で原料や製品を購入し、その値段に見合った価格で販売するフェアトレードの仕組みが、発展途上国の社会を大きく支えるのです。

また、超高齢化社会を迎えている日本でも、バリアフリーやユニバーサルデザイン等を積極的に取り入れている企業の製品を利用すれば、社会の流れを大きく変えるきっかけとなるでしょう。

人への配慮は、障がい者支援につながります。

  • 障がい者が作った製品を購入
  • 障がい者を積極的に支援している企業や事業所の商品を購入

これらは、障がい者支援になるのです。さらに、視点を世界に向けてみましょう。

発展途上国では児童労働によってさまざまな製品がつくられています。製品を購入する際、児童労働によって不当に生産されたものではない製品を選んで購入するエシカル消費が増えれば、日本にいながら世界の子どもたちに目を向けた社会的配慮を実践できるのです。

人に対しての消費行動は社会の弱者に手を差し伸べるきっかけとなります。

地域

地域への配慮として挙げられるのは地産地消でしょう。

地元で取れた農作物を使った給食は、多くの地域で取り入れられています。地産地消は、

  • 地元の経済活動を支援するといった生産者の保護
  • 地元経済の活性化
  • 遠距離への輸送がないため、経済的かつ環境的負荷の低減

など多くのメリットを生むのです。また、被災地等への復興支援のために特定地域の特産物を購入する、これも地域経済を潤すエシカル消費の一つです。

生物多様性

生物多様性という観点から、エシカル消費を捉えることも重要でしょう。

  • FSC森林認証:適正に管理された森林資源を使用した紙製品などに付いている
  • MSC認証:海洋の自然環境や水産資源を守って捕獲された水産物に付く

こういった製品を選ぶことで人間と自然界に存在する生物との共存が図れるのです。また、生物多様性の実現は、環境保護の課題解決に重なる部分があります。エシカル消費は、さまざまな生物と共存できる持続可能な環境保全を実現する重要な鍵を握っているのです。

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3.エシカル消費と社会問題

エシカルファッション

有名メーカーがエシカル関連の新ブランドを立ち上げたこともあり、アパレル業界でエシカルファッションの注目度がアップしています。

エシカルファッションは、社会貢献できるフェアトレードファッションと言い換えることもできます。生産者・販売者・購入者がそれぞれの立場でエシカル消費を意識した経済活動を行うことで、フェアトレードのビジネスモデルを構築できるからです。

  • 生産者:適正な賃金が生じる仕事を獲得でき、安定した収入を手にする
  • 販売者:生産者と適正なビジネスを行うことで公平性を確保し、各種社会問題の解決の一手を担える
  • 購入者:製品を購入することで生産者と販売者を支える社会貢献ができる

このようにエシカルファッションは、生産者・販売者・購入者が適正で公正な相関関係を築けるビジネスなのです。

エシカルとフェアトレード

エシカルを語る上でよく聞かれるのが、フェアトレードでしょう。フェアトレードとは、購入者・販売者の両者間で公平で公正に行われる貿易のこと。

今、世界各地でモノの価格を安くしすぎる、いわゆる「価格破壊」により、

  • 生産者へ正当な賃金が支払われず生活が保てない
  • 農作物を大量栽培し、単価を下げるために農薬を多量に使う

などの社会問題が発生しています。

フェアトレードの概念が実践されることで、消費や各種サービスの購入は適正価格となります。そのため、生産者に適正な賃金が支払われ、良質な労働環境が保たれるのです。さらに環境を破壊してまでの無謀な生産も食い止められます。

フェアトレードによって、

  • 環境
  • 社会
  • 地域
  • 生物多様性

のすべてに優しい貿易サイクルが整うことになるのです。

社会問題の例とエシカル消費による解決

児童労働

エシカル消費が社会問題を解決する大きなきっかけになるとされた一例に、児童労働の問題があります。貧しい国では、多くの児童が学校へ行くことなく強制的に労働に従事させられているのです。

もし、自分の買った商品が児童労働によって生産された商品であったなら、それは知らなかったとしても児童労働に加担することと同義です。

エシカル消費は、正しい生産によって作られた商品を適正な価格で購入することで、児童労働を減らし、正しい経済活動のサイクルを生み出すきっかけを世界に与えました。

弱者支援

エシカル消費は、弱者支援のきっかけにもなっているのです。発展途上国で行われている使用済みの飲料パッケージでバッグを作る取り組みは、リサイクルによるエコはもちろんのこと、安定的な収入源による社会的弱者の自立に貢献しています。

アフリカで極貧状態にある女性たちに天然ゴムを用いたバッグ製作の仕事を提供したデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド氏の話をご存じでしょうか?

天然ゴムの生産で南アフリカの原住民の収入を確保しつつ、付加価値のあるハンドメイドバッグの製作で女性に仕事を与え、自立の場を提供したのです。

弱者に現金を渡してサポートする方法もありますが、プロセスに支援対象を取り込んで、意義を高める方法が広がりつつあります。

エシカルファッションや食品を探す

「エシカル消費で社会に貢献したい!」と思ったら、エシカル商品の情報を提供するサイト、「ぐりちょ」がお勧めです。

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4.エシカル消費取り組み事例

徳島県・徳島県教育委員会

徳島県では、消費者くらし政策課が中心となり徳島県教育委員会などとともにエシカル消費の普及・啓発への取り組みを進めています。「エシカル消費自主宣言」に賛同する事業者を募集して、エシカルに対する意識の向上を図ったのです。

同時に、事業者や消費者、教育機関などの団体からなる「とくしまエシカル消費推進会議」を立ち上げ、コミュニケーションや連携の輪が広がるきっかけづくりも行っています。消費者である県民には、

  • 徳島市内ショッピングモールでエシカル消費関連の認証ラベルの意味を伝える
  • エシカル消費クイズラリー

といった体験型イベントなどを実施して啓蒙活動を実行。

また、徳島県消費者大学校大学院でエシカル消費を学ぶコースを開設したり、県のエシカル消費推進の情報誌「とくしまエシカル通信」を創刊したりするなど、エシカル消費関連の情報発信にも力を注いでいるのです。

鳥取県消費生活センター

鳥取では、鳥取県消費生活センターを中心とした「エシカル・ラボinとっとり~あなたの消費が世界の未来を変える~」を開催。これは、平成29年10月21日に鳥取県米子市コンベンションセンターで行われています。

  • 今「エシカル消費」が求められている理由
  • 全国に先駆けて進む鳥取県の「エシカル」
  • お買い物で世界は変えられる~明日からできるエシカル消費~

などさまざまなテーマで対談や講演が行われ、10代から70代までの約300人が来場しました。また、鳥取県知事と来場者によって「エシカル宣言」も採択。さらに会場では「商品やサービスの正当な価値を認めたい」といった声も上がりました。

トゥリーアンドノーフ株式会社

トゥリーアンドノーフ株式会社は「一人でも多くのお母さんと子どもたちに、安全で美味しい野菜を届けます」というコンセプトのもと平成24年に鳥取県で設立された農業法人です。

  • 環境への負荷を最低限に抑える
  • 科学的有機農業を行う
  • 地元地域の資材を使う

など循環型で持続可能な農業を追求しています。

トゥリーアンドノーフ株式会社では、畑や野菜が必要とする成分をデータ管理して、科学的な分析によって必要な量だけ栄養素を与えます。科学的な分析によって栽培計画が立てやすくなり、安定的な収穫・出荷が可能となったのです。

また、流通価格の抑制や収益の向上も実現。現在では鳥取県内の農場で有機小松菜、岡山県内の農場で有機じゃがいもと有機にんじんを栽培しています。

有機野菜栽培技術の体系化や高度化という変わった視点で農業を捉えており、SNSなどでの情報発信や、農場視察や研修などの受け入れも積極的に行っています。

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5.エシカル通信簿

環境・人権・消費者・フェアトレード・動物の権利などさまざまな分野を専門にする34の市民団体による「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」では、毎年、消費者目線で「本当に良い企業」を調べ、その結果をレイティングで公開しています。

方法は、各参加団体の専門性を生かして

  1. 持続可能な開発(社会)
  2. 環境
  3. 消費者
  4. 人権・労働
  5. 社会・社会貢献
  6. 平和・非暴力
  7. アニマルウェルフェア

7つの大項目、約50ページから成る調査票を作成し、公開情報をもとに調査して企業のエシカル度を調査するというもの。

2016年度はアパレル5社と加工食品5社が対象、2017年度は宅配、化粧品、コンビニエンスストアが対象となっています。7つの大項目をそれぞれ10点満点で評価していますが、消費者等が各々の価値観で評価するツールのため、総合的なレイティングは存在しません。

化粧品事業者

資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビス、マンダムの5社が対象です。化粧品業界全体にいえるのは、

  • 「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」の2項目についての得点が低い
  • 他業界に比べると「人権・労働」「持続可能な開発(社会)」

の得点が高めという点。「持続可能な開発(社会)」の項目では、花王とマンダムの得点が高く、コーセー、ポーラ・オルビスは低めでした。花王は他メーカーと比べると全体的に得点が高い項目が多いようです。

また、「消費者」の項目ではコーセーの数字が低い点が目立ちました。ポーラ・オルビスは「平和・非暴力」の得点が他4社より高めという結果も出ています。

女性のニーズをいち早く察知し、製品化している化粧品業界。エシカル消費の声をどんどんくみ上げて業界全体へエシカルの輪が広がることが期待されます。

コンビニエンスストア

コンビニエンスストアの業界では、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップが調査対象となりました。コンビニエンスストア業界でも、「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」の得点は低いです。

ファミリーマートは「持続可能な開発(社会)」の項目と「社会、社会貢献」が他より高いようです。対してセブン-イレブンは満遍なく得点を積んでいます。ミニストップは、「持続可能な開発(社会)」の点数が極端に低い結果となり、「環境」「消費者」「社会、社会貢献」についても低めです。ローソンも「持続可能な開発(社会)」の低さが目立ちました。

コンビニエンスストアは私たちの生活に切っても切れない存在。エシカル消費の視点を持ったところを選ぶことで、消費そのもののあり方を変えられるかもしれません。

宅配事業者

宅配事業者は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が調査対象となりました。

他業界同様に「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」に関しては低めの数字が続きます。その中、佐川急便は「アニマルウェルフェア」が比較的高くなっていますが、「消費者」については低さが目立ちました。

また「持続可能な開発(社会)」は、他業界に比べて全般的に低く、特にヤマト運輸では最も低い点数が出ています。さらにヤマト運輸は「人権・労働」も他社より低い結果です。

3社内で全体的に数字が高かったのは、日本郵便でした。