ファシリテーターの力を活用した会議や研修運営が注目されていますが、ファシリテーターとはどのような役割を持つ人なのでしょうか。司会やネゴシエーターとの違い、ファシリテーションスキルなどとともに解説します。
目次
1.ファシリテーターとは?
ファシリテーター(Facilitator)とは、会議や商談などの場で参加者の発言を促したり、話をまとめたりすることで、話し合いをより良いゴールに導く進行役です。単なる司会にとどまらず、意見の対立や感情のぶつかり合いをうまくコントロールし、目標・目的の達成を支援します。
具体的には、下記のような役割を担います。
- 会議や研修などの進行役
- 参加者に発言を促すサポート役
- 会議や研修の目的であるゴールに参加者を確実に導く誘導役
2.ファシリテーターと司会の違い
司会とは、会の進行役を担う人のこと。司会は、ファシリテーターのように会の参加者に発言を促すといった役割は多くありません。
3.ファシリテーターとネゴシエーターの違い
ネゴシエーターとは、自らのスキル・知識などを活用して、利害関係にある相手と交渉しながら合意形成を目指す人のこと。ネゴシエーターには、交渉人という別名があります。
ネゴシエーションとは?
ネゴシエーションとは、意見の不一致が生じた際、説得術や傾聴などのスキルを活用しながら、相手との合意形成に向けて交渉や調整を図る手法のことで、英語では、「negotiation」といいます。
4.ファシリテーションとは?
ファシリテーションとは、会議や研修など話し合いの場で下記のようなサポートを行うこと。英語では、「facilitation」と表記します。
- 参加者に発言を促す
- 話の流れをまとめ上げる
- 参加者の共通認識を確認する
- 話し合いを、定められたゴールに導く
話し合いの場の多くでは、最後に参加者全員の合意形成を求めます。ファシリテーションでは、参加者の合意形成・相互理解に向けてサポートを進めるのです。
ファシリテーションとは? 役割と必要なスキル、やり方を簡単に
ファシリテーションとは、議論が円滑に進むよう舵取りするスキルのこと。さまざまな考えや価値観をもつ人が集まるなかでひとつの結論や合意を導き出すためには、ファシリテーションの役割が欠かせません。
今回はフ...
5.ファシリテーターの目的
ファシリテーターの目的は、ファシリテーションスキルを活用して、話し合いの場がその目的に到達できるよう支援すること。つまり、「問題解決」「教育や学習」「創造活動」などをうまく進めるための支援が、ファシリテーターの目的です。
6.ファシリテーターが広まった背景
ファシリテーターが広まった背景には、議事進行だけを担う司会だけでは不十分といった内容があります。
進行役である司会のみの運営では、会の流れが参加者に依存しがちなため、「参加者の自発的な発言や論議が難しい」「会の目的に到達せずに時間切れになる」といった問題点があったのです。
そこで参加者に発言を促しゴールに導くファシリテーターが注目されるようになりました。
7.ファシリテーターが上手い人がいるメリット
ファシリテーターによって得られるメリット5つについて、解説します。
- ゴールが明確になる
- 話しやすい雰囲気になる
- 参加者から新しいアイデアが生まれる
- 合意形成しやすくなる
- 時間が適切に管理される
①ゴールが明確になる
ファシリテーターの存在によって、どのゴールを目指しているかがブレなくなります。よって、参加者の意見がまとまらずに散会する事態が少なくなるのです。
②話しやすい雰囲気になる
ファシリテーターの促しによって、「誰もが人の話に耳を傾けるようになる」「自分も意見を述べやすい雰囲気になる」といった空気感が自然と形成されます。
③参加者から新しいアイデアが生まれる
ファシリテーターの働きによって、参加者が相互理解を深めながら活発な意見交換を行うため、新たな発想が生まれやすい土壌ができるのです。
④合意形成しやすくなる
ファシリテーターは、会の最終目的に参加者を導きます。そのため、発言やアイデアがまとめられ、最終的な合意形成が容易になるのです。
⑤時間が適切に管理される
ファシリテーターが時間管理と議事進行役を同時に担うため、会が無駄に長引く事態が減ります。しかしファシリテーターの負担が高まるため、時間管理をタイムキーパーに任せる場合もあるでしょう。
8.ファシリテーターと課題
ファシリテーターを取り巻く課題2つについて、解説します。一体どのような内容なのでしょうか。
ファシリテーターのレベルに依存
ファシリテーターのレベルによってファシリテーションが決まってしまうため、会議や研修のレベルはファシリテーターのレベルに準じます。経験が浅いファシリテーターの場合、何らかのサポートが必要な場合もあるでしょう。
1人だけだと負担が大きい
会議や研修の規模にもよりますが、ファシリテーター1人にすべて任せてしまうと、対応しきれない場合も。規模が大きくなる場合、ファシリテーターを複数名用意し、メインとサブといった役割を設定して運営するとよいでしょう。
9.ファシリテーターに求められるファシリテーションスキル
ファシリテーターに必要とされるファシリテーションスキルとは、一体どのようなものなのでしょうか。5つのファシリテーションスキルについて解説します。
- ゴール設定と共有
- 場の雰囲気を活発化
- アイデアや発言を引き出す
- 合意形成に向けてまとめる
- 時間の管理
①ゴール設定と共有
ファシリテーターの役割は、会の参加者の意見を整理、集約して、ゴールに導くこと。そのため、「会のゴールを設定」「参加者の意見交換を集約し、設定したゴールに関しての共通認識を形成」などが必要になります。
ファシリテーターがいない会議や研修の場合、ゴールが曖昧なまま終了したり意見が衝突したまま解散したりする状況もあり得ます。
②場の雰囲気を活発化
ファシリテーターは、参加者が発言しやすいように導きながら会議や研修を進行します。活発な意見交換ができれば会の運営もスムーズに進むだけでなく相互理解も深まるでしょう。
ファシリテーションスキルには、「心理的安全性などをもとにした参加者が発言しやすい場の雰囲気の創造」「発言しやすい場の雰囲気の活性化」などが求められます。
③アイデアや発言を引き出す
ファシリテーターには、アイデアや発言を参加者から存分に引き出す場づくりが求められます。そのような雰囲気が実現できれば、参加者による活発な意見交換が十分に行われ、中には意見から新しいアイデアや有益な発言が多く出る場合もあるでしょう。
④合意形成に向けてまとめる
ファシリテーターは、参加者に発言を促しながら共通認識を形成します。
そのため、参加者の合意形成を実現するスキルとして、「現在、出されているアイデアや発言の見直し」「参加者から新しいアイデアや発言を促す」「出たアイデアや発言をとりまとめ、合意形成する」力が必要となるのです。
⑤時間の管理
ファシリテーター不在の会議や研修では、時間管理が徹底されず、予定時間が超過したりだらだらと話しが続き、結論が出せないまま時間だけが過ぎたりといった場合も。
ファシリテーターがいれば時間管理ができるため、会を適切に進められます。もしファシリテーターだけでは負担が大きい場合には、タイムキーパーを別途同席させるとよいでしょう。
10.ファシリテーター研修や資格制度
ファシリテーションスキルを保持したい、ファシリテーターになりたい人に向けた、研修やファシリテーターの資格制度があります。
社内ファシリテーター養成制度
社内ファシリテーター養成制度とは、フランクリン・コヴィー規定のライセンス契約に基づいてフランクリン・コヴィー・ジャパンが提供している制度です。
事前学習や養成コースなどを経て資格を取得すれば、「7つの習慣®」をはじめとするフランクリン・コヴィーの研修プログラムを、社内の組織の人事戦略に連動してカスタマイズしながら実施できます。
ファシリテーション
ファシリテーションは、グロービス経営大学院が提供している講座です。規定のライセンス契約に基づいて、ファシリテーターとしての基本的な役割や現場で意識すべき事柄などを学べます。
講座は全6回コースで、35人のワークショップ形式で行われ、オリジナルテキストを使用し、レポートを提出するのです。
ファシリテーション研修
ファシリテーション研修は、インソースが提供している研修で、「基本編や図解化スキル強化編などカスタマイズ可能なカリキュラムを用意」「研修の最後にファシリテーター役と会議参加メンバー役に分かれて行う模擬会議を実施」といった特徴があります。
新たな創造を生み出すために必要とされる「多くの意見を引き出す」「合理性の高い結論へと導く」といったスキルを学ぶことが可能です。
ファシリテーター資格認定講座
ファシリテーター資格認定講座は、ライフスタイル・ウーマンが提供しているキャリアトランプを活用した資格認定講座です。自己肯定感を高めながらキャリアを描いて、キャリアトランプの基礎スキルを学ぶことができます。
6時間の講座を2日受講すると資格が認定され、「セミナーやキャリア支援の実施」「モチベーション向上の支援」などが可能となります。