フールプルーフとは?【意味と事例】フェイルセーフとの違い

フールプルーフとは、ミスの事前防止を想定した設計のこと。重要性な理由や事例、浸透させるためのポイントなどについて解説します。

1.フールプルーフ(Fool Proof)とは?

フールプルーフとは、誤った操作を行っても重大な事故を招かないよう設計すること。製品、設備、ITシステムなど「人が使うモノ」に対する設計手法です。

この設計が施されたモノは、危険な状況を回避するだけでなく、そもそもミスが生じない仕組みにもなっています。人が使う以上、人為的ミスを100%無くすのはほぼ不可能だからです。

フールプルーフの概念は製造や建設、医療など、小さなミスが大きな事故につながりやすい業界に浸透しています。

英語における意味

フールプルーフは英語の「Fool Proof」をカタカナで表記した言葉。Foolの意味は「愚かな、愚か者」、Proofは「耐える」です。日本語に訳す場合は「無知な人でも簡単に扱える」「間違えようがない」などと意訳されます。

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2.フールプルーフとフェイルセーフ(Fail Safe)との違い

フェイルセーフ(Fail Safe)とは製品や設備、ITシステムなどに故障や異常などトラブルが生じた際、製造に携わる人や製品のユーザーの安全を守ることを第一に考えた設計のこと。

つまりフェイルセーフは、トラブルが生じることを前提としています。一方、フールプルーフは、ミスによるトラブルの発生自体を防ぐことを目的としているのです。

フェイルセーフの事例

フェイルセーフが施された機器や製品は身近に多数存在しています。たとえば次のような事例が挙げられるでしょう。

  • 地震で転倒すると、自動で運転を停止するストーブ
  • 故障や停電が発生すると、自動的に赤点滅や黄点滅に切り替わる信号機
  • 故障時の昇降速度の急激な変化をセンサーで検知し、自動停止するエレベーター

フェイルセーフではトラブルの発生はやむを得ないと考え、いかに被害を最小限に抑えるかを考えて設計します。

フェイルセーフとフールプルーフの覚え方

フェイルセーフは、英語の「Fail(故障)」と「Safe(安全)」をもとにした造語。「故障しても安全を守る設計」を意味します。一方フールプルーフ(Fool Proof)は、「愚かなミスを防ぐ設計」です。それぞれの英語表記を知っておくと、区別しやすいでしょう。

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3.フールプルーフが重要な理由

フールプルーフは人為的ミスによる事故を防ぐための設計です。

しかし根底にある考え方は、製品の安全性を確保してユーザーを守ること。この考え方は製造や工業などにとどまりません。さまざまな業界において、ヒューマンエラーや労働災害を防止する取り組みや社内ルールなどに取り入れられています。

安全対策に役立つ

人為的ミスは必然と考えるフールプルーフを前提にすれば、より的確な安全対策を講じられます。

安全衛生教育や危険予知訓練などを十分に行っても、「うっかり」「誤判断」「見落とし」などによる人為的ミスをすべて防止するのは不可能でしょう。

そこで「人」を変えるのではなく、「モノ」の仕組みを変えて人の安全を守るフールプルーフが重視されているのです。

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4.フールプルーフの事例

フールプルーフは機械や設備などを使う職場や現場のほか、日常にも見られます。ここでは「職場」と「身の回り」にわけて事例を説明しましょう。

職場での具体例

製造や建設、物流などの業種では人命にかかわる事故の発生リスクが高く、安全衛生対策としてフールプルーフが広く取り入れられています。

工場設備

工場で使用する機器や設備を取り扱うときに発生する人為的ミスを、フールプルーフ設計で防ぎます。たとえば次のような事例が挙げられるでしょう。

  • 加工物を投入するための開口部がある機器に、内部に手が届かないよう固定ガードを設置する
  • 機器のスイッチを切ったあとも惰性で動いたり、電力が残ったりしている場合、ガードが開かないよう設計する
  • 手を挟むと重大な事故につながる機器は、両手で操作しないと稼働を停止するように設計する

設計現場

さまざまな設計現場においても、フールプルーフの概念が取り入れられています。たとえば次のような事例が挙げられるでしょう。

  • 設計システムへ既定の桁数以上の数値を入力された場合は、エラーを表示して処理を実行しない
  • 組みこみ穴と対応する部品の形状を一致させ、異なる部品を組み込めないように設計する
  • 一定条件下、あるいはかんたんな動作であれば、人力による判断や処理を挟まずに自動で処理が進むように設計する

医療現場

医療現場では人為的ミスによる事故が患者の命にかかわる場合もあるため、機器や設備、製品などにフールプルーフが取り入れられています。たとえば次のような事例が挙げられるでしょう。

  • 輸液ラインと栄養ラインを誤接続しないよう、接続部を接合できないサイズに設計する
  • 麻酔に使う3種類のガスを供給する各配管は、ピンの数と接続部の形状がすべて異なるように設計し、誤接続できないようにする

身の回りでの具体例

私たちの日常生活でも、フールプルーフの概念を取り入れた製品が使用されています。ここでは車や家電の例を解説しましょう。

自動車

車側の燃料タンク給油口の形状と、給油ポンプのノズル形状は、ガソリンの種類によってそれぞれ決まっています。誤ったガソリンを給油できないようにするための仕組みです。

電子レンジ

電子レンジは、扉が閉まった状態でないと作動しない仕組みになっています。扉が開いた状態で作動してしまうと、発生したマイクロ波が人体へ悪影響をおよぼす恐れもあるからです。

マイクロ波は水分を振動させて熱を発生させるため、浴びてしまった部位によっては損傷してしまう可能性があります。うっかり手を入れたまま作動させないよう、扉を閉めなければ加熱できないように設計されているのです。

ガスコンロ

ガスコンロには、バーナー全口に下記のふたつを取りつけると義務化されました。

  1. 調理油過熱防止装置:温度センサーで鍋底などの温度をチェックし、過熱されると火力を自動で調節する装置。自動火力調整が一定時間続く、あるいは温度が250℃を超えると自動的に消火する
  2. 立ち消え安全装置:煮こぼれで火が消えたら自動でガスを遮断する装置

これらの装置で、ガスコンロによる火災や爆発事故を防止します。

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5.フールプルーフを職場に浸透させるためのポイント

人為的ミスはどのような職場でも起こりえるため、ミスを起こせない仕組みづくりが必要です。職場にフールプルーフを浸透させるときのポイントを説明します。

  1. 避けたいエラーの明確化
  2. 概念や知識の共有
  3. チーム全員によるルール運用

①避けたいエラーの明確化

まずは「どのようなエラーを避けたいか」を明確にします。対処すべきエラーを洗い出し、それぞれの発生プロセスを調べましょう。さらにそれぞれの被害を想定し、フールプルーフ化するエラーの優先度を決めます。

②概念や知識の共有

作業に携わる全従業員へフールプルーフの概念や知識を共有しましょう。「フールプルーフは安全を守るための仕組み」だと理解していない従業員が、効率を上げるために機器や設備のフールプルーフを解除して作業する恐れもあるからです。

管理者は、フールプルーフの概念にもとづいて機器や設備操作方法、作業の手順や手法などが決められていることを周知します。またフールプルーフの無効化に対する防止策にも取り組みましょう。

③チーム全員によるルール運用

チーム全員がフールプルーフに取り組むようなルールを運用すると、フールプルーフをより浸透させられます。たとえば以下のような取り組みです。

  • 各メンバーが人為的ミスをリストアップする
  • 改善にあたる対策チームを作る
  • 対策チームで人為的ミスの原因を分析する
  • 対策チームが改善策の提案、実施、検証を行う
  • 管理者は有効な改善策を標準化し、対策チームは定期的に検証する

この取り組みを反復して行うと、従業員にフールプルーフの意識が定着しやすくなり、全体への浸透が促進されるでしょう。

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6.フールプルーフと混同しやすい用語との違い

安全設計に関する用語には、フールプルーフと混同しやすいものがいくつかあります。ここでは6つの用語を解説しましょう。

  1. フェールソフト(Fail Soft)
  2. フォールトトレランス(Fault Tolerance)
  3. エラープルーフ(Error Proof)
  4. フェールオーバー(Fail Over)
  5. フェールバック(Fail Back)
  6. フォールバック(Fall Back)

①フェールソフト(Fail Soft)

故障や障害の被害を最小限に抑えるために、機能を縮小しながら稼働を続ける仕組みのこと。

たとえば飛行機にはふたつのエンジンが搭載されており、ひとつが故障しても運行を継続できるように設計されています。また病院の非常用電源もフェールソフトの事例です。

フェールソフトは問題が発生することを前提としているため、根本的な部分がフールプルーフとは異なります。

②フォールトトレランス(Fault Tolerance)

故障や障害が発生しても正常な状態を維持する仕組みのこと。日本語では「耐障害性」のように訳されます。

問題が発生しても全体の機能が縮小されない点が特徴です。たとえば2台のサーバー機にまったく同じデータを保存しておくと、1台が故障しても残った1台からデータを読み込めます。IT業界におけるフォールトトレランスの代表的な事例です。

③エラープルーフ(Error Proof)

エラーの発生を未然に防ぎ、発生時にはその被害を最小限に抑える設計のこと。ここでいう「エラー」は主に人為的なものを指します。

エラープルーフでは、「原因の排除」「機械による代替」「操作の簡易化」「異常の検知」「被害の最小化」という観点を含めて設計するのが特徴です。

④フェールオーバー(Fail Over)

故障や障害が発生したときに、同等の機能を持つ待機システムへ切り替える仕組みのこと。

障害時にはものの数秒で待機システムへ切り替えが可能となるため、ファイアウォールのようなセキュリティシステムや、インフラや金融機関などつねに正常な稼働を求められるITシステムで取り入れられています。

フォールトトレランスの場合、メインと予備が同時に稼働していますが、フェールオーバーでは待機している予備システムは稼働していません。

⑤フェールバック(Fail Back)

フェールオーバーで切り替わっていた待機システムからもとのシステムに戻すこと。「フェイルバック」とも表されます。

メインシステムは待機システムからデータや処理を引き継ぐため、稼働を再開してもほとんど差異が生じません。

⑥フォールバック(Fall Back)

「縮退運転」または「切り戻し」する仕組みのこと。

縮退運転は、システム障害の発生時に性能の低いシステムに切り替えたり、機能を限定したりして運用を継続します。切り戻しは、切り替えたシステムに不具合などが生じたなどの理由で、もとのシステムへ戻すことです。