外資系企業とは? 3つのタイプ、人事異動や海外赴任

海外の投資家や法人が出資した企業である外資系企業。今回は、外資系企業の3つのタイプと特徴、国内企業との比較、働くのに向いている人などについて解説します。

1.外資系企業とは?

外資系企業とは、外国の投資家や法人が出資した企業のこと。外国資本によって成り立っており、資本が一定率以上ある場合を外資系企業と呼びます。ただし資本の比率をはじめ、「外資系企業」に明確な定義は存在していません。

そのため外資系企業の概念は「外国の法人もしくは投資家から出資がされた企業」です。経済産業省が毎年実施している「外資系企業動向調査」の対象企業は、外国資本比率が3分の1以上となっているため、1つの指標となるでしょう。

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2.外資系企業、3つのタイプ

外資系企業には、3つのタイプがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 海外企業の日本法人
  2. 海外企業と国内企業の共同出資
  3. 海外企業に買収された国内企業

①海外企業の日本法人

この場合の外国資本は100%が多く、たとえばGoogleやAmazon、Appleなどが該当します。このようなケースの場合、経営方針は基本、日本ではなく本国で決定するのです。

設立してしばらくは本国とのやり取りが多くなるため、英語含む外国語での高いコミュニケーション力が求められるでしょう。

②海外企業と国内企業の共同出資

外資系企業のなかには、共同出資で設立された企業も一定数あります。たとえば富士ゼロックスや住友スリーエムです。このようなケースでは海外企業と国内企業どちらの出資額が多いのかで、経営方針といった決定権が異なります。

また海外企業の日本進出を成功に導くため、国内企業も共同で出資するのです。そのためある程度の時間が経過するとどちらかが出資額を上げ、100%子会社になるケースもあります。

③海外企業に買収された国内企業

海外企業が国内企業をM&Aで買収した結果、外資系企業となるパターンも近年増えました。たとえばシャープや西友などです。

海外企業に買収されると、経営方針の決定権も買収した海外企業に移行するため、企業風土が大きく変わる場合もあります。業務報告含むやり取りのため、英語を使えることが必須となるケースもあるのです。

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3.外資系企業の特徴

外資系企業で共通している特徴は、「即戦力」が求められる点。そのため研修や育成制度を整備していない企業も多くあります。

また採用時に過去の転職回数を問題視される状況はあまりありません。どちらかというと、これまでの実績が重視される傾向にあるのです。採用後は完全実力主義で、成果が出せるかどうかが大きな評価基準となっています。

外資系メーカーのサービス内容

外資系メーカーが取り扱う商品の一例として、下記のものが挙げられます。

消費財:食料品やシャンプー、洗剤などの日用品

国内企業とのシェア争いがあるため、営業職はハードワークで責任も重大です。やりがいを求め、大きな仕事がしたい人に向いています。

IT:ソフトウェアやハードウェア、Webサービスなど

インセンティブの割合が大きい傾向にあります。フレックス制を導入している企業も多く、業務完了もしくは成果を出せたら時短労働も可能。要領良く働ける人に向いています。

BtoB:法人向けの製品を販売するメーカー

業務用の特殊な製品や原材料を取り扱うメーカーが多く、一般的に知名度が低い傾向にあります。有名外資系で働きたい人には向いていません。

日系企業との違い

職種が変わるような部署異動のある日系企業と異なり、外資系企業では希望しない限り、職種が変わる状況はほぼありません。また日系企業と比べて年功序列制度がなく、給与体系も出来高制に近いといえるでしょう。

さらにはすべての社員に即戦力が求められるため、自身の力で仕事をクローズさせなければいけません。働き方も効率性や成果が重視されています。

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4.外資系企業と国内企業との比較

外資系企業と日系企業とでは、初任給やボーナス、有給取得率などにどのような違いがあるのでしょうか。ここからは外資系企業と日系企業を比較して説明します。

初任給・ボーナス

一般的に外資系企業は日系企業と比較して初任給が高いといわれているものの基本、初任給を公開していません。労務行政研究所の調べによると、外資系企業における新卒1年目の初任給は20万6,250円です。

企業によって異なるものの、なかには初任給が30万円に達する外資系企業もあります。対して日系企業にはボーナスの制度があるのです。一般的に外資系企業にはボーナスの概念がないため、基本給が高くても年収がそれほど高くならないケースもあります。

有給取得率

厚生労働省が令和2年に発表した、平成31年・令和元年における労働者1人あたりの有給取得率が56.3%であるのに対し、外資系企業の有給消化率はほぼ100%でした。国ごとに祝祭日が異なるため取得時期に違いはあるものの、外資系企業は長期休暇を取得できます。

1週間程度であれば日系企業でも休暇を取得できるでしょう。しかし1カ月程度の長期休暇となると、取得できる企業は限りなく少ないといえます。

成果主義

外資系企業は日系企業と比べて、残業が少なくなっています。なぜなら残業に対して残業代を出さない外資系企業が多く、努力よりも成果が評価される傾向にあるからです。そのため成果を出していれば労働時間が短くても問題ありません。

また外資系企業では、残業をしていると勤務時間内に仕事を終えられなかったと判断される場合もあるのです。よってできるだけ残業をしないほうがよいといえます。

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5.外資系企業に向いている人の特徴

高い年収や外国人との英語でのコミュニケーションなど、スマートなイメージがある外資系企業。どのような人が外資系企業に向いているのでしょうか。

  1. ビジネスレベルの英語力
  2. フレキシブルな対応
  3. 能動的な働き方

①ビジネスレベルの英語力

外資系企業に転職を希望する人の約6割がビジネスレベルの英語力をすでに身につけています。英語力が求められるため、英語でのコミュニケーション能力がある人は外資系企業に向いているといえるでしょう。

また相手の顔が見えない電話応対やメール応対などで、高いコミュニケーションスキルが求められるケースも多くあります。

②フレキシブルな対応

外資系企業では、転職の多さや人事異動などから上司がよく変わります。また本国から突然の方向転換を言いわたされたり、「どのような消費者に商品を訴求していくか」など、企業の方向性が変わったりする可能性もあるのです。

Last-minutes changes(物事が直前になって変更する)も多いため変化を前向きに楽しめる人や柔軟性の高い人に向いています。

③能動的な働き方

日系企業では、一般的に上司や先輩が部下に仕事を与えます。しかし外資系企業では、自ら仕事を取りにいくスタンスが求められるのです。そのため受動的ではなく能動的に仕事ができる人に向いています。

外資系企業では、社員は全員即戦力である事が前提です。よって一人ひとりが積極的に行動し、企業に貢献することが期待されています。

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6.外資系企業が採用時に重要視するポイント

外資系企業は採用時に、即戦力となる人材かどうかをさまざまな点からチェックします。では、それぞれについて詳しく解説しましょう。

  1. 出身大学よりも即戦力
  2. ジェネラリストよりもスペシャリスト
  3. 語学力よりもコミュニケーション力

①出身大学よりも即戦力

日系企業では、高学歴である点が就職・転職活動に有利とされています。もちろん外資系企業も同じ点はあるものの、それよりも重要視されるのが「即戦力」かどうかです。

たとえば前職が同業種や同職種だった場合、豊富な経験や知識があれば優遇されるケースもあるでしょう。

また外資系企業では、業界にコネクションを持つ人材は即戦力として重宝される傾向にあります。くわえて資格を保有しているとさらに有利になるでしょう。

TOEIC

TOEIC(Test of English for International Communication)とは、国際コミュニケーション英語能力テストのことで、英語によるコミュニケーション能力を評価できます。

試験はリスニング(495点)とリーディング(495点)から構成され、990満点のスコアで算出。外資系企業では多くの場合、800点以上のスコアが求められます。

PMP

PMP(Project Management Professional)とは、プロジェクトマネジメントに関する国際資格のこと。アメリカのプロジェクトマネジメント協会であるPMIが認定している資格で、プロジェクトマネジメントの知識や経験などが問われます。

PMPは世界でも通用する資格のため、持っておくと非常に有効です。

国際秘書検定(CBS)

CBS(国際秘書)検定試験は、「英語と日本語をコミュニケーションの手段として十分に使える」「実務処理能力を含んだオフィスのプロ」としての実力を証明する資格のこと。

外資系企業への就職・転職には、正しい日本語の知識だけでなくビジネス英語力も問われます。CBS資格の取得は、即戦力と認められるのに有効といえるでしょう。

②ジェネラリストよりもスペシャリスト

日系企業では定期的に部署異動を行い、さまざまな職種を経験させるジョブローテーション制を採用しているため、ジェネラリストを育成する傾向にあります。

しかし外資系企業は違うのです。ジョブローテーションはあまり一般的でなく特定の分野に精通したスペシャリストが求められます。マーケティングならマーケティング、人事なら人事など、各分野に必要なスキルを磨けるのも外資系企業の特徴です。

③語学力よりもコミュニケーション力

外資系企業に入ればある程度の語学力が求められます。しかし新入社員にまで高い能力は求められません。語学力よりも専門知識や経験などを重視するケースも多く、さらにそれらを周囲に伝えるためのコミュニケーション能力が問われるのです。

ただし海外とのやり取りが増えてくる状況も想定されるため、一定以上の語学力を身につける必要はあるでしょう。

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7.代表的な外資系企業一覧

具体的にどのような外資系企業があるのか、代表的なものを金融系やIT系など業界別に紹介します。

金融系

金融系で代表的な外資系企業は、下記のとおりです。

投資銀行

  • ゴールドマン・サックス
  • モルガン・スタンレー
  • バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ

保険会社

  • AIGグループ
  • アフラック
  • プルデンシャル生命保険

IT系

IT系で代表的な外資系企業は、下記のとおりです。

ソフトウェア・ハードウェア

  • マイクロソフト
  • 日本IBM

情報処理サービス

  • アクセンチュア
  • IBM(GBS事業部)

インターネット

  • Google
  • Facebook

コンサル系

コンサル系で代表的な外資系企業は、下記のとおりです。

戦略系ファーム

  • マッキンゼー・アンド・カンパニー
  • ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)
  • ローランド・ベルガー(RB)

総合系ファーム

  • EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EY)
  • アクセンチュア
  • デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)

メーカー

外資系メーカーで代表的な企業は、下記のとおりです。

  • ネスレ
  • P&G Japan
  • ユニリーバ・ジャパン
  • コカ・コーラ
  • 日本ロレアル
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン
  • ロクシタンジャポン
  • エスティローダー

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8.外資系企業における人事異動や赴任の実態

外資系企業を志望している人にとって気になるのが人事異動や海外赴任の有無でしょう。その実態について説明します。

人事異動

外資系企業ではそもそも日系企業のような人事異動はありません。そのため一度就職するとずっと同じ職種として働きます。結果、ある特定分野におけるスペシャリストになり、他社への転職を考える人も多くいるのです。

ジョブローテーション制が採用されている外資系企業もなかにはあります。しかし一般的ではありません。

海外赴任

外資系企業に転勤はほとんどないといわれているものの、本社の場所によっては海外赴任になるケースもあります。なかにはキャリアアップするなかで結果が伴い、海外の本社から声がかかって赴任するケースもあるでしょう。

また海外転勤の希望が出せる会社もあります。海外志向の強い人にとって、海外にある本社勤務は魅力的でしょう。

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9.日本における外資系企業の動向

最後に、外資系企業の日本における新規参入企業と撤退の状況、外資系企業から見た日本の魅力や外資系企業の動向について紹介します。

新規参入企業と撤退の状況

経済産業省の「第54回外資系企業動向調査(2020年調査)の概況」によると、2019年度中の新規設立・資本参加企業数(外資比率が3分の1以上)は48社。そのうち製造業が14社、非製造業が34社、業種別では卸売業とサービス業が10社、情報通信業が8社でした。

対して2019年度中の解散や撤退、外資比率低下企業数は86社。製造業が19社、非製造業が58社という状況です。

外資系企業からみた日本の魅力

外資系企業を対象にジェトロが2016年6月~7月に行った「日本の投資環境に関するアンケート」調査によると、日本でビジネス展開する場合の魅力は「日本市場」と86.4%の企業が回答。

次いで多かったのが「インフラの充実(交通、物流、情報通信、エネルギー等)」で79.6%、「研究開発の質の高さ」で69.8%という結果でした。

日本でビジネス展開する際の阻害要因

同アンケートにて、日本でビジネス展開する場合の阻害要因を尋ねたところ、最も多いのが「人材確保の難しさ」で48.2%。これが深刻な経営課題になっているとわかります。

「人材確保の難しさ」のなかで特に阻害要因とされたのは、「グローバル人材確保の難しさ」(68.9%)で、続いて「専門人材不足」(45.1%)が上位を占めていました。

今後の事業展開

今後、日本でどのような事業展開をしたいか外資系企業にアンケートを取ったところ、「現状を維持する」と回答した企業が57%と、半数以上を占める結果となりました。

「事業の拡大を図る」と回答した企業のうち、「営業・販売・マーケティング機能」を拡大する方針の企業が35.5%、次いで「経営企画機能」と答えた企業は7.2%でした。