フリーミアムとは、無料と有料を組み合わせた収益モデルです。ここでは、フリーミアムについて解説します。
1.フリーミアムとは?
フリーミアムとは、「基本的サービスや商品を無料で提供するフリー」と「より高度なサービスや商品を有料で提供するプレミアム」をあわせて収益を確保するビジネスモデルのこと。
Web上のフリーミアムとして「無料ユーザー95%」「有料ユーザー5%」でもビジネスが成立する5%ルールが有名です。ここではフリーミアムのルーツやサブスクリプションとの違い、フリーミアムの収益モデルについて解説します。
フリーミアムのルーツ
フリーミアムのルーツは、2006年にアメリカのベンチャー投資家フレッド・ウィルソンがジャリド・ルーキンの発案にあります。
2009年7月に出版されたクリス・アンダーソンの『Free: The Future of a Radical Price』で注目を集め、日本でも『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』として出版されました。
サブスクリプションとの違い
ここでは下記2つについて解説します。
- そもそもサブスクリプションとは?
- サブスクリプションとの違いは課金の方法
①そもそもサブスクリプションとは?
サブスクリプションとは、商品やサービスについて直接代金を支払うのでなく、商品やサービスを利用できる期間に対して代金を支払う定額制サービスのこと。
サブスクリプションには、月額料金の支払いによって購読できる雑誌や視聴できるドラマ、映画があり、その分野は自動車やファッションなどにも広がっています。
②サブスクリプションとの違いは課金の方法
フリーミアムとサブスクリプション、2つの違いは、課金方法にあります。
- フリーミアム:無料で使用できる範囲のものがあるほか、有料機能を利用する場合だけ課金もしくは買い切る
- サブスクリプション:毎月や毎年といった単位で継続して課金する
フリーミアムの収益モデル
フリーミアムの収益モデルには、4つの型があります。それぞれについて解説しましょう。
- 機能制限型
- 容量追加型
- 会員限定型
- 都度課金型
①機能制限型
機能制限型とは、顧客が料金を支払って新しい機能を追加したり、操作の自由度が高まったりする収益モデルのこと。
機能制限型のカギは、商品やサービス、機能の魅力を顧客にいかに伝え、いかに料金を支払ってもらうかです。企業はこれらを戦略的に考える必要があります。
②容量追加型
容量追加型とは、顧客が料金を支払って容量を追加できる収益モデルのこと。容量追加型は、インターネット経由によるクラウドサービスで多く利用されます。
たとえば「有料会員になれば使用可能な容量が増える」「料金を支払うと取得可能件数が増える」などです。
③会員限定型
会員限定型とは有料会員になると、会員限定の特典を受けられる収益モデルのこと。会員限定型を採用する場合、顧客に対してクーポン券を発行したり限定コンテンツが視聴できるようにしたりといった仕組みを考えます。
それにより無料よりも有料会員になったほうがお得だと感じられるようにするのです。
④都度課金型
都度課金型とは、無料の基本機能を使用し、必要があれば都度料金を支払い、有料特典を利用する収益モデルのこと。例は下記のとおりです。
- 入園料は無料、アトラクションに乗る時だけ別途、乗車券を購入する
- ソフトは無料、特定のサービスを使用したい時だけ別途、サービス代金を支払う
2.フリーミアムを導入するメリットとデメリット
フリーミアムは、無料で使えるビジネスモデルのひとつでメリットとデメリット、両方あります。それぞれについて解説しましょう。
メリットについて
ここでは下記4つのメリットについて解説しましょう。
- 新規顧客を獲得しやすい
- サービス改善のフィードバックを受けやすい
- 口コミで拡大しやすい
- 結果的にお金を払ってもらいやすい
①新規顧客を獲得しやすい
フリーミアムでは、基本サービスや商品の料金は無料となります。つまりより質の高いサービスを求めなければほぼ無料で利用できるのです。無料で一定レベルのサービスを利用できる点は、新規顧客を囲い込むうえで有利に働きます。
②サービス改善のフィードバックを受けやすい
フリーミアムは、無料の基本的サービス提供により多くの顧客の囲い込みに成功しています。サービス開始直後から多くの顧客を母数とできるため、有効なフィードバックを受けやすくサービス改善につなげやすいのです。
③口コミで拡大しやすい
顧客にとって、基本的サービスを無料で利用できる点は大きな魅力です。よって口コミで商品やサービスを紹介しやすくなります。SNSやネットで口コミが広がったり、顧客に利便性を実感してもらったりすれば、商品やサービスの認知度が高まるでしょう。
④結果的にお金を払ってもらいやすい
顧客に無料で基本的サービスを利用してもらうため、商品やサービスの良さをわかってもらいやすくなります。その結果、「料金を支払っても、より快適な高度なサービスを利用したい」という気持ちを生み出しやすくなるのです。
デメリットについて
ここでは下記3つのデメリットについて解説しましょう。
- 黒字化するまで時間がかかる
- 運用が容易ではない
- 事業によっては不向き
①黒字化するまで時間がかかる
無料プランを使うだけで有料プランへと移行しない顧客が多い場合、想定以上に事業の黒字化に時間を要します。顧客を有料プランへ移行させる仕組みづくりや黒字化までの十分な資金確保が必要です。
②運用が容易ではない
提供する商品やサービスが顧客にとって魅力がない場合、継続的な利用を促すのが難しくなったり、無料の基本サービスだけで満足してしまったりしてしまいます。顧客を有料サービスに移行させる運用は、容易ではありません。
③事業によっては不向き
無料会員に対して商品やサービスを提供するために多くのコストがかかります。そのため人件費がかかったり商品の提供自体にコストがかかったりする事業には、不向きです。
3.フリーミアムに向いている事業
フリーミアムに向いている事業とは何でしょうか。下記2つについて解説します。
- デジタルデータをもとにした事業
- ユーザー母数の増加が収益につながる事業
①デジタルデータをもとにした事業
デジタルデータをもとにした事業とはソフトウエアやWebメディア、ゲームなど、インターネット経由で自社サービスを提供している事業のことです。
②ユーザー母数の増加が収益につながる事業
この場合のカギは、無料会員をいかに有料会員に導いていくのか、です。無料会員に「追加機能に対して興味を持ってもらう」「魅力を感じて課金してもらい有料会員になってもらう」といった導線づくりを、試行錯誤して見つけ出します。
4.主なフリーミアムの成功事例
フリーミアムの成功事例とは、どのようなものでしょうか。下記の成功事例とNew York Times Onlineの失敗事例について解説します。
- ChatWork
- クックパッド
- Dropbox
- YouTube
- Evernote
- 【失敗事例】New York Times Online
①ChatWork
ChatWorkは、ビジネス向けメッセージサービスを提供しています。ビデオ通話やタスク管理、グループチャット機能などが、「最大14グループ・利用できるストレージ容量」の制限付きながら、誰でも無料で使用できるのです。
またビジネス向けに制限を緩和した有料プランを設定。顧客の囲い込みに成功しています。
②クックパッド
クックパッドは、料理レシピの共有コンテンツを運営しています。ユーザーがレシピを公開して教え合うシステムで、無料会員でも多くのレシピが閲覧できるのです。
「人気レシピを知りたい」「タレントやプロの料理動画を閲覧したい」人には、レシピランキングやアクセス数といった情報も入手できる有料プランを設けています。
③Dropbox
Dropboxは、オンラインストレージサービスを提供しています。アカウントを登録するだけ無料で最大2GBのストレージを使用できるのです。
そして継続使用のユーザー向けに月額料金プランを設定。課金すると多様な機能が追加で使用できたりストレージ容量が増大できたりします。
④YouTube
YouTubeは、動画配信サイトを運営している企業で動画の視聴や投稿が誰でも無料でできます。有料会員には、「YouTube premium(プレミアム)」というサブスクリプション形式のサービスを設定しているのです。
広告表示を消すなどより快適なサービスを提供して、広告収入と月額使用料、2本立ての収益構造を確立しています。
⑤Evernote
Evernoteは、クラウドを活用した多機能なノートサービスを提供しています。無料でアカウントを作成すれば、さまざまなデバイスからアクセスできるうえ、無料で標準機能をすべて使用できます。
有料プランでは、「メールをEvernoteへ転送」「名刺のスキャン」「PDF文書の検索」といったサービスを提供しているのです。
⑥【失敗事例】New York Times Online
成功している事例がある一方、失敗事例もあります。それはNew York Times Onlineの事例です。
フリーミアムを展開した当初、閲覧無料記事数を20記事までとしていました。しかし有料会員の増加が想定を下回ったため、閲覧無料の記事数を10記事に調整。その結果、失敗から一転、成功を収めています。
5.フリーミアムを成功させる戦略
フリーミアムを成功させるにはどうすればよいのでしょうか。その戦略について下記4点から解説します。
- フルバージョン機能の無料トライアルを用意
- 無料アカウントの利用制限を適切に設定
- アップグレードの負担を低減
- 課金率の法則の把握とフリーライダーの歓迎
①フルバージョン機能の無料トライアルを用意
有料プランで使用できる機能やサービスを一部分に限定したり反対にフルバージョンにしたりして、無料で提供します。無料トライアルで、利便性や必要性を体感してもらい、ユーザーに有料プランの魅力を知ってもらうのです。
②無料アカウントの利用制限を適切に設定
自社のサービス利用状況のデータを収集・分析して、ユーザーが付加価値を感じる部分を発見します。その発見を無料プランの利用制限設定に生かして、無料から有料への導線を引くのです。
③アップグレードの負担を低減
顧客がいつまでも無料サービスを継続していては、フリーミアムは成功しません。「有料サービスを利用する目的を明確に打ち出す」「無料から有料へ無理なくかんたんにアップグレードできる」仕組みを構築して、フリーミアムの成功につなげます。
④課金率の法則の把握とフリーライダーの歓迎
冒頭にも記載した「無料サービス利用者の5%が有料サービスに移行する」という統計上の法則は、母数を確保できれば5%は収益につながることを意味します。そのため、リーライダーの存在も重要視しなければなりません。