従業員に対する報酬が高くなれば、それだけ従業員のモチベーションも上がりやすくなりますし、雇用の面でも、良い人材が集まりやすくなります。とはいえ、企業の資金繰りを考えれば、無尽蔵に給与を増加させるわけにはいきません。そんな時に役立つのが、「フリンジ・ベネフィット」です。
「フリンジ・ベネフィット」とは?
企業は、従業員の労働に対する対価として、「給与」を支払います。しかし、企業が従業員に対して支出するのは、給与だけではありません。
代表的なのが、「通勤費」です。多くの会社では、自宅から会社までの電車賃やガソリン代、定期券などを従業員に支給しますが、これは給与とは別に、会社規定に沿って実費が支払われるものです。
しかし、中には交通費の支給がない会社もあります。交通費は必ず支給しなければならないというものではなく、会社に判断が委ねられているため、支給していないからといって違法にはなりません。
このような、会社独自の規定によって支払われる、付加的な報酬である通勤費や福利厚生費などを総称して、「フリンジ・ベネフィット」と呼びます。
フリンジ・ベネフィットは非課税支給
フリンジ・ベネフィットには、「交通費」や、「社宅」、「社員旅行」、「保養所」といったものが該当します。
これらのうち、社宅や社員旅行、保養所については、実際の金銭支給は発生しません。また、交通費についても、定期券や切符、ガソリンが支給される代わりに実費が支給されているというだけです。
このように、フリンジ・ベネフィットには、給与のような現金支給ではなく、「企業の福利厚生として、従業員に対して金銭以外の報酬が提供される」という特徴があります。
実際に金銭が支払われるわけではないため、所得税が課税されません(交通費の場合は実費の金額支給がある場合もありますが、給与上の項目はほとんどの場合で「非課税交通費」となり、課税されません)。
付加給付であるフリンジ・ベネフィットの利点
フリンジ・ベネフィットは、付加給付という言葉で表されることもあります。こうした付加給付には、従業員側にも企業側にもメリットがあります。
従業員側のメリット
従業員は、所得税を課税されることなくサービスを受け取ることができます。特に、通勤交通費や社宅(住まいにかかる賃料)などは、生活を送ったり、通勤したりする上で必須の支出です。これらを企業が負担することで、従業員は給料の額面以上の生活を送ることができるようになります。
また、付加給付は非課税であることから、場合によっては給料の手取り額が多くなります。例えば、30万の給与で6万円の家賃を支払う場合よりも、給与額は25万で、6万円分の社宅に1万円の寮費で入る場合などです。
企業側のメリット
付加給付を導入することで、従業員の満足度を高め、より企業としての魅力を高めることができます。また、社宅や保養所などの完備は、従業員の企業に対する帰属意識を高める要素にもなります。
また、福利厚生費は損金として扱うことができるため、経費計上することで企業の節税対策にもなります。
フリンジ・ベネフィットの導入事例
フリンジ・ベネフィットは、うまく利用すれば企業にとっても従業員にとってもメリットの大きなものです。
例えば、残業に対して、残業代を支払うのは一般的なことですし、法律で支払いが義務付けられていることでもあります。しかし、残業代が支払われるからといって、進んで遅くまで残業をしたいと考える従業員は少ないでしょう。
そこで、残業時間が一定時刻を超えた場合に「残業食事代」を支払うことで、残業中の意欲を高める効果が期待できます。ただし、残業食事代をフリンジ・ベネフィットとするには一定の要件があるため注意しましょう。なお、食事を現物支給した場合は非課税となります。
一方で、フリンジ・ベネフィットを導入する際は、それが本当に福利厚生費として認められるのかについて検討する必要もあります。
一般的な福利厚生費としての枠を超えた現物支給などは、給与とみなされて課税対象になる場合もあるため、導入時は税理士などに相談しながら行いましょう。