ファンドとは投資家から集めた資金を運用する仕組み、あるいはその投資基金や金融商品のことです。ここでは投資信託との違いやファンドの種類、メリットやデメリットについて解説します。
目次
1.ファンドとは?
ファンドとは、「投資家から募った資金をひとつにまとめて収益を還元する仕組み」「集めた資金を運用する投資基金」「主務官庁の監督を受けている金融商品」のこと。単に「投資信託」を「ファンド」と呼ぶ場合もあります。
意味
ファンド(Fund)はもともと「基金」のこと。経済活動を行うための財産的基礎となる資金、現在は投資家から集めたお金で運用する商品をファンドと呼ぶ場合が増えています。
また「ヘッジファンド」や「海外ファンド」のように資金を運用する集団や業者を指すこともあるのです。
仕組み
ファンドのおもな仕組みは以下のとおりです。
- ファンド運用者(ファンドマネージャー)が資金を運用する
- そこで得た利益を分配金として投資家に還元する
2.公募ファンドと私募ファンドの違い
ファンドには「公募ファンド」と「私募ファンド」の2つがあります。それぞれの違いと特徴について解説しましょう。
公募型
不特定多数の投資家から資金を集めて運用する形式のこと。代表的なのが「投資信託」です。
投資信託では国内外の株式をはじめ不動産や債券、金融派生商品など5,000種類以上の商品を扱っています。銀行やホームページ、証券会社の店頭などさまざまな窓口で購入できるため、誰でもかんたんに投資をはじめられます。
私募型
限られた人から資金を集めて運用する形式のこと。私募ファンドでは大口の限られた機関投資家や、少人数の個人投資家(49人以下)から資金を調達するため「プライベートファンド」とも呼ばれています。
私募ファンドの代表例が、一口あたりの最低投資額大きい「ヘッジファンド」です。
3.ファンドと投資信託の違い
ファンドと投資信託はたびたび混同されるものの、厳密には、下記のような違いがあります。
目的のために資金を集めて管理、運用する仕組みがファンド
資産運用を目的とした資金をプロが運用し、投資額に応じて運用成果を投資家に還元する金融商品が投資信託
つまり投資信託はファンドの一種で、私たちに身近なファンドが投資信託なのです。
投資信託とは?
投資家から集めたお金を大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資して運用する金融商品のこと。
運用の成果は投資家それぞれの投資額に応じて分配されます。具体的に集めた資金をどの対象に投資するかは各投資信託の運用方針にもとづいて専門家が行うのです。
投資信託の仕組み
投資信託のおもな仕組みは以下のとおりです。
- 投資信託運用会社でつくられた金融商品を証券会社や銀行、郵便局などの販売会社で販売する
- それぞれの投資家から集めたお金を、資産管理を専門とする「信託銀行」に保管する
- 運用会社が集めたお金をどうやって投資するのか考え、投資の実行を信託銀行に依頼する
- 運用会社の指示を受けた信託銀行が株や債券の売買を行う
ファンドラップ
投資家にかわって金融機関が資金の運用、管理を行うサービスのこと。運用管理をまかされた金融機関は投資家の投資方針にもとづいて運用管理し、定期的に運用経過を報告します。
「ファンドラップ」は投資先の選定や売買発注、ポートフォリオの管理などをプロに任せるサービスです。「売買のタイミングを判断する自信がない」「具体的にどう資産運用を進めればよいかわからない」人などに適しています。
ファンドマネージャー
投資信託の運用を担当する専門家のこと。各投資家から預かった資金を運用する際に、司令塔の役割を担います。
おもな仕事は「投資信託の運用方針にしたがって市場や銘柄を分析したり、選定したりする」「売買のタイミングを判断して実際に資産を運用する」ことです。
専門家チーム
投資信託の運用に関わるのはファンドマネージャーだけではありません。トレーダーやアナリスト、エコノミストやポートフォリオマネージャーなど、各分野の専門家がひとつのチームになって投資信託を運用します。
チームメンバーを束ねるのもファンドマネージャーの仕事です。
4.ファンドのメリット
ファンドのメリットは4つです。
- 少額から始められる
- リスク軽減
- 運用をプロに任せられる
- 絶対収益を狙えるものもある
①少額から始められる
たとえば株式は通常100株ごとに購入するため1株1,000円の場合、10万円の資金が必要です。しかし投資信託の基準価格は原則1万口あたりの金額で算出されます。投資信託では1万口あたり1万円前後のものが多いため、若い世代でも少額から運用可能です。
②リスク軽減
投資の基本は資産をいくつかの商品にわけてリスクを分散させること。個人投資家がひとりで分散投資しようとすると、多くの資金が必要になるでしょう。
しかし投資信託では小口のお金を複数の投資家から集め、ひとつの大きな資産として運用します。その結果、さまざまな資産に分散投資し、リスクを軽減できるのです。
③運用をプロに任せられる
投資に必要な知識や手法を個人で身につけるのは難しいもの。その点ファンドではプロのファンドマネージャーに運用を依頼するため、自分たちでタイミングを見計らう必要はありません。
気になった投資信託を選び、そのあとは経済や金融に関する知識を身につけた専門家におまかせするだけです。さらに個人では買えないような海外の株式、また買いにくい特殊な金融商品などにも投資できます。
④絶対収益を狙えるものもある
私募ファンド(ヘッジファンド)の多くは「絶対収益(投資対象となる市場のパフォーマンスにかかわらず収益を追求する)」を目指します。
ファンドの目的は市場の動向に左右されず、投資元本を増やすことです。しかし必ず利益が得られることを保証するものではないので、注意しましょう。
5.ファンドのデメリット
ファンドには分散投資によるリスク軽減や少額運用などのメリットがある一方、デメリットも存在します。
- 元本保証がない
- 手数料がかかる
- 自分の意見が反映されない
- 好きなタイミングで売買できない
①元本保証がない
投資のリスクは「値動きの大きさ」です。市場の動きはさまざまな要因で変動するため、運用成績次第で利益が得られることもあれば、購入時よりも値下がりして「元本割れ」になる可能性もあります。
購入を検討する際は、その商品が最大どのくらいの損失を被る可能性があるのか確認しておくことが大切です。
②手数料がかかる
ファンドでは運用のプロに投資を任せるため、運用管理費用(信託報酬)、いわゆる支払報酬や手数料などが発生するのです。ヘッジファンドの手数料体系は一般的に「Two Twenty(2の20)」といわれています。
これは運用時に発生した運用報酬が年率2%、成功報酬が収益の20%という手数料体系を表したものです。
③自分の意見が反映されない
ファンドの運用はファンドマネージャーが行うため、基本的に投資家の意見を反映できません。投資初心者にとっては心強く便利なことですが、投資に慣れてきて自分の考えで運用したいと思いはじめた人には物足りなくなります。
マーケット環境にあわせて自分の考えで運用したいと考える人は、ファンド以外の運用も検討しましょう。
④好きなタイミングで売買できない
株式のようにタイムリーな売買取引に向いていない点も、ファンドのデメリットです。投資信託では売買取引当日の基準価額を公表する前に売買注文を締め切る「ブラインド方式」を採用しています。
資産の評価値が確定したあとに取引ができるシステムでは、引き続きファンドを保有する投資家の利益が阻害されるためです。受益者間の平等を確保する制度であるものの、購入時や売却時の価格がわからない点はデメリットになり得ます。
6.ファンドの種類
ファンドにはさまざまな種類があります。いずれも大きくわけると「インデックスファンド」と「アクティブファンド」に分類できるのです。
インデックスファンド
特定の株価指数(インデックスと連動する運用を目指したファンドのこと。株価指数との連動を目指すため、指数の構成銘柄と同一の銘柄を均等に購入します。
おのずと広範な分散投資が可能となり、銘柄の調査や分析などの手間はかかりません。しかしあくまでも市場の平均を目指すため、平均以上の利益が出にくいというデメリットもあります。
アクティブファンド
市場平均指数との連動を目指すがゆえに、それ以上の利益を望むのが難しいインデックスファンドに対して市場の平均指数を上回る運用を目指すのが「アクティブファンド」です。
一般的にはファンドマネージャーが厳選した特定の銘柄に集中投資して、平均を上回る運用成果を目指します。高い利益を期待できる反面、市場平均を下回るリスクもある、またインデックスファンドに比べて手数料が割高になるなどのデメリットもあるのです。
バランスファンド
国内外の株式や債券、リート(REIT)などさまざまな金融資産に分散投資するファンドのこと。特定の投資対象に偏ることなく資金を配分するため、大幅な値下がりのリスクを軽減できます。
初心者が長期投資を行うのに適したファンドでしょう。しかし自分で投資先を変更できず、リターンも高くはないというデメリットがあります。
7.ファンドの方式
ファンドの運用方式にもさまざまな形態があります。ここでは代表的な2つのファンド方式「ファミリーファンド」と「ファンド・オブ・ファンズ」について説明します。
ファミリーファンド
「ベビーファンド」と呼ばれる複数の投資信託から資金を預かった「マザーファンド」が、株式や債券などの資産に投資する運用方式です。
ファミリーファンドのおもな狙いは、ベビーファンドの資金をまとめて運用効率を高めること。複数のベビーファンドをまとめて運用するため、売買コストを削減したり、手数料を抑えたりできます。
ファンド・オブ・ファンズ
ファンド・オブ・ファンズでは複数の投資信託を購入します。分散効果が働き、運用の安定性を高める効果を持っているのです。
8.ファンドの代表銘柄
ここ数年、ファンド間の競争は激化しているのです。ここではインデックスファンド、アクティブファンド、バランスファンドそれぞれの代表銘柄について説明します。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
インデックスファンドの代表格が、S&P500指数の連動を目指す「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」。これ1本で中長期的な経済成長が期待できる米国の主要産業を代表する約500社に投資できます。
S&P500指数は米国大型株の動向を表す株価指数のこと。米国株式市場における時価総額の約80%をカバーしており、これひとつで米国の経済成長を味方につけられます。
ひふみプラス
コンセプトは「守りながらふやす」。足で稼いだ情報にて成長企業を発掘し、時流に合わせて配分比率や現金比率を変化させています。
「ひふみプラス」はアクティブファンドのなかでも数少ない、申込手数料0の「ノーロードファンド」です。販売手数料がかからないため、ほかに比べてリターンを得やすいという特徴があります。
楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)
2018年に設定されたばかりの新しいファンドで、株式、債券、REITの3種類に分散投資できます。
債券重視型の特徴は債券の割合が70%と非常に高い点。債券重視型は安全性を重視した投資スタイル。比較的値動きも小さいため、ハラハラする局面を抑えて長期保有したい人に適しています。