ゲーミフィケーションを取り入れると、単調で退屈な仕事を楽しく進められるかもしれません。今注目されているゲーミフィケーションについて解説します。
目次
1.ゲーミフィケーションとは?
ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素をゲーム以外の分野に取り込むことです。もちろんビジネスに取り入れるのも可能です。「楽しい」と思えるゲーム性のあるものを業務に組み合わせると、社員が能動的に仕事へ取り組みます。ゲーミフィケーションは、社員の業務に対するモチベーション向上も期待できるのです。
ゲーミフィケーションの意味と由来
ゲーミフィケーションの由来は、日常のさまざまな事柄をゲーム形式にするという意味を持つ「gamify(ゲーム化)」にあります。
ゲーミフィケーションという言葉は2010年から使われるようになりました。2011年7月にアメリカの大手調査会社であるガートナーが「テクノロジーハイプサイクル」に取り上げた結果、メディアでも注目されるようになったのです。
ゲーミフィケーションでは、ゲームの要素を応用して人々を引き付け、物事に対するモチベーションを高めます。人がゲームに熱中する理由はさまざま。たとえば以下が挙げられるでしょう。
- 独特なルールや仕組みが楽しい
- 他人との競争にモチベーションがあがる
- クリアしたときの達成感を味わいたい
- 周囲からの承認を得たい
- 賞金やキャラクター、アイテムなど報酬を獲得したい
2.ゲーミフィケーション導入の目的
ゲーミフィケーションの導入目的は、ビジネスや勉強などの成果を向上させること。ビジネスや勉強にはつきものの競争にゲームの要素を取り入れ、モチベーションを向上させれば、より大きな成果につながると考えられているのです。
ここからはさまざまな分野のどこでゲーミフィケーションが使われているのかについて、解説します。
教育・勉強
教育・勉強での目的は、「学習のモチベーションアップ」。
ゲーム要素を取り入れると苦手分野を明確にできたり、目標を達成すると満足感が得られたりするため、次の学習に向けたモチベーションが高まるのです。
また画面やキャラクター、難易度などがゲームのように変化すると、学習のマンネリ化を防止できます。これもモチベーションの維持につながるでしょう。
仕事・ビジネス
仕事・ビジネスでの目的は、「社員のモチベーションアップ」「業務パフォーマンスの向上」など。
競争や報酬、達成感や周囲からの承認といった要素は、社員のモチベーションアップにつながります。それにより業務効率の向上にもつながるでしょう。
2.ゲーミフィケーションが注目される理由
日本でゲーミフィケーションが注目されるようになったのは、2012年ごろとされているのです。その背景にある3つについて、説明しましょう。
- インターネットの急速な普及
- 承認欲求の高まり
- 価値観の多様化
①インターネットの普及
インターネットの普及は、ゲーミフィケーションを浸透させた大きな背景といえます。インターネットコンテンツで使われる動画やアニメーションなどは、ゲームにおいても必須要素。
スマートフォンにおけるソーシャルゲームの有用性をさまざまな分野で応用した点は、ゲーミフィケーションが注目された要因のひとつといえるでしょう。
②承認欲求の高まり
ゲーミフィケーションで承認欲求を満たせる点も理由のひとつです。人は少なからず「人から認められたい」という承認欲求を持っており、近年その傾向は高まっているといわれています。
ゲーミフィケーションを使うと、他人からの賞賛や特別な報酬を得られるようになるため、自己肯定や自己価値の向上とともに、承認欲求を満たせるのです。
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③価値観の多様化
情報化社会で個人の趣味や嗜好が多種多様になった点も、ゲーミフィケーションが求められるようになった要因のひとつといえます。個人の考え方が多様化した結果、教育やビジネスに対する考え方も柔軟になりました。
ストイックな行動で成果を生み出すのではなく、楽しく成果を得るといったゲーミフィケーションの考え方が、柔軟な思想を持つ人々に受け入れられたのでしょう。
3.ゲーミフィケーションに必要な5つの要素
ゲーミフィケーションに必要な要素を踏まえず、ただ単にゲームのような形で進めてもゲーミフィケーションの効果は得にくくなります。では一体、どういった要素が必要なのでしょうか。ゲーミフィケーションに必要な要素5つについて説明します。
- 目的
- クエスト
- 報酬
- 可視化
- 交流
①目的
ビジネスを行うにしても勉強をするにしても、その課題を行う目的、つまりゴールを定めなければ意味がありません。
ゴールに向かって数々の小さな課題をクリアしていき、ゴールに近付いていると実感すると、達成感やモチベーションを得られるようになります。目的を定めて終わりが見えるゲームにすると、成果につながるでしょう。
②クエスト
「クエスト」つまり「課題」も重要です。目的の達成には、目的にたどり着けるようなクエストが必要です。クエストがあれば、何から始めればよいのか、何をしていけばよいのか、迷いなく進めていけます。
個人に合わせた難易度のクエストを順次用意しておくと、仕事や勉強のモチベーション維持や向上につながるでしょう。
③報酬
「報酬」も忘れてはなりません。報酬はモチベーションをアップさせるための要素です。それぞれのクエストをクリアしたときなどに、報酬を設定しておきましょう。
報酬は金銭や物である必要はないのです。クエストをクリアした結果に対する賞賛や、達成者だけが得られる特別感など、次のクエストに対するモチベーションにつながるものであれば問題ありません。
④可視化
ゲーミフィケーションでクリアしたクエストの結果や、フィードバック、他人からの評価などです。
結果が見えれば、社員自身で学習の効果や改善点などを振り返れるため、現況を把握しやすくなります。次の目標や新しいチャレンジなどにもつながるでしょう。
⑤交流
ほかの人との「交流」も取り入れます。同じ目的に向かっている仲間がいると、自分の成長を実感できますし、競争相手がいるため切磋琢磨できます。また仲間意識も生まれ、さらなるモチベーションの向上につながるのです。
仕事であれば同じ部署の社員同士、勉強であればクラスメート同士などの複数名でできるゲーミフィケーションを検討しましょう。
4.ゲーミフィケーションのメリット
ゲーミフィケーションを導入した学校や企業では、さまざまな効果が見られています。ゲーミフィケーションのメリットについて、解説しましょう。
- 目標が設定しやすい
- モチベーションアップにつながる
- 楽しみながらできる
①目標が設定しやすい
ゲーミフィケーションは、最終的な目的やゴールを達成するためのクエストが設定できます。そのため、目標が設定しやすいのです。
クエストを追っていけば最終目的へ向かって進みます。それにより「目的を達成するために何をすればよいのか」「何のために作業しているのか」といった問題で迷わなくなるのです。
②モチベーションアップにつながる
ゲーミフィケーションでは、ゲーム感覚で楽しみながら物事を進められます。つまり「クエストでの競争」「結果の可視化」「クリア時の報酬や賞賛」などの要素がは、行動継続や次の挑戦へのモチベーションを高めるのです。
「楽しいからやる」だった業務がゲーミフィケーションを続けるうち、生産性が上がるといった良い効果が現れるでしょう。
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③楽しみながらできる
ゲーム要素を楽しみながらできるのもゲーミフィケーションのメリット。レベルアップやチーム行動などの要素も楽しみにつながります。
ゴールに向かってクエストをクリアしながら新しいやり方やスキルを習得し、ほかのクエストでそのスキルを活用していけば、実力の向上を実感できるでしょう。チームメンバーと協力して同じクエストに挑戦するときも、楽しさを感じられます。
5.ゲーミフィケーションのデメリット
ゲーミフィケーションで得られるのは、メリットばかりではありません。デメリットが生じてしまう場合もあるのです。ここではゲーミフィケーションの実践によって起こりうるデメリットについて説明します。
- 内容次第ではモチベーションが下がる
- 効率的に仕事を終えられない可能性がある
- 課題の設定が難しい
①内容次第ではモチベーションが下がる
ゲーミフィケーションを実践する際に重要なのは、どのような内容でどのようなゲーム要素を取り入れるか。面白くなければ、最後までプレイされず飽きられてしまうでしょう。
ゲーミフィケーションも同様で、設定次第ではも面白さを感じてもらえず、社員のモチベーションを下げてしまうかもしれません。
②効率的に仕事を終えられない可能性がある
ゲーミフィケーションの実践によって、今までと仕事のやり方が変わります。社員には「今までの方が効率よく実施できる」という考えの人がいるかもしれません。
そういう社員に対してゲーミフィケーションを実践してしまうとモチベーションを下げてしまい、失敗に終わる可能性もあります。
③課題の設定が難しい
社員一人ひとりのレベルに合わせた課題をどう用意するかは、問題です。もし難しすぎれば、社員は課題がクリアできずモチベーションも下がります。その結果、リタイアする社員がいるかもしれません。
課題を設定するときはゲームと同じく、最初はかんたんなものから設定します。そして少しずつ難易度を上げていきましょう。
6.ゲーミフィケーションを取り入れている企業の事例
ゲーミフィケーションは、企業が提供するサービスや社会的な活動に応用しやすいといった面があります。それでは実際に、ゲーミフィケーションを実践している「NIKE」「くら寿司」「WINフロンティア」の取り組みについて説明しましょう。
NIKE
有名スポーツブランドのNIKEは、ランニングアプリ「ナイキプラス」を開発。従来の歩数計の機能に目標とする距離やペースが設定できる機能をプラスし、1日の課題を設定できるようにしました。
その日の取り組みに対して音声でのフィードバックが伝えられ、達成感を味わえるような仕組みとなっています。SNSで経過や結果を報告できるため、同じ目的を持つ人たちと一緒に楽しめるのもポイントです。
くら寿司
回転すしチェーンのくら寿司は「びっくらぽん」を開発しました。食べ終えた皿5枚ごとにゲームに挑戦でき、クリアすると報酬としてオリジナル景品をもらえます。
つまり景品をもらうという目的に向かって、寿司を5皿食べるという課題をクリアしていくという仕組みになっているのです。これはマーケティングを目的としたゲーミフィケーションの事例といえるでしょう
WINフロンティア
WINフロンティアは、スマートフォンアプリ「COCOLOLO(ココロ炉)」を開発しました。スマートフォンのカメラに指を当てるだけで、自分のストレスをかんたんにチェックできるアプリです。
自分の理想とするストレスの状態に応じて、ポイントが付与される仕組みになっています。ポイントを使えばアプリ内のチャットルームで使用できるスタンプを獲得できるのです。
7.ゲーミフィケーションを導入する際の注意点
企業がサービスとしてゲーミフィケーションを導入する際、何に気を付ければよいのでしょうか。ここでは下記2つについて説明します。
- 顧客の反応を見ておく
- フィードバックを行う
①顧客の反応を見ておく
サービスを受けている顧客の反応を観察し、改善すべき点がないかどうか考えましょう。サービスとしてゲーミフィケーションを実践し、それで満足してはいけません。
サービスを自発的に受けたいと顧客に思ってもらえるようなゲーミフィケーションにすることが重要です。それには顧客の価値観や心理、希望などを把握してゲーミフィケーションに反映させる必要があるでしょう。
②フィードバックを行う
より効果の高いゲーミフィケーションにしていくには、「ゲーミフィケーションの計画を立て、実施した後にきちんとフィードバックを行い、改善につなげる」という流れが必須です。一連の行動に、PDCAサイクルを利用するとよいでしょう。
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