源泉徴収票の見方とは? 見るべき項目や失くしてしまった時の対処法について

毎年1月に勤務先から配布される源泉徴収票。一体どういった点をチェックすればよいのでしょうか。紛失した際の対処法などとともに解説します。

1.源泉徴収票とは?どういった見方がある?

源泉徴収票とは、会社が1年間に従業員へ支払った給与などの金額と、従業員が支払った所得税の金額が記載された書類のこと。各項目の数字を理解するのは難しいもののが、見方が分かると税に対しての理解が深まり、源泉徴収票の作成効率も上がります。

源泉徴収票とは年末調整後に作成する法定調書のひとつ

源泉徴収票とは、その年1年間に支払われた給与などの金額と、従業員が支払った所得税の金額が記載された書類のこと。納税額だけでなく、なぜその所得税額になったのかという明細も個人別にまとめられた報告書類です。

そのほか、従業員の氏名・住所・扶養家族の人数などが記載されます。従業員に渡されるほか、税務署に提出される場合もあるのです。

あわせて知っておきたい年末調整

年末調整とは、年間の所得税を確定して、月々の合計天引額を精算する作業のこと。事業主などの給与支払者は、1月から12月までに従業員に支払った給与をもとに年末調整を行います。

従業員は、所得税・住民税・社会保険料などを給与から天引きされて支払っています。しかしその金額はあくまでも概算の金額。

正確な税率や税額が定まる年度が終わった時点で、月々の合計天引額の過不足を年末調整し、そのあとに源泉徴収票を作成します。

源泉徴収票とは、1年間に支払われた給与などの金額と従業員が支払った所得税の金額が記載された書類のことで、法定調書のひとつです。

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2.源泉徴収票が必要になるタイミングは?

源泉徴収票が必要になるタイミングは、次のとおりです。それぞれ詳しく解説します。

  1. 確定申告をするとき
  2. 転職をするとき
  3. 扶養親族になるとき
  4. 賃貸契約を結ぶとき
  5. 融資を受けるとき
  6. 公的年金の裁定請求をするとき
  7. 子供を保育園に入園させるとき

①確定申告をするとき

会社員は基本的に年末調整があるため、確定申告をする必要はありません。ただし会社員でも次に挙げるケースに該当する場合は、確定申告が必要になるのです。

  • 年末調整では考慮されない一定額を超える医療費を支払った
  • ふるさと納税などの寄付をした
  • 年をまたいで転職をする
  • 年収が2,000万円を超える
  • 副業による収入が20万円を超える

②転職をするとき

転職した際、転職先の会社から前職の源泉徴収票の提出を求められます。源泉徴収票は、その年にその会社から支払われた給与などと、天引きされた所得税の金額が記載されたものです。

転職先の会社がその年の年末調整をする際、前の会社の所得も含めた年間所得を把握するために必要となります。転職後は、すぐに提出するのが望ましいでしょう。

③扶養親族になるとき

結婚して扶養に入るなど、誰かの扶養親族になる際、給与収入の上限などの条件があります。それらの収入金額を証明する書類として、源泉徴収票が必要になるのです。

配偶者控除は、配偶者の年間合計所得金額が48万円以下であれば受けられます。配偶者のその年の給与収入が103万円以下であれば、給与所得控除額の55万円を差し引くと、合計所得金額が48万円以下になるのです。

④賃貸契約を結ぶとき

マンションやアパートなどの賃貸契約をする際、貸主に家賃の支払い停滞がないことを証明するため、源泉徴収票を提出する場合があります。

会社員の場合は、職種や勤務先、源泉徴収票などから入居審査が行われ、源泉徴収票は収入の証明として有効になるのです。学生の場合は連帯保証人が必要となり、保証人の源泉徴収票を求められる場合もあります。

⑤融資を受けるとき

住宅ローンを組むなど銀行の融資を受ける際、仮審査の段階から源泉徴収票の提出が求められます。源泉徴収票は、「そこの会社に勤務している」「間違いなく所得があった」という証明として有効になるのです。連帯保証人の源泉徴収票を提出する場合もあります。

また消費者金融は、借入額が50万円以上の場合、収入証明書として源泉徴収票の提出が求められるのです。

⑥公的年金の裁定請求をするとき

公的年金の裁定請求時、所得を証明する書類として、(非)課税証明書に代えて源泉徴収票を提出できます。

年齢などの条件を満たしたとして公的年金の裁定請求をする際、生計維持関係にある配偶者などがいる場合、配偶者の所得を証明する書類として源泉徴収票を提出できるのです。すでに退職後でも、前の会社が発行してくれます。

⑦子供を保育園に入園させるとき

保育園を申し込む際、保護者全員分の源泉徴収票を提出する必要があります。保育園は入園の条件として、保護者が就労している必要があるため、入園申し込み時に、保護者全員分の就労証明書や収入証明書の提出が求められるのです。

保育料は税金額により算定されるため、税申告に誤りがないか提出する前に源泉徴収票で確認しましょう。

源泉徴収票は、本人の収入証明書、(非)課税証明書の代わりになる重要書類です。再発行は可能なもののが、大事に保管しましょう。

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3.源泉徴収票をもらうタイミングは決まっているの?

源泉徴収票をもらうタイミングは、下記のとおりです。

  1. 年末調整が終了した12月または1月ごろ
  2. 退職したとき(中途退職の人は退職した日から1カ月以内)

源泉徴収票は、基本的に会社から発行されます。それぞれについて説明しましょう。

①年末調整が終了した12月または1月ごろ

その年の収入が確定する12月に、正確な所得税額の計算が行われる年末調整が終了します。その結果が源泉徴収票に記載し発行されるのです。

会社は従業員に配布するほか、税務署に1部、市区町村に2部提出します。そのため会社は従業員1人につき合計4部作成するのです。

1年間の給与支払額が2,000万円を超える場合は年末調整の対象外になるため、個人で確定申告を行います。

②退職したとき(中途退職の人は退職した日から1カ月以内)

従業員が退職した際、その年の1月1日から退職日までの給与にもとづいた源泉徴収票が発行されます。発行時期は原則、該当年の翌年の1月31日まで、中途退職者は退職日から1カ月以内に発行となっているのです。

源泉徴収票は、「従業員の確定申告」「転職先での年末調整」に使われます。また退職手当などが支給された場合に発行される退職所得の源泉徴収票は、転職先への提出は不要です。

源泉徴収票が発行されるタイミングは、再発行などを除き、年末調整後と退職するときなどある程度決まっています

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4.源泉徴収票の見方、見るポイント6つについて解説

源泉徴収票を見る際、どこを見ればよいのでしょうか。ここでは源泉徴収票の見方について、解説します。

  1. 支払金額
  2. 給与所得控除後金額
  3. 所得控除額の合計額
  4. 源泉徴収税額
  5. 社会保険料などの金額
  6. 控除対象配偶者の有無など

①支払金額の項目

会社員の年収、つまり会社が従業員に1〜12月までに支払った給与の総額で、税金の課税対象になる「毎月の給与」「残業代」「手当」「ボーナス」などの各種手当や、インセンティブを含め合計した金額が記載されています。

ただし通勤手当や出張時に支給される旅費交通費などは非課税となるため、支払金額には含まれません。

②給与所得控除後金額

支払金額から給与所得控除額を引いた金額が記載されています。この項目は、いわゆる必要経費にあたるものです。

自営業の場合、税金の計算をする際は業務に必要な、「水道光熱費」「通信費」「接待交際費」「交通費」などの経費を売上から差し引いた、儲けの金額が対象となります。会社員でも必要なものを自費で購入すれば、年収から一定額差し引かれるのです。

③所得控除額の合計額

結婚している場合や生命保険に入っている場合、給与所得控除後の金額から控除を受けられます。控除の例は、下記のとおりです。

  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 扶養控除
  • 地震保険料控除

これら控除額の合計を差し引いた金額が、記載されます。所得税の金額は、収入から所得控除を差し引いて課税の対象になる所得を求め、税率をかけて計算するのです。

④源泉徴収税額

1年間に納める税金の合計額が記載されています。

「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引くと、課税対象の金額となり、その金額に税率をかけると源泉徴収税額が算出されるのです。

税金の税率は、課税所得の大きさによって5~40%のいずれかになり、所得税は「課税所得×税率−控除額」の計算式で求められます。

⑤社会保険料などの金額

1年間に支払った社会保険料の合計金額が記載されています。例は、下記のとおりです。

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

これらは毎月の給与から天引きされており、給与明細に記載されています。12カ月分を合計すると源泉徴収票の社会保険料の金額と一致し、全額控除できるのです。

⑥控除対象配偶者の有無など

源泉徴収票の「(源泉)控除対象配偶者の有無等」の有に〇がついている場合、ほかの給与所得で配偶者控除を受けていることになります。その右側に記載されている金額が、配偶者控除の額です。

「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く)」にある「従人」に数字が記載されている場合、その人数分はほかの給与所得にて控除されていることを意味します。

源泉徴収票には、給与と税金に関するさまざまな情報が記載されています。数字の意味を理解すると所得税の仕組みが見えてきます

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5.源泉徴収票を失くしてしまった場合の対処法

源泉徴収票は小さな紙1枚で渡されるため、どこに保管したのか忘れてしまう場合もあるでしょう。転職や確定申告、住宅ローンの審査時などでトラブルを防ぐためにも、源泉徴収票を紛失した場合の対処法について、知っておきましょう。

源泉徴収票の再発行

源泉徴収票をなくした場合、源泉徴収票を発行している会社などに連絡をすれば再発行してもらえます。再発行までの期間は1日~2週間程度です。すぐに必要であれば、できるだけ早めに申請しましょう。一般的に費用はかかりません。

源泉徴収票が再発行されたら、直接会社に取りに行きましょう。遠方であれば郵送も可能です。

再発行は給与の支給元に依頼する

税務署や役所などでは、源泉徴収票を再発行できません。発行元である会社に電話などで依頼します。

現在勤めている会社の源泉徴収票が必要であれば今の会社に、以前勤めていた会社の源泉徴収票が必要であれば、以前の会社に再発行を依頼しましょう。再発行した源泉徴収票は送付のみで対応する発行元もあります。住所変更した場合はその旨を伝えましょう。

再発行は依頼すればすぐにしてもらえる

源泉徴収票は作成と保管が義務付けられており、発行元へ再発行の依頼をすればすぐに再発行してもらえます。再発行までの期間は1日~2週間程度。

源泉徴収票の保存期間は税務上7年間分と定められているため、7年前の源泉徴収票の再発行を依頼できます。再発行は何度でも可能で基本、費用はかかりません。

源泉徴収票が再発行されない場合の対処法

源泉徴収票が再発行されない場合は、税務署へ電話をして相談するか、来訪して指示を仰ぎましょう。ただし下記のようなケースでは、源泉徴収票が発行されません。

  • 給与が外注費として扱われているなど、報酬が給与所得でない
  • 完全歩合制で働いている場合など、事業所得である

まずは自分のケースが「源泉徴収票が発行されるもの」に該当するか、確認しましょう。

発行元の会社が倒産していた場合の対処法

源泉徴収票の発行元の会社が倒産していても、再発行は可能です。会社が倒産すると、裁判所によって選任された弁護士が破産管財人として、倒産した会社の事後処理を行います。

そのため源泉徴収票の再発行の依頼は、破産管財人にお願いすることになるのです。破産管財人が誰なのかわからない場合は、税務署や税理士に相談しましょう。

源泉徴収票不交付の届出書を提出する

下記のようなケースでは、住まいの住所地を管轄する税務署へ「源泉徴収票の不交付の届出書」を提出します。

  • 会社が倒産して破産管財人に連絡がつかない
  • 会社が源泉徴収票の再発行を拒否した

届出が提出されると、税務署から会社へ勧告が行われるのです。このように税務署を通じて発行元の会社へ伝えると、即座に再発行してくれる場合もあります。

源泉徴収票の再発行は、発行元へ依頼すれば何度でも行ってくれます。トラブルが生じたら、最寄りの税務署へ相談しましょう

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6.源泉徴収票の見方だけじゃない!知っておきたい2020年から適応される改正事項とは?

2020年分の源泉徴収が改正されました。

  • 2020年から、給与所得控除の額が一律10万円ずつ引き下げられ、基礎控除の額が一律で引き上げられた
  • 扶養配偶者や扶養親族の要件も見直され、場合によっては納税額が増えることになった

これら改正の内容について解説します。

所得金額調整控除が導入される

2020年より「所得金額調整控除」という新しい制度が設置されました。

給与所得控除や基礎控除の改正によって、給与収入が850万円を超える給与所得者は増税されます。この改正により大きな負担を強いられるなどの影響を受けないよう配慮するのが、所得金額調整控除です。

  • 22歳以下の扶養親族がいる
  • 特別障がい者控除の対象となる配偶者や扶養親族がいる

といったケースに該当する人は、給与所得控除の見直しによる税負担増が相殺されます。

所得によって基礎控除の適用者が変わる

2020年から、基礎控除額が10万円引き上げられりました。合計所得金額による基礎控除額は、次のとおりです。

  • 2,400万円以下…48万円
  • 2,400万円超2450万円以下…32万円
  • 2,450万円超2500万円以下…16万円
  • 2,500万円超…0円

2019年まで基礎控除は、納税者本人の合計所得金額にかかわらず、一律38万円が控除されていました。

給与所得控除が引き下げられた

2020年から、給与所得控除が一律10万円引き下げられました。給与所得控除とは、給与収入の金額に対して一定の金額を差し引くものでこれまで、「給与収入が162.5万円以下…65万円」「給与収入が1,000万円超…一律220万円」差し引かれていました。

しかし改正により、年収850万円以上の会社員は増税となる可能性が高くなったのです。

2020年分から源泉所得税に関する改正が行われ、給与計算の際に差し引かれる源泉徴収税額が変わりました