源泉徴収票をどこにしまったかうっかり忘れてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。再発行する方法などについて、解説します。
目次
1.源泉徴収票がない!再発行する方法とは?
源泉徴収票を無くしても、発行元に依頼すればすぐに発行できます。また会社を退職している場合でも、手続きは同じです。再発行までの、期間・依頼先・再発行の依頼方法などについて説明しましょう。
どのくらいの期間で再発行できるか
源泉徴収票の再発行までの期間は、おおむね即日から2週間程度。会社などの発行元は源泉徴収票の発行・再発行が義務付けられているので、通常はすぐに手続きされます。
また源泉徴収票の保存期間は税務上7年分と定められているので、7年前の源泉徴収票であっても再発行できるのです。起業して自分で確定申告をする場合、源泉徴収票の再発行にかかる時間をある程度予測して、手続きの計画を立てるとよいでしょう。
再発行の方法は原則発行元である会社へ依頼する
源泉徴収票の再発行は原則、会社などの発行元へ依頼します。税務署や役所などでは再発行できません。いつの源泉徴収票が必要かにより、再発行の依頼先が異なります。
- 現在勤務している会社の源泉徴収票が必要…今の会社に依頼
- 以前勤めていた会社の源泉徴収票が必要…以前勤めていた会社に依頼
- 会社が倒産している場合…裁判所によって選任された破産管財人(弁護士)に依頼
再発行の依頼の方法
源泉徴収票の発行・再発行は法的な手続きではないため、どのような手段でも連絡が取れれば問題ありません。
再発行元の会社の経理担当部署に連絡を取って、源泉徴収票を再発行してほしい旨を伝えましょう。会社を退職している場合でも手続きは同じです。この際、本人以外が連絡しても問題ありません。
手続きでは、再発行の年度を間違えないようにしてください。また紛失したのは自分の落ち度なので、返送用の封筒と切手もともに送りましょう。
2.覚えておきたい!確定申告以外にも源泉徴収票が必要になるケースとは?
源泉徴収票が必要になるケースは確定申告以外にも、さまざまあります。ここでは下記のようなケースについて、解説しましょう。
- 配偶者控除を受ける場合
- 住宅ローンの審査
- 賃貸契約の入居審査
- 子どもを保育園に通わせる場合
①配偶者控除を受ける場合
配偶者控除を受ける際、源泉徴収票の提出が必要になります。配また配偶者特別控除でも、提出が必要になるのです。
- 配偶者控除…一定の条件を満たし、配偶者の1年間における合計所得金額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)である場合に、受けられる
- 配偶者特別控除…配偶者控除が受けられなくても、納税者本人の所得金額によって一定の控除を受けられる制度
②住宅ローンの審査
源泉徴収票はその人の年収を証明できるため、住宅ローンを組む際に金融機関から提出を求められる場合は多いです。金融機関は源泉徴収票に記入された所得や支払い金額によって住宅ローンの審査を行います。
なお正式な書類であると証明するために「社印」が必要になる場合も。金融機関など融資先から社印を求められた際は、源泉徴収票の発行元に連絡をしたうえで、社印を押してもらえるよう依頼しましょう。
③賃貸契約の入居審査
マンションやアパートなどの賃貸契約をする際、入居審査で年収を確認するために源泉徴収票が必要となる場合があります。会社員はもちろん、学生でも源泉徴収票が必要となるケースがあるのです。
- 会社員の場合…職種や勤務先、源泉徴収票などで入居審査が行われ、収入に対して賃料が高すぎるような場合は審査に時間がかかる
- 学生の場合…連帯保証人の源泉徴収票を求められるケースもある
④子どもを保育園に通わせる場合
子どもを保育園に通わせようとする際、源泉徴収票の提出を求められる場合があります。保育園を利用する条件に、保護者の就労があるため、保護者全員分の年収を確認するために就労証明書や収入証明書の提出が求められるのです。
認可保育園の場合、保護者の収入によって保育料が決まるため、年収を証明するために、源泉徴収票が使われます。
3.源泉徴収票が再発行されない場合
源泉徴収票の発行元である企業などには、税に関する書類を保管する義務があり、税法上では「源泉徴収票の保管期間は7年」と定められています。
しかし源泉徴収票が再発行されないケースもあるのです。どのようなものなのか見ていきましょう。
再発行されない主な理由
源泉徴収票が再発行されない理由として挙げられるのは、次の2つです。
- 給与所得として報酬が扱われていない
- 勤務していた会社が倒産した
給与または報酬の支払い者側は、1月31日までに源泉徴収票を発行する義務があります。もし「発行元の会社に催促しても再発行してくれない」「会社が倒産していた」という場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出しましょう。
①給与所得として報酬が扱われていない
給与として報酬を受け取る場合、事業主と雇用関係を結び、指揮命令下のもと業務に従事します。しかし報酬が給与所得ではない場合、源泉徴収票が発行されません。そのようなケースでは収入の額に応じて、事業所得か雑所得として申告します。
②勤めていた会社が倒産してしまっている
勤めていた会社の社長が夜逃げ同然で逃げるなど事実上倒産した場合、源泉徴収票を手に入れるのはほぼ不可能でしょう。そうしたとき、税務署の判断で給与明細による確定申告が認められる場合もあります。
しかし通帳に記帳された給与振込額だけで源泉徴収額を判断するのは、困難です。1年分の給料明細を保管しておきましょう。
再発行されない場合の対処法
源泉徴収票が再発行されない、次のようなケースの対処法を紹介します。
- 会社から給与明細をもらっていない場合…「源泉徴収票不交付の届出書」に記載して税務署に提出
- 確定申告で源泉徴収票が必要な場合…給与明細が有効となる可能性もあるので、普段から保管しておく
①会社から給与明細をもらっていない場合
雇用している側が給与明細書を発行していない場合、所得税に定める給与明細書の交付義務違反となります。
給与明細書をもらっていない点も「源泉徴収票不交付の届出書」に記載して税務署に提出しましょう。源泉徴収されている所得税額も分からないため、その後の対応も税務署と相談して決めることになると考えられます。
②確定申告で源泉徴収票が必要な場合
源泉徴収票が確定申告で必要な場合、源泉徴収票の代わりに給与明細が有効になる可能性もあります。
その年の1月1日から12月31日までに支払いを受けた分の給与明細の数字を合計し、確定申告書を作成します。給与明細に記載されているどの数字を合計すればいいか分からない場合は、税務署の窓口で相談するとよいでしょう。
あわせて、源泉徴収票を発行してもらえないときに利用する「源泉徴収票不交付の届出書」を、税務署に提出します。
4.請求先の会社が倒産していた場合の対処法
源泉徴収票の再発行を依頼した会社が倒産していた場合について、対処法を紹介します。
- 転職の状況で方法を選ぶ
- 破産管財人に源泉徴収票の再発行を依頼する
①転職の状況で方法を選ぶ
転職先が決まっているかどうかで、以下に挙げるような選択肢があります。
- 転職先の会社が決まっている場合…以前勤めていた会社の給与明細を転職先の経理や人事、総務部に提出すると、年末調整表を作ってもらえる可能性がある
- 転職先の会社が決まっていない場合…税務署に相談するのが賢明
一般的な手続きとして考えられるのは、「税務署で源泉徴収票不交付の届出書を提出して、給与明細をもとに自分で確定申告を行う」です。給与明細をいつでも出せるよう、日頃から保管しておきましょう。
②破産管財人に源泉徴収票の再発行を依頼する
以前勤めていた会社が倒産してしまった場合でも、源泉徴収票の再発行は可能です。
会社が倒産すると、裁判所によって選任された弁護士が、破産管財人として倒産した会社の財産を管理します。この破産管財人に依頼すると、源泉徴収票の再発行が可能になるのです。
破産管財人が分からない場合は、管轄の税務署や税理士に相談しましょう。
5.源泉徴収票を再発行するときのポイントまとめ
源泉徴収票を再発行する際のポイントを5つ紹介します。
- 年金受給者が再発行するケースについて
- 再発行は本人以外でも依頼できる
- 再発行に回数制限はない
- 再発行の費用について
- 公務員が再発行を依頼する場合
①年金受給者が再発行するケースについて
年金受給者も、源泉徴収票の再発行を依頼できます。手続きの方法は次の3つです。
- 年金相談センターの窓口、年金事務所で依頼
- ねんきんダイヤルか最寄りの年金事務所に電話依頼
- ねんきんネットを利用
年金相談センターの窓口、年金事務所での依頼
「最寄りの年金事務所」「年金相談センター」などの施設に出向くと、源泉徴収票の再発行を依頼できます。来訪の際は、「年金手帳や年金証書など基礎年金番号が分かる書類」「本人確認ができる書類」などを持参しましょう。
また代理人による再発行手続きも可能です。交付には、即日交付と郵送交付(即日交付できない場合)があります。
ねんきんダイヤルか最寄りの年金事務所に電話依頼する
「ねんきんダイヤル」「最寄りの年金事務所」などに電話すると、源泉徴収票の再発行を依頼できます。
電話で再発行を依頼する際は、マイナンバーもしくは基礎年金番号が確認できるものを手元に準備してから電話すると、スムーズです。再発行を依頼してから郵送されるまで、2週間ほどかかります。
ねんきんネットを利用する
ねんきんネットにログインして源泉徴収票の再発行を依頼します。その際、ねんきんネットのIDが必要になるので用意しておきましょう。
IDがない場合、日本年金機構の公式サイトから登録して入手します。パソコンやスマートフォンからいつでも再発行申請が可能です。申請から発送までは、およそ1週間かかります。
②再発行は本人以外でも依頼できる
源泉徴収票の再発行の依頼は基本、本人が行います。しかし円満退職をしていないなどの理由から、再発行の依頼をしにくい場合もあるでしょう。
その際、「新しい勤務先の総務や事務などから、前の会社に再発行の依頼をしてもらう」「新しい勤務先の顧問税理士に依頼する」といった方法があります。
新しい勤務先に迷惑をかけたくない場合は、ほかの税理士に相談して代行申請をしてもらうとよいでしょう。
③再発行に回数制限はない
源泉徴収票の再発行に、回数制限は設けられていないため、何度でも再発行可能です。源泉徴収票が同じ時期に複数必要になる場合もあります。提出先によってはコピーでも対応できるケースもあるので、再発行を依頼する前に確認してみましょう。
源泉徴収票が再発行されたら直接会社に取りに行きます。ただし遠方であれば、郵送してもらうことも可能です。
④再発行の費用について
源泉徴収票の再発行の手数料は、一般的に無料です。しかし会社によっては、事務手数料や郵送料といった名目にて、数百円の手数料が発生する場合も。
また再発行の受領方法として郵送を選んだ際、切手を貼付した返信用封筒が必要になるケースもあります。再発行を依頼する際にしっかり確認しましょう。
⑤公務員が再発行を依頼する場合
この場合、給与担当者に再発行を依頼します。場合によっては、共済組合に直接依頼することも可能です。国家公務員と地方公務員、それぞれのケースを見てみましょう。
- 国家公務員…国家公務員共済組合委連合会が担当先となり、専用電話による自動受付サービス・電話・はがき・申請書の郵送などのいずれかで手続きできる
- 地方公務員…地方職員共済組合など加入している共済組合が担当先となり、電話・はがき・申請書の郵送などのいずれかで手続きできる