議事録とは、会議で議論した内容を文字に起こして記録したものです。ここでは議事録の形式や種類、作り方や注意点などについて解説します。
目次
1.議事録とは?
議事録とは、会議で話し合ったり取り決めたりした内容を記録したもの。おもな役割は社内会議などの備忘、または記録を残すものです。しかしコンサルティング会社ではクライアントに対する納品物を指して議事録と呼ぶ場合もあります。
議事録作成の目的
議事録を作成する目的は次の2つです。
- 会議参加者に備忘録として共有する
- 参加できなかった社員や議論された内容に関連する部署に、会議の内容を伝える
備忘録を残すと、「これに関して話を聞いていない」「誰がどのような経緯でこの決定をしたのか」など、あいまいになりがちな問題を回避できます。
アジェンダやレジュメとの違い
議事録と混同されやすい用語として「アジェンダ」と「レジュメ」があります。
- アジェンダ:会議を円滑に行うための予定や議題
- レジュメ:会議や講演会などで発表する内容を要約した資料
- 議事録:会議内容をまとめたもの
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2.議事録の形式
会議の内容を記録して共有する議事録は、下記2つの形式があります。
- 会話形式
- 要約形式
①会話形式
会議で話し合った内容を会話の形にして文章に残す形式のこと。時系列に沿って記載されるため、どのような経緯で決定に至ったのか、会議の雰囲気はどのような様子だったかなどがわかりやすいです。
②要約形式
会議全体の内容を整理して簡潔にまとめた形式のこと。短時間で会議の要点をつかめる、決定内容を認識できるといったメリットがあり、多くの企業ではこの「要約形式」が使用されています。
3.議事録の種類
同じ「議事録」でも、社内外で閲覧する議事録と会社法で定められている議事録とでは内容や形式、作成する目的が異なります。
社内外で閲覧する議事録
社内外で閲覧する議事録の場合、重要なのは「社内外の誰が見ても簡潔に内容が伝わること」。要約形式あるいは会話形式で会議内の決定事項を明確にし、関係各所に共有します。
その際、進捗管理できるフォーマットを活用すれば、互いの進捗状況や今後の具体的な計画などについてスムーズに把握できます。また誰の発言かを明確に記録するため、責任の所在を明らかにする際にも役立つのです。
会社法で定められている議事録
会社法第318条および第393条では、株主総会や取締役会、監査役会などが開催された際にその議事録を作成すると義務づけられています。ここでいう議事録には、株主総会の議事が行われたという証拠、記録を残すという意味が込められているのです。
また各議事録は、作成後も一定期間会社本店あるいは支店に備え置かなければなりません。
4.議事録の書き方
議事録の作成にはビジネス文書作成の基本要素が詰まっています。議事録の作り方や記載する項目、作成の流れについて具体的に説明しましょう。
作成者
議事録作成者に厳密な決まりはないものの、一般的に若手社員や新入社員など、役職のもっとも低い人が作成します。役職が上になればなるほど議事録を作成する機会は少なくなるのです。
なかには作成者を持ち回りにしている会社もあります。また議事録の作成には会議の内容をしっかりと理解しておく必要があるため、プロジェクト全体を理解している主催者やサブリーダーなどに作成を任せている会社もあるのです。
なお株主総会や取締役会の議事録は取締役が作成します。
記載する項目
議事録に記載する一般的な項目は以下のとおりです。
- 会議の名称
- 会議の開催場所
- 開始、終了の日時
- 会議出席者
- 会議を行う目的とその概要
- 質疑応答の内容
- 決定事項と未決定事項
- 発言した人物の名前
- 次回開催予定
- 添付資料
- 配布先の部署名
- 議事録作成者
記載項目は多岐にわたります。わかりやすい議事録をスピーディに作成できるよう、事前に会議の目的や意味を明確にしておくとよいでしょう。
作成の流れ
議事録作成の具体的な流れを、以下5つの段階にわけて説明しましょう。
ポイントは2つ。
- 議事録の構成をあらかじめテンプレ化しておく
- 事前に会議の目的、アジェンダを確認しておく
議事録はシンプルであればあるほど要点がわかりやすくなります。箇条書きや見出しを用いたフォーマットを用意しておくと安心でしょう。
とくに日付や金額など数字に関する発言は、のちのち重要になります。聞き逃さないよう注意が必要です。
話し言葉では主語が省略される傾向にあります。その発言が誰のものか、責任の所在はどこにあるのかなどを明確にするためにも、主語を付けくわえて文章化しましょう。
フォーマットが用意されていなくとも、インターネット上で公開されている議事録専用のフォーマットを活用すれば、体裁の整った議事録をかんたんに作成できます。
なお議事録の提出期限に決まりはありません。しかしおおむね議事録の正確性を高める、情報共有の迅速性を高めるという意味でも、24時間以内の提出が望ましいとされています。
取引先や顧客などに議事録をメールで送付する場合もあるでしょう。
メール本文に議事録を記載せず、議事録を添付ファイルとして付けたメールを送信するのが一般的です。その際、添付するファイルのサイズに気をつけましょう。一般的に、メールに添付するファイルの容量は大きくても2MBとされています。
5.議事録を作成するときのコツ
議事録を作成する際のコツは以下の5つです。どれも格別難しくありません。何度か意識するうちに自然と身についていくでしょう。
- 発言者を明確にする
- 不明な点は会議中に確認しておく
- 仮定や推測は区別して記載する
- やるべきことを明確にする
- フレームワークを活用する
①発言者を明確にする
議事録は、会議に参加しなかった関係者がそれを読んでも理解できるよう作成します。そのため「誰が発言したのか」という点が重要です。
その発言は自社の意見なのかクライアントの意見なのか、現場社員の発言なのか社長の発言なのかによってその後の方向性や言葉の意味合いが大きく変わってきます。
会議中は主語述語を省いた会話文で進められるものの、議事録ではこの主語と述語、発言者を明確にすることが重要になるのです。
②不明な点は会議中に確認しておく
議事録作成を任された若手社員が、会議に出てきた用語や参加者の関係性などをつかみにくいときもあります。
これらを理解できないまま議事録を作成すると、会議内容の理解が深まらないだけでなく、決定事項の証拠を残すための議事録として役割を果たさなくなる可能性も高いです。
「会議中にわからない用語が出てきたらメモに残しておく」「会議中に質問できる環境であればその場で解決しておく」などに気をつけましょう。また会議終了後に先輩や上司に確認して、正しく理解したあとに議事録を作成します。
③仮定や推測は区別して記載する
会議中には実績や経緯などの事実が発言されることもあれば、将来的な予測や希望的観測などが発言されることもあります。
直接会議に参加していればそれが仮定なのか事実なのか理解できるでしょう。しかし不参加者がそれを判断するのはかんたんではありません。場合によっては仮定と事実を混同してしまいます。
これを防ぐためにも、議事録では事実と仮定、推測は区別して記載しましょう。
④やるべきことを明確にする
わかりやすい議事録は、それを読むだけで「誰が何をいつまでにやるべきか」理解できます。
また会議が複数回にわたる場合、議事録があれば過去の会議に参加できなかった社員も次回の議題を理解できるのです。不参加者も含め、各自がやるべきことを明確にしておきましょう。
⑤フレームワークを活用する
議事録の作成には各種フレームワークの活用も有効です。ここでは議事録作成に役立つ4つのフレームワークについて説明します。
5W1H
以下6つの要素をおさえて情報を整理するフレームワークのこと。
- When:いつ
- Where:どこで
- Who:だれが
- What:何を
- Why:なぜ
- How:どのように
議事録ではこの5W1Hを可能な限り漏らさず記載します。さらに上記の順番で議事録を作成すると、読み手はよりスムーズに記載内容を理解できます。
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FOCEP
会議中の発言を重要度別に分類して記載するフレームワークのこと。以下5つの頭文字を取ったもので、会議中の発言をこれらに当てはめると、発言をかんたんに分類できます。
- Fact:事実
- Opinion:意見
- Cause:原因
- Evaluation:評価
- Plan:計画
このなかでも「Fact:事実」と「Plan:計画」に分類される発言は会議中でも重要度の高い部分です。聞き逃さないよう注意しましょう。
CREC
話す順番を意識してわかりやすく、かつ伝えたいことを簡潔に整理できるフレームワークです。以下の順番を意識すると、話を論理的に展開できます。
- Conclusion:結論
- Reason:根拠
- Example:事例
- Conclusion:結論
話の内容が支離滅裂になる、途中で何を話しているのか分からなくなる場合に有効なフレームワークです。
ロジックツリー
樹木が幹から枝分かれするように、問題を要素ごとに分解して考えるフレームワークのこと。以下3つの要素にわけて問題を掘り下げます。
- What:要素分解ツリー(物事の要素を網羅的に把握する)
- Why:原因追及ツリー(問題の原因を推測して根本的原因を特定する)
- How:問題解決ツリー(改善策を具体的に考える)
ロジックツリーを活用すると、問題の原因やその解決策を掘り下げて考えられます。
6.議事録の作成に活用できるアプリやツール
ここでは議事録の作成に活用できる4つのアプリとツールについて説明します。
録音、録画アプリ
議事録作成に際して、会議を録音、録画している人も多いのでしょう。最近ではICレコーダーのような専門機器を用意しなくとも、スマートフォンやタブレットのアプリでかんたんに録音、録画できます。
テレワーク導入にあたってWeb会議を行う会社も増えている昨今。録音、録画機能が搭載されているWeb会議ツールを活用するのも効果的です。
文字起こしアプリ
これまで録音内容をテキスト化するには、レコーダーやメモを人間が文字起こしするしかありませんでした。
これには「聞き返したり書き起こしたりするのが面倒」「何を言っているのか聞き取れない」などの問題があったのです。しかしAIの音声認識機能を利用した文字起こしアプリを使えば、よりかんたんに文字起こしができます。
なかには翻訳機能で多言語化できるもの、話者の声を認識して自動で発言者を区別できるものなどもあるのです。
OCRアプリ
OCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)とは、画像から文字を見つけ出して文字データに変換する技術のこと。スキャンした書類をOCR処理すると、画像データとして保存された書類のテキスト部分が文字データとして読み込まれるのです。
OCRではこれまで紙を見ながら人力で転記していた作業が不要になります。アプリで会議のメモをテキスト化すれば、議事録へかんたんにその内容を取り込めるでしょう。
議事録自動作成ツール
議事録自動作成ツールには、AIを用いた自動音声認識エンジンが搭載されています。会話を読み取り自動的にテキスト化するのはもちろん、ビッグデータを活用して読み取り精度を向上させたり、商品名や業界特有の専門用語などを読み込ませたりするのも可能です。
そのほか、事前に登録したキーワードを拾ってタグ付けしたり、会議中に同時通訳して字幕で表示したりなどもできます。これらにより議事録作成にかかる時間と手間は大きく減っていくでしょう。