グローカル人材とは?【簡単に】グローバル人材との違い

グローカル人材とは、グローバルな視点や経験を持って地域に貢献する人材のことです。ここではグローバル人材との違いや注目される理由、グローカル人材育成の取り組みなどについて解説します。

1.グローカル人材とは?

グローカル人材とは、グローバルな視点や経験を活かして地域社会や経済の活性化、発展に貢献する人材のこと。

グローカル人材のグローカルは、グローバル(Global)とローカル(Local)を組み合わせた造語です。地球規模で物事を見ながら地域単位で商品やサービスを発展させられる人材として注目を集めています。

グローバル人材との違い

グローバル人材とは世界の多様性を受け入れながら、自分らしさをもって活躍できる人材のこと。

グローカル人材との違いは地域性を持つか持たないかです。一般的に、世界規模で活躍する人材をグローバル人材、世界で活躍できるスキルを持ちながら地域に貢献する人材をグローカル人材として区別します。

グローカル企業

世界的な活動と地域的な活動の両方を高いクオリティで維持する企業のこと。国際的なビジネスを展開しつつ、各地域の特性に対応しながら世界的な戦略で事業を広げている会社です。

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2.グローカル人材が注目される理由

なぜグローバル人材ではなく、グローカル人材が注目されるようになったのでしょう。その理由のひとつに、グローバル化のデメリット解消という理由が挙げられます。

利益を追い求めるうえでグローバル化は非常に重要な考え方ですが、その一方で地域格差や環境問題を浮き彫りにしてしまうという問題があるのです。

もちろんインターネットなどの通信環境が充実してきたことも理由のひとつ。ICTの活用により、大都市にいなくても最新の情報が入手しやすく、また自社の情報も発信しやすくなりました。

地方から海外への進出

いまやグローバル化は都市部だけでなく、地域社会にまで浸透しています。海外に向けた事業展開を進めるためには、どうしても自社と海外マーケットを結び付ける橋渡し役が必要です。

そこで注目されるようになったのが、グローバルな経験や知識を生かして地域社会に貢献するグローカル人材。現代は会社の所在地や規模にかかわらず海外展開が可能な時代です。地域企業が海外に進出するために、グローカル人材は必要不可欠な存在といえます。

多様化への対応

国内の外国人人口は年々増加傾向にあります。地域特有の文化にこだわることも大切ですが、多様化に対応して外国人が馴染みやすい文化を作るのも重要です。

グローカル人材は異文化を理解する力や異文化の人々とコミュニケーションを取る力に優れています。地域の文化を外国人にも合うよう工夫できれば、地域の魅力を伝えて収益と人材確保につなげるきっかけにできるのです。

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3.グローカル人材に必要なスキル

グローカル人材にはどのようなスキルが必要なのでしょう。ここではグローカル人材に求められる6つのスキルについて説明します。

  1. 語学力
  2. コミュニケーション力
  3. 課題発見力
  4. 異文化への理解力
  5. ローカライズ能力
  6. サーバントリーダーシップ

①語学力

グローカル人材には外国語でコミュニケーションをはかれる語学力が欠かせません。特に経理や人事などのバックオフィスでは、ポジションによってスマートな議論や交渉ができる、日本独自の労務問題を説明できるレベルが求められます。

もちろん英文メールの読み書き、日常的な確認程度の会話ができることはマスト。場合によっては海外拠点に向けたレポーティングやプレゼンが行える語学力も必要です。

②コミュニケーション力

グローカル人材に求められるのは語学力だけではありません。異文化で生活する人々とともに仕事をする際、相互に安心して仕事ができるよう場を和ませる力、すなわちコミュニケーション力が必要です。

コミュニケーション力が高い人材は相手の話を聞いて的確に理解すること、自分の考えをわかりやすく伝えることに長けています。このコミュニケーション力がないと、外国人に自社の魅力や強みを理解してもらえません。

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③課題発見力

海外や地域の魅力、課題を発見する力もグローカル人材には必要です。海外の課題を知っている人材は、相手に「自分たちの文化や課題を理解してくれる人材だ」という安心感を与えます。

反対に課題を理解せず、地域のアピールばかり進めてくる人材は一緒に仕事をしたいと思われない可能性も高いです。グローカル人材には課題を見つけ、そこからさらに発展するために地域の特性が役立つことを説明できる能力が求められます。

④異文化への理解力

日本経済団体連合会が実施した調査によれば、7割以上の企業が「異文化に興味関心を持ち、理解して対応する力が必要」と回答しています。これは単に知識や経験として異文化を知っていることではありません。

自分と違う価値観があることを理解してそれを受け入れる、つまりダイバーシティの考えです。

異文化に対する理解力がないと「なぜこれが理解できないのだろうか」「なぜそう考えるのか分からない」というネガティブな感情が生まれ、仕事どころではなくなる可能性があります。

⑤ローカライズ能力

特定の国や地域に向けて作られたサービスを、ほかの地域や国でも使えるよう仕様変更する能力のこと。グローカル人材には自国のノウハウを押し付けず、異文化を理解したうえで相手が受け入れられるビジネスを展開する能力が求められます。

マクドナルドにおける「てりやきマックバーガー」はローカライズがうまくいった事例のひとつです。

⑥サーバントリーダーシップ

部下に指示や命令をするのではなく奉仕したうえで主体的な行動を促す考え方のこと。サーバントリーダーシップでは個人よりもチームとしての成果を重視します。

リーダー個人の能力ではなく、部下の能力や多様な価値観を重視することが信頼関係や社員の主体性構築、チームの生産性向上につながるという考えです。

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4.グローカル人材育成の取り組み

グローカル人材の育成にはどのような取り組みが有効なのでしょう。ここでは学校や企業などが実施しているグローカル人材育成の取り組みについて説明します。

文部科学省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」

文部科学省では高校も中学校の後期課程で「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」を実施しています。

本事業の目的は、「各教科の内容を社会の在り方と結び付けて深く理解する」「また地域の課題に対して体験と実践をともなった探究的な学びを実現する」ことです。3年間にわたる取り組みは、内容に応じて次の3つに分類されます。

  • 地域魅力化型:地域ならではの新しい価値を創造する人材を育成する
  • グローカル型:グローバルな視点を持ったリーダーを育成する
  • プロフェッショナル型:専門的な技術や知識をもった専門的職業人を育成する
参考 地域との協働による高等学校教育改革の推進文部科学省

トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム

文部科学省では官民協働で海外留学を支援する「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」も実施しています。本制度の目的は、派遣留学生を産業界はじめ社会で求められる人材、また世界を視野に入れて活躍できる人材に育成すること。

以下3コースによって海外体験の魅力を伝え、日本の留学機運を高める人材を育成します。

  • 大学生等コース:大学や大学院、短期大学、高等専門学校や専修学校の生徒が対象
  • 高校生コース:高等学校や中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部や専修学校高等課程の生徒が対象
  • 地域人材コース:グローカルリーダーを目指したい人が対象
参考 トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラムトビタテ!留学JAPAN

NPO法人の「グローカル人材育成事業」

特定非営利活動法人グローカル人材開発センターでは、グローカル人材の育成にかかわる科目や資格、セミナーなどの開発運用を行っています。

オリジナル研修では主に若手や中堅社員を対象とした異業種合同研修プログラムや、会議の質を高めるためのスキルを学ぶ研修などを実施。英語研修では日常生活のなかで触れる異文化をきっかけに自発的な学習を促す英会話レッスンを行っています。

参考 グローカル人材開発センターグローカル人材開発センター

大学の「グローカル人材育成プログラム」

急速な少子高齢化と若者の流出により地域経済の縮小が加速する地方では、積極的なグローカル人材育成プログラムが進められています。

京都産業大学

京都産業大学ではグローカル人材に求められる能力を具体化した職能資格「グローカルプロジェクトマネジャー(GPM)」を設けています。資格発行機関はNPO法人グローカル人材開発センター、認証機関は一般財団法人地域公共人材開発機構(COLPU)です。

本資格を取得すると、企業活動を理解し、主体的に他者とコミュニケーションを取りながら課題発見、解決に導ける能力があると客観的に証明できます。

参考 グローカル人材資格制度(GPMプログラム)京都産業大学

大学コンソーシアム

複数の大学と地域社会、産業界が協力、連携して大学の発展と地域の活性化を実現する取り組みのこと。代表的なものに「大学コンソーシアム長崎」があります。これは長崎の8大学と2短期大学、1高等専門学校が協力して開設したものです。

目的は各教育機関の充実、地域の行政や産業界と連携しながら地域社会の発展に貢献すること。単位互換制度や各種ボランティア、企画委員合宿や学生自主企画活動などを通してグローカル人材の育成を支援しています。

参考 大学コンソーシアム長崎大学コンソーシアム長崎

企業の「留職」

留職とは、企業に所属する人材が組織を一度離れて一定期間海外で働き、グローバル感覚を養う制度のこと。本業のスキルを使って現地社会に入り込み、現地の人々とともに社会課題の解決に挑みます。

自発的な行動力、柔軟性が問われるため、自然とグローバルな感覚を身につけられるのです。コミュニケーションスキルやリーダーシップ能力の向上にも効果的で、留職から戻った社員から影響を受けて会社が活性化するというメリットもあります。

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5.グローカル化のメリットとデメリット

グローカル化によって企業はさまざまなメリットを得られます。しかしデメリットはないのでしょうか。ここではグローカル化によるメリットとデメリットについて説明します。

メリット

グローカル化のメリットは大きく分けて次の3つです。

海外現地スタッフのモチベーション管理

現地の文化や特性を知らない日本人が海外子会社のトップを務めていると、現地採用スタッフのモチベーションはあがりません。

地域文化に精通している日本人、あるいは現地スタッフを信頼して重要ポストに就いてもらい、スタッフのモチベーションアップにつなげます。

グローバル経営の盤石化

グローバル経営には世界の情勢を踏まえた対策が必要です。現地に詳しくその先を見通すことに長けているグローカル人材がいれば、万が一のトラブルに巻き込まれてもさまざまな手段を講じていけます。

多様性に富んだ成長

現地スタッフに幅広く裁量を持たせると、国内では思いつかなかったようなさまざまな意見が集まります。これを活用すれば、よりグローバルな経営に生かせるでしょう。

デメリット

グローカル化のデメリットとしてはじめに挙げられるのが、他国の政治経済や社会環境によって多大な損失を被る可能性、つまり「カントリーリスク」の問題。

とりわけ内紛の多い地域では十分な注意が必要です。グローカル化を検討している企業はこのリスクを避けてとおれません。

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6.グローカル人材を取り入れている企業

次のような企業をグローカル企業といいます。

  • 世界的水準で事業を展開しながら大都市ではなく地方に本社を持ち、地域密着性が高い中小企業
  • 各地域の特性に合わせて現地法人を設立し、各国の文化や法制度に対応した戦略を持つ大企業

実際にグローカル人材を取り入れている企業について説明します。

IKEA

スウェーデン発祥の家具量販店「IKEA」はグローカル企業の代表例です。今や国内12カ所に店舗を構えるIKEAが最初に日本に出店したのは1970年代のこと。当時は日本人の品質基準に合わず、一度は撤退を余儀なくされました。

そこから日本家屋の間取りを考慮した製品開発、低コストかつ高品質な生産管理を進めた結果、国内の誰もが知る大手企業となりました。

マクドナルド

世界的に展開するファーストフードチェーン「マクドナルド」の取り組みも、グローカル化の成功事例として広く知られています。マクドナルドは世界共通の商品を提供するだけでなく、現地に密着した商品開発も進めているのです。

日本の「てりやきマックバーガー」やイタリアの「パンツェロッティ」、トルコの「マックトルコケバブ」など、地域を限定した要素を取り入れて成功をおさめました。

スズキ

スズキは自動車メーカーのなかでも日本ではじめて海外進出をはたした企業です。言語や宗教、カルチャーの違いから難易度が高いといわれているインドにおいて、スズキ自動車は約4割という高いシェア率を占めています。

最大の要因は徹底したローカライズ。開発から製造、販売にわたるまで一貫して現地で行われているのが特徴です。デザインとエンジニアリングの拠点を現地に置くことで、インドの目線に立った設計が徹底されました。