五月病とは、新学期や新年度の変化に対応できず、気持ちが落ち込むことです。ここでは、五月病について解説します。
目次
1.五月病とは?
五月病とは、進学や就職、転勤など環境の変化に適応できず、気持ちが落ち込むこと。ここでは五月病について、5つのポイントから解説します。
- 正式な医学用語ではない
- 原因
- 症状
- 関連用語
- 五月病は20代がかかりやすい
①正式な医学用語ではない
五月病という呼び名は、正式な医学用語ではありません。五月病は、学校・職場などで始まる新生活に慣れずストレスを溜めた結果、生じます。
症状の多くは、「新生活がスタートして1ヶ月程度過ぎた5月頃に出る」「学生や新入社員に起こりやすい」点から一般的に五月病と呼ばれているのです。
②五月病の原因
五月病の原因と考えられているのは、ストレス。慣れない新生活から感じるストレスが溜まると、五月病になりやすいといわれています。
そのほか、「特定の状況が耐え難く感じられる適応障害」「自閉症、注意欠如・多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害」などの病気が原因で生じる場合もあるのです。
③五月病の症状
五月病の症状とは、どのようなものでしょうか。ここでは五月病の症状について3つ、解説します。
身体的な症状
- よく眠れない
- 朝起きられない
- 夜中、何回も目が覚めてしまう
- 何もしていないのに疲れている
- 便秘
- 下痢
- 腹痛
- 倦怠感
このような症状が2週間以上継続する場合には、五月病である可能性は否定できません。
精神的な症状
- 気分が落ち込む
- 気力がわかない
- 不安感がある
- 焦りを感じる
- 人とかかわることが辛くなる
- 集中できなくなる
ストレスを原因とした一過性の症状であれば短期間で治るものの、2週間以上症状が続く場合、五月病の可能性があります。
五月病の他覚症状
他覚症状とは、他人の目から見てわかる症状のこと。たとえば、下記のような症状です。
- 顔色が悪く、元気がない
- 遅刻の回数が多くなった
- 仕事に集中できていない
④五月病の関連用語
五月病の関連用語「六月病」「新五月病」について、五月病との類似点や相違点から解説しましょう。
六月病
六月病とは、新卒で入社した新卒社員に見られる症状のこと。新入社員研修や配属が終わった6月頃、仕事に対する意欲や元気をなくすといった心身の不調を訴える点から呼ばれています。
六月病は五月病と同じく、正式な医学用語ではありません。しかし五月病と同じく社会に広まっています。
新五月病
新五月病とは、六月病と同じ意味で用いられる言葉です。2つの違いは、下記のようになっています。
- 六月病:新卒社員に見られる症状の呼称
- 新五月病:新卒社員以外で新たな環境に適応することを求められた人が、5月や6月頃に心身の不調を訴えたときに使われる
⑤五月病は20代がかかりやすい
五月病には、20代がかかりやすいという特徴を持ちます。ある調査の「五月病になったことがあるか」という問いに対し、20代は26.5%、40代は12.5%が「ある」と答えました。20代では40代のほぼ2倍で、五月病にかかっていたのです。
2.五月病にかかりやすい人
五月病にかかりやすい人とは、どのような人なのでしょう。五月病にかかりやすい人の特徴を3つ解説します。
- 真面目で責任感が強い
- 完璧主義者で理想が高い
- 内向的
①真面目で責任感が強い
「もっと頑張らなくては」「早く仕事を覚えなければ」などと、何事にも真剣に取り組み自分の責任を強く感じてしまいます。そのため、ストレスを抱えやすいのです。
②完璧主義者で理想が高い
完璧主義の人は、物事を完璧にできなければそれはすべて失敗であると考える傾向にあります。少しのミスも許さないため、自分自身を追い詰めてしまいがちなのです。
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③内向的
「繊細に物事を捉える」「一人で問題を抱え込む」「自己嫌悪に陥りやすい」特徴があります。そのため悩みを抱えてしまうと落ち込みやすく、なかなか立ち直れません。
3.五月病の対処法【企業】
五月病は、企業にも影響を及ぼすのです。ここでは3つのポイントから、五月病と企業との関係について解説します。
- 五月病が職場にもたらす影響
- 企業ができる五月病の対処法
- 五月病の社員がいると感じたら
①五月病が職場にもたらす影響
五月病が職場にもたらす影響は、下記のとおりです。
- 社員の不調が周囲の和を乱すため、社員同士の人間関係が悪化する
- 不調を訴える社員の労働力分の業務効率が低下する
- 社員がストレスを抱えるような、潜在化した労働問題を見逃す
- 五月病からうつ病へと悪化すれば、安全配慮義務や職場環境配慮義務を怠ったと見なされる
②企業ができる五月病の対処法
五月病になった社員がいると分かった際、企業は何をすればよいのでしょうか。ここでは3つの対処法について解説します。
積極的に声をかける
社長をはじめ上司は、社員や部下へ積極的に声をかけましょう。それにより社員や部下の緊張状態が緩和されます。またコミュニケーションを取るためスムーズな人間関係も構築されます。社員がストレスを抱えたときも相談しやすくなるでしょう。
社内の制度を整える
たとえば、「気軽に悩みを相談できる窓口づくり・五月病について学ぶ研修の実施・労務に関する勉強会の開催・休暇制度の整備」などです。
悩み相談部署があることを周知する
五月病など心身に不調を訴える社員に対し、悩みやストレスについて相談できる部署を設置しましょう。部署では人事部や産業医といったプロフェッショナルが対応します。また相談部署を設置したら、その存在を全社員に周知徹底するのも重要です。
五月病の社員がいると感じたら
五月病の社員がいると感じたときの対処法を3つ解説します。
チェックリストを利用する
社員が五月病かなと思ったときは、あらかじめ用意しておいたチェックリストを利用しましょう。チェックリストには下記のような項目を用意しておき、当てはまる項目があれば産業医などの専門家に相談します。
- 遅刻・欠席が増えた
- 元気がない
- ボーっとしている
- 服装が乱れている
- 仕事のミスが増えている
- 食欲がなさそう
産業医面談を薦める
社員が五月病かと思われるときは、産業医面談を勧めましょう。産業医は、メンタルヘルスの知識を持っている専門家です。
産業医面談では、情報を秘密としながら、「医療機関への受診勧奨・就業判定・配慮が必要な就労措置に対する意見」などの措置が行われます。面談実施による不利益な扱いを行わない旨について社員に説明するのも重要です。
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励ましたり叱責したりしない
社員が五月病かなと思ったとき、励ましたり叱責したりしてはいけません。ストレスを溜め、心身に不調をきたしている社員は、「これ以上頑張れない」「どうやって頑張ればいいのかわからない」という状態にあります。
励ましや叱責は、症状を悪化させるといったマイナスの方向に作用する可能性も高いです。
4.五月病の対処法【個人】
五月病に対して、個人ができる対処法もあります。どのような方法なのか見ていきましょう。
- 運動する
- 趣味に打ち込む
- 栄養バランスの取れた食事をする
- 良質な睡眠を取る
- 悩みを打ち明ける
①運動をする
ウォーキングやジムでのトレーニング、水泳やダンスといった運動は、「ストレスの軽減・緊張を和らげる・気分転換」といった効果をもたらします。運動の習慣がなくても毎日10~15分歩くといった運動の習慣化が、五月病の予防に役立つのです。
②趣味に打ち込む
人は、自分が好きなことをしている時間に幸せを感じるもの。趣味の継続によって五月病を予防できます。趣味は、「ジムやテニス、キャンプや登山などのアウトドア系・パズルや読書、料理などのインドア系」など、ジャンルを問いません。
③栄養バランスの取れた食事をする
偏った食生活は、「脳内の栄養不足を引き起こす・神経伝達物質であるセロトニンが不足して感情がコントロールできなくなる」といった悪影響を及ぼします。食事は栄養バランスを考え、主食・主菜・副菜を組み合わせましょう。
④良質な睡眠を取る
睡眠は、疲労回復に役立つため五月病予防にも効果的です。「起床・就寝のリズムを整える・夕食は寝る前2時間、入浴は寝る前1時間までに済ませる・寝る前にパソコンなど電子機器を見ない」などに気を付けると、質の良い睡眠が確保できます。
⑤悩みを打ち明ける
抱えている悩みやストレスを、家族や友人、心の問題の専門家などに話せれば、気持ちが晴れたり解決の糸口を見つけられたりします。周囲も元気がない様子を見かけたら、積極的に話に耳を傾けてみましょう。
5.もし五月病になってしまったら
もし五月病になってしまったら、どうすればよいのでしょうか。ここではその際に有効な2つの行動と意味について解説します。
- 今の気持ちを言葉にしてみる
- 薬物療法を受ける
①今の気持ちを言葉にしてみる
まず「自分に大きな仕事が務まるか心配だ」「同僚との人間関係に疲れてしまった」など今の気持ちを言葉にしましょう。こうした行動を心理学用語で「外在化」といいます。
自分の悩みやストレスを言葉にすると、自分を客観的に捉え直すきっかけになるのです。そのため、気持ちを少し楽にできます。
②薬物療法を受ける
五月病になってしまったら、薬物療法を受けてみましょう。放置しておくと、最悪の場合、うつ病に進展してしまう場合も。できるだけ早期の段階で治療を受けることが重要になってくるのです。
もし医学的に適応障害と診断されたら、抗うつ薬や抗不安薬などを服用する薬物療法を受けましょう。そして医師の指導を受けて、回復を目指すのです。