ゴーレム効果とは?【ピグマリオン効果との違いを簡単に】

ゴーレム効果とは、期待や評価を得られないと成果や成績が下がってしまう現象のこと。ここでは具体例や職場に与える影響、対策などについて解説します。

1.ゴーレム効果とは?

ゴーレム効果とは、他者からの期待や評価を得られなくなると成果や成績が下がってしまう心理学的現象のこと。成果や成績が重視されやすいビジネスやスポーツなどの分野で見られるものです。

なおゴーレム効果の由来は、額の文字を消すと泥に戻ってしまう空想の巨人「ゴーレム」といわれています。

一般的にゴーレム効果は「絶対的ゴーレム効果」「相対的ゴーレム効果」のふたつにわかれます。それぞれの意味を理解したうえで使いわけるとよいでしょう。

絶対的ゴーレム効果

否定的な評価を受けたり期待されなくなったりしたときに、成果や成績が下がってしまう現象のこと。特徴は、他者との比較を前提としない点です。自分自身への失望や落胆などから生じます。

相対的ゴーレム効果

優秀な人が評価や能力の低い集団に所属すると、優秀な人の成果や成績が下がってしまう現象のこと。特徴は、周囲との落差が影響する点です。自分ひとりががんばっても集団としての成果が上がらず、やる気を失ってしまうことで生じます。

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2.ゴーレム効果の具体例

ゴーレム効果の具体例としてひんぱんに挙げられるのが、教育心理学者のロバート・ローゼンタールが行った実験です。

ローゼンタールは、「成績のよい生徒」と「成績の悪い生徒」を選び、双方の成績について教師には逆のことを伝えました。教師は成績のよい生徒に期待や関心を寄せなくなり、成績のよい生徒の学力が低下したのです。

否定的な評価によるゴーレム効果は、日常生活や仕事においても起こりえます。次項で具体例を3つ紹介しましょう。

職場

仕事においては、上司の発言がゴーレム効果を引き起こし、組織の業績にも悪影響がおよんでしまう可能性もあります。

たとえば上司が新人社員へ「あなたはまだ経験もないし、あまり期待していない」と発言した場合、新人社員は自信やモチベーションを失ってしまうかもしれません。ゴーレム効果を生じた社員が増えるほど、パフォーマンスや生産性も下がってしまうでしょう。

恋愛

ゴーレム効果は、あらゆる人間関係において発生する可能性があります。たとえば恋愛で好きな相手から「あなたは私に合わない」と言われた場合、ゴーレム効果が発生する場合もあるのです。

「自分は愛される価値がない」と落ち込み、自尊心も傷つけられてしまうため、本来の魅力が失われるでしょう。この状態で次の恋愛を始めてもメンタルを健康に保ちにくいです。

育児

育児でもゴーレム効果が発生する場合があります。

たとえば勉強や習い事などについて、親が子どもに「お前はまだ小さいからできない」と言ってしまうケースです。子どもは自分には能力がないと感じて積極性ややる気を失ってしまい、成績を下げてしまうかもしれません。

ゴーレム効果がその後の成長に悪影響を与える可能性もあるため、親は子どもとの会話において適切な言葉を選ぶ必要があります。

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3.ゴーレム効果とピグマリオン効果、ハロー効果との違い

ゴーレム効果と混同されやすい用語に「ピグマリオン効果」と「ハロー効果」が挙げられます。ゴーレム効果との違いについて説明しましょう。

ピグマリオン効果との違い

ピグマリオン効果とゴーレム効果では、正反対の効果が生まれます。

ピグマリオン効果とは、周囲から期待を寄せられたり、注目されたりするとパフォーマンスが向上し、よい成績を収められるようになる現象のこと。上司から「君ならできる」と言われた部下が本当に成し遂げたといったケースが該当します。

一方ゴーレム効果は、周囲からの影響を受けて成績が下がってしまう現象です。

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ハロー効果との違い

ハロー効果とゴーレム効果の違いは、効果がおよぶ範囲です。

ハロー効果とは、対象となる物事に関して、その特徴の一部の印象だけで全体の評価が決められてしまう現象のこと。

一部の特徴によって全体の評価がよくなる現象を「ポジティブハロー効果」、逆に全体の評価が悪くなってしまう現象を「ネガティブハロー効果」と呼びます。

ハロー効果の効果は「評価をする側の認識」だけにとどまるものの、ゴーレム効果は「評価をされた側」の成果やパフォーマンスに影響を与えるのです。

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4.ゴーレム効果が職場に与える悪影響

職場においてゴーレム効果が発生すると、評価とパフォーマンスが低下し続ける悪循環に陥るかもしれません。ゴーレム効果が職場に与える悪影響について解説しましょう。

  1. 自己肯定感の低下
  2. 成果や成績の低下
  3. 成長機会の減少
  4. 組織全体の生産性の低下

①自己肯定感の低下

職場でゴーレム効果が発生した社員は、自己肯定感が低下します。人から低評価を受けると、「自分はだめだ」と感じて自己肯定が下がり、それに比例するように実際の成績も落ち込んでしまうのです。

成績が下がるとさらに自己肯定感が低下してしまい、悪循環に陥る恐れもあります。

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②成果や成績の低下

自己肯定感が低下すると仕事に対するモチベーションを維持できなくなり、成果や成績が低下する可能性もあります。また集中できなくなってミスが増えれば生産性も下がるでしょう。

いずれにしても社員の評価が下がってしまい、やはり自己肯定感の低下と、成果や成績の悪化が繰り返されてしまうのです。

③成長機会の減少

ゴーレム効果の悪影響で成績や評価が下がってしまった社員には、新しい仕事や重要な仕事を任される機会が減るでしょう。成長の機会を失うため、さらに社員の成長が見込めなくなってしまうのです。

もしそのような仕事が回ってきても成長できなかった社員は遂行できず、評価を下げてしまう恐れがあります。

④組織全体の生産性の低下

ゴーレム効果が発生してしまった職場では、組織全体の生産性が低下しやすくなります。特定の社員に向けたゴーレム効果が組織全体に作用してしまう場合もあるからです。

ゴーレム効果の悪影響が全体におよんでしまうと、組織目標の未達成といった結果を招きかねません。

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5.ゴーレム効果への対策

職場におけるゴーレム効果を未然に防ぐためにも、上司側と部下側でそれぞれの対策を講じるとよいでしょう。また正反対の効果を持つピグマリオン効果を発生させると、ゴーレム効果の予防に効果的です。

部下が自分で取れる対策

上司から評価される立場にある部下は、ゴーレム効果の悪影響を受けやすい存在です。部下側ができる対策を6つ解説します。

  1. スモールステップの意識
  2. 目標に対する進捗の可視化
  3. 自分と他人の比較を禁止
  4. 休息時間の確保
  5. 自己分析の実施
  6. 前向きなセルフトーク

①スモールステップの意識

日々の業務でスモールステップを意識すると、ゴーレム効果の予防になります。難易度の低いチャレンジでも、継続して達成すると自己肯定感が高まり、ゴーレム効果が発生しにくくなるからです。

またこの対策はすでにゴーレム効果が発生してしまっている状況でも、ある程度の抑止効果が期待できます。短時間でかんたんに終えられる作業を進めてみるとよいでしょう。

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②目標に対する進捗の可視化

目標に対する進歩を可視化すると自身の成長を実感でき、ゴーレム効果の予防につながります。仕事で立てた目標とその達成度を継続して記録し、つねに確認できる状態にしておきましょう。その日「できたこと」をかんたんにメモ書きするだけでも効果があります。

③自分と他人の比較を禁止

他人と自分自身を比較するのを止めるだけでも、ゴーレム効果の発生を防げます。他人と比較すると「あの人はできるのに自分はできない」といった考えに陥ってしまい、自信を失ってゴーレム効果を引き起こしやすいからです。

たとえ上司がほかの社員を褒めていても、それは自分自身の評価とは関係ないと割り切りましょう。

④休息時間の確保

休息時間を十分に確保するのも重要です。精神的あるいは身体的な疲労が蓄積すると、冷静な判断ができずミスや失敗を引き起こします。上司からの評価と自己肯定感が下がり、ゴーレム効果が発生しやすくなるのです。

十分な睡眠時間や入浴時間、趣味を楽しむ時間を確保し、リフレッシュを欠かさないようにしましょう。

⑤自己分析の実施

自己分析を行い、自分自身を知るのも対策として有効です。自己分析をとおして自分自身の強みと弱みを熟知すると、成果を上げるための方法や方針を確立できます。実行して実際に成果が出ると自己肯定感が高まり、ゴーレム効果の発生を避けられるのです。

また自分自身をよく知っている人は他人の評価を気にしない傾向にあるため、この点でおゴーレム効果による影響を受けにくくなります。

⑥前向きなセルフトーク

前向きなセルフトークを習慣化すると自己肯定感が向上しやすくなり、ゴーレム効果の影響を受けにくい心理状態を維持しやすくなります。「自分はできる」「よくがんばった」など、ポジティブな言葉で自分自身に語りかけ、モチベーションを高めましょう。

上司が取るべき対策

部下を評価する立場にある上司は、積極的にゴーレム効果防止策を行うべきです。ここでは7つの対策を解説します。

  1. 加点方式のフィードバック
  2. 性格ではなく行動を指摘
  3. チャンスの提供
  4. 適切な目標設定
  5. 適切なタイミングの評価
  6. 否定的な発言の回避
  7. 評価やマネジメント研修の実施

①加点方式のフィードバック

部下の評価を行う際、加点方式のフィードバックを意識しましょう。部下の評価において減点方式でミスや課題ばかりを指摘していると、それを見た周囲にもゴーレム効果が発生しやすくなるためです。

加点方式のフィードバックはピグマリオン効果を発生させる要因でもあるため、モチベーションと成果を上げるサイクルをつくれます。

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②性格ではなく行動を指摘

部下に注意をする際、性格ではなく行動の問題点を指摘すると、ゴーレム効果を防げます。性格に関する問題は改善しにくく、それを指摘された部下は、自己肯定感や仕事に対するモチベーションを下げてしまう可能性も高いからです。

一方で行動に関する問題点は改善しやすく、部下は行動を変えれば成果が上がると理解できます。指摘を前向きに受け止めて仕事に臨めるでしょう。

③チャンスの提供

部下が仕事で失敗をしてしまった際、上司が次のチャンスを与えるとゴーレム効果を抑制できます。上司から与えられた次のチャンスは、部下にとって評価を挽回する絶好の機会となるからです。

「だめだった」で終わらず「次は成功させよう」と考えられるようになり、部下はモチベーションを維持しながら取り組めるでしょう。成功すれば成功体験を得られるため、ゴーレム効果が起こりにくくなります。

④適切な目標設定

部下が担当する日々の業務において上司が適切な目標を設定すると、成功体験を積みやすくなり、対策となりえます。適切な目標とは部下の実力や実績に即した目標のこと。上司はその見極めを慎重かつ的確に行う必要があります。

適切な目標設定を達成し、成功体験を得た部下は自己肯定感が高まるため、ゴーレム効果を避けられるのです。

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⑤適切なタイミングの評価

適切なタイミングで部下によい評価を与えましょう。「いまの意見はよかった」のように、その場でよい評価を与えると部下の自己評価が高まり、ゴーレム効果の発生を防げるからです。さらに上司と部下の信頼関係を強化する効果も期待できます。

タイミングが遅れてしまうと、部下は「今さら褒められてもうれしくない」と感じてしまうため、その場で伝えるとよいでしょう。

⑥否定的な発言の回避

部下に対して否定的な発言をするのは避けるべきです。たとえば「やっぱり失敗すると思った」といった、部下のミスを最初から予測していたような発言は部下の自己肯定感を下げ、仕事に対するモチベーションを低下させてしまいます。

このような否定的な発言を無意識に繰り返す上司がいる職場では、ゴーレム効果が発生しやすくなるでしょう。

⑦評価やマネジメント研修の実施

評価やマネジメントに関する研修を実施すると上司の言動が改善され、ゴーレム効果の発生を防止できる場合もあります。上司による偏った評価やモチベーションを下げるようなコミュニケーション、不適切な目標設定などがゴーレム効果を生むことも多いからです。

研修をとおして上司の評価スキルやマネジメントスキルが向上すると、ゴーレム効果が発生しにくい環境を構築できます。