グループダイナミクスとは? 意味と効果を具体例を交えて解説

グループダイナミクスとは、集団とそのなかに属する個人が互いにおよぼす影響と、その関係性に関する考え方のことです。具体例、効果、活用のポイントなどについて解説します。

1.グループダイナミクスとは?

グループダイナミクスとは、集団内の人々の相互作用と影響に関する考え方のこと。個人の思考は集団の成員から影響を受け、これらの影響が積み重なって、集団全体の行動や決断に影響をおよぼすことを意味します。

人々がひとつの集団を形成する際、そのなかで意見や行動のもとになるのは個人の考えや意向です。そこに集団としての意識や目的が出現すると、個人がもともと持っていた考えを超えた選択が行われることがあります。

つまり集団内での圧力や期待によって個人の行動や意識が誘導されることを示しているのです。

理論の起源

1930年代に心理学者クルト・レヴィン氏がグループダイナミクスの理論を立案。ドイツ出身のレヴィン氏がアメリカで提唱したこの理論は、集団内での相互作用と力学を研究するものとして注目されました。

「ダイナミクス」とは「動力学」を意味し、「集団力学」とも呼ばれます。ダイナミクスの理論は集団内の動きや影響の解明できるとして、経済学や心理学、教育、ビジネスなど多様な分野での基盤として認識されているのです。

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2.グループダイナミクスに影響を与える「集団凝集性」

グループダイナミクスでは集団の結束の強さや団結力が中心的な役割を果たします。この団結力の度合いを「集団凝集性」と呼ぶのです。

集団凝集性が高まると集団はより一体感を持ち、共通の目標に向かって効果的に活動する力を増していきます。高い集団凝集性は集団としての持続力を増大させ、個人だけでは達成困難な成果を手に入れる場合もあるのです。

しかし団結力が強すぎると、集団が一方的な思考や誤った方向に向かうリスクも生まれます。

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集団凝集性を高める要素

集団凝集性を高める要素のひとつが、共通の目標や任務。これらはメンバー間での協力意識や共通の価値観を生み出し、信頼関係と理解を深める助けとなります。

とくに小さな規模の集団では、個々のメンバーとのコミュニケーションが密になるため、相互理解や共感が生まれやすいため、団結心が高まる傾向にあるのです。

また固定的なメンバー構成を持つ集団もメンバー同士の関係性が安定しやすく、集団凝集性を高められます。

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3.グループダイナミクスの具体例

グループダイナミクスが応用される分野では、ビジネス」「看護や福祉」「教育」などが挙げられます。それぞれの具体例について説明しましょう。

ビジネス

ビジネスの現場における活用シーンは、人材育成やチームビルディングなどです。

たとえばチームでのディスカッションや共同作業を通じて、個々人が自身では気づきにくい特質をほかのメンバーが認識し、個々のメンバーが持つ独特の能力や視点が明確になることがあります。

トレーナーやリーダーはこのような特性を引き出すために、気づきや問いかけを行うのです。発見された新たな能力や視点がチームグループダイナミクスとなって、チーム全体の理解や興味、意欲やパフォーマンスを高める場合もあります。

看護や福祉

看護や福祉の現場のように、少人数のスタッフが多くの人をサポートする場合、チーム内のコミュニケーションや協調性が求められます。そのためグループダイナミクスでチームの意識や意欲を高め、個人のパフォーマンスをアップさせるのです。

このような現場では、定期的にディスカッションを行うとチーム内での問題解決や効率的な業務遂行を促進するでしょう。

教育

教育の現場では、グループダイナミクスが生徒の行動パターンを理解し、対応する手法として利用されます。生徒たちの集団行動や個人の影響力は、クラス全体の雰囲気や学習環境に大きく影響をおよぼすからです。

たとえばいじめ問題に対しても、グループダイナミクスを通じて問題の根源や解決策を探っていけます。またグループ学習の設定においても、グループダイナミクスで生徒間の相互作用を促進させて、生徒の協調性や共感力を育めるのです。

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4.グループダイナミクスを活用で期待できる効果

グループダイナミクスは集団におけるチームワークに対する障壁を排除し、良好な環境の構築を促進します。グループダイナミクスに期待できる効果について説明しましょう。

パフォーマンスの向上

グループダイナミクスで個々のメンバーが持つ能力や知識を最大限に生かし、それらを結集すると集団のパフォーマンスを向上できます。

チームのパフォーマンスが個人の能力を上回る場合、グループダイナミクスの効果で個人のパフォーマンスが高まるでしょう。高水準のチームに所属すると、個人の意欲や意識が高まりやすくなるからです。

一方で個人の能力がチームのパフォーマンスを上回る場合はチームへよい刺激を与え、チーム全体の意欲や意識が高まる場合もあります。

コミュニケーションの活性化

グループダイナミクスは、集団においてよりよい協力関係を形成するため、コミュニケーションを円滑化させる効果もあります。組織内外のコミュニケーションが円滑になると、業務や事業がスムーズに進み、より高い成果を得られるでしょう。

イノベーションの創出

グループダイナミクスを利用すると多様な視点が集結し、イノベーションを引き出す可能性があります。相乗効果として、新たなアイデアや解決策が生まれやすい環境が整っていくこともあるのです。

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5.グループダイナミクス活用の注意点

グループダイナミクスは集団へ影響をおよぼすため、いくつかのリスクもあります。活用における注意点を解説しましょう。

グループシンク

グループシンク(集団浅慮)とは、集団の意思決定において、合意形成へのプレッシャーが多様な視点や批判的思考を抑制し、その結果集団が不適切な決定を下す現象のこと。

グループダイナミクスにおいて、ディスカッションにおける時間的制約や独裁的なリーダーシップなどは、グループシンクを増幅させる要因となりえます。

グループシンクを防ぐためには「異なる視点の尊重」や「ディスカッションの奨励」「意思決定のプロセスの透明性の確保」が必要です。

グループシフト

グループシフトとは、集団の意思決定が、一方向に偏る現象のこと。一般的には、過度に積極的な意見や慎重な意見が組織を支配することを意味します。

グループシフトは「リーダーの強い影響力」や「個人の責任感の欠如」が引き金となって発生し、最終的に集団行動が不適切かつ危険な方向へ進んでしまう可能性も少なくありません。

なおグループシフトは「リスキーシフト」と「コーシャスシフト」の2種類にわかれます。それぞれについては次項で解説します。

リスキーシフト

リスキーシフトとは、個々人が単独で行動するときより、集団内での意思決定のほうが、リスクを伴う方向へ動く現象のこと。

集団の一部として行動するときに、個々の責任が分散されると、より大胆な行動をとる傾向があります。これがリスキーシフトにつながるのです。

普段は慎重に行動する人であっても、「一緒に行動すれば怖くない」という集団の意識が生まれると、リスキーな決定に向かうことがあります。

コーシャスシフト

コーシャスシフトとは、個人が集団内での意思決定に参加すると、通常よりも保守的な方向へと意見が傾く現象のこと。集団の規範や価値観が個々の判断に影響を与え、一般的にはリスク回避的な結論に達する傾向があるためです。

コーシャスシフトが生じると、集団内の議論が個人の革新的なアイデアや新しい視点を抑制してしまうことがあり、集団全体の創造性や効果的な問題解決を妨げる恐れもあります。

コンフリクト

コンフリクトとは、集団内で異なる意見や要求が衝突し、双方が妥協しない状態のこと。

とくに集団の一体感が高いと、対立する集団の意見を聞き入れないという姿勢が強まり、コンフリクトに陥りやすくなります。集団内の協調性を損なうため、全体のパフォーマンスを下げかねません。

一方で双方の議論や意見交換によって、相手への理解がより深まるというメリットが得られることもあります。

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6.グループダイナミクス活用のポイント

グループダイナミクスの活用は、ビジネスシーンの活性化においても不可欠です。グループダイナミクスを活用する際のポイントを説明します。

コミュニケーション手段の整備

コミュニケーション手段の整備は、集団内のメンバー間で情報を円滑に共有し、効果的な議論を可能にするうえで欠かせません。ただし結束力が強まる一方、異なるメンバーが排除や疎外される可能性もあるため、誤解や齟齬を招きやすい手段は避けたいところです。

組織内のメンバーが使いやすいコミュニケーションツールを選定し、コミュニケーションを取るうえでのルール作りも進めましょう。

グループ内での行動規範の設定

グループ内での行動規範を設定すると、最大限に活用できるようになります。

集団内の全員が参加し、意見を積極的に共有する環境を醸成するためには、明確な行動規範が必要です。まずは話し合いのルール設定を行い、決定事項を明確にしたうえで集団全体に配布しましょう。また全員がいつでも行動規範を確認できる環境づくりも重要です。

グループ内の問題を見定めて解消

メンバー同士の不和やチームに対する不満などは団結力を損なわせるため、グループ内の問題の見定めと解消も欠かせません。

問題は突如として発生するものではなく、通常何かしらの兆候がともないます。この兆候を察知して共有すると、問題の予防や早期解決が可能となるでしょう。

個人が集団のなかで貢献度を下げてしまう「社会的手抜き」にも注意が必要です。社会的手抜きを組織から排除するには、集団内のコミュニケーションを向上させるのが有効です。

グループ内の適切な目標設定

集団において適切な目標設定がなされているかも重要です。具体的な目標を設けていても、現実的でない、あるいはあまりに高い目標を設定してしまうと、メンバーのモチベーションを減退させ、全体の士気を低下させるリスクもあります。

達成可能、かつチャレンジングな目標を設定すると、チームの意識や意欲を高められるでしょう。

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各グループに合った人材配置

リーダーシップのスタイルやメンバーの個性は、グループ全体の効率や成果に大きな影響を与えるため、各グループに合った人材の配置も重要です。

たとえば行動力のあるリーダーはグループの結束を強める可能性がある一方、誤った方向に進む恐れもあります。個人の特性や能力にもとづいて適切にメンバーを配置すると、集団としての力が最大化し、効果的な意思決定を促進するでしょう。