業務平準化とは? 意味や標準化との違い、進め方、事例を簡単に

平準化(へいじゅんか)とは、バラバラの物事を均一化して公平にすること。本記事では、平準化と標準化・平均化との違いや、業務平準化が重要な理由、業務平準化ができていない状態などについて解説します。

1.平準化とは?

平準化(へいじゅんか)とは、バラバラの物事を均一化して公平にすることです。ビジネスシーンで使われる「業務平準化」は、特定の期間での業務量の偏りや作業者ごとの作業負荷をなくすことを指します。

たとえば、繁忙期のみ、あるいは、特定のメンバーだけが無理をして膨大な業務をこなすムラは、閑散期や他のメンバーを活用しきれないという無駄が生じているともいえます。

業界や業種によっては、どうしても繁忙期と閑散期が生じてしまうこともありますが、可能な限り、業務平準化をおこない、企業の生産性向上を目指しましょう。

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2.平準化と標準化、平均化との違い

平準化に似た言葉として「標準化」や「平均化」があります。ここではそれらとの違いを解説します。

平準化と標準化の違い

平準化と標準化は目的が異なります。

  • 平準化:業務量の均一化が目的
  • 標準化:作業手順や製品仕様を統一して、業務効率化や品質向上を図ることが目的

「業務標準化」は、仕事の進め方や成果の基準を統一して、プロジェクトメンバー全員が同じ理解を持つことを目的としたものです。

たとえば、詳しい業務マニュアルを作成してメンバー全員で共有して、誰でも同じレベルの仕事ができるようになることを目指します。

業務の標準化が適切に行われていないと、各社員の仕事内容や業務量に偏りが生じ、業務の平準化を達成することは困難になります。そのため、業務の標準化は平準化を実現するために非常に重要です。

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平準化と平均化の違い

平準化と平均化も目的が異なります。

  • 平準化:作業負荷を均等に保つことを指し、リソースの最適化を目指す
  • 平均化:物事の差異を無くすこと

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3.業務平準化が重要な理由

業務が平準化されていないと、仕事に悪い影響が出る恐れがあります。具体的には以下の3つが挙げられます。

  1. 業務の遅延を防ぐため
  2. 業務の属人化を防ぐため
  3. コストダウンを実現するため

業務平準化すると、仕事の負荷が均等に分散され、無駄なリソースを抑えられます。ここでは、業務平準化が重要とされる理由について説明します。

①業務の遅延を防ぐため

業務平準化は、業務の遅延を防ぐために欠かせません。たとえば、特定の時期や特定の人に業務が集中すると、処理能力を超える負荷がかかり、遅延が発生するリスクが高まるでしょう。

そこで、業務平準化により、作業負荷を均等に分散させます。それにより、業務の流れがスムーズになり、遅延を防ぐ効果も期待できるのです。

業務の遅延を防ぐと、顧客への納期遅れが防げるうえ、信頼性の高いサービスを提供できたり、急な対応が必要になる状況を減らしたりして、計画的な運営を実現できます。

②業務の属人化を防ぐため

業務平準化は、特定の人に業務が集中する属人化を防ぐ効果もあります。属人化が進むと、特定の従業員に過度な負担がかかり、不公平感からモチベーションの低下につながる恐れが生じます。

そこで重要なのが、業務を複数の従業員で分担して、特定の人に依存しない体制を作ること。これにより、どの従業員が担当しても同じ品質で業務を遂行できるようになります。

さらに、属人化を防げば、従業員間のスキル共有が促進され、全体のスキルレベル向上にもつながります。

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③コストダウンを実現するため

業務平準化は、コストダウンにも大きく寄与します。例えば、チームで協力して進める仕事では、ある特定の人に作業が集中すると、ほかのメンバーの作業が停滞してしまいます。

そこで、業務の負荷を均等に分散すると、効率的なリソース配分が可能になり、無駄な労働コストを削減できます。

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4.業務平準化ができていない状態とは?

業務平準化ができていないと、仕事の効率や成果に大きな影響を与える可能性があります。業務平準化ができていない状態は、以下の4つのケースです。

  1. 担当者によって作業量に差がある
  2. 季節や時期ごとに作業量に差がある
  3. 業務が属人化している
  4. 業務が定型化されていない

ここでは業務平準化ができていない状態を具体的に紹介します。

①担当者によって作業量に差がある

複数メンバーで作業を行う場合、担当者ごとに作業量に大きな差が生じることがあります。しかしこれは好ましい状態といえません。

たとえば、作業の割り当てがしっかりと決まっていない場合や、メンバー同士のコミュニケーションが不足している場合、作業量のバラツキが発生しやすいです。

ある担当者は常に大量の仕事を抱えている一方、ほかの担当者は比較的少ない業務を行っている状態は、業務平準化できておらず、改善の余地ありといえます。

②季節や時期ごとに作業量に差がある

業種によっては、季節や時期によって作業量に大きな差が生じることもあり、業務平準化が難しい状況だといえます。

しかし、作業量が増える時期をあらかじめ把握しておくと、その時期に限って人手を増やしたり外注サービスを利用したりして、事前に対策を立てられるでしょう。

事故や災害は突然起こるため業務平準化が難しいです。それでも、あらかじめ予測できることには策を練っておきましょう。

③業務が属人化している

業務が属人化しているときも、業務平準化ができていない状況だといえます。なぜなら、業務が属人化していると、ほかのメンバーがその業務を進められず業務が滞る恐れがあるためです。

属人化が進むと、業務の品質や効率が担当者のスキルや経験に大きく依存するため、安定した業務運営が難しくなります。

④業務が定型化されていない

業務が定型化されていない状態では、作業手順やプロセスが一貫しておらず、担当者ごとに異なる方法で業務が行われることがあり、業務平準化ができていません。

定型化されていない業務は、新しい担当者が業務を引き継ぐ際に時間がかかり、スムーズな引き継ぎが困難です。作業手順をマニュアル化することで、業務を定型化し、効率的かつ安定した業務運営を実現する必要があります。

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5.業務平準化のメリット

業務平準化には以下のようなメリットがあります。

  1. 業務効率を向上できる
  2. 属人化や業務量の偏りを防げる

ここでは、業務平準化が具体的にどのようなメリットをもたらすのかを詳しく説明します。

①業務効率を向上できる

業務平準化をおこなうことで、作業負荷を均等に分散し、全体の業務効率を向上させられます。業務平準化を行うことで、担当者間で柔軟に対応できるようになり、従業員が無理なく仕事を進められ、疲労やストレスが軽減されるからです。

また、業務の流れがスムーズになるため、無駄な時間やリソースの浪費も防いで、全体の効率を高められます。

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②属人化や業務量の偏りを防げる

業務平準化を実現すると、特定の担当者に仕事が集中する属人化を防ぎ、業務量の偏りを減らせます。

もし属人化が進むと、その担当者が不在の場合や急な休暇を取った際、業務が滞るリスクが高まってしまうでしょう。

平準化により、業務を複数のメンバーで分担し、均等に作業を配分しておくと、誰でも同じ業務を遂行できる体制を整えられます。

さらに、業務平準化は、スキルの共有を促進させ、チーム全体の能力向上につながり、チーム連携を強化させる効果も期待できるでしょう。

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6.業務平準化のデメリット

業務平準化は多くのメリットをもたらす一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  1. マニュアル化していない業務に対応できなくなる
  2. 社員のモチベーションが低下する可能性がある
  3. 従業員が反発する恐れがある

デメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要ですので、具体的な内容を説明していきましょう。

①マニュアル化していない業務に対応できなくなる

業務平準化により、標準化された手順やプロセスにもとづいて業務が行われることが増えると、マニュアル化されていない業務や、突発的な業務には対応が難しくなってしまうかもしれません。

たとえば、予期しないトラブルやイレギュラーな状況が発生した場合、マニュアルにない対応が求められることがあります。このような場合、従業員が柔軟に対応できず、業務が滞る可能性があるでしょう。

平準化を進める際は、マニュアル外の業務にも対応できるような柔軟な運用体制を整えることが重要です。

②社員のモチベーションが低下する可能性がある

業務平準化により、業務が均一化されると、従業員のモチベーションが低下するリスクがあります。とりわけルーチンワークが増えると、単調な作業に飽きてしまい、仕事に対する意欲が減少し、生産性が低下する従業員が出る恐れも。

モチベーションの低下を防ぐためには、平準化された業務の中にもチャレンジングな要素を取り入れたり、定期的なフィードバックや評価制度を設けたりすることが有効です。

③従業員が反発する恐れがある

業務平準化を進める過程で、従業員が反発することも考えられます。

とりわけ長期間にわたって特定の業務を担当してきた従業員にとって、業務の分担や手順の変更は大きな負担となるでしょう。それにより、新しいやり方に対して抵抗感を持ち、変化に対する不安や不満が生じることがあります。

これらの反発を避けるためにも、平準化の目的やメリットをしっかりと説明し、従業員の意見を取り入れながら進めていきましょう。

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7.業務平準化の進め方

業務平準化の進め方は以下のとおりです。

  1. 業務量・内容を正確に把握する
  2. マニュアルを作成する
  3. 定期的に見直す

ここでは、具体的な進め方を紹介します。

①業務量・内容を正確に把握する

まず、現在の業務量と内容を正確に調査して可視化します。理想は、各従業員の作業量、各業務に要する時間、誰がどの業務を担当しているかを詳細に記録すること。

これにより、業務の負荷や進行状況を明確に把握でき、偏りや無駄を見つけやすくなります。

このステップでは、ツールやシステムを活用して業務のトラッキングを行うと効果的です。たとえば、タイムトラッキングツールを使用すると、各作業の所要時間をリアルタイムで記録し、データとして蓄積できます。

優先順位をつける

業務量および内容を把握したら、平準化すべき業務に優先順位を付けましょう。属人化している業務だけでなく、定型化されていない業務も対象とすることが望ましいといえます。

すべての業務を平準化するにはコストや手間がかかるため、優先度の高いものから1つずつ取り組むことが重要です。

業務を最適化する

無駄な工程を省いたり、作業工程の順序を変更したりして業務の最適化を図ります。また、ITツールを活用した業務改善など、より効率的な方法を検討することも大切です。

②マニュアルを作成する

次に、業務の標準化を図るためにマニュアルを作成してください。マニュアルに、各業務の手順やポイント、注意点を詳細に記載すると、誰でも同じ品質で業務を遂行できるようになり、属人化を防げます。

なお、マニュアルを作成するときは、実際に業務を担当している従業員の意見を取り入れることが大切です。

担当する従業員にとって使いやすい形式や内容でマニュアルを作成し、定期的に更新して、実際の業務に即したものにしていきます。また、デジタル化して共有すれば、いつでも参照できるでしょう。

③定期的に見直す

業務平準化は一度で完了するものではありません。定期的に業務量や効率を評価し、新たな課題や改善点を見つけ出しましょう。継続的に見直し、改善のPDCAサイクルをまわすことで、つねに最適な状態にアップデートします。

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8.業務平準化の注意点

業務平準化の注意点は以下の通りです。

  1. 従業員の理解と協力を得る
  2. スモールスタートで始める

業務平準化を進めることで、業務効率や生産性を向上させることができますが、いくつかの注意点を押さえなくてはいけません。ここからは、業務平準化を進める際の具体的な注意点について説明します。

①従業員の理解と協力を得る

業務平準化の目的や意義は、丁寧に説明し、理解を促す必要があります。平準化によるメリットを具体的に示し、その重要性を理解してもらうように努めることが大切です。

変化に対する不安や抵抗感を軽減するため、オープンなコミュニケーションを心がけ、現場にいる従業員からの意見や提案を積極的に取り入れてください。

②スモールスタートで始める

一度にすべての業務を平準化しようとせず、小規模なプロジェクトや特定の部署から始めるようにしてください。成功事例を作り、その効果を可視化すると、他部署への展開がスムーズになります。

段階的なアプローチにより、リスクを最小限に抑えつつ、継続的な改善を図りましょう。

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9.業務平準化の取り組み事例

トヨタ自動車は業務平準化の先駆者として広く知られています。ここでは、トヨタから学べる業務平準化の方法として、以下の2つの重要な手法を紹介します。

  1. ジャストインタイム方式
  2. かんばん方式

①ジャストインタイム方式

トヨタが開発し、多くの製造業で採用されている生産管理システムのこと。核となる考え方は、「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産する」ものです。

そして、これを実現可能にするのが、製品の種類や日々の生産量のばらつきをなくし、安定的に供給する「平準化生産」。

平準化生産が実現すると、設備や人員に過剰投資する必要がなくなり、特定の工程に業務が集中することも防げます。すると、結果的に業務プロセスや成果物の水準が統一されて、さらなる業務標準化が進みます。

ジャストインタイム / Just In Timeとは?【図解】トヨタ方式
「必要なものを、必要なときに、必要な数だけつくる」という発想から生まれたジャストインタイム(JIT)。もともと製造関係の企業で使われてきた生産管理システムです。最近では製造業界だけでなく、あらゆる分野...

②かんばん方式

ジャストインタイム「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ生産する」を効率的に実現するために、トヨタ自動車が独自に開発した生産管理の手法のこと。

かんばんとは、生産ラインにおける発注書のようなもので、商品名や品番、保管場所などの部品や製品に関する情報が記載されたボードを指します。

このかんばんには、生産のタイミングと数量の具体的な指示を出す役割があり、かんばんの指示に従って生産することで無駄な作業や過剰在庫を減らせます。

さらに、そのあとの工程でも、かんばんを確認すると詳細を把握できるため、ミスを減らせるでしょう。かんばん方式の主な役割は、過剰生産の防止です。

かんばんがないと生産を行わないため、必要以上の生産を避けられます。これにより、完成品を保管する倉庫のスペースや製造現場で必要な原材料の在庫を最小限に抑えられ、あらゆる無駄を排除可能です。