高学歴でありながら、希望する企業への就職が適わず、本意でない就職に甘んじ、非正規雇用労働者や無職となった人たちを、高学歴ワーキングプアと呼んでいます。高学歴ワーキングプアが生まれる背景と、国や企業の人事ができることを考えてみます。
高学歴ワーキングプアとは?博士課程修了者の進路
高学歴ワーキングプアとは、難関大学と呼ばれる大学や大学院を卒業し、院卒なら修士号や博士号を取得していながら、一流といわれる企業への就職が適わず、無職であったり非正規雇用労働者になっていたりする人たちのことをいいます。
一流大学(院)卒業後、一流企業に就職して定年まで安泰というレールから一旦外れてしまうと、なかなか元のレールの上に戻るのは難しくなります。
文部科学省の『平成28年度学校基本調査』によると、優秀な頭脳を持ちながら、非正規雇用や無職の人が一定数いることがわかります。
これらは晩婚化の一因となり、場合によっては結婚して家庭を持つことが難しく、生涯独身というケースも増え、少子化が一段と進むことにもなります。そのため国としてもなんらかの対策が必要となっています。
大学院卒で博士号を持って高学歴ワーキングプアになる原因
大学院の修士号や博士号を持ちながら、ワーキングプアになる原因には何があるのでしょうか。まず考えられるのが、大学4年での就職活動がうまくいかずに、安易に大学院へ進学してしまうケースです。
院での目標もなく進学したため、結果として院卒時の就職活動でも結果を出せず、院卒の肩書が重荷となって希望の就職ができなくなってしまいます。
企業側も、大学院の博士課程を出た学生は、研究職ならいざ知らず、総合職採用では扱いが難しいと敬遠する場合もあります。
また、大学院で真面目に研究に励み、博士号を取得した優秀な学生でも、ワーキングプアになるケースがあります。
博士号を取得した学生が就く仕事、たとえば大学では少子化でポストの数が減り、研究機関や企業の研究所でも正規の研究員のポストが少なくなっています。
博士課程を終えていざ就職しようとすると、ポストが見つからないというのが実情です。彼らは、終身雇用のポストを見つけるまで、非常勤講師やポストドクター(通称ポスドク=博士研究員)として任期があるポストを数年毎に転々としなければなりません。
ポスドクは35歳を過ぎると正規雇用の道は厳しくなるといわれており、研究の傍らで就職活動もするという厳しい環境に身を置くことになります。
優秀であれば、日本に見切りをつけて、海外にポストを探す人もいます。そうやって、優秀な頭脳が海外へ流出してしまうことは大きな損失であり、解決策が必要です。
高学歴ワーキングプア解消の方法とは
優秀な研究者が終身雇用の元で研究を続けられるように、文部科学省は2016年より卓越研究員制度をはじめています。
産官学の研究機関が原則として終身雇用の仕事を用意して、非正規雇用に甘んじていた研究員を受け入れ、国からはその企業に対して補助金が出るという仕組みです。毎年150名前後を卓越研究員として認定していくことになっており、ポスドク救済のひとつの施策として注目されています。
企業としても、この卓越研究員制度を積極的に利用すれば、優秀な人材獲得につなげることができます。
また、産官学の間の垣根が高いことも問題とされており、企業は大学との共同研究などで交流を深めて、大学と企業間の垣根を低くしておくことが大切です。